December 2006

December 31, 2006

KUROZUKA-黒塚


KUROZUKA-黒塚

キーワード:
 夢枕獏、野口賢、歴史、SF、不死、伝奇ロマン、千年
作家、夢枕獏の戯曲作品、『黒塚』が野口賢によって漫画化されたもの。10巻で完結。

主人公は平安末期の源九郎義経。ある日、従者である弁慶と奥州の山小屋で妖艶な黒蜜という女と出会う。九郎は次第に黒蜜に引かれていき、黒蜜と血の交換を果たすことで不老になり、そして最強の肉体を手に入れる。そしてそれから千年後の世界で、九郎は黒蜜を捜し求め、また不老の秘密を暴こうとする勢力にも追われ、立ちふさがる強敵を切り倒していく・・・。

この漫画を読む前に原作のほうを読んでいた。原作は戯曲形式で、文庫本で600ページもあるが、文章は短くテンポよく読める。何よりも、設定や物語展開に引き込まれていき、一気に読んだ。その原作が漫画になったので読んでみた。

結構原作とは違う部分もある。超能力を持った敵の存在や九郎が目指す町などは脚色されている。それでも、物語展開は原作にっけう忠実だった。

この漫画の魅力は、まず設定だろうか。源義経が主人公であり、ある異人と血の交換を行って不老不死になった黒蜜、そして黒蜜が慕う九郎をも不老不死にし、九郎は100メートルを5秒台で走り、傷もすぐに治癒するという能力を持つ。そして九郎を取り巻く敵との戦闘シーンなども圧巻。また、時代も平安末期、昭和、平成、そして隕石衝突後の荒廃した未来の世界と変遷していく。そんなSF的な要素も多くあり、とても面白かった。

ただ絵柄が人によって好みが分かれるかもしれない。黒い線が多く、全体的に暗い感じがする。剣術による戦闘シーンもたまにどのように描いているのかがよく分からなくなる。また、結構グロテスクな描写も多い。

漫画のカバーは光っていて豪華な感じがする。

原作と両方読めば面白さが向上することは間違いない。

読むべき人:
  • 歴史漫画が好きな人
  • 伝奇ロマンが好きな人
  • 戦闘漫画が好きな人
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December 29, 2006

プロ論。3


プロ論。3

キーワード:
 B-ing編集部、成功者、成功哲学、回顧録、オムニバス、多様性
ビジネス雑誌、B-ingで連載されているインタビュー記事が書籍になったもの。登場人物は、経営者、小説家、政治家、漫画家、アスリート、科学者、俳優、音楽家と多様性があり、総勢50人。これらの自他共に認めるプロが、成功までにどのように生きてきたのかが語られている。便宜上以下のような構成になっている。
  1. 仕事ができる人と言われたいとき
  2. 揺るぎない実力を身につけたいとき
  3. 自分に合う仕事を見つけたいとき
  4. 苦しくて逃げ出したくなったとき
  5. 語り継がれる名作を生み出したいとき
  6. 幸運をつかみたいとき
  7. どうしても夢を叶えたいとき
どの人もためになることを主張していて、線を引くところがとても多かった。皆に共通した成功体験や信条や行動原理がある。
  • なりゆきで今のポジションを目指すことになる
  • 多少辛くてもそれが後から活きて来ると信じている
  • プロ意識が高く、人より何倍も努力している
  • 好きなことをやっている
  • お金よりもやりがいや内容で仕事を選んでいる
  • 失敗を恐れずに時には大胆に行動する
  • 常に目標を持つ
これらのことを皆語っている。自分が特になるほどと思った人を以下に列挙してみる。
  1. 中谷巌(多摩大学学長)・・・『人は大きな力を秘めている。自分を過小評価してはいけない』(pp.27)
  2. 林文子((株)ダイエー代表取締役会長)・・・『人生はシーソーのようなもの。苦しんだ分だけ、喜びが待っている』(pp.45)
  3. 小宮山悟(千葉ロッテマリーンズ投手)・・・『最後に勝ち残れるのは、欲を強さに変えられる人』(pp.83)
  4. 村上隆(アーティスト)・・・『挫折は大切。それは限界を知ることでもあるから』(pp.95)
  5. 長嶋有(小説家)・・・『理不尽に、重い荷物を背負わされても、冗談を言えるか』(pp.177)
  6. 筒井康隆(作家)・・・『評価されなくとも、気にしない。いつか必ず、その努力は役に立つ』(pp.227)
他の人もいいことを言っている。さすがに全員は紹介しきれないけど。

