February 2013

February 23, 2013

Gene Mapper

Gene Mapper (ジーン・マッパー)
Gene Mapper (ジーン・マッパー)

キーワード:
 藤井太洋、SF、バイオ、拡張現実、テロ
セルパブリッシングによって書かれたバイオSF小説。以下のようなあらすじとなっている。
“生命すら設計できるその日、何を信じて未来の扉を開けばいいのだろう”

農作物の多くがメーカー製の「蒸留作物」に置き換えられつつある2037年。作物の遺伝子をマークアップし、外観を設計するスタイルシート・デザイナー、林田のもとへ「ジャパニーズ・サラリーマン」を演じる黒川から調査依頼が入った。カンボジアへ納品したスーパーライス、SR-06に描いたロゴが崩れ始めたというのだ。原因はコーディングのミス?アップデートの失敗?それとも……

原因を探るため、林田は「キタムラ」と名乗る人物に誘われ、2014年に封鎖されたインターネットが生きている街、ホーチミンへ飛ぶ。フルスクラッチで作物を作れるほどの遺伝子工学、現実と見分けられないほどの拡張現実が当然のものとなった2037年。たゆまなく前進する科学技術は人類の繁栄を約束するのか?ハイスピード・ノベル「Gene Mapper」が問う。
(Amazonの内容紹介から抜粋)
本書は著者が表紙のデザインから執筆、広告まですべて一人で制作された電子書籍らしい。1月にauのWi-Fi + CellularモデルのiPad miniを購入し、kindleアプリを入れて電子書籍を読みたいと思っていたので、話題に上がっていて、かつキャンペーン価格で300円で買えたので読んでみた。初めての電子書籍での小説はこの作品となった。公式ページと著者インタビュー記事は以下。内容的なものはあまり深く書かないようにしておこう。というか、正直あんまり頭に入ってこなかった。初めての電子書籍ということもあったろうし、読みなれていないというのもあったかもしれない。途中から通勤電車中でも手軽に読めるようにスマフォのkindleアプリでも読んでいたというのもあったと思う。それでも、どうしても描写がイメージしずらかったというのが正直な印象。

時代設定が世界中のインターネットが崩壊した2037年の世界で、拡張現実(AR)が発展しており、自分の視界にさまざまなものがIT技術によって映し出せたり通信ができるような世界。そしてバイオテロをテーマとしているので、IT技術の要所の描写、テロに使われるバッタの遺伝子工学の説明などが多く出てくるが、それらの描写が詳細である分、専門用語が分かりにくかったりした。そして、その詳細にこだわり過ぎているような気もして、物語り全体の流れが停滞しているように思えてドライブ感が損なわれている気がした。あらすじにあるような「ハイスピード・ノベル」というのは、読者がよほどバイオとITの専門用語に詳しくないと得られない感覚だろうと思った。

あと、人物が3人ほど出てくるときに誰の会話なのかが微妙に分かりにくかったなぁと。そこは単に自分が集中して読めていなかったからだと思われるが。

さらに、インタビュー記事を読むと、校閲をやってないようで、それが原因で些末だけど表記の間違いと思われる部分があった。文脈上、データ容量の大きさを示すところで「二百GBGB(No.206)」とギガバイトのところが変だったり、「生データ(RAW)(No.247)」とRAWがルビになっているものと「RAW(生データ)(No.285)」と生データがルビになっているものがあり、表記が統一されていなかったり、英文が出てくるところで単語ごとのスペース区切りが微妙に一定ではなかったりと文章の品質が微妙だなと思った。

正直、そういうのは本書のテーマでもあるITシステム的に言うと、単体テストレベルのバグが混入しているようなもので、その状態で納品されるのはいかかがなものか?と僕も技術者であるのでそう思わないでもない。「Hello, World!!」と作品中にもプログラミング的な内容も出てくるので、割と関心を持って読める反面、コードレビューちゃんとやろうよとも思った。そういうのは全部一人でやることの限界なのだなと思った。

セルフパブリッシングという部分はチャレンジングで評価されるべきだと思うし、僕も今後期待しているが、一読者として純粋に物語を楽しむ身としては、どのように書かれているかは正直どうでもいい部分でもある。それは、システム、ソフトウェアがC#, Java, Ruby, PHPなどどんな言語で実装されていようが、一般的なユーザーにとっては、ちゃんとユーザーの望むものを実現してくれれば手段はどうでもいいというようなもので。セルフパブリッシングは、著者のメリットが大きい反面、読者にとってはメリットがあまりないのではないかