March 2007

March 22, 2007

スティル・ライフ


スティル・ライフ (中公文庫)

キーワード:
 池澤夏樹、科学、株、静謐、青春
池澤夏樹の作品。この作家の小説は読んだことがなかった。以下にあらすじをカバーから抜粋。
ある日、ぼくの前に佐々井が現れてから、ぼくの世界を見る視線は変わって行った。ぼくは彼が語る宇宙や微粒子の話に熱中する。佐々井が消えるように去ったあとも、ぼくは彼を、遥か彼方に光る微小な天体のように感じるのだ――科学と文学の新しい親和。清澄で緊張にみちた抒情性。しなやかな感性と端正な成熟が生みだした、世界に誇りうる美しい青春小説の誕生。
(カバーより抜粋)
『スティル・ライフ』のほかに『ヤー・チャイカ』という短編も収録されている。

『スティル・ライフ』の読後の印象は静謐に尽きる。海岸の景色や宇宙の情景がすんなりとイメージできる。自分もそこにいるかのように。

主人公のぼくにとって佐々井という人物は一回りも大きな、そして異質な存在なのだと思う。ぼくは佐々井の生き方に影響されていくのだと思う。佐々井は、タクシーで運べるほどのものしか家に持っておらず、身軽で、天体の写真を所有する自由な存在として描かれている。そして佐々井には金が必要になり、ぼくに株でもうけるように持ち掛ける。それから見えてくる景色が変わっていくようだ。

『ヤー・チャイカ』は「わたしはカモメ」という意味。女子高生とその父、ロシア人との交流を描いている。

著者は理系出身なので、地学、宇宙、システム的な描写も多く出てくる。それが文体に深みを持たせているような気がした。

静かに情景を思い浮かべられる環境で読むのがよいと思う。

読むべき人:
  • 静謐な作品が好きな人
  • 青春小説が好きな人
  • 科学的な薀蓄が好きな人
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March 21, 2007

あなたが年収1000万円稼げない理由。


あなたが年収1000万円稼げない理由。―給料氷河期を勝ち残るキャリア・デザイン

キーワード:
 田中和彦、キャリア、戦略、行動、自己責任
リクルート出身の著者が、仕事をしていく上でどのようにキャリアを築いていくべきかを論じた本。この本でビジネスカテゴリの本が50冊目となる。

以下のような内容となっている。
  1. 「誰でもいずれは年収1000万円」時代が終わり、「給料氷河期」へ
  2. 「あなたにしか頼めないと」と言われたことがあるか?
  3. 好きな世界が”ただの趣味”になっていないか?
  4. 会社にNOと言えるか?
  5. 自分自身を商品化できているか?
  6. 「夢は”いつか”かなえばいい」と思っていないか?
  7. 「横並びなら安心」だと思っていないか?
  8. お金に潔いか?
  9. 変化を味方につけらるか?
この本のタイトルにあるように、年収1000万円がひとつの大台の基準であるが、この1000万円に到達できる人はどのような人材なのかということが主に書いてある。

まず、はじめの章では、給料はどのように決まるのかということに関して、単純に需要と供給のバランスで決まると示されている。そこから常に今の会社だけで自分の価値を考えるべきではなく、会社から離れた自分の市場価値を意識するべきだとある。

また、企業にとっていなくてはならない人になることで年収があがるとある。そのためにはほかの人にはない「何か」秀でた能力なりスキルを持っていることが重要なようだ。自分の業界では当たり前のスキルでも異業界に行けば高く評価されるスキルもあるので、そういうチャンスもあると示されている。

2章では、自分の好きな趣味の世界を極めておくことで、さまざまな知識やスキルを複合させることで大きくキャリアアップできる可能性があると示されている。

5章では夢に納期を持つことの重要性が示されている。まず目標を持つこと。そしてそれを実現するように行動することが重要だとある。具体例として年3回海外旅行に行く人の例が示されている。年3回海外旅行に行くという目標を立て、営業での成果をしっかり出し、そして有給休暇を取得して必ず実行しているようだ。これだけのことをやるかやらないかで大きく違うようだ。

この本で主張されていることは以下の部分にまとめられている。その部分を抜粋。
「自分のキャリアは、自分で考え、自分で描き、自分で決めていこう。
 漫然と人任せに生きていると、それは、自分の人生を生きていることにはならない。
 主体的に人生を生きるためにも、キャリア・デザインというものを意識して、働こう」
(pp.188)
要は、会社は自分のキャリアを考えてくれるわけではないし、ただ漠然と働いていたところで年収はあがっていくことはないので、目標を持って働いていきなさいということなんだと思う。

けっこうそう考えればよいのかと思う部分があり、参考になった。特に、スキルの複合化は有効であることと夢を具体化するための行動をするべきだという部分が参考になった。スキルの複合化によってキャリアアップできるというのは、RPGみたいな発想だと思った。たとえばドラクエとかの転職システムみたいだと。戦士と魔法使いで魔法戦士に、武道家と僧侶でパラディンになれるとか。そんな考えは面白いなと思った。これを自分に当てはめてみれば、プログラミングなどのITスキルとこの読書量ということになるのだろうか。この複合能力で何ができるかはまだわからないけど。

