January 29, 2017

Laravel リファレンス[Ver.5.1 LTS 対応]

キーワード:
 新原雅司、Laravel、PHP、フレームワーク、リファレンス
PHPのフレームワークのLarvelについての本。本の目次等は出版社のページ参照。仕事でLaravelを使ったWebアプリケーションを作ることになって、読んで見た。あまりほかに日本語書籍がないので、これが一番ボリュームがあってよくまとまってはいると思う。

しかし、とてもわかりにくい書籍だと思った。そもそも自分がそこまで現状バージョンのPHPと他のフレームワークに精通しているわけではなかったので、基本的なところが理解できていないと読み通すのがしんどい感じがする。できれば本書の対象読者、前提知識がどういうものが必要かは示しておいてほしいと思った。

あとはリファレンスという形式でもあるので、わかりやすく説明しようという意図はほとんどない。何よりも図解がないので、Laravelの全体像がよくわからない。特に最初はComposerとLaravelの関係が地味にわかりにくいし、Laravelでインストール時に作成されるディレクトリ群とそれらがどのような動きをするのかが分かりにくい。さらにもっといえば、サンプルコードが書籍内に載っており、GitHubからcloneしてサンプルを実際に見ることができるが、書籍内でそのコードのパスが示されていないところがあって、うーん、となった。

あとは日本語説明がそっけなさ過ぎるし、ところどころ間違いがあるし(正誤表もあるが、それも完全ではなさそう)とにかく全部読み進めるのがかなり大変な技術書であった。本当にわかりやすい技術書は適度に図解があって、さくさくと読み進められるが。リファレンスなので、随時該当箇所を調べながら使うのが良いか。といっても、この本の初版は2015年で、PHPのバージョンも56までしかカバーしていないし、Laravelも5.2までしか対応していないので、若干内容が古くなっているところがある。

特に自分のような初心者にとってこの本から学習をするのはおすすめしないかな。以下で学習するのがいいかもしれない。ある程度学習が進んでから本書を読むと割とすんなり理解できるかもしれない。

なんとか1月中に初回更新ができてよかった。今年も冊数はあまりこなせない可能性が高い。ちなみに27日誕生日で33歳になって、そこで技術ブログをはてなで始めることにした。こっちもよろしく!!




読むべき人:
  • Laravelについて調べたい人
  • PHPをある程度理解している人
  • Laravelのまとまったサンプルコードを見たい人
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December 31, 2016

2016年に読んだ本総まとめ

毎年恒例のまとめ記事なので、今年も一応振り返っておこう。

まずは今年読んだ本の一覧は以下。

  1. 戦略読書
  2. Yコンビネーター
  3. クリムゾンの迷宮
  4. ウォール街のランダム・ウォーカー
  5. リーダブルコード
  6. 越境
  7. 帝国ホテル厨房物語
  8. 村上春樹 雑文集
  9. Webエンジニアの教科書
  10. ストーリーで考える「見積り」の勘所
  11. はじめよう! 要件定義
  12. リーン・スタートアップ
  13. ブラッド・ミュージック
  14. ニッチを探して
  15. 旅をすること
  16. マシアス・ギリの失脚
  17. 微睡みのセフィロト
  18. WORLD WAR Z
  19. 逃亡のSAS特務員
  20. Amazon Web Servicesではじめる新米プログラマのためのクラウド超入門
  21. Amazon Web Services企業導入ガイドブック
  22. 遺失物管理所
  23. ザ・プラットフォーム
  24. 聲の形
  25. この世界の片隅に
ちなみに去年の一覧は以下。今年は冊数がかなり減った。時間的に余裕がなかったわけでもないけど、転職して技術本をメインで読み込んでいたから時間がかかっていたというのもある。その割に技術本を読了できていないけど・・・。あとはPS4でゲーム漬け、Amazonプライムでアニメ漬けになっていたというのもある。

アニメを見た影響ではまり『Re:ゼロから始める異世界生活 1<Re:ゼロから始める異世界生活> (MF文庫J) [Kindle版]』をひたすら読んでいたので、トータル冊数は減っているかな。11巻までKindle版で読了したが、それは個別記事にはアップしていない。完結したらまとめて更新予定。

まぁ、バランスが大事だから、別に冊数が減った分、他のところで補完されているということにしておこう。

読んだ本をこうやって振り返ることで、今年1年何を意識して過ごしていたかがよくわかる。2月までは転職活動中だったということもあり、割と大局観を養うようなものを読んでいたと思う。言い換えれば、自分の人生の方向性を模索していたとも言える。

3月から転職して新しい職場でやっていけるようにと、技術本をメインで読み込んでいこうと思った。でも思ったよりも読了できなかったなと。今も結局途中まで読んで積読になっているものも多いし。本当はJavaScript本とか読了したかったし、今はLaravelのオライリー洋書をKindleで読んだりしている(読了まで数か月かかりそう)。

