August 2011

August 31, 2011

サマー/タイム/トラベラー

サマー/タイム/トラベラー 1(ハヤカワ文庫 JA)サマー/タイム/トラベラー2 (ハヤカワ文庫JA)
サマー/タイム/トラベラー1 (ハヤカワ文庫JA)
サマー/タイム/トラベラー2 (ハヤカワ文庫JA)

キーワード:
 新城カズマ、ジュヴナイル、SF、TT、未来
生年不詳作家による青春SF小説。以下のようなあらすじとなっている。
あの奇妙な夏、未来に見放されたぼくらの町・辺里で、幼馴染みの悠有は初めて時空を跳んだ―たった3秒だけ未来へ。「お山」のお嬢様学校に幽閉された響子 の号令一下、コージンと涼とぼく、そして悠有の高校生5人組は、「時空間跳躍少女開発プロジェクト」を開始した。無数の時間SFを分析し、県道での跳躍実 験に夢中になったあの夏―けれど、それが悠有と過ごす最後の夏になろうとは、ぼくには知るよしもなかった。
(1巻のカバーの裏から抜粋)
“プロジェクト”を通して、自分の時空間跳躍能力に目覚めていく悠有。いっぽう、辺里の町では不穏な出来事が進行していた。続発する放火事件と、悠有に届 けられる謎の脅迫状―「モウ オマエニ 未来ハ ナイ」。涼、コージン、饗子それぞれの想いが交錯するなか、いつしかぼくは微かな不安に囚われていた―悠有はなぜ過去へ跳ばないのだろう?そして花火大会 の夜、彼女はぼくの前から姿を消した…。全2巻完結。
(2巻のカバーの裏から抜粋)
夏になるとSF小説か青春小説を読みたくなる、というようなことをTwitterでつぶやいていたら、この本をお薦めされた。ということで、夏が終わってしまう前に、読んでみた。

読了後の率直な感想は、面白かった!!1,2巻合計600ページちょいを平日仕事をはさんでも大体4日で読み終えられた。普通はこの分量であれば、2週間くらいかかるのだけどね。

テーマは、『時をかける少女』のようなタイムトラベルものであり、16歳の高校1年生の青春小説でもあり、若干ミステリっぽいところもある。舞台は辺里市という架空の街で、そこでたくさん事件が起こって、スーパー高校生5人の「時空間跳躍少女開発プロジェクト」の暑い夏が繰り広げられていく。

スーパー高校生5人を簡単に紹介しておこう。
  • 卓人(タクト)・・・偏差値70ほどの県で1番の高校に通うIQの高い高校生。子どものころから多言語教育を受けて、現在では英語、ラテン語を読める。ラテン語の要領でスペイン語版ボルヘスの短編集を読み、年間150冊は読書をする秀才。どこかシニカルで、頭が良いだけでは事件にうまく対応できないことを知る。悠有とは幼馴染で母と生き別れた父がいる。
  • 悠有(ゆう)・・・タクトと幼馴染で旅好きなおばさんが経営する喫茶店、「夏への扉」に住んでいる。ある日マラソン大会のゴール付近で世界をすべて置いていくような3秒先の世界に跳躍する能力が発動してしまう。割と天然タイプで何でも素直に受け入れる性格で、他のスーパー高校生よりも普通な感じ。少なくとも衒学的な議論にはあまり参加しない。タクトに受験技術を叩き込まれて同じ高校に通う。
  • 響子・・・タクトと悠有とは別の寄宿生のお嬢様高校に通う才女。一族が創設した学校に通っていて、この街から出ることを許されていない。そのため、お金にもならないようなさまざまな「プロジェクト」を考案しては仲間を巻き込んでいる。また、「倶楽部」を運営し、その参加者を街中でカメラやマイクで監視、記録している。響子語録、もしくは警句の「アエリスムス」がネット上で話題。街に出られないことから跳躍できる悠有に特別な思いいれがある。性格はツンデレ系。いや、デレはなかったか・・・。ちなみに、理想の恋人像はラスコーリニコフ。
  • ・・・街を仕切っているような名家の医者の息子。背の高いかっこいい人で、サッカー部と陸上部と理科学部の物理班とコンピュータ班をかけもちしているすごいやつ。性格は割りと温和だが、いつも響子の尻にしかれている。ハッキングが得意で街の政治的な腐敗を突き詰めている。また、医学部志望だが独自の宇宙論もよく語って、2ヶ月に1つシステム手帳を消費する。
  • コージン・・・タクトとは同級生ではあるが、幼いころの病気のため、2年ほど年齢が先輩にあたる。地元のヤクザをボコったとかスタンガン装備の工業高校の連中に襲われるけどすべて返り討ちにしたりとか、中学時代は寝てばかりでもいつも高得点だったとかいろいろと噂が耐えない街の有名人。あまり表には出さないが、かなり頭もよい。しかし、年上からか一歩引いた感じで他のメンバーの議論を客観的に見て、本質を一言示すタイプ。性格は義理人情的。
そんなこんなで「ありえそうもない」設定のキャラ5人組が悠有の時間跳躍能力をきっかけにひと夏を駆け巡る。

みんなそれぞれキャラの特性があって、頭がよくて、高校1年生の夏休みを必死に過ごしている感じがした。それぞれがディレッタント的、そして衒学的に自論を好き放題に語っている。宇宙論であったり、サリンジャーのライ麦畑を独自の解釈で訳すとか。まずは悠有の時間跳躍能力を調査するために、時間旅行系のフィクション作品を徹底的に洗い出し、それをマトリックスに分類したりしている。

そこでさまざまなSF小説や映画がたくさん示される。それを見ると、読者のSF度をうまい具合に刺激される。ほうほう、その作品が出るのかとか、そんな作品知らないとかいろいろ。悠有の喫茶店、兼住居も「夏への扉」という名前だし、そこで飼われている猫の名前なんて「ピート、もしくはペトロニウス/ジェニィ/ク・メル/チェシャ/ハミイー/アプロ」といろいろと呼ばれている始末だしね。この作品は定番だね。あとはところどころに他の作品の固有名詞やセリフが出てきたりする。ホビット荘とかアナキンとかゴーストがそうささやく、とか「猿の惑星」の解釈とか。もちろんお決まりの時間旅行映画の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」もちゃんと出てくる。読みながら出てくる作品一覧を作れば面白いのではないかと思ってたら、ちゃんと作っている人がいた。まぁ、ここのリストの5分の1も鑑賞してないねぇ。

そんな感じで、最初の50ページくらいまでは、漫画的なキャラの個性に戸惑い、鼻につく感じがするが、慣れてくると自分自身が少し頭がよくなった気分にさせてくれる。そしてどんどん物語の勢いに引き込まれていって、7月はじめから9月半ばまでの2ヶ月間の、決して広くない街にたくさんの要素が詰め込まれたひと夏が描写されている。

時間跳躍能力によって、タクトをはじめ周りの世界を置いていって未来に行ってしまう悠有に対して、911テロの後の2003年の舞台にいるタクトは未来に関して以下のように言っている。
「どうせ何もないぜ。未来なんか」
(中略)
「ろくなもんじゃない」
(中略)
「悲惨な事故とか、戦争とか、原発事故とか。そんなのばっかりでさ。地球温暖化と氷河期とが襲ってきて、もう大変。円もドルも暴落しちゃって。で、その後で年金が大崩壊する。あと、関東大震災パート2な。これは間違いない。東京には住まないのが懸命だね、絶対。
(2巻 pp.289-290)
2011年の現在、このセリフの半分は現実のものとなっている状態だね。中東のジャスミン革命が起きたり、それに連鎖してエジプトでデモが起きたり、911テロの首謀者が死んだり、東日本大震災が起きて津波で街が流されて、そんで今も原発問題が依然残っているし。そんなこんなで最近は超円高でドルがやばいって噂だしねぇ。タクトの予言的中って感じだね。ちなみに、この作品が書かれたのは2005年となる。