最近本格的に働き始めて、なんだか自分のふがいなさに落ち込んだときがあった。そのときに通勤時の電車の中でこれを読んでいった。そしたらなんだかとてもやる気が湧いてきたような気がした。成功者は最初から成功者だったのではなく、それなりに苦労したり努力して今の状態になっているのだなと分かって面白かった。

一人当たり大体6ページの分量で語り口調で、(笑)という記号が多く入っているので読みやすい。どこからでも読めるし。特に通勤時に電車の中で読むとよいかもしれない。

特にこういうインタビューものは好きで読んでいる。成功者は若いころにどういう生き方をしてどういう判断をして今の状態に行き着いたのかということが分かって面白かった。

この本は3作目なので、第1作目の『プロ論。』や2作目の『プロ論。2』もお勧め。これらは今でも落ち込んだりしたときや、やる気を出したいとき、不安に悩んだりしたときに何度も読み返している。今作もきっとそうなるだろう。絶対お勧め本。

読むべき人:
  • 成功者になりたい人
  • やる気を出したい人
  • インタビュー記事が好きな人
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働く気持ちに火をつける


働く気持ちに火をつける―ミッション、パッション、ハイテンション!

キーワード:
 齋藤孝、仕事、やる気、受難、パッション
大学教授で多くの著作のある齋藤氏の本。仕事でやる気を出すにはどうすればよいかが書いてある。

副題にあるように、ミッション、パッション、ハイテンションがキーワードとして内容が展開する。著者によれば、これは『働く呪文』らしい。それぞれのキーワードを端的に説明されている部分を抜粋。
  • ミッションを端的に言うなら、「指令をこなす」ということだが、私がいうミッション感覚とは、仕事を常に「これは自分に対する使命だ」と引きつけて考える技のことである。(pp.32)
  • パッションとは、ネガティブな体験や不愉快な感情を、エネルギーの起爆剤に変えてしまう方法だ。(pp.32)
  • そして、ハイテンションとは、どんなときでも上機嫌で仕事に向かう力である。(pp.33)
これらが仕事の柱になり、よりよく働くために重要になるようだ。

特になるほどと思ったのが、不愉快な刺激を昇華することで仕事の情熱に転化させることができるという主張だった。そのときは、受難受難と呟いたり心の中で反芻し、最後に情熱と言って気持ちを切り替えることができるというものだった。これは、実際に働いていて、自分に不都合なことが起こったときに心の中で反芻してみると、やる気が湧いてきた気がした。

また、著者の仕事観がよく現れている部分あったので、そこを抜粋。
つまり、仕事というものは、自分に向いていることは何か、自分がやりたいことは何かなど、適性や才能を問い詰めてやるものではない。人に頼まれたり期待されて、それに全力で応えるのが健全なスタイルなのだと気づいたことが、私の大きな転機となった。
(pp.218)
よく仕事観を語る成功者は多くいるが、大抵はやりたいことをやれといった主張が多い。それに対して、著者の主張はどこか他力的な側面もある。やりたいことが何か分からないような状態では、やりたいことをやれという主張は重苦しく感じるが、著者のように考えられると結構気負わずによい仕事ができていくのかもしれないと思った。

著者の身体論を主軸に語られることも多いが、いろいろな偉人の本や体験談を引用することで説得力が増しているような気がする。例えば、松下幸之助、本田宗一郎、ドナルド・キーン、宮沢賢治、夏目漱石、矢沢永吉など幅広い。