今年は冊数は少ないけど、読んだジャンルの本は割とバランスが良い気がする。ちゃんと技術本も読みつつ、SF小説、海外文学作品、ビジネス書、投資系の本、エッセイ、漫画なども読めたので。理想を言えば、このジャンルの網羅性で倍の量読めればいいのだけど、漫画、ゲーム(最近はFF15やってる)、アニメ、映画等の優先順位をうまくつける必要がある。これはもう永遠の課題。

今年読んだ本で一番を示すなら、コーマック・マッカーシーの『越境』かな。

越境 (ハヤカワepi文庫)
コーマック・マッカーシー
早川書房
2009-09-10


物語そのものが美しく芸術作品のようで、しかも内容が苦難に満ちた少年の成長物語で人生について考えさせられるような内容だった。また読み終えた当時は自分の方向性に対しての期待と不安が入り混じっていた時で、そういうときにタイミングよく読めたというのも良かったと思う。

来年はどうなるか見当もつかないな。ただ、もう少し技術本を読みこんでいきたいと思う。毎年そんなことを反省しているけど、結果的に全然ダメなのだけどw

ということで、2016年もこれで終わり。また来年

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December 28, 2016

この世界の片隅に

キーワード:
 こうの史代、日常生活、ご飯、人間関係、普通
このエントリも漫画と映画両方をまとめた内容となる。映画の予告を見たときは、なんだか古臭い感じの映画だなと思ってスルーする気だったけど、facebook上で見た人の感想が絶賛に近いものだったので、見ないわけにはいかないと思って、初回は予備知識なしで見に行った。

映画はとてもよかったなと純粋に感じだ。戦時中の何でもない呉市で生きる人たちの日常風景がとてもいとおしく思えた。また配給制なので食料もまともにない中で工夫して食事を食べていき、終戦後に食べる普通の白いご飯がとてもおいしそうだった。そして、終わったあと、新宿の寒空を歩きながら一人で見に行ったことにとても寂寥の気持ちで満たされてしまった。つなぐもう一つの手がないと。

映画を見たときには、どうしても完全に理解できていないことがあった。ストーリーとしては冒頭のもののけ?の存在や座敷童がいる!?というようなところとか、呉市の方言が微妙にわかりにくかったり、「吊床」や「モガ」といった言葉の意味することが何なのか正確にはわかっていなかった。

漫画も絶賛されているので、読む必要があると思って読んで見た。そしたら映画だけではわかりにくかった部分がちゃんと描写されていて、ようやく全容を把握できたと思った。と同時に、映画と漫画で受ける印象が少し違ったと思った。

映画は原作の作画にかなり忠実に映像化されており、またのん氏の声もよく合っており、日常生活、特に『ご飯』がキーワードのように思えた。しかし、漫画のほうを読んで見ると、終戦後に食べる白米のシーンはなく、また映画にはカットされていた周作と白木リンとのエピソードがあり、すずさんが嫁に行った家族、周作、水原哲たちの間で揺れ動く『人間関係』が描写されている気がした。

また、初回の映画を見たときに水原哲が一時入湯上陸に周作の家に来た時に語っていた『すず、お前だけはこの世界で普通でいてくれ』というようなセリフには特に何も感じずに、わざわざ周作家にやってきて邪魔な奴だなぁと思っていたけど、再度映画を見たときはここはとても重いセリフだなぁと感じた。戦地に赴いて殺し合いをすることになり、常に死と隣り合わせの水原哲にとってのすずの何でもない『普通』が救いだったのだなと感じた。

漫画は特にセリフのないコマの使い方がとてもよい。昔サザエさんの原作を読んだことがあるのだけど、その雰囲気にとても似ている。語らずともコマだけで伝わる部分もあるし、微妙な間があって情緒豊かに感じる。そういうのがとてもよい作品で、ゆっくりと読みながら心地よい時間が流れる。

結局、初回予備知識なしで映画鑑賞 ⇒ 漫画を買って読了 ⇒ 2回目の映画を見るというプロセスを経て、『この世界の片隅に』を本質的に鑑賞できた。2回も見たのは今年は『シン・ゴジラ』くらいだ。そして2回目があった大きな理由は、2人で見に行ったからだった。見終わった後、手はつなげなかったけど、居酒屋でご飯を食べに行った。

作品そのものは絶賛されているだけはあったなと思った。日常生活がとてもいとおしく思えて、こういうなんでもない生活ができることが人生で大切なこと、優先すべきことなんじゃないかとも思った。

イベント補整も少なからずあるけど、この作品はきっと思い出に残るものになるはず。




読むべき人:
  • ご飯が楽しみで生きている人
  • 日常生活を大切にしたい人
  • 幸せな気分に浸りたい人
Amazon.co.jpで『こうの史代』の他の作品を見る

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December 23, 2016

聲の形

キーワード:
 大今良時、障害、贖罪、青春、コミュニケーション
聴覚障害を持つ少女、西宮硝子とその子をいじめていた石田将也の関係性が描かれている作品。漫画は漫画喫茶で読んでいて、そして9月ごろに京アニで映画化されたので見てきて、そしてやはり原作も買ってもう一度読むべきだと思って読んだ。このエントリは漫画単独というわけでもなく、映画も含めた作品評、感想となる。