そして、悲観するタクトに悠有がほんとに?と問う。
 うそに決まっているだろ、悠有。未来はあるよ。たとえ、ろくなもんじゃなくても。そこには火星もある。星を渡る船もある。たくさんの悲惨とほんの少しの幸福、失敗した都市と綺麗な公園、汚れた海と深い夜空がある。
 ぼくらは押し流されてゆく、可能性という名の圧力によって。悠有は、ほんのちょっとだけ先回りをするだけなんだ。ぼくらはたぶん、何者かになる。コージンも、響子も、涼さえも。ぼくは?さて、それは分からない。でも、きっと何かになろうとするだろう。
(2巻 pp.291)
主人公のタクトは、大学進学に向けてこの街の何もかもを置いて東京に行くことを恐れている。その先に何もない未来が待ち受けているのでないかっていう不安があったりで。自分とは逆だなぁと思った。

地元には人も仕事も、可能性も未来もないと思って高校卒業後、飛び出した。anywhere but here(ここ以外の何処かへ)といった感じで。あれからもう10年近く経って、自分が求めていた未来が手に入ったのか!?と思い悩むときもある。何者かになれたのだろうか?とか、本当に地元は何もなかったのか?って。そんなことをこの作品を読みながら考えた。

物語の結末は結構賛否両論があるかもしれない。そこまで引っ張っておいて、そんな感じかよって思わせられるかもしれない。また、ところどころ、著者の知識レベルというか、ありあえない高校生たちの思考回路に置いていかれそうになることもあるし、SF作品の解釈など細かいところに突っ込みを入れたくなるかもしれない。けれど青春小説として、細かいことを気にせずに一気に勢いで読めばいいんではないかと思う。

ちなみに、以下に著者のインタビュー記事がある。恋愛要素とか思春期特有の内面的な葛藤があまりないかもしれないけど、爽快感抜群で夏を疑似体験するにはとても良い作品だと思う。なんとか8月31日のぎりぎり暦の上での夏が終わる前に読めてよかった。SFと青春小説という二つの要素のいいとこどりで、自分の読書欲を存分に満たしてくれた。

まだまだ暑い日が続くかもしれないけど、僕の中でいろんな意味で夏が終わった気がした。まだ夏を終わらせたくない場合は、この作品の世界観にどっぷりつかって、タイムトラベラーになることだね。



サマー/タイム/トラベラー (1)  ハヤカワ文庫 JA (745)
サマー/タイム/トラベラー (1) ハヤカワ文庫 JA (745)
著者:新城 カズマ
販売元:早川書房
(2005-06-16)
販売元:Amazon.co.jp

サマー/タイム/トラベラー2 (ハヤカワ文庫JA)
サマー/タイム/トラベラー2 (ハヤカワ文庫JA)
著者:新城 カズマ
販売元:早川書房
(2005-07-21)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • SF作品が好きな人
  • 暑い夏の青春小説を読みたい人
  • 未来について衒学的に考えてみたい人
Amazon.co.jpで『新城カズマ』の他の作品を見る

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August 27, 2011

プログラマが知るべき97のこと

プログラマが知るべき97のこと
プログラマが知るべき97のこと

キーワード:
 Kevlin Henney編、プログラマ、格言、達人、とびら
技術本を書いているような世界中で活躍するプログラマ97人+日本人プログラマ10人によるプログラミングに関するエッセイが示されている本。いわゆるオライリー本。なんだかんだ言ってこのブログではじめてのオライリー本だね。技術者としてその出現率の低さはどうかというのもあるけど・・・。

目次を見れば、とてもワクワクする内容を予期させるものではあるが、ちょっと多いので泣く泣く省略。本家のページを参照あれ。この目次を見て読みたさをそそられないプログラマはいないと思う。また、仕事でプログラミングをしたことがある人ならば、この本を読んでまったく参考にならない、勉強にならないとか共感する部分がないということはないのではないかと思う。もしそうなら、もう達人の領域をはるかに超えているか、プログラマとして終わっているとしか言いようがない。それほどたくさん線を引いたし、共感する部分も多かったし、勉強になった。これは間違いなくいい本だね。

本当は線を引いた部分を一つ一つ示しておきたいのだけど、あまりにも多いので本当に厳選したものを示す。それらのピックアップの観点は、今後自分がプログラマとして成長していくために、現状で欠けていると思われる部分となる。

まずはソフトウェアデベロッパ、コンサルタント、メンターの肩書きを持つクリント・シャンク氏の『学び続ける姿勢』から。ソフトウェア開発業で市場競争力を維持するには学び続けるしかないとある。学び続けなければ恐竜のように滅びていくと。以下最後の部分を抜粋。
 映画『マトリックス』のネオのように、必要な情報があれば即時に脳にダウンロードするような能力が私たちにあればいいのですが、あいにくそんな能力はありません。時間をかけ、努力して学ぶしかないのです。とはいえ、起きている時間のすべてを学ぶことに向けることは不可能だし、そんな必要はありません。そのほんの一部でも、たとえば週に1回1時間でも、何もしないよりはずっと良いでしょう。人間には日々の業務とは関係ないことをする時があってもいいし、むしろそうあるべきでしょう。
 技術はすごい速さで変化していきます。学ばなければ置いていかれるのは確実です。
(pp.37)
仕事をし始めてからを振り返ってみると、あまりにも技術習得に関しては不勉強だったなぁと反省した。まぁ、いろいろと迷い、悩みながら来てしまったので仕事どころじゃなくてこんな読書ブログを始めてしまったというのもあるけど。他の分野の本ばかり読んできたけど、それがまったく役に立たないわけではないしね。読解力とかプログラミングにとても重要だしね。今後はもうちょっと技術習得に注力していく必要がある。

また、次はC#、アジャイルソフトウェア開発の専門家でもあるジョン・ジャガー氏の『1万時間の訓練』から抜粋。
 専門的な技術や知識は、ゆっくりと徐々に身につくものです。1万時間が経過した途端、急に身につく、というわけではありません。それでも、ともかく1間時間やる、ということが大切なのです。ただ1万時間と言ってもそれは膨大な時間です。週に20時間なら10年かかることになります。「1万時間努力したはいいけれど、結果、自分にはエキスパートになる素養がないとわかるだけかもしれない」そう心配する人はいるでしょう。そんな心配はいりません。エキスパートには必ずなれます。何かに秀でた人間になるかどうかは、ほぼ、自分がなろうとするかどうかだけで決まるのです。すべてはあなたの意思次第なのです。
(pp.44-45)
1万時間トレーニングをして習熟する、というのは以下の本に詳しく示されている。仕事の総稼働時間だけならもう1万時間に達しているくらいだけど、純粋にプログラミングとなると大体大学生のころからやって、多く見積もってもせいぜい4,000時間くらいなんだよね。

プログラマとして自分は向いていないのではないかと思い悩むときは大学生のときから常にあったけど、まずは1万時間積み上げろ!!ということなのだと思う。継続は力なり、は真で、続けているうちにそれが自分の才能となって武器となるんだよ、と思い込みながらまだまだこれからもがんばろうと思う。まずはもっと技術勉強とかプログラミングをやらなければだけど。あと6,000時間修行だ!!