本格的に働くようになって、仕事観や働く気持ちに火をつけたかった。一味違った啓発本だと思った。

読むべき人:
  • 意欲的に働きたい人
  • 受難が続いている人
  • これから就職活動をする人
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December 18, 2006

Excel2003マスターバイブル


Excel2003マスターバイブル

キーワード:
 C&R研究所、Excel、リファレンス、網羅性、入門書、使い方本
Excelの使い方本。かなり分厚く773ページもある。対応バージョンは2003。初版は2004年3月5日。価格は2800円+税。以下のような内容となっている。
  1. Excel2003の基礎知識
  2. データ入力
  3. データの編集
  4. データの装飾
  5. 表の体裁
  6. 数式の入力・編集
  7. 関数の入力・編集
  8. グラフ作成・修正
  9. 図形・イラストの作成・修正
  10. データベース機能と集計
  11. データの分析
  12. 印刷の実行
  13. ファイルの操作
  14. マクロ機能の活用
  15. Web機能の活用
  16. その他の便利機能
基礎的なデータ入力からピボットテーブルや統計機能を使ったデータ分析まで幅広い内容となっている。この本の特徴としては、分厚い割りに軽量で開きやすい製本となっている。紙質が他のものよりも違っている。また、内容的にはカラーで画面図などが大きくて見やすい。このような技術本では、1ページに2段組になっているものがある。それは1行に表示される文章が短くて個人的には読みにくく感じるが、これはそうではなく文章の1行が長いので割りと読みやすい。

ExcelなどのOffice製品はどちらかというと、使いながら各機能を覚えていくということが多いが、それではどうしても自己流になり効率が悪いときがある。そのためこのようは本でひと通り使い方を基礎から学んでみた。結構自分の知らない機能が多かった。以下それらの機能。
  • 表の1行をフォームを使って入力する
  • ドロップダウンリストを自分で設定する
  • ジャンプコマンド(Ctrl + G)
  • 条件付書式
  • 形式を選択して貼り付けの使い方
  • 印刷時のページ設定で複数ページにまたがる表に見出しをつける方法
  • 図のリンクの貼り付け機能
などなど。Excelをある程度使いこなしているつもりだったが、そこまでではなかった。結構便利な機能が用意されているんだなと思った。

巻末にはショートカット一覧が載っているが、全ては網羅されていない。結構このショートカットが重要であったりするので、そこはちょっと残念だ。なぜならExcelのショートカットを使いこなせるようになると、かなり作業効率がアップするし、何よりもマウスを使わずキーボードだけで操作できるようになると、かなりハッカーみたいでかっこよいから。

全ての機能を網羅的に説明している分、こういうときはこうすればよいといったサンプルが少なくなる。特に関数の章では、使用頻度の高いものしか紹介されていない。また、マクロの部分もマクロの使い方がメインとなっているので、便利なマクロのサンプルが少ない。それらは他の本で補うしかない。

全てを実際に試しながらやると、かなり時間がかかると思われる。それでも、1つ1つの機能を使いこなせるようになるという喜びが結構あった。

読むべき人:
  • Excelの基本的な使い方をひと通りマスターしたい人
  • カラーの技術書が好きな人
  • 軽い本が好きな人
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December 17, 2006

アフターダーク


アフターダーク

キーワード:
 村上春樹、夜、闇、睡眠、コンプレックス、三人称
村上春樹の小説。カバーよりあらすじを抜粋。
時計の針が深夜零時を指すほんの少し前、都会にあるファミレスで熱心に本を読んでいる女性がいた。フード付きパーカにブルージーンズという姿の彼女のもとに、ひとりの男性が近づいて声をかける。そして、同じ時刻、ある視線が、もう一人の若い女性をとらえる―。新しい小説世界に向かう、村上春樹の長編。
(カバーより抜粋)
講談社文庫の方で読了。確か、ハードカバーで出版された当時は、村上春樹が三人称に挑戦したものだというような書評が新聞に載っていたような気がする。まぁ、それは置いておいて、書評というよりは個人的な感想を述べる。