まず、映画については、これは本当にすごかったというか、いろんな感情を喚起させられて、感動してボロ泣きしてしまうほどの作品だった。映画はそれなりに多く見ているけど、そこまでになるようなものは本当に300本ほど見て1つあるかどうかなのだけど、これはその1作だった。

京アニによって本当に綺麗に映像化されているなぁと思ったし(まぁ、美化されすぎという側面もあるし、客観的にいじめていた人間に好意を抱くことができるのか?と思ったりもするのだけど)、aikoのエンディングテーマ曲もよかったし、漫画原作7巻を130分ほどによくまとめたなぁと感嘆した。必要なシーン、そぎ落とすシーンをうまく取捨選択し、映画だけで完結して映画独自のテーマを提示していたように思える。

ボロ泣きしたのは、もちろんこの作品特有の泣かせようという意図があるという要因も大きい。特にそれは西宮硝子の境遇に対する同情心のようなもので、漫画と同じく独特の魅せる表情で泣かれていると、こっちまでつられて泣いてしまう。しかし、どうしてもボロ泣きした理由がそれだけでは説明できない部分があった。

感動して泣いた理由の内訳は大体以下のようなものだと思う。
  • 辛い、痛々しい、憐憫のような感情・・・5割
  • 結末に対するよかったねというさわやかな気持ち・・・3割
  • 自分でもよくわからない心の内奥をかき乱される気持ち・・・2割
やはり感動といってもいじめのシーンは漫画よりも見ていて辛いものがあるし、半分くらいはそんな気持ちであって、結末は石田が最後にみんなと和解して学園祭を回って、よかったねで終われる。でもそれだけでは普通は泣いたりはしない。もっと描写的には辛い実写映画とか、さわやかに終わる映画を見たりしているが、泣くほどではない。最後の2割はいったい何だったんだろうか?というのが見終わってからもいまいち確信が持てなかった。

そういうのもあって、漫画を速攻で買って読み返した。そしたらそれはコミュニケーション不全を起こしていた主人公たちに自分のことのように感情移入していたんじゃないか?となんとなくわかってきた。それは、伝えたくても伝えられない感情があって、それが心のうちに渦巻いており、そしてそれをどう表現していいかわからない、伝える手段がなくて苦悩して、自分の精神がずっと牢獄に捕らわれて外に出れないようなもので。それがこの作品で聴覚障害と手話、いじめなどによって表現されている、コミュニケーションをテーマとした作品なんだとなんとなく思っていた。

そして、映画公開後に発売された著者インタビューなどが載っている公式ハンドブックを読んで見ると、まさにその通りだった。その部分をほんの少しだけ引用する。
「人と人とが互いに気持ちを伝えることの難しさ」を描こうとした作品です。
(公式ハンドブック pp.170)
なので、『聲の形』というタイトルでかつコミュニケーションがテーマとなっていると語られていた。この部分を読んで、やっといろいろなことが腑に落ちたと思った。自分のこの作品への感じ方は間違っていなかったのだなと安心した(もちろん、作者の意図通りに受け取ることだけが絶対的に正しいということではないし、いろいろな感じ方、受け取り方があってよい)。

おそらく普通の人よりもそれなりに多く映画を見ているけど、これほどに感情を動かされた映画は稀有だなと思った。なので、今年は他にもいろいろな邦画の当たり年であったけど、この作品が今年一番の映画である。

さて、次は漫画について。漫画はやはりいじめのシーンがしんどいというのはあると思う(でも改めて漫画、映画両方見てみると映画のほうがしんどい描写のように思えた)。しかし、いじめそのものは小学生の頃の回想として入っており、1巻がメインで終わる。2巻以降は主に高校3年生になった石田と西宮たちの人間関係の軋轢と修復で進む。なので、1巻を読み終えられたらきっと最後まで読み終えることはできるはずだ。

この漫画が特にスゴいと感じている部分は主に2つある。
  1. 絵柄というか、キャラの表情の描写
  2. 主要キャラのほぼ全員に共感と嫌悪感を抱かせられること
もちろん、いじめや手話、贖罪、青春の物語の側面からもいろいろと示すことができるのだけど、特にこの作品に対して秀逸だなと思ったのはこの2点だ。

まずキャラの表情については、これは作者の前作(原作は冲方丁氏だけど)の『マルドゥック・スクランブル』の主人公、ルーン・バロットの喜怒哀楽がとても豊かに描写されていてよいと感じていた。『聲の形』では、画力が向上しており、よりキャラの表情に磨きがかかっているなと思った。特に声を発することができない西宮の戸惑っている表情、辛そうな泣き顔、照れている顔、嬉しそうな笑顔など、セリフのないコマでとても引き付けられる。個人的にはセリフのないコマが効果的にかつキャラの表情を魅せられることが漫画の良作の基準だと思っている。これが本当に同情心を誘ったり、本能的に感情移入してしまう。ちなみに他の漫画作品で特にキャラの表情がよいなと思うのは『ヴィンランド・サガ』。

そして、次は主要キャラの共感と嫌悪について。これはこれでまたよくキャラを描いているなと思う。石田そのものは小学生時代にいじめていた部分にたいしてひどい奴だという嫌悪と同時に、高校3年生になったときの贖罪の気持ちと、学校で他人が×に見える部分とかに共感した。西宮に対しては、一見憐憫の情だけが占めているようでもあるけど、よく冷静になってみると、意外に意地っ張りで思い込みが激しく植野が指摘するような部分に同族嫌悪のようなものを感じさせられる。

さらには植野のように西宮に対して敵愾心を抱いているところは表面的にはとても嫌な女だなと思ってしまうけど、時折石田に対するかなわない気持ち、切ない表情を見せたりするところにあぁ、わかると共感してしまう。あとは特に西宮の母親の立場も、硝子に対して強く当たりすぎだろと思うけど、父親がいなくなる背景や親としての立場上、そうなってしまうのもわかる、と思えるし。さらには川井は、当事者意識がなく他人事で自分がかわいいと思っている感じで、地味に嫌なタイプだなぁと思うし(作者的には作っているのではなく常時素であるらしい)、かといってそう保身になってしまうのもわかる、と思うし。

石田と西宮をとりまく群像劇で、そのキャラたちの表情や行動それぞれに感情移入や嫌悪を抱かされて、著者自身の何気ない日常生活でよく観察されているのだなとも思った。

映画だけ、漫画だけ鑑賞しても本質的なことはなかなかわかりにくいというのはあると思う。また、いじめや聴覚障害というところで受け入れられる、好き嫌いがはっきり分かれる作品でもあるので、万人受けするものでもないし、絶対見ろとも言い切れないところがある。

なので、できれば、もしこの作品を鑑賞するのなら、映画を見て、漫画もすべて読み、さらに公式ハンドブックまでぜひ読むべきだと思う。公式ハンドブックは著者インタビューやキャラの裏設定やあのシーンはこういう意図があったといったことが示されているので、ある意味作品解釈に対する模範解答的なものになってしまう。それでも、よりこの作品を深く理解するには、作者の意図をくみ取ったほうがよりよいと思った。



この作品を通して自分自身の抱えていたわだかまりが消化(昇華)されたような、そんな感じがした。別にいじめ当事者であったり、聴覚障害があるわけではないから、そういう観点からの共感はそこまでないのだけどね。そして、主人公たちと同じような高校3年生くらいのときに読みたかったと思った。そしたら、もっと違う高校生活を送れていたのかもしれない。

ということで、映画と漫画、両方含めて、『聲の形』はかなりの良作だ。




読むべき人:
  • 高校生くらいの人
  • 贖罪の気持ちがある人
  • コミュニケーション不全を起こしている人
Amazon.co.jpで『大今良時』の他の作品を見る

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October 02, 2016

ザ・プラットフォーム

キーワード:
 尾原和啓、プラットフォーム、共通価値、B to B To C、リクルート
IT企業のプラットフォームビジネスについて解説されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第一章 プラットフォームとは何か?
  2. 第二章 プラットフォームの「共有価値観」
  3. 第三章 プラットフォームは世界の何を変えるのか?
  4. 第四章 プラットフォームは悪なのか?
  5. 第五章 日本型プラットフォームの可能性
  6. 第六章 コミュニケーション消費とは何か?
  7. 第七章 人を幸せにするプラットフォーム
(目次から抜粋)
著者はマッキンゼー、NTTドコモでiモード立ち上げ、リクルート、Google、楽天と数々の企業を渡り歩いてきており、そこでプラットフォームビジネスを体感してきている。著者の定義によれば、プラットフォームは、ある財やサービスの利用者が増加すると、その利便性や効用が増加する「ネットワーク外部性」が働くインターネットサービスと示されている。

その具体例が大多数の人が使っている、Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft、Twitter、Yahoo!などのグローバルIT企業となる。そして、著者がIT系プラットフォームビジネスに注目する理由は、社会や我々の生活を大きく変える可能性があるからとある。ここは先ほど挙げた企業を使い始める前と後について少し考えれば難しいことではない。

本書の前半戦はAirB&BやUberなどのグローバル企業を具体例に挙げてプラットフォームビジネスの本質について示されているが、改めて解説されてみるとまぁそうだよねと思う反面、特に新たな知見が得られるわけではないかな。しかし、後半戦は著者のキャリアの経歴がないと説明できない部分が示されていて、そこは特に参考になった。

特に5章の『日本型プラットフォームの可能性』の章は、日本型プラットフォームビジネスはゼクシィなどのリクルート系のビジネスを例にB to B to Cに独自のポテンシャルがあると示されている。B to B to Cは参加する企業と顧客の間に立ち、取引を円滑に行うことを手助けするためのモデルと示されている。