また、生命維持システム、国際プロジェクト、フレームワークなどの多種多様な経験を持つ、クラウス・マルカルド氏の『いろいろな言葉を学ぶ』から以下抜粋。
 プログラマにとって、抽象度の異なる複数の言語を学ぶことは重要です。1種類の言語だけでは、中には非常に表現することが困難な概念があります。優秀なプログラマなら、日々の業務をこなす以外に、自分の時間を割いて別の言語を学ぶ努力をするでしょう。業務で使うものとは目的が異なり、違った概念の表現に適した言語を学ぶのです。この努力は、いつか必ず報われるはずです。
(pp.96)
今の自分にはこれが足りないなぁと思う。仕事で使う以外の言語をプライベートで学ぶことはあまりなかった。ちょっと入門書を読んで終わりというのばかりだった。まぁ、プログラミング言語の枠以外を含めていいのなら、ここ1年半くらいは必死で英語を習得していたのだけど。あとは、日々読書して日本語による読解能力を高めていたのだと言い訳してみる(笑)。でも、読書量が多い人、読解力が高い人は新言語習得が速いと思うよ。たぶんね。

ちなみに今まで触れてきた言語に関して示すと、最初のプログラミング言語は大学1年の講義のときにScheme、その後Cをがっつり、そんでPHP+MySQLでWeb系、社会人の研修でJavaちょっと、仕事でPL/SQL、T-SQL、VB.NETちょっと、そんで今は3年ほどどっぷりVBAという変遷。オブジェクト指向系のものをプライベートでしっかり学んでいこうかと思う。とりあえず自分の本業にも関係してきそうなC#あたりを習得しようと思う。

最後にプログラミングの講師でもあり、メンターでもあるピート・グットリフ氏の「よいプログラマになるには」からなるほどと思った部分。
 ここに書いてあることに興味を持ち、最後まで読んだ人はおそらく、プログラミングが好きで、良いプログラマになりたいという熱意を持った人でしょう。是非これからもプログラミングを楽しんで欲しいと思います。難しい問題を見事解決できるプログラム、自ら誇りに思えるプログラムを書きましょう。
(pp.183)
この本を読む前は、オライリー本ということもあり、気後れしていたけど、実際に読んで見ると難しくなかったし、割と読みやすかった。そして毎朝の通勤時間に少しずつ読み進めて、最後まで読めた。読みながらだんだんワクワクしている自分がいたのに気付いた。今まで本業としてIT技術者を続けていこうか迷っていたけど、なんだかまだまだやれる気がした。まだプログラミングを楽しめる、もっと挑戦し続けられると再認識できた。それくらい自分のキャリアを変えるかもしれない良書になるものかもしれない。

この本の中では他の本にも言及されている。一番言及されていると思われるのは以下だね。これもプログラマ必読書だね。

本書を読んで、今後やるべきことを簡単に以下に示す。
  • 技術本をもっと読み、週1回くらいブログに更新できるようにする
  • C#プログラミングをプライベートでも実践する
  • 問答無用で1万時間プログラミングの修行をする!!
ということで、年次が変わる9月から本気出す!!www



プログラマが知るべき97のこと
プログラマが知るべき97のこと
販売元:オライリージャパン
(2010-12-18)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • プロプログラマになりたい人
  • プログラマとして向いていないと思っている人
  • プログラミングで修行したい人
Amazon.co.jpで『オライリー』の他の本を見る

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August 21, 2011

僕の好きな人が、よく眠れますように

僕の好きな人が、よく眠れますように (角川文庫)
僕の好きな人が、よく眠れますように (角川文庫)

キーワード:
 中村航、大学院生、不倫、バカップル、すきま
中村航という作家の大学院生の不倫恋愛小説。カバーの裏からあらすじを抜粋。
「こんなに人を好きになったのは生まれて初めて」。東京の理系大学で研究を続ける大学院生の僕の前に、運命の人が現れた。春、北海道からゲスト研究員でやって来た斉藤恵―めぐ。だが直後の懇親会で、彼女はある事情から誰ともつきあえないことを知る。やがて日夜研究を続けて一緒に過ごすうちに、僕はめぐへの思いを募らせ、遂に許されない関係に踏み出してしまった。お互いに幸福と不安を噛みしめる2人の恋の行方は。
(カバーの裏から抜粋)
この記事タイトルを見たとき、君はきっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。でも、これは僕のことではないんだ。小説のタイトルなんだ。僕自身も帰省中に地元の大型書店でまんまとタイトルに釣られて買って読んでみたんだ。あらすじは、一言で示すとこうだ。4月に大学院2年生になった「僕」の元に、北海道から既婚の大学院1年生のめぐがやってくる。春にあった懇親会のその日から惹かれあって、「僕」のほうから抑えきれない気持ちから好きだと言ってしまう。それから、お互いを確かめ合うように1年中好きだと言い合っている。これから待ち受けている現実に目を背けるようにも。

正直なんでこの作品がAmazonで評価が高いのか感覚的に分からなかった。恋愛小説だからダメなのか、それとも単にこの作品に合わなかったからだろうか、もしくは、不倫がテーマで現実離れしていて、もっと現実を見ようよと突っ込みたくなったからだろうか?

でもお互いはたから見ればバカップルのように好き好きと言い合えるのはある意味羨ましくも思うけど、めぐが北海道に残してきた夫のことはどうするのだろうと激しく気になった。夫の立場ないなぁと思った。ほとんど空気みたいな扱いだったし。夫とのやり取りの末、これからのふたりの関係に決着をつけて欲しかったのだけど、そこまでの描写はなく物語が終わっている。

あまりこの作品に共感できなかったので、僕は恋愛小説を読むことすら向いていないのではないかと不安になってしまった。もうちょっと若いときに読めば違ったのかもしれないけどね。でも主人公の「僕」とめぐの会話のやりとりはなんだかほほえましい感じがした。

ここ1週間は夏休みだというのに、若干風邪気味で毎日眠りながら咳き込んでいた。わき腹が筋肉痛かつとても浅い眠りで、うなされてもいた。
 ―僕の好きな人が、よく眠れますように。いつの日も、これからもどんなことがあっても、健やかに眠れますように。
(pp.220)
今日はよく眠れるといいなぁ。そんなこんなで短い夏休みは今日で終わり。もっといろいろ読書したかったのだけど、全然思うように読めず。そして、また明日から現実的な仕事へ。



僕の好きな人が、よく眠れますように (角川文庫)
僕の好きな人が、よく眠れますように (角川文庫)
著者:中村 航
販売元:角川書店(角川グループパブリッシング)
(2011-01-25)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 恋愛中の人
  • 自分の感受性を試してみたい人
  • 現実的に生きていきたい人
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August 20, 2011

ぶっちぎり理論38―落ちこぼれでも3秒で社内エースに変わる!―

ぶっちぎり理論38―落ちこぼれでも3秒で社内エースに変わる!―
ぶっちぎり理論38―落ちこぼれでも3秒で社内エースに変わる!―

キーワード:
 後田良輔、マナー、一般常識、気配り、モテ
広告代理店で副部長を務める著者によって、ビジネスにおけるささいなことで失敗しないための具体的なノウハウが38の理論として示されている本。目次は省略。本書は83年会同志、督促OLさん経由で頂いた。ありがとうございます。著者は中山美穂と結婚したいという超不順な動機でなんとか一流の広告代理店に入社したのはよかったが、仕事が全然できず、損害を出したりで失敗続きで先輩、後輩、はてはお客さんからもダメ社員の烙印を押される。

それらの原因は広告ビジネススキル、学力、知識が足りなかったことではなく、「気配り」や「心遣い」、「配慮」、「やさしさ」が足りなかったからと気付く。さらにうつ状態になるようなどん底から抜け出すことができたのは、以下の3つのルールを設けたからとある。
  • ルール1:ビジネスマナーなど、「できるのが当たり前のこと」で絶対に失敗しない
  • ルール2:目上の人や先輩、お客様から気に入ってもらえる人間になる
  • ルール3:「人を喜ばせる」だけではなく「自分も喜べる」ような行動をとる
そしてこの3つのルールから、つまらない失敗をして自分の評価を下げないために、超具体的なところまで気配りを限定したものが著者独自の38の理論として示されている。