舞台は、深夜の繁華街での7時間の出来事である。主人公は19歳の少女で、モデルを持つ綺麗な姉を持つ。その主人公は姉のような華やかな世界とは違う生活を送ることにコンプレックを持っている。そこで、深夜のファミレスで読書をしながら時間をつぶしていると、姉の知人と出会い、そこから夜が明けるまでの間にいろいろなことが起こる。

内容はあまり詳しく示さないようにしよう。示しようにも、かなり不思議な感じの作品なので、詳細には示せない。

この作品は何よりも、従来作品と比べて文体がかなり変化しており、三人称というところに特徴がある。著者の代表作は大抵『僕』を視点とした一人称であり、『僕』の内面が分かったような分からないようなメタファーで綴られることが多い。しかし、この作品は神の視点としての『私たち』という存在が描かれている。『私たち』は登場人物に干渉することなくただ客観的に観察するだけの存在である。それが何なのかということは明確には示されてはいない。そして、文章が短めで常に現在形となっていることでより三人称を際立たせているようだ。しかし、会話の展開の仕方は、従来どおりの感じがした。

客観的な分析はさておき、主観的な感想では、村上春樹は幻想的な作品が得意だなと思った。まるで覚めない夢のような、それでいて現実とは大きく隔絶しているわけではなく、それとなく非現実的な出来事が現実的に起きているような世界を描写することに関しては。いつも村上春樹の作品を読むたびにそう思う。

今回は夜の闇をモチーフに描かれているけど、共感できる描写が多かったような気がした。特に、現実から隔絶してずっと眠りについていたいとうような部分など。その部分を読んでいたときに、あぁ、まさしく自分もそうだと思った。あとは、自信がなさそうな少女のコンプレックスのような部分にも共感できた。

村上春樹の一味違った作品を楽しむことができてよかった。とはいえ、これを面白いと断言できる人はそう多くはいないだろう。

読むべき人:
  • 村上春樹の小説が好きな人
  • 幻想的な小説が読みたい人
  • 夜が好きな人
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December 14, 2006

ライト、ついてますか―問題発見の人間学


ライト、ついてますか―問題発見の人間学

キーワード:
 ドナルド・C・ゴース、G.M.ワインバーグ、問題の本質、発見、挿話、視点を変える
コンピュータ技術者、コンサルタントである著者らによる、問題について考えるための本。以下のような内容となっている。
  1. 何が問題か?
  2. 問題は何なのか?
  3. 問題は本当のところ何か?
  4. それは誰の問題か?
  5. それはどこからきたか?
  6. われわれはそれをほんとうに解きたいか?
これらのことに関して、挿話を基に日常で起こるさまざまな問題の本質的なことは何かということをしめし、そこから教訓が示されている。例えば、タイトルになっている『ライト、ついてますか』は、「トンネルのかなたのあかり」という挿話が基になっている。内容はこうだ。

ある山中の観光スポットの近くにトンネルが開通した。トンネルの設計技師は、トンネル内で運転手がライトをつけて安全に走れるように、前方にトンネルがあるのでライトをつけてくださいという標識を出した。それにより、どの運転手もライトをつけるようにはなった。しかし、そのトンネル後のパーキングエリアで、ライトを消し忘れてつけっぱなしにしていた車のバッテリーがあがるという問題が発生した。そこで、どうすればこの問題を解決できるかということを設計技師が考えるという挿話。この話では、運転手、技師、警官たち、自動車連盟などと問題に関わるであろう登場人物の中で、誰の問題であるのかということを考える必要があるとある。最終的には、技師がトンネルの最後に『ライト、ついてますか?』と標識を出すだけで解決できたという話。