リクルートの最大の強みが「配電盤モデル」として示されており、特に参考になった部分を引用しておく。
プラットフォームが拡大するために最も重要なのは第二章でも書いたとおり、「収穫逓増の法則」がうまくまわることです。図で説明するならば、ユーザーが増えれば増えるほど、サプライヤーが増え、またユーザーも増え……というように、企業(B)と顧客(C)の両方を同時に相手にする「B to B to C」というモデルは、ループすることでより加速します。
 さらにこの基本ループの上に、「幅」と「質」のループが合わさることで、「配電盤モデル」はさらに加速し、プラットフォームは拡大を続けて、「さらにもうかり続ける」のです。
(pp.143-144)
リクルート系の先行ビジネスを研究すればプラットフォームビジネスのヒントがたくさんありそうだなと思ったので、ここら辺を気に留めておこうと思う。まぁ、ビジネスモデルはよくてもリクルートのサービスそのものは一利用者からしてみてどうよ?と思うものは無きにしも非ずなのだけど。

特に日本型のプラットフォームのビジネス事例について知りたい場合には、本書は有益と思われる。




読むべき人:
  • プラットフォームビジネスに関心がある人
  • リクルート系の強みを知りたい人
  • 起業してガッツり儲けたい人
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September 22, 2016

遺失物管理所

キーワード:
 ジークフリート・レンツ、遺失物、鉄道、暴走族、仕事
ドイツの小説。以下のようなあらすじとなっている。
婚約指輪を列車のなかに忘れた若い女性があれば、大道芸に使うナイフを忘れた旅芸人がいる。入れ歯が、僧服が、そして現金を縫い込まれた不審な人形が見つかる。舞台は北ドイツの大きな駅の遺失物管理所。巨匠レンツが、温かく繊細な筆致で数々の人間ドラマを描き出す、待望の新作長篇。
(カバーのそでから抜粋)
主人公は24歳の青年で、ドイツの鉄道会社の末端の部署、遺失物管理所に新たに配属になった。そこでは列車内で忘れられた遺失物が届けられ、管理されている。遺失物管理所の棚には無数の傘やスーツケース、人形、僧服、入歯まで様々なものが管理されている。主人公ヘンリーはどこか空気が読めない言動をしがちだったりで、同僚の既婚女性に好意を抱きつつも、訪れる遺失物管理所の人たちとのやり取りで少し普通とは違う対応をしてしまう。

例えば、大道芸人が小道具を忘れてそれを引き取りに来たときは、持ち主であることを証明してもらうために自分を的にして投げナイフをやらせてみたり、スーツケースの落とし主の荷物の中身をチェックし、そこにあった履歴書からその人物が若くして博士を取得していることに関心を持ち、持ち主のところに届けに行ったりする。その博士はロシアの地方の村からやってきたパシキュール人で、その人物との交流が始まったりする。

特に際立った物語の起伏があるわけでもなく、事件らしい事件もない。取得物から大きなドラマが始まるでもなく、どちらかというとあまり出世欲がなく、ここで定年を迎えられたらいいなと考えている主人公とその姉バーバラや交流のある博士、同僚とのやり取りがほとんどである。主人公があまり空気を読まないような感じで若干違和感があり、最初は変な奴だと思うけど、正義感や友情を大切にする人物として描写されていて後半は好人物のように思えた。

物を落としたりどこかに忘れてきたということはほとんどないので、実際の遺失物管理所がどういうところなのかはわからない。しかし、社会の末端のような職場のお話しなのだけど、そこに集められる遺失物が読む人にとっての何か暗喩のようなものを感じられるかもしれない。

割と時間的にも精神的にも余裕がないとあまり読めないかもしれない。読んでいて若干眠気を誘うし、お話としてはとりわけ面白いわけでもないし。それでも不思議と最後まで読めた。



遺失物管理所 (新潮クレスト・ブックス)
ジークフリート・レンツ
新潮社
2005-01-26

読むべき人:
  • 遺失物管理所に行ったことがある人
  • 出世欲がない若い人
  • 忘れ物がある人
Amazon.co.jpで『ジークフリート・レンツ』の他の作品を見る

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September 11, 2016

Amazon Web Servicesではじめる新米プログラマのためのクラウド超入門

キーワード:
 WINGSプロジェクト/阿佐 志保、AWS、クラウド、基本、入門
AWSの基本的なことが解説されている本。目次は長いので翔泳社のページを参照と。仕事で自社のデータンセンターで運用しているWebサービスをクラウドに移行しようということになって、クラウドってなんぞ?というところから始まって、まずは以下の本を読んだ。この本はどちらかというと移行前に考えることを詳細に示された本だった。AWSの全体像と概要を理解したので、次は実際の使い方とWebサービスの構築方法が知りたいと思って、書店のAWSコーナーを見ると、これが一番初心者向けで分かりやすいと思って買って読んだ。

『新米プログラマのための』とタイトルにあるが、別に新米プログラマが対象でなくても読むべき内容で、とても分かりやすくAWSの基本的なことが示されている。各サービスの概要、そもそものインターネットやネットワーク、IPアドレスの仕組みなども示されている。また、各サービスの構築手順がキャプチャつきで示されているので、この本を読みながら一通り試しながら学習できる。

WebサービスはEC2インスタンスがAmazon Linuxで、そこにApacth Tomcatを設定し、RDSにMySQLを組み合わせてJavaで作るものを想定されている。Javaを使う人にはそのまま参考になると思われる。また、仮想化環境でアプリを管理、実行するためのオープンソースのプラットフォームのDockerについて、インストール方法から示されている。