38の理論のネーミングが面白いので、いつもなら全部は列挙しないのだけど、全部示しておく。そして、すでに自分も大体できているなといえるものは緑、まだできていない、これはぜひ実践したいと思うものを赤で示しておく。
  1. 赤ちゃん肌理論
  2. 大波小波理論
  3. 郷ひろみ理論
  4. 20メートル手前理論
  5. ンフ理論
  6. バタバタ理論
  7. 切符奉行理論
  8. どうぞ理論
  9. 三角形理論
  10. やまびこ理論
  11. ウォッチマン理論
  12. ビッグノートメモ理論
  13. 倍倍理論
  14. 根回し理論
  15. トイレ奉行理論
  16. 支払い645理論
  17. つむじ理論
  18. 送りバント理論
  19. 皇室御用達理論
  20. 缶コーヒーおごり理論
  21. 逆締切り理論
  22. その場でアマゾン理論
  23. フィードバック理論
  24. お父さん、お母さん、ありがとう理論
  25. 8時50分理論
  26. 家族構成理論
  27. お醤油の達人理論
  28. ドラフト1位理論
  29. 逆チョコ理論
  30. 拝む理論
  31. 無礼スイッチ理論
  32. 胸ハリハリ理論
  33. 眉間理論
  34. 犬の散歩理論
  35. 名刺専用座布団理論
  36. 中づり理論
  37. 地平線理論
  38. 地雷撤去理論
すべて解説はできないので、いくつかは以下のダイヤモンド社の記事を参考にしてもらいたい。まず、自分ができていると思う緑色で示した、理論をいくつか解説。「支払い645理論」は、コンパやデートの支払いは、男性6:女性:4(上限5000円)の割合で払うと良いらしく、得られる効果は、女性の心理的負担を軽くでき、好印象を残せるというものらしい。これは最近飲み会(という名の合コン!?)で幹事をやっているときに結構意識する。自分が結果的に数千円損することになっても、計算できない人のふりをして(あ、実際に酔うとできませんww)きりのいい数字で押さえて女性分は少なくしている。効果を実感できているかは・・・、これからに期待しようww

そんで飲み会ネタ関連で「お醤油の達人理論」は、会食の席では、配膳に徹し、刺身醤油を小皿に入れて、人数分用意し、配るとよいらしく、得られる効果は「気が聞く人」であることを表現でき、「先読み力」を伝えられ、信頼関係が育まれる、というものらしい。想定する状況は、お客さん先との接待などの会食で、このような小さな気配りをすることで、経営者クラスの人から褒められるようになるらしい。まぁ、これは合コンでも応用可能だね。

次は自分が全然できていないもの、もしくはまったく知らなかったもので、ぜひやってみようと思うものを示す。

まずは、「ンフ理論」で。これは外国人と話すときは、相手の話がわかってもわからなくても、「ンフ」「アハ」と相槌を打つとよいらしく、効果は英語力ゼロでも、外国人と「5分間」いい感じになれるというものらしい。これにより、著者はTOEIC235点の英語力で外国人相手でも、数千万円の大口取引を受注できたらしい。これはぜひ自分も実践したい。

また、「その場でアマゾン理論」では、信頼できる人物から商品やサービスを勧められたら、その場で購入するとよいらしい。効果は、よい商品(情報)がすぐに手に入り、「自分の情報を大切に扱ってくれる」ことを印象付けられるようだ。これは全然できてないなぁと思った。

読書ブログをやっているような立場なので、よくお勧め本とか教えられたりする。けれど、メモしたり、せいぜいAmazonのほしいものリストに入れるけど、買うということまではなかった。結局それで、その人のお勧めがなんだったのか忘れてしまったりして、チャンスを失っていることにもなる。もちろん、買ったらぜひ読むべきで。

ということで、「その場でアマゾン理論」の効果を4倍に高める「フィードバック理論」がある。これは、人からいただいた情報や行為には敬意を示し、早めにきちんと結果報告するとよいらしく、効果として、有益な情報を引き出すことができ、その後も相手とつながることができるようだ。これがけっこう実践しようとすると難しい。

お勧めが必ずしも自分の興味関心を引くものではないことが多い。しかし、そう感じてもすぐに実践できるかどうかで相手に対する印象はずいぶん違うものになってくるのだと思う。また、実際に興味がなくても試してみると、新たな発見や気付きが得られるかもしれないので、最近は人のアドバイスや情報をあまり深く考えずに素直に受け入れて実践していることにしている。

お勧め本はすぐに買って読む、お勧めのお店はなるべく早く行くとかね。本書も頂き物だから、普段は献本拒否だけど、例外的にフィードバックとしてこのように記事を書いた。

他にも理論を紹介したいのだけど、さすがに紹介しきれない。どれも著者の実体験から導き出されたもので、難しく考えずにまねするだけでよい。また、どれもイラストつきで面白おかしく読める。

全体的な内容としては、社会人としてある程度当たり前だよね?ということが多い。しかし、その当たり前のことをただ知っているのと、実際に実践して成果を出しているのでは天と地ほどの差がある。仕事をするときのちょっとした気配り、ちゃんとできている?自分本位になってない?そんな感じで少し振り返ってみるにはよい。

また、著者は新規で飛び込み営業をするようにいろんな人と接する仕事で、そこから38の理論が導かれている。自分はまだ一等兵レベルのSEで基本的にお客さんと接する機会があまりないので、上記全ての理論がそのまま使えるということはないけど、参考になる部分が多かった。新入社員や営業を仕事としている人にかなり有益な内容かなと思う。

著者の失敗体験が面白おかしく示されていて好感が持てた。いかに女性にモテるかを意識したKAH(こんなの はじめて ありがとう)理論とかも面白かった。以下にその理論の著者によるyoutube動画を示す。



実際にやるかどうかは・・・でも夏場は半袖着てたら「おねだり腕時計」できないwww(;´Д`)

本書の全体的なデザインもよく読みやすい。理論のネーミングもよく、ぜひ読んで実行してみるとよい。



ぶっちぎり理論38―落ちこぼれでも3秒で社内エースに変わる!―
ぶっちぎり理論38―落ちこぼれでも3秒で社内エースに変わる!―
著者:後田 良輔
販売元:ダイヤモンド社
(2011-07-29)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 営業職の人
  • 現状でダメ社員の人
  • 女性にモテたい人(笑)
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August 19, 2011

第四間氷期

第四間氷期 (新潮文庫)
第四間氷期 (新潮文庫)

キーワード:
 安部公房、未来、予言、SF、断絶
幻想的作家の異色SF作品。以下のようなあらすじとなっている。
現在にとって未来とは何か?文明の行きつく先にあらわれる未来は天国か地獄か?万能の電子頭脳に平凡な中年男の未来を予言させようとしたことに端を発して事態は急転直下、つぎつぎと意外な方向へ展開してゆき、やがて機械は人類の苛酷な未来を語りだすのであった…。薔薇色の未来を盲信して現在に安住しているものを痛烈に告発し、衝撃へと投げやる異色のSF長編。
(カバーの裏から抜粋)
この作品は実に面白かった。久しぶりに純粋に物語に没頭して、読了後になんとも言えない達成感と著者の作品特有の後味の悪さみたいなものを体感した。約50年ほど前に書かれた作品なのだけど、よくも半世紀前にここまでのものを書けるものだなと感嘆した。

この作品は自分の想像の斜め上を行く、ぶっ飛んだ内容であり、ネタばれすると面白さが半減してしまう。まぁ、ネタばれというほどのどんでん返しがあるわけではないのだけど、カバーの裏のあらすじ程度の予備知識だけで先入観なしで読んだほうが確実に面白い。最初はSF系サスペンスなのだと思っていたら、最後は全然違った。

主人公は妻子持ちの40代の政府系研究所の研究員で、肩書きはプログラマーである。扱う対象は今で言うところのスパコンのシュミレーターである。予言機械、モスクワ1号。それが対象の名前。この予言機械に雇用状況や次期総選挙の予想など政治に影響が出ないような予言のテストをすることになった。そこで偶然街で見かけた男の未来を予言させることになるが、その男が何者かに殺され、さらにその情婦までも死に至る。