それぞれの話の途中や最後に、問題に関して本質的に的を射ている格言のようなものが多く出てくる。どれもなるほどと思うようなことが多い。いくつか抜粋してみる。
  • 問題とは、望まれた事柄と認識された事柄の間の相違である(pp.15)
  • 問題の正しい定義が得られたかどうかは決してわからない、問題が解けたあとでも(pp.43)
  • すべての解答は次の問題の出所(pp.53)
  • キミの問題理解をおじゃんにする原因を三つ考えられないうちは、キミはまだ問題を把握していない(pp.56)
  • 問題の出所はもっともしばしばわれわれ自身の中にある(pp.118)
どれも著者の経験則的なものから導かれているような気がする。これらはどれも自分の経験と照らし合わせてみると、そのとおりだと妙に納得してしまう。

ページ数も少なく、アメリカっぽい変な挿絵が多く入っており、エッセイのような感じで気軽に読める。しかし、訳があまりよろしくない。原文が想像できるような日本語になっている。1987年初版、56刷発行なのでかなり売れているようだ。そろそろ改訂版が出てもいいような気もする。

一応技術書の分類にしたが、これは別にコンピュータの話がよく出てくるような技術書ではない。問題を考える上でのヒントになる部分が多く含まれていて、普通のビジネスシーンでも応用できる良書だと思われる。Amazonでの評価もかなり高いようだし。この本を読んで、問題を多面的に捉えることができるようになった気がする。

読むべき人:
  • SE、プログラマーなどの技術者
  • コンサルタントのように問題解決を仕事とする人
  • 教訓的な話が好きな人
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December 10, 2006

三四郎


三四郎 (新潮文庫)

キーワード:
 夏目漱石、青春小説、大学生、翻弄
夏目漱石の作品。あらすじをカバーから抜粋。
熊本の高等学校を卒業して、東京の大学に入学した小川三四郎は、見る物聞く物の総てが目新しい世界の中で、自由気儘な都会の女性里見美禰子に出会い、彼女に強く惹かれてゆく・・・・・。青春の一時期において誰もが経験する、学問、友情、恋愛への不安や戸惑いを、三四郎の恋愛から失恋に至る過程の中に描いて「それから」「門」に続く三部作の序曲をなす作品である。
(カバーより抜粋)
夏目漱石の作品はあんまり読んだことがなかった。だから読んでみた。しかし、正直自分とは相性が悪いような気がした。何よりも、読んでいてもさっぱり頭に入ってこなかった。

頭に入ってこなかった理由はいろいろある。一つは漢字の使われかた。読めない漢字が文中にいくつかあると、流れが悪くなる。もう一つは、漱石の文体は、短い文の描写がすごく多いということ。これがどうも自分には合わなかった。その一つ一つを想像することができなかった。単純に、何度かに分けて読んだからだろうけど。

三四郎が恋焦がれる対象の美禰子はなんだか透明な感じがした。それだけ、前面にあまり描写されていないようで、三四郎を翻弄するおくゆかしさが感じられる。

三四郎と自分の年齢が近いから、今の時期に読むのがよいかと思ったが、もう何年かたった後のほうがすんなり読めるのかもしれない。

読むべき人:
  • 青春小説を読みたい人
  • 夏目漱石の作品を読みたい人
  • 明治時代の雰囲気を味わいたい人
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December 09, 2006

受験エリートがビジネスエリートになる


受験エリートがビジネスエリートになる―格差社会を勝ち抜く「超」勉強法

キーワード:
 和田秀樹、ビジネス、受験、仕事、方法論、エリート
精神科医、和田秀樹氏の本。世の中は格差社会であり、ビジネスにおいて勝ち組になるには、一流大学の入試を突破してきた受験エリートのほうが圧倒的に有利ですよという主張の本。まえがきの一番最初の部分を抜粋。
本書は、原則的に、大学受験で合格した際にはエリート、あるいは受験「勝ち組」と言われた人、具体的に言えば、旧帝大と言われる国立大学や東京工大、一橋大学などの単科大学(厳密な意味では単科大学ではないが)のトップ校、あるいは早慶や同志社大学のような私立の一番手校の卒業生を対象に書かれた本である。つまり、それに該当する人たちが、どのように自分の能力を引き出し、受験の「勝ち組」を世の中の「勝ち組」につなげていくかを考えるためのものだ。
(pp.3)
自分はこのような対象読者ではないが、仕事を進めていく上でのヒントとなるものが何か得られないかと思って読んでみた。