自社のWebサービスはWindows Serverを使っているので、MS系の技術は本書には書いてなく、そこはあまり参考になるところがなかった。例えば、RDSにSQL Serverはあるが、EC2のWindows ServerインスタンスにもSQL Serverが標準搭載になっているものがあるので、初心者にはどっちを使うべきなのかとか、そもそも両方の選択肢があることなどは分からなかったりする。

AWSでWindows系のシステム構成になっている本があまりないので、そういうのが個人的にほしいなと思った。まぁ、そもそもAWSじゃなくて、Azure使えばいいじゃないかという気もするのだけどね。

とはいっても、AWSの基礎的なことが分かって重宝した。他のAWS本はぶ厚すぎたりある程度基礎が分かっている人向けだったりするので。本書を読めば最低限のAWSのシステム構築方法が分かるはず。あとは、地道にAWSのWeb上のドキュメントを読んで、お試し環境で試行錯誤していくのが理解の早道と思われる。




読むべき人:
  • AWSの基礎が知りたい人
  • JavaでAWSを使う必要がある人
  • Dockerも考慮したい人
Amazon.co.jpで『AWS』の他の本を見る

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September 03, 2016

逃亡のSAS特務員

キーワード:
 クリス・ライアン、SAS、特殊部隊、アルカイダ、停電
特殊部隊ものの冒険アクション小説。以下のようなあらすじとなっている。
SAS隊員ジョシュ・ハーディングは、アリゾナの砂漠で銃弾を受け、意識を失って倒れていた。そばには射殺された少年が横たわっていた。ジョシュは美しい女性ケイトに助けられる。が、彼の記憶はすべて失われていた。しかも追跡者が次々と迫ってくる。折りしも世界の大都市で大規模な停電が続発していた。追っ手と闘いながら徐々に記憶を取り戻していく彼は、やがて驚くべき真相を知る!謎に満ちた会心の冒険アクション。
(カバーの裏から抜粋)
主人公はイギリスのSAS所属の兵士で、アルカイダの重要指名手配犯暗殺の任務を負っていた。しかし、上司の命令によりアルカイダの指名手配犯の狙撃に失敗してしまう。そのあと舞台は変わり、アリゾナの砂漠で首と足を撃たれたて記憶が飛んでいる状態で目が覚めて、世界ではテロ犯によると思われる停電が起きていた!!という状況。

ハリウッドアクション的で割と疾走感のある内容。アリゾナ砂漠を激走するバイクとマスタングのカーチェイスあり、ヘリで追撃されるシーンもあり、荒野のカウボーイのように撃ち合うシーンもあり、手製の釘入り火炎瓶の爆発もありでページがすらすらと進む。

拷問シーンがあって、結構えぐいというか、残虐ではないけど、リアルだなと思った。殴る蹴るは序の口で電気攻め、毒蛇にかませる、ナイフで刺すなど痛々しい。主人公はSASの兵士ということもあり、拷問に耐えるための講義を事前に受けていて、その説明があった。一部抜粋。
五つの数えを、頭に叩き込んでおく。まず、”精神的な根城”を持たなければならない。絶望し、暗い気持ちになるのを避けることはできない。そういうときに逃げ込む心のなかの隠れ家だ。つぎに、”集中できる言葉”を持つ。お祈りでも詩でもいい。一日を切り抜けるためにすがりつくものが必要だ。痛みに耐えるには、見えないものを心のなかで映像化する”視覚化”を用いる。たとえば、痛みをどこかに蹴とばしてしまえるサッカーのボールに見立てる。ありとあらゆる妄想や想像力を駆使し、逃避できるような幻想の世界を創りあげる。また”魔法の箱”も作らないといけない。自分の心以外の場所に、恐怖、不安、苦痛をしまいこんでしまうのだ。
(pp.281)
まるで著者がこの講義を受けたような感じでもある。このリアルさは著者自身がSAS隊員だったことによる。冒険小説の主人公並みの経歴だなと思う。

あと、拷問講義の講師のよって最後に重要な言葉が示されている。それも引用。
「自分が生きる目的や理由を持たなければならない。それがなかったら、痛みに耐え抜くことはできない。」
(pp.282)
拷問ではなくとも、普通の生活でもしんどい状況に陥ることがある。その時はこの言葉を思い出そう。

特殊部隊ものが割と好きで映画とかもよく見ている。小説はあまり読んでなかったので、読んでみると楽しめた。また、特殊部隊ものを読むと、自分も強くなったような妄想とともにモチベーションが少しだけ上がる気がする。



逃亡のSAS特務員 (ハヤカワ文庫NV)
クリス ライアン
早川書房
2006-12

読むべき人:
  • 特殊部隊ものが好きな人
  • ハッキングものが好きな人
  • 拷問に耐え抜く知恵が必要な人
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August 20, 2016

WORLD WAR Z

WORLD WAR Z〈上〉 (文春文庫)WORLD WAR Z〈下〉 (文春文庫)