主人公とその助手は死んだ男の肉体を手にいれ、その肉体の情報を予言機械に読み取らせ、人格を予言機械の中で再生することに成功し、そこから事件の真相を追うことになる。自分たちに嫌疑がかけられるのを逃れるために奔走している間、どこからともなく脅迫電話がかかり、主人公は殺し屋に狙われ、妊娠3週目の妻が何者かの組織によって堕胎させられる。主人公は、その鍵が別の研究所で進められている水棲犬にあると助手にほのめかされ、それを見に行く。

次第に自分自身が作り出した予言機械の描き出す未来に主人公は翻弄され、最後はまったく予想もしない展開になっていった。

この作品のテーマ性などはAmazonのレビューを見れば何となく分かると思う。自分はあまりこの作品のテーマ性をうまくここでは書けないので、この作品に似たものを示しておくことにする。

最初はサイバーパンク的なものだなと思った。徐々に攻殻機動隊を想起した。サスペンス要素が強く、どんどん続きが気になって物語を読み進めていくと、今度は手塚治虫的なSF作品を思い出した。どの作品かはあえて示さないけど、なんだか似たものを感じた。

見たこともない世界観をまるで見てきたかのように書かれている文章力は抜群なのではないかと思う。医学部卒で数学的なものにも造詣がある著者なので、生物の変態状況や予言機械の変数や函数(本文中の表記に習った)などの入出力的なもの割とイメージしやすく描かれている。その文体が実に精緻で、主人公が翻弄されていく心理描写もすばらしい。

物語を読む意義として、不条理な出来事が起こったときの対処法を学ぶという側面もあるが、このようなSF作品を読むことで、自分の発想力を飛躍させるということも期待できるのではないかと思う。特にプログラミングなど、ただの仕様をコードに落とすだけの作業ではなく、アート的に、もしくはまったく新しいサービスを展開させるにはこのような発想の飛躍を日ごろから鍛えておくのが良いのではないかと思う。その発想力を鍛えるのが優れていてかつ自分の想像力をはるかに超えるSF作品なのではないかと思う。

主人公は日本でも数えるほどしかいないプログラマーでプログラミングについて以下のように示している。
 プログラミングとは、要するに質的な現実を、量的な現実に還元してやる操作である―
(pp.159)
また、安部公房作品で過去に取り上げたものは以下となる。18歳のときに『砂の女 (新潮文庫)』を読んでからというもの、安部公房作品が好きで定期的に読みたくなってくる。大体それが夏だったりする。

夏休みに異次元に誘ってくれるSF小説を読みたかった。本作品はその要求を存分に満たしてくれた。本当に面白い。間違いなく今まで読んだ安部公房作品のベスト3に入る作品だと自信を持って言える。300ページほどの分量だが、たぶん一気に読めると思う。



第四間氷期 (新潮文庫)
第四間氷期 (新潮文庫)
著者:安部 公房
販売元:新潮社
(1970-11)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • プログラマーの人
  • 未来とは何か?を考えたい人
  • 自分の想像力を試して見たい人
Amazon.co.jpで『安部公房』の他の作品を見る

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August 17, 2011

物語が生きる力を育てる

物語が生きる力を育てる
物語が生きる力を育てる

キーワード:
 脇明子、物語、絵本、児童文学、生きる力
比較文学が専門の著者によって、子どもたちにとって物語がなぜ重要か?が示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 昔話の不思議な力
  2. 第2章 昔話のメッセージ
  3. 第3章 昔話から物語へ
  4. 第4章 感情体験の大切さ
  5. 第5章 物語で味わう自然
  6. 第6章 ゆっくりと、心にしみこむように
  7. 第7章 願いがかなうことと成長すること
  8. 第8章 鳥の目と虫の心
(目次から抜粋)
この本は松丸本舗の『本人(ほんびと)』コーナーで発見した。本の読み方とか読書論が置かれている本棚。最近自分自身は物語に引き寄せられるのはなぜか?そして、それは生きていく上でどういう意義があるのか?と考えていたので、内容をあまり確認せずにタイトル買いした。本書は、小説ではなく、神話や伝記、御伽噺といった物語に焦点が当てられている。物語には良質なものからダメなもの、毒になるものまであるので、子どもの読書は、何でも与えればよいというのではなく、適切に提供することが重要と示されている。そして、古今東西の絵本、児童文学が多く挙げられており、それらに対する子どもへの影響が解説されている。

内容をよく見ないで買ったので、示されている内容はどちらかというと学校の先生や子どもを持つ親向けなのではないかなと思った。まぁ、そこは大人になった自分自身に照らし合わせながら読んだ。

良質な絵本で得られるものがいろいろと示されている。例えば、『不快感情の体験と物語の役割』では、怒り、憎しみ、妬み、悲しみといった感情を増幅したり破壊的な行動に走ってしまわないようにするには、幼いうちから年長者相手にうまく手助けしながらそのような不快感情を処理するべきとある。そして、優れた物語でそのような不快感情を追体験することでその方法を学べるとある。以下その部分を抜粋。
優れた児童文学のなかには、子どもの心のなかで起こっていることがいきいきと描かれていて、感情移入しながらそれを読んでいると、自然にさまざまな不快感情を味わうことになるものがたくさんあります。もちろん物語での体験は実体験には及びませんが、不快感情の体験にかぎっては、物語で味わうほうがいい部分も多いことがわかってきました。まず言えるのは、子どもにいろんな不快感情をわざわざ体験させるわけにはいかないけれど、物語なら多様な体験ができる、ということです。大切な人を亡くした悲しみなどは、現実に体験しないですめばそれに越したことはありませんが、物語のなかでならそういうことにだって出あえます。もうひとつ言えるのは、現実につらい状況に陥ってしまうと、そこからいい形で抜け出せるとはかぎらないけれども、ちゃんとした物語なら納得できる形で抜け出せて、しかもその体験が意味のあることだったと感じることもできる、ということです。そんな物語に出あっていれば、現実に似たような出来事にぶつかったとき、たとえ対処の仕方の参考にはならないとしても、「いつかは抜け出せる」という希望を持つ助けくらいにはなるはずです。
(pp.84-85)
そして、そのような不快感情の体験をさせてくれるよい作品としていくつか挙げられている。それらを恣意的に一部以下に列挙。読んだことのあると思われるのは、「あーんあん」と「ぐるんぱのようちえん」くらいか。内容はさっぱり覚えてないけど、確か読んだ気がする。「ラチとらいおん」はよく本屋で見かけるので気にはなっている。

先ほど引用した部分は、子どもだけに限らず、大人が物語を読むべき理由にもなる。自分の内面が消化しきれない感情に覆われていると、どうにもならなくなってくることがある。そういうとき、優れた物語に没頭し、主人公に共感し、それなりに長い時間をかけて紐解き、結末を迎えてカタルシスを得る必要がある。このような過程で、やりきれない感情がちゃんと消化(もしくは昇華)される。

他にも現実に襲い掛かってくる不条理に備えるために、物語で疑似体験しておくというのもよい。もしくは、すでにそれが身に降りかかってきたのなら、そこから抜け出すためのヒントを得たり、精神的に強くなったり、自分の未来に希望を抱くことができる。だから生きていく上で、大人になってからも物語が必要で。