最初のほうで、格差社会の現状を軽く触れていて、その後ビジネス界で勝ち組になるには受験勉強をしっかりやってきたほうが有利だと主張されている。その理由として、難関入試を突破できるようになるために必要な能力は、ビジネスの世界で要求されているスキルに応用できるからのようだ。ビジネスの世界で仕事ができる人が持っている能力が以下のように挙げられている。
  1. 目標設定能力
  2. 問題処理・問題解決能力
  3. コミュニケーション能力(人間関係力)
  4. 記憶力
  5. アイデア力(発想力)
  6. タイムマネジメント能力
これらが、受験を通して間接的に身についてくるので、あとはそれらをビジネス上に応用するだけだとある。これはなるほどと思った。

特に、受験数学は暗記によって解法パターンをたくさんストックしておくことで成績は上がり、それによって問題解決能力が磨かれていくといったことが主張されている。それをビジネスで応用して売り上げの向上、新商品の開発、消費者動向の把握といった問題解決に応用できると示されている。

また、コミュニケーション能力に関してはIQよりEQを磨くべきだとある。つまり、他者との良好な関係を築いていくことができる能力により成功に必要な人脈ができていくようだ。受験エリートはEQが低いのではないかといったことが懸念されることの反論として、受験エリートは受験に対する不安やストレスに対処する能力も高いので、EQは高いだろうと主張されている。

他にも推論力が一番役に立つといったことや、常識を持ちつつ常識を疑うことで独創性をトレーニングできるといったことが示されている。

精神科医らしく、医学的な根拠を示しながら説明しているので説得力が増すように思われる。

結局成功者になるには、受験時や大学時、社会人になってからも常に勉強しなければならないということだと思った。その一番効率的な方法が、一流大学を卒業するということなのだろう。かといって、一流大学卒業ではないからといって、まったく成功できないものでもないとも思う。一流大学卒の人が持つコンピテンシーを自分なりに身につけていけばよいのではないかと思った。

やたらに受験崇拝的なのことが書かれているので、あまり受験によい思い出がない人は読まないほうがいいかもしれない。それでも、なぜ一流大学卒の人の方が仕事ができる人が多いのかということを知りたい場合にはよい本かもしれない。

読むべき人:
  • 難関大学出身の人
  • ビジネスで成功したい人
  • 受験勉強など意味がないと思っている人
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December 05, 2006

新平等社会―「希望格差」を超えて


新平等社会―「希望格差」を超えて

キーワード:
 山田昌弘、希望格差、格差社会、不平等、社会学、構造的閉塞感
希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』の著書がある、社会学者の本。『希望格差社会』が格差の現状を分析した本なのに対して、この本は、その現状を踏まえて具体的にどのように対処すればよいかということが主に書かれている。

希望格差がこの本のキーワードになるが、希望とはどのようなものかが分かる部分を以下に引用。
「希望とは努力が報われると思うと時に生じる、絶望は努力してもしなくても同じだと思う時に生じる」という社会心理学者、ランドルフ・ネッセの言葉をよく引用してる。自分の努力が、周りの人から評価される、将来評価されると期待されるとき、人々は希望をもって人生を生きていくことができるだろう。しかし、自分の日常生活で努力しても、しなくても同じだと思ったり、努力が無駄だったと思う機会が増えれば、絶望感が人生を支配するだろう。
(pp.123-124)
希望格差社会というのは、努力をしても報われる人と報われない人に分裂する社会のことで、社会システムの変化が原因のようだ。そして、その希望格差が根本的原因になり、フリーターと正社員の格差、高等教育を受けても必ずしも報われない格差、収入が多くないと結婚できない格差、また、結婚したとしても安定した生活を気づけるとは限らない格差などが出現してくる。この本は、それらの格差の根本的原因を分析しつつ、ではそこからどうすればよいのかといったことが示されている。