キーワード:
 マックス・ブルックス、ゾンビ、戦争、政治、群像劇
映画にもなった原作小説。以下のようなあらすじとなっている。
中国で発生した謎の疫病―それが発端だった。急死したのちに凶暴化して甦る患者たち。中央アジア、ブラジル、南ア…疫病は急速に拡がり、ついにアウトブレイクする。アメリカ、ロシア、日本…世界を覆いつくす死者の軍勢に、人類はいかに立ち向かうのか。未曾有のスケールのパニック・スペクタクル。大作映画化。
(上巻のカバーの裏から抜粋)
死者の大軍を前にアメリカ軍は大敗北を喫し、インド=パキスタン国境は炎上、日本は狭い国土からの脱出を決めた。兵士、政治家、主婦、オタク、潜水艦乗り、スパイ…戦場と化した陸で、海で、人々はそれぞれに勇気を振り絞り、この危機に立ち向かう。「世界Z大戦」と呼ばれる人類史上最大の戦い。本書はその記録である。
(下巻のカバーの裏から抜粋)
ときどき、1か月周期ごとにゾンビに追われるような夢を見る。ゾンビそのものはそこまでリアルではないのだけど、ゾンビらしき人間ではない何かに追われて不安になってうなされる夢。何かにとりつかれているように。そんな体質?なのだから、ゾンビ物にはどこか惹かれるものがある。

最初のゾンビの出会いは何だったろうか?小学校低学年ごろに見た『バタリアン』だったろうか?それからいろいろとゾンビ物映画を見たり、ゲーム(といっても『バイオハザード』は初期1,2だけだったり、最近だと『The Last Of Us Remasterd』)し、最近の漫画なら『アイ・アム・ヒーロー』を読んだり、アメリカドラマの『ウォーキングデッド』シリーズにドはまりしているという状況。しかし、ふと振り返ってみると、ゾンビ物の小説は読んだことがなかった。

以前2chのまとめスレか何かで映画化されたこの原作本がよいという情報を得ていたし、たまたま図書館で発見したので、借りて読んだ。

Amazonのレビューで『問題は、「麦茶だと思って飲んだらウイスキーだった」という違和感にある。』と評されているが、まさにそんな感じだった。特定の主人公はおらず、ゾンビパニックものの定番である、ホームセンターでの籠城もなく、なめた行動をとったヤンキー的な奴が速攻で食われるという感じでもなくw、お色気担当的な女性キャラも出てこない。

ネタバレではないけれど、これは人類が遭遇した『世界ゾンビ大戦』で生き残った人たちのインタビュー集という形をとっている。様々な国の様々な立場の人たちが、ゾンビパニックの終結間近で過去の惨状を振り返り、自分たちがその時どういう状況にあって、どのように行動し、生き残ってきて、大戦を振り返って何を思っているか?という内容である。

様々な登場人物として、最初に中国の地図にも載ってないような山奥でおそらく最初のゾンビ感染者を診た医者であったり、ブラジルの心臓移植手術の外科医が感染の瞬間を目撃したり(中国からの合法、違法な臓器移植で世界中に感染が広がる!!)、アメリカの女性空軍パイロットが掃討作戦時に飛行機墜落後に無事にパラシュートで脱出後のサバイバルであったり、京都の引きこもりコンピュータオタク少年が命からがらマンションのベランダ伝いに脱出したり、全面戦争時の軍隊所属の兵士だったり、CIAの長官的な立場の人だったり、ゾンビ大戦に人々を勇気づけるために映画を撮っていたアメリカの青年などなどが出てくる。また、北朝鮮が独裁国家で常に管理体制があったのでゾンビパニックに意外に対応できてたとかいろいろな各国の特性を活かした逸話がさも本当にあったかのように語られている。

やはり本作品は単純なゾンビパニックものという感じではない。国家が崩壊していく様子があったり、パニック下の国同士の利害関係が描かれていたり、各国がゾンビパニックにどう対処していくか、そしてゾンビと相対していった各個人たちはどうなっていくのか?(精神的に壊れて肉体的には感染していないが突如ゾンビのようにふるまう人や、軍人たちが突如自殺に走ったり)などがそれぞれの個人を通して軍事、政治的、群像劇的、有機的に描かれている。本質的なテーマはゾンビよりもタイトル通り『戦争』がぴったりな気がする。ただし、敵は不眠不休で痛みも疲労も知らず、ただ捕食しようと跋扈している不死の奴らというのが大きな違いだが。

そしてよくここまで有機的、網羅的にかつリアルに感じさせる世界情勢を描いているなと思う。京都が舞台の日本のインタビュー者の様子などもよく日本の特性を調べているなと思わされる(ダウンタウンの二人の名前が出てくる)し、他の国の人たちもリアルな感じがする。いろんな人に本当にインタビューしたのではないかと思わせられる。そしてそれぞれの個人が割とどこにでもいるような人でもあったりして、身近に感じる。