あと「速読という落とし穴」に物語を速読することの弊害が以下のように示されていた。
 そんなふうに筋だけを追う読書では、情景や心情を想像してみる暇などありませんから、想像力は育ちません。出来事のつながりを意識して、なるほどと納得したり、先を予想してみたりする余裕もありませんから、思考力も育ちません。なるべく短時間で読み終え、終わったらさっさと忘れて次の本を読むわけですから、記憶力も育ちません。想像力を働かさなければ、感情体験や五感体験はできませんし、ましてや「心の居場所」が見つかるはずはありません。さらに問題なのは、「何がどうしてどうなった」という大筋だけを拾っていたら、細部までしっかりと書かれ、ちゃんと読めば深い感情体験や五感体験ができるような作品も、矛盾だらけの薄っぺらな作品も、区別がつきにくいということです。それどころか、たとえ矛盾だらけでも、出来事のめりはりがはっきりしているほうが、筋が拾いやすくていい、ということにもなりかねません。
(pp.124)
対象は児童なのだけど、これは大人になっても言えることかなと思う。もちろん、ビジネス書とか他の分野の本であれば、必要に応じて速読して拾い読みするとよいときもある。けれど、小説などの物語に関しては速読すべきではないかなと思う。

物語に没入して、それを自分のものとするにはある程度の時間が必要じゃないかと思う。筋を追うだけならもちろん速読すればいいのだけど、情景を想像して、セリフ一つ一つに共感しながら読むと、時間がどうしてもかかる。しかし、そのかかった時間分だけ、主人公の体験を疑似体験し、それだけその物語を通して長く考えた、と言えるのではないかと思う。その積み重ねが自分の内面的なものを耕していってくれて、自分にとっての特別な物語になるのだと思う。

もちろん、推理小説とか面白い作品だとどんどん引き込まれてページが一気に進んで、結果的に速く読み終えてしまった!!ということはときどきある。なので、情景描写が難しい、古典文学作品とか良いかと思う。じっくり時間をかけて主人公を通して長く考えたい場合には。とはいえ、作品によっては、1ページ読むのに5分かかる場合もあって、挫折しやすいのだけど・・・。

本書は、教育者や子どもを持つ親である人にとってとてもよい本なのではないかと思う。子どもに何を読ませるべきかというのがこの本を読めば分かる。いろんな絵本とか物語のタイトルが列挙されているので、とても参考になると思う。

今は、夏休み中なので、物語、小説を読むようにしている。
今の自分に必要なのは、復活と栄光の物語。



物語が生きる力を育てる
物語が生きる力を育てる
著者:脇 明子
販売元:岩波書店
(2008-01-29)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 幼稚園、小学校の先生の人
  • 小さい子どもを持つ親の人
  • 物語の力を確認したい人
Amazon.co.jpで『脇明子』の他の本を見る

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August 14, 2011

ザ・ウォーカー

ザ・ウォーカー (角川文庫)
ザ・ウォーカー (角川文庫)

キーワード:
  ゲイリー・ウィッタ、運び屋、ディストピア、SF、兵器
映画原作のディストピア系SF作品。あらすじは以下。
最終戦争により人類は滅び、焼けただれた大地が残った。その荒地を進む生存者が1人。名はイーライ。人間社会復興の鍵となる“本”を守り、西へと運ぶ使命を背負った男。やはり“本”の価値を知り探していた、無慈悲な支配者カーネギーが行く手に立ちふさがったとき、イーライの闘争本能に火がつき、すさまじい戦いがはじまる。“本”とは何か?そして、人類の未来はどうなるのか。
(カバーの裏から抜粋)
本書は先月末に新宿駅南口の紀伊国屋書店の『本』フェアでたまたま見つけたものだった。カバーと裏のあらすじを読んで面白そうだったので買ってみた。2010年に公開された映画の小説なのだけど、こういうSF映画が好きなのにまったく未チェックで、何の先入観も予備知識もなく読んだ。主演はデンゼル・ワシントン、敵役はゲイリー・オールドマンのようだ。これはよさそうな配役だなと読了後に映画ページを見て思った。

また、タイムリーにこんなスレが更新されていたので、若干ネタバレありで(笑)。作品の世界観は最後の審判以降の荒廃した世界。つまり世界の全面戦争により人類の大半が死滅し、さらにはオゾンホールの破壊により紫外線が増大し、死の大地と化した。それから約30年後の世界。人々は文字も読めなくなり、略奪が頻繁に発生しているような世界で、マチェット(山刀)とショットガンを背負ったサングラスの黒人がある本を西に運んでいる。

世界観で一番分かりやすいのが、北斗の拳のようにヒャッハーとか言っているようなやつらが出てくる感じのものwwもう主人公が襲われるシーンとかまんま黒尽くめのモヒカン男たちを想像してしまうwwそしてある街を支配している50代の男、カーネギーが手下を従えて、ある本を探していた。その本は兵器ともなる力を秘めた本。

その本は戦争の原因となり、焚書対象として焼き払われ、世界で1冊だけとなった。しかし、人々を支配し、世界を意のままに操れるほどの神の力を秘めており、カーネギーはそれを兵器として利用し、第二のバビロニアを築こうとたくらんでいた。

この本、あえて何なのかは言明しないけど、世界中で一番読まれているもので、流通数は約4000億冊で、みんな知っているあの本(世界史か倫理で必ず習うから)。自分はまともに読んだことはないけど。世界が破滅した後、スーパーマーケットの店員だった黒人の男、イーライが声に導かれてこの本を西へと運ぶことになり、ギャングに追われながら使命を果たすというお話。

まぁ、突っ込むべきところは、4000億冊もの本がこの世に1冊だけになるというのはいくらなんでも設定に無理があるようなと思った。焚書しても、必ずレジスタンス的なやつらが、『表向き世界からなくなってはいるけど、われわれが極秘にコピーを保管していた!!』とかそういう展開があるはず。それに絶対生き残った人個人がそれぞれ隠し持ったりするでしょう。それくらいかな。

あとは、ギャングのボスのバビロニアの復活の野望がいまいちピンとこなかったな。その本がもつパワーをもっと実感させてほしかったな。ある一定条件を満たして、その本を読みながら呪文を唱えると海の水が二つに割れるとかね。そういう描写が何もなかったから、ギャングのボスは単なる本の収集家みたいな小物に成り下がってしまう。むしろ、統制によって人々を導くとか言っているからもしかしていいやつ!?とか思ったり。

映画原作だからついつい辛口になってしまうな。割と好きな世界観、設定だけになおさら。やはり本関係のSF作品なら以下でしょうね。これは断然面白い。夏休みに読みたいSF作品だね。

本書は映画を基にした小説なので、難しい描写はなく、情景がイメージしやすい。なのでさくさくとテンポよくページが進む。集中してちょっと速めに読めば3時間くらいで読了できるのではないかと思う。250ページくらいだし。

iPodやスターバックス、ケンタッキーといった固有名詞も出てくる世界観で、主人公は山刀で敵をなぎ倒していき、旅の仲間として黒髪ロングの魅力的な二十歳の娘も出てくる。アクションも派手な感じ。映画DVDも見たくなってきた。ところどころ描写が削られているようだけど。

夏はSFを楽しみたいと思っていたので、手軽に鑑賞できてよかった。ちなみに、今は夏休みで21日まで休み。今のうちに更新をできるだけしておきたい。



ザ・ウォーカー (角川文庫)
ザ・ウォーカー (角川文庫)
販売元:角川書店(角川グループパブリッシング)
(2010-05-25)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • ディストピアSF作品が好きな人
  • 北斗の拳が好きな人
  • 本の持つパワーを信じている人
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August 07, 2011

本当に好きなことをして暮らしたい!

本当に好きなことをして暮らしたい!
本当に好きなことをして暮らしたい!