例えば、フリーターや派遣社員などの昇進や能力開発の機会がない「非正規雇用」の人々の支援では以下のようなことが提言されている。
  1. 生産性の低い職に就く期間を短くする
  2. 生産性の低い職の中で徐々に昇進できる道をつくる
  3. 生産性の高い職に就くための教育訓練の機会と「報い」を保証する
  4. 生産性の低い職を少なくし、生産性の高い職を増やす
これらの提言がどこまで効果が出るのかは正直分からない。そもそも、この格差構造は一面的ではなく、重層的な構造になっているので、これらを改革するのはかなり難しいのではないかと思う。また、日本はそこまでおかしな社会構造になっているんだとも思う。

最終的には、単純な格差が問題にならないような、希望格差が起こらない社会構造を作ることが重要だとある。

学術書らしく、統計結果を示しすために表やグラフが多く出てくる。ところどころで著者の私見が入るが、かなり客観的な分析なのではないかと思う。

確かに努力が報われる社会のほうが健全だとは思う。しかし、この本の本質は希望格差について論じられているが、何を持って努力というのかという部分についてはあまり書かれていない。時代や社会システムが変遷すると、過去に認められていた努力が現在では通用しないものとなる。例えば、いくら日本史などの暗記力が高くテストで高得点を取れるとしても、Googleなどの検索技術の出現により、いかに情報を引き出すことができるかということに価値が見出される世界では、記憶力などそこまで重宝されない。重要なのは、世の中の社会情勢を把握しつつ、ニーズに合った適切な努力をすることなのではないかと思った。つまり、無駄な努力をしないことが重要なのだと思う。

格差問題は、いろいろ考えされられることが多い。日本の複雑な社会構造を知るにはよい本だと思った。

読むべき人:
  • 格差問題に関心がある人
  • 最近努力が報われないと思っている人
  • 下流的な生活を送りたくない人
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December 03, 2006

レバレッジ・リーディング


レバレッジ・リーディング

キーワード:
 本田直之、読書、ビジネス書、投資、多読術、レバレッジ
ビジネスで成功するためには、読書こそが最高の投資対象であり、多く読めばよいという主張の本。うーん、とても線を引く部分が多く、どこを紹介すればよいか迷う。自分が漠然と思っていたことがすっきりまとめられている。

4章構成になっていて、最初の章で、ビジネスで成功するには大量にビジネス書を読むことが重要であると主張されている。2章では本の選び方でアマゾンを利用したり書店に行って選ぶときの注意点などが示されている。3章では、一日一冊ビジネス書を読むためには全て読む必要はなく、16%だけ把握すればOKと示されている。最後の章では、読んで終わりにするのではなく、本の重要な部分を自分で抜き出したメモを作り、それを常に見返すことでビジネス書に書いてあることを習得できるという内容。どれもなるほどと思うことが多かった。

世の中にはいろいろな読書論の本があるけれど、この本のようにビジネスで成功するという分野に絞ったものは今までなかった。その証拠に、読書は自分が成功するための投資活動と捉えるべきだとある。つまり、一冊1500円の本が将来的に100倍の15万円の価値を生み出しますよという考え。他の株などの投資なら損をすることが多いが、読書は勝つほうが圧倒的に多いようだ。そして、これこそが最強の投資であると示されている。

タイトルにあるレバレッジというのはてこの原理の「てこ」のことらしい。つまり少ない労力で大きな成果を生み出すことができるようになるには、先人の智恵である書籍を読んでそれを実践することだとある。これもなるほどと思った。