いろんな切り口から語れる本だと思う。インタビュー的な口語体なので、スピード感をつけて没頭して読める。そして、解説も秀逸で、本編のインタビューの形を踏襲しており、過去のゾンビ作品、ゾンビの由来、著者についてなどがわかってゾンビマスター?になるための読み物としても興味深く読める。また、まさにその通りと思うようなところがあったので、その部分を引用しておこう。
さまざまな地域のいろいろな階層・職業・年齢・性別の人間の証言をコレクトして時系列順に配すると、あら不思議、断片の集積から大きな物語が見えてくるという手法。実に、ネット情報収集時代にふさわしい形式だ。ただし、普通の小説を読みなれている人には、話を統一する役割の感情移入できる主要キャラがいなくて、もちろん心理描写などもなくて、魅力や深みにかけるなんて思うかも知れない。でも、リアリティは抜群だよ。数世紀後に人類の死滅した地球にやってきた異星人が本書を解読したら、ぜったいに歴史的事実を記録した文書だと思うにちがいない(笑)。
(下巻 pp.331-332)
ほんこれ‼!w

ブラッド・ピット主演の映画のほうはまだ見てない(劇場で見ようかなと思ったけど、ビビるかもしれないから結局スルーしたw)。借りてきてあるので、これからじっくり堪能する。

ゾンビ物が好きな人は読めば一味違ったものを鑑賞できるし、軍事的小説、政治的小説、世界崩壊的なSF作品が好きな人、ある事件のインタビュー集ようなものが好きな人は間違いなく楽しめる作品だと思う。

それにしてもなぜこうゾンビに惹かれるのだろうか?といろいろと考えたりもした。個人的にはどこかに再生、復活願望があるのかもしれないと思った。



WORLD WAR Z〈上〉 (文春文庫)
マックス ブルックス
文藝春秋
2013-03-08

WORLD WAR Z〈下〉 (文春文庫)
マックス ブルックス
文藝春秋
2013-03-08

読むべき人:
  • 世界崩壊的なSF作品が好きな人
  • 群像劇的な作品が読みたい人
  • ゾンビマスター?になりたい人
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August 11, 2016

微睡みのセフィロト

キーワード:
 冲方丁、SF、ハードボイルド、コースター、天使
SFサイバーパンク的なハードボイルド小説。以下のようなあらすじとなっている。
従来の人類である感覚者と超次元能力を持つ感応者との破滅的な戦乱から17年、両者が確執を残しながらも共存している世界。世界政府準備委員会の要人である経済数学者が、300億個の微細な立方体へと超次元的に“混断”される事件が起こる。先の戦乱で妻子を失った世界連邦保安機構の捜査官パットは、敵対する立場にあるはずの感応者の少女ラファエルとともに捜査を開始するが…著者の原点たる傑作SFハードボイルド。
(カバーの裏から抜粋)
夏休みは慣習的に青春小説やSF小説を読みたくなる。そこで久しぶりに図書館に行ったら、冲方作品である本書が目に止まって借りた。本書は『マルドゥック・スクランブル』以前に書かれた作品で、どこか共通点があるというか、漫画家にとっての連載デビュー作の前の読み切り作品のような感じでもある。

主人公であるバットは『マルドゥック・スクランブル』、『マルドゥック・ベロシティ』のボイルド的な位置づけで、重厚なキャラで寡黙だが、半不死で肉体を再生する特殊能力を持つ。また、17歳の少女ラファエルは警察犬よりも訓練されたヘミングウェイという犬を相棒とし、あらゆる特殊能力を備える超人的な存在であり、やはりバロットの原形のようでもある。つまり、バロットとボイルドが組んで、超次元的に標的を殺さずに虫の息にバラバラにした犯人を追うという物語になる。ストーリの重厚感はあまりなく、キャラのバックグラウンドも少し薄い印象があって、全体的な完成度は『マルドゥック・スクランブル』、『マルドゥック・ベロシティ』には及ばない感じか。また、サイバーパンク的な要素もわかりにくい感じがする。もっともらしい用語で雰囲気を出しているようでもあり、いまいち描写がイメージできないところもあるし、設定の説明不足感はある。しかし、解説に示されているような「ローラーコースター・アクション」は著者独特の緩急のつけ方が光っている。

嵐の前の静けさというか、アクションが始まる前の敵の出現の前の予兆があって、何かがきっかけに急激に銃弾が炸裂する音や肉が焦げ付く匂い、血みどろの肉弾戦が繰り広げられる。そして一気にコースターが急下降したと思ったら右往左往していろんな方向に疾走し、SFアクション映画を見ているような感覚になる。これがやはりすごいと思う。

冲方氏のサイバーパンク的な作品を未読の人はこれから読むのがいいのかもしれない。その次にマルドゥックシリーズに行くと、すんなりと世界観や登場人物に感情移入して、さらに完成度の高いローラコースター・アクションを楽しめるのではないかと思う。

また、最近『マルドゥック・アノニマス 1』が発売されたので買わなくてはだなと。その前に短編集である『マルドゥック・フラグメンツ』も読まなくてはだけど。

本作品は200ページくらいなので、スピード感をつければ1日で読了できて、割と楽しめると思う。




読むべき人:
  • 疾走感のある作品が読みたい人
  • 特殊能力を駆使するバトルが好きな人
  • 戦う少女の物語が読みたい人
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