著者の経験談やほかの人の成功例、失敗例などが紹介されていて、参考になる部分が多かった。また、キャリアを考える上で、『若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来』とあわせて読めばよいと思う。結局自分の納得のいく働き方は自分で模索して獲得していくしかないのだと思う。

読むべき人:
  • 年収1000万円に到達したい人
  • 年功序列組織に知る人
  • PRGが好きな人
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March 10, 2007

親より稼ぐネオニート


親より稼ぐネオニート―「脱・雇用」時代の若者たち

キーワード:
 今一生、ネオニート、不労所得、アフィリエイト、労働観
雑誌『SPA!』の記事を基に不労所得を得ながら生きるネオニートの実態を示している本。結構共感を得る部分が多かった。

最初のほうでは、若者の就業状況について解説されている。正社員として働きたくても働けず、フリーターやもしくはまったく働かず家で引きこもるニートになる人が多いという現状がある。しかしその一方、ニートであるような状況でありながら、株やネットのアフィリエイト、古本のせどりで月収100万円まで稼ぎ出すニートを超えたニート、ネオニートと呼ばれる人たちがいると示されている。

2章ではアフィリエイトをしながら南の島で暮らす女性が示されている。そこで特になるほどと思ったのは、アフィリエイトでどのように儲けているのかといったことだった。ここは単なる社会学的なレポートではなく、実用的な部分だった。それによると、単純にアクセス数を伸ばし、訪問者の欲しいものを広告に載せることであるとある。また、数ヶ月では利益が出ることはないので、少なくとも半年は継続しなければならないようだ。アフィリエイトを副業の傍らやるのではなく、本業として取り組むと月収20万円はいくとのことだ。なるほどなと思った。

後半は、現代社会を生きるための労働観のようなものが解説されている。曰く、何も会社員として安定した収入を得る生活だけが生き方ではなく、自由に自営業者として生きていくこともできるんだし、ニートやフリーターのままで正社員になることができない人たちは、絶望する必要はないということだった。自営業などで収入を得ていくことで自分なりに動労観が形成されていき、楽しく働いていける道もあるのだと示されている。

最後のほうでは、『下流社会』を書いた著者やエコノミストと本書の著者との座談会が載っている。ネオニートとして多くの所得を得て、そこから税金を多く納めることで国にも貢献できるはずなので、国はネオニートを支援するのもありなのではないかといった内容。

ネオニートという生き方もあるんだなと思った。自分は今正社員として働いているけど、いつ働けなくなるかわからないような状態にあるから、そうなったらこのブログのようにアフィリエイトやネットビジネスを立ち上げて自営業として生きていくこともできるのではないかと思った。しかし、著者も指摘しているように、まず些細なことから行動しなければだめだとあり、全ての人がこの本の人のように成功するとは思えない。それなりに運とかもともともの嗜好性や能力もあって高収入を得られるネオニートという存在になれるのだと思う。

今の若者の労働観などもわかって結構面白かった。また、アフィリエイトをやっている身としては、結構参考になる部分が多かった。

読むべき人:
  • 正社員になれない人
  • 自由に生きたい人
  • 労働に疑問を持つ人
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March 02, 2007

物語の役割


物語の役割

キーワード:
 小川洋子、物語、小説の意味、エッセイ
博士の愛した数式』の著作のある小説家、小川洋子による物語の意味について語られている本。物語についてどこかで講演したものが基になっている。以下のような3部構成。
  1. 物語の役割
  2. 物語が生まれる現場
  3. 物語と私
第1部は『博士の愛した数式』が生まれるまでの過程が述べられている。まずは数学者の藤原正彦氏との出会いから始まり、そこから数学者、数学者を取り巻く人間関係に興味を持ったことがきっかけだったようだ。また、物語というものは何もフィクションだけではなく、生きていくうちに起こる出来事を自分なりに受け入れる形で物語を作っているのだとあった。

第2部では著者がどのように小説を書いているのかがよくわかる。まずテーマが先にあるのではなく、些細な物事、人や情景のイメージが先にあり、そこから物語が肉付けされていくようだ。また、小説を書くということは過去を表現することであるというようなことも主張されている。

第3部ではエッセイ的に幼少のころの読書体験などが述べられている。

講演が基になっているので読みやすい。著者がどのように小説を書いたりし、物語というものを捉えているのかがわかって面白かった。これを読むと、著者の小説を何か読みたくなってきた。まだ味読なので。

本当は結構引用したい部分が多かった。しかし、これは読んでからのお楽しみということで。

読むべき人:
  • 物語について考えたい人
  • 小説家志望の人
  • 『博士の愛した数式』が好きな人
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