また、読書をすることで一流になれるということが示されている。その部分を抜粋。
練習をしない一流のプロスポーツ選手が存在しないように、読書をしない一流のビジネスパーソンもまた存在しないのです。
(pp.30)
これは、ビジネスパーソンにとっては、読書こそが本番前の練習に当たるということであり、これを実践していないということは練習しないでいきなり試合をするスポーツ選手のようなものだとある。なるほどと思った。また、一流の経営者や成功する人はみな例外なくかなりの読書家らしい。以下その部分を引用。
もちろん、「一流の経営者になったから本を読む」のではありません。彼らは無名の時代から本を読んできたからこそ成功できたのであり、そして、現在も読書を続けることで、一流であり続けているのです。
(pp.44)
ここもなるほどと思った。

後は読むためには、読む前に目的を持って読むこと、読書時間を事前に設定すること、習慣的に読書をするようにすること、線を引いたりページを折ったりしてぼろぼろになるまで使いこなすこと、読む価値のない本はすぐに捨てることといったことが示されている。これらは、いろいろな読書論にも書かれているようなことだった。

また、読んだ後に要点をメモしたものを持ち歩き、時間が空いたときに見返すことで読書後のフォローができ、これが重要だとある。書かれていることを実践できるまで何度も読み返すことが重要なようだ。ここは自分が弱い部分なので、少しは意識しよう。ある意味、このブログがその役割を果たしているようなものだけど。

今までいろいろな読書論の本を読んだけど、ビジネスに特化した読書論は結構新鮮だった。他の読書論は、小説などを対象とした教養のための読書などがあるが、これらは鑑賞を目的としているので、かなりスローリーディング的なものだった。しかし、この本のようにビジネスを目的とした場合は、効率重視でいかに多く読むかということに主眼を置かれている。目的によってこうも違うものかと思った。では、どっちを優先して読んでいくかといわれると、かなり悩むところで・・・。

このブログで書評した本の数は、この本を含めて118冊になる。一冊1500円のものが、15万円になるということは、単純計算で1700万円ほどのリターンになるようだ。それはいつになるかは分からないけど。自分が成功者になれば、これは証明されることになる。

かなり良書だと思った。成功者になりたい人はぜひ読もう。

読むべき人:
  • ビジネスで成功したい人
  • 金持ちになりたい人
  • 投資で勝ちたい人
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December 02, 2006

なぜあの人は落ち込まないのか


なぜあの人は落ち込まないのか―自分を強くする61の具体例

キーワード:
 中谷彰宏、落ち込む、バランス、精神力、経験談
中谷彰宏氏の著作。落ち込んでいるときに、どのように対処していくかということが著者の経験などから示されている。結構線を引く部分が多く、その部分をいくつか抜粋しておく。
落ち込まない方法は、「自分が悩んでいることは、たいしたことはない」と考えるようにして、自分の中に他人の目を持つことです。
(pp.58)
自分の落ち込みの原因を分析するには、客観的になる必要があるようだ。そこから解決策を見つけるとよいらしい。
 一番つらかったことと比較してみて、初めてそのことが本当につらいかどうかがわかります。
 (中略)
 本当にドン底の落ち込みを経験している人は、それから先はラクに生きていけるでしょう。
(pp.136-137)
この部分は、あぁ、そう考えればよいのかと思って気が楽になった。少し前は本当にドン底だと思えるような状態だったので、これからは多少辛いことでもなんとかやっていけるよなという自信がついたような気がする。

他にもストレスをどう対処するかといったことや、落ち込んでいるときは明るいふりをすることが重要だというようなことが示されている。また、ゴルフやボーリングなどのスポーツの例が示されていてわかりやすい。これも著者独特の文体で、そう簡単にまねできないようなものだと思う。

中谷氏の本は、理屈で分かるというよりも、感覚的に分かるというような感じがする。また、とてもやる気がわいてくる。もう何冊も読んだ。それでも全体の数パーセントに過ぎない。それほど著作が多い。

読むべき人:
  • 落ち込んでいる人
  • 元気を出したい人
  • 精神的にタフになりたい人
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