キーワード:
 バーバラ・シェール、好きなこと、人生、エクササイズ、ワクワク
好きなことをして自分の人生をワクワクできるようになるためのエクササイズが示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 やる気になるスタイルはひとりひとり違う
  2. 第2章 なぜサポーターが必要なのだろう?
  3. 第3章 感情って何だろう?
  4. 第4章 ためこんでいるものは何ですか?
  5. 第5章 才能って何だろう?
  6. 第6章 あなたを引き止めるものの正体
  7. 第7章 リサーチしよう
  8. 第8章 リハーサルを始めよう
  9. 第9章 「記憶セット」と「願いごとセット」
  10. 第10章 ワクワクする人生って何だろう?
(目次から抜粋)
日々忙しさに流されていくと、自分自身が好きだったことを見失いがちになる。そしてある日ふと振り返ったとき、はて、今の自分の仕事、生活は好きなことで満たされているのだろうか?とか、そもそも好きなことってなんだったのだろう?と途方に暮れるときもある。そんなときに自分の好きなことをして、ワクワクする人生を送り、そして幸せになるためのステップが示されている本書が役に立つ。

著者はセラピストかつキャリアカウンセラーで、シングルマザーでもあった。育児をしながらやりたかったことを実現したいと思い、いろいろな自己啓発プログラムをやってみたけど、それらをうまく使いこなせなかった。それは自分が悪いのではなく、自己啓発プログラムが悪かっただけで、自分自身を変えようと努力する必要はなく、自分にあうルールを見つければよいという結論に達した。そして、著者の示すプログラムであれば、無理なく夢に到達できると示されている。

全てのプログラムを示すことはできないので、一つだけ自分が実際に実践したものを示す。第5章の『才能って何だろう?』で自分の好きなことを見つけるというもの。その前提として、才能は自分の好きなものによって導かれ、その才能を活かした仕事をするべきだとあった。まずはその部分を抜粋。
 では、自分の才能はどうすれば分かるのでしょうか?答えはいたってシンプルです。今までの人生で、自分が本当に楽しんできたことをすべて思い出すことです。それが得意かどうかに関係なく。楽しんできたこと、すべて。
 これまで、どんなものに心を惹かれましたか?動物、建築物、車、芸術、さわやかな風・・・・・。あなたのまわりの人が、同じものにまったく関心を示さなかったことはありませんでしたか?それは、あなたが独自の感覚を持って生まれてきている証拠です。あなたが最も幸せに感じることは、あなたの中に埋め込まれているのです。だから才能は「贈り物(ギフト)」と呼ばれます。
(pp.146)
ということで、自分が過去に好きだったこと、そしてそれがなぜ好きだったのかを探り、それが自分の才能であるということを探るもののようだ。簡単に示すと以下の手順となる。
  1. パート1―ページの一番上に自分が好きだったものを書く
  2. パート2―それぞれのことで一番好きだった点をページの左側に書く
  3. パート3―右の余白の上に、自分が見抜いた人生のテーマを書く
  4. パート4―想像力を限界までかき立て、自分の最高の職業について空想しながら書く
  5. さらに(4b)として、その空想で一番好きだった点を左の余白に書き入れる
  6. (4c)として、新しいテーマが見えたら、そのテーマを右の余白に書く
  7. パート5―最高の職業の空想を広げて、五年後の未来を書く
  8. パート6―さらにその五年後の未来を慎重に考えて書く
このプロセスを過去好きだったもの複数に対してやるとよいらしい。

ということで、自分も実際にやってみた。好きだったことは、昔、小学生低学年くらいから現在進行形で『読書をすること』と設定してみた。読書ブログをやっているくらいだからね。画像はクリックで拡大。

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どうやら自分で本を書くようだ。まぁ、書くことに関してはそれなりに自信があるし、あとはテーマ設定ときっかけがあれば出版すると思う。とはいえ、今すぐに何かそんな書けるものがあるわけではないけどね。まずは自分の本業のIT技術に関することで1冊書きたいと思う。

エクササイズは他にもたくさんあるのだけど、あまりやりたさをそそられなかった。なんというか、本書は文字ばかりで図解が少ないので、何をどうやれば良いかのぱっとみの分かりやすさが欠けている気がした。だからなんだかやりたいと思えなかった部分が少なからずある。内容がそれなりによいだけに少しそこは残念だと思う。

このような自分をより知るための本は、必ずワークをやるような内容が示されている。単に本を読むだけではあまり意味がないので、必ず最低1つはやるべきだと思う。そうじゃないと、以下のような状態になるよ。まぁ、昔の自分のことだけどねww

何かを好きだといったことややりたいこと、夢、野望を自信を持って周りの人に言うのはとても勇気のいることだね。必ず頼んでもないのにやたらと客観的な実現可能性を説いてくる人がいるもので。でも、そういうのは華麗にスルーするのがよいよ。重要なのは、今できるかどうかではなくて、自分自身が今後どうなりたいかをちゃんと確認することなのだと思う。

そのため、あえてこのような自分がやったワークをここで示しているし、自分がやりたいこと、好きなことを宣言し慣れていくという目的もある。また、野望とかやりたいことをちゃんと宣言できるようになっていると、それが自分のアイデンティティとして認識されやすく、自分のことを説明する1つの手段となるはず。それに、自分のやりたいこと、好きなこと、野望をちゃんと言えない世界なんて息苦しいと思わないかい?

世間や社会、他の人の価値基準だけで流されるように生きてもそれは本質的に自分の人生を生きたことにはならない。自分の人生なんだから好きなことをしてワクワクして生きたい。嫌いなことをやっているほど人生は長くないよ。そう思って今いろいろと考えているところ。

自分の人生について振り返りたい人は本書を読んでみたらよいと思う。絶版だからマーケットプレイス経由でしか手に入らない感じだけど。



本当に好きなことをして暮らしたい!
本当に好きなことをして暮らしたい!
著者:バーバラ シェール
販売元:ヴォイス
(2003-06-01)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 好きなことについて考えてみたい人
  • なんとなく現状に危機感を持っている人
  • ワクワクして面白がって生きたい人
Amazon.co.jpで『Barbara Sher』の他の本を見る

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August 04, 2011

おおきなかぶ、むずかしいアボカド

おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2
おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2

キーワード:
 村上春樹、エッセイ、アンアン、日常、ひきだし
村上春樹氏のエッセイ。女性ファッション雑誌、アンアンで2009年ごろから再連載されていたものが収録されている。全52の短めのエッセイが載っている。全てを示すのは冗長なので、目次は以下のリンク先を参照。このエッセイは、村上春樹氏の日常生活で体験したこと、くだらない疑問、普段考えていることなどが面白く示されている。このエッセイを読めば、ビールが飲みたくなり、散歩したくなり、1人で料理(特に牡蠣フライ)が作りたくなり、オープンカーに乗りたくなり、そして海外に住みたくなる、はず。

普段何げなく過ごしていると見過ごしてしまいそうな気付きが得られる。例えば映画のセリフに「夢を追わない人生なんて野菜と同じだ」というものがあり、そこからいろんな野菜の心や事情に思いをはせて、そして自分の人生を考えこんでしまったり。

もしくはソックスに右左形が違うものがあるのを最近知って、そこから右利きと左利きの話になり、世の中は右利き用にいろいろと作られているから左利きの人は大変ですねとか。さらには携帯電話のない世界を思い浮かべながら、ビールの栓抜きがなかったらどうかと試案してみたり。くしゃっとつぶれたビールの空き缶に切なさを見出したりといろいろ。

普段忙しくて日常生活で見落としていることを、このエッセイを読みながらいろいろと気付かされた気がした。あまりにも忙しく生きすぎると、何もかもが通り過ぎて無味乾燥なものになってしまったような気もするけど、このようなエッセイを読むと、ふむ、自分の日常生活も悪くはないな、ちょうどよい、と思えたりもするもので。エッセイを書くような視点に立てば、自分の生活に満足感を見出せるような気もしてくる。

僕は村上春樹氏の長編作品は全て読了済みで、エッセイもそれなりに読んできた。そのたびにいつも思うのは、長編小説では暴力的で不条理なことが描かれているのに、エッセイでは日常生活の割と健全なささやかなことが多く示されていて、そのギャップが大きいなぁとひしひしと感じることだね。だってね、「海辺のカフカ」でジョニー・ウォーカーの猫の虐殺を描いたり「ねじまき鳥クロニクル」の拷問による人間の皮膚を剥ぐなんて恐ろしい描写をする作家がね、アリクイにディープキスされるところを想像してたりするんだよね。

このエッセイの文体もかなりマイルドで親しみやすいしね。著者的な観点から示せば、それは作家としてのさまざまなひきだしを持っているということなのだろうと思う。いいね、ひきだし。そういえば自分が箪笥代わりに使っているボックスの引き出しはいつも着ない服であふれているね。どうでもいいことだね。

各エッセイの最後に『今週の村上』という一言文が載っていて、それがとてもくだらなくて面白い。3つだけ抜粋。
  • 「婚約破棄」と聞くといつも捨てられたコンニャクを思い浮かべるんだけど、下らないですね。(「手紙が書けない」 pp.73)
  • そうえいば僕はスターバックスで普通のコーヒー以外のものを飲んだことがないな。人生で損をしているのだろうか?(「キャラメル・マキアートのトール」pp.145)
  • 僕は「ハンマー」と「メンマ」で韻を踏んだ歌詞を書いたことがあります。これもお手軽なのかなあ?(「ジューン・ムーン・ソング」pp.213)
普段はエッセイとかには線を引いたりしないのだけど、著者の本は思わず引かざるを得ないところがはっと出てくる。そこの部分を抜粋。「ベネチアの小泉今日子」というエッセイの最後の部分から。
 人はときとして、抱え込んだ悲しみやつらさを音楽に付着させ、自分自身がその重みでばらばらになってしまうのを防ごうとする。音楽にはそういう実用の機能がそなわっている。
 小説にもまた同じような機能がそなわっている。心の痛みや悲しみは個人的な、孤立したものではあるけれど、同時にまたもっと深いところで誰かと担いあえるものであり、共通の広い風景の中にそっと組み込んでいけるものなのだということを、それらは教えてくれる。
 僕の書く文章がこの世界のどこかで、それと同じような役目を果たしてくれているといいんだけどと思います。心からそう思う。
(pp.217)
これはね、僕もこのような読書ブログを書いていると、本当にそう思うね。ネットワーク越しのどこかのだれか(これを読んでくれているあなた)のためになっていればいいなと思って、今日もがんばって早起きして更新した。

過去に取り上げた村上春樹氏のエッセイは他には以下がある。本書は村上ラヂオ2なので、前作と引き続き、大橋歩さんの銅版画が各エッセイに添えられていて、よい感じになっている。

日常生活をほんの少し実りのあるものにしたい場合は、ゆっくりと本書を堪能するのがよい。ビールでも飲みながら。



おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2
おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2
著者:村上 春樹
販売元:マガジンハウス
(2011-07-07)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 日常生活の気付きを得たい人
  • 忙しすぎていろいろ考えられない人
  • 作家のひきだしに触れてみたい人
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August 01, 2011

人生で一番大切な 20代の生き方

人生で一番大切な 20代の生き方
人生で一番大切な 20代の生き方

キーワード:
 和田秀樹、20代、人生、生き方、ライフプラン
精神科医で映画監督とか受験技術などにも精通している著者によって、20代のよりよい過ごし方が示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 後悔しない人生を送るために、ライフプランを立てる
  2. 第2章 仕事では、今いる場所で最高の結果を出す
  3. 第3章 キャリアチェンジのために勉強する方法
  4. 第4章 一生を豊かにする趣味、娯楽を見つける
  5. 第5章 人との上手な関わり方を知る
  6. 第6章 仕事は長期戦。心身を健康に保っておく
(目次から抜粋)
人生80年の時代ではあるけど、実りある豊かなものになるのかどうかは20代をどう過ごすかで決まるので、長い人生を見据えたライフプランを立てたほうが良いと示されている。それが仕事であったり、結婚であったり、趣味娯楽、人間関係、健康まで言及されている。

気になった部分をメモ代わりに以下に列挙しておく。
  • 自分はどうやって生きていくのか、何をして食べていくのかというライフプランを何も立てていなければ、相当な秀才であろうが、容赦なく下流に振り落とされてしまう危険性があるのです。(pp.24)
  • 20代で自分は今後どの道を選ぶのかを決めれば、それによって、今の職場でどう働けばいいか、何を身につければいいかが見えてきます。(pp.31)
  • 30代でこうするという目標を、20代のうちに設定して、それに向けて準備のスタートを切れば、予定どおり30代で目的地に到達できる可能性は高くなります。(pp.44)
  • 今の職場で評価が高い人のほうが転職に絶対に有利であることも忘れてはいけません。(pp.107)
  • やりたいことや夢があり、その夢をあきらめずに済むように、食べていける道を確保する(pp.124)
  • キャリアチェンジをするなら、そのキャリアでどんなことをしていくかという目標を設定し、その職業に就くための難易度がどれくらいなのか、時間や費用はどれくらいかかるのかという点を考えることです。(pp.128)
  • 自分にとっての楽しみや趣味をずっと続けていくにはどうすればいいかを考えるようになると、それがキャリアプランを立て直すきっかけになるかもしれません。(pp.146)
  • 楽しみながらいろいろな世界が学べるのが恋愛のメリットだと思います。(pp.152)
  • 睡眠や食生活など、生物学的な健康にかかわることについて、意識的に注意を払うようにする必要があります。(pp.202)
まぁ、こんなところでしょう。本書全体に目新しいことが示されているわけではない。けれど、再確認という観点から参考になる部分が多かった気がする。

今の自分に必要なのは自分の人生のライプランを設定することである。これは割りと真剣に考えている。やりたいことを列挙して、いつまでに何をどこまで達成したいかを設定してみようと思う。なんとなく成り行きに任せて流れに身をゆだねすぎるよりも、目標設定しないと自分はよりよく生きられないタイプなので。なので、本書の主張に割りと納得できた。

目標設定をする必要があるのは、どうしても日々の生活に忙殺されていって自分が到達したいところをだんだん見失ってしまうから。目標設定しておけば、予期せぬ不測の事態に陥っても、自分の現状の立ち位置とゴールのギャップを把握できるし、何とか対応して軌道修正できるはず。

もちろんライフプランのように目標設定しても、必ずしもすべて順調にうまくいくわけではないのは分かっている。自分の20代のキャリアのスタートはいろいろと想定外のことが起こりまくったりしたから実感しているけどね。けれど、ちゃんと目標設定するかどうかで到達できる領域が全然違ってくるのではないかなと思う。いろんな自己啓発本に先に目標設定したほうがよいとあるし。もちろん成り行きに身を任せろという主張の本もあるけど、自分はあまりそれを信用していない。

最近20代に限らず、いろいろな年代を想定したタイトルがつけられている本が売られている気がする。本書はとっぴなことが示されているわけではないし、結構そうだよねと既知の部分が多かった。まぁ、読みやすいし、あまりこういう本を読んでない人には良いかもしれない。

自分は20代本を昔から読んできた。過去に本ブログで取り上げたものは以下となる。結構読んでいたなぁ。割と似たようなことが書いてあるね。20代は大切で、ちゃんと目標設定しましょうとかね。これらを読んできて思うような20代を過ごせてきたのかというと、まだまだ現時点で27歳なので何とも言えないね。試行錯誤、迷いの20代で。でもそれらがあったから30代、40代以降が光輝くものであったと将来言えるようになりたい。



人生で一番大切な 20代の生き方
人生で一番大切な 20代の生き方
著者:和田 秀樹
販売元:中経出版
(2011-07-26)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 20代で自分の人生について考えてみたい人
  • 成り行きに身を任せすぎて危機感があまりない人
  • 自分の20代の過ごし方を振り返ってみたい人
Amazon.co.jpで『和田秀樹』の他の本を見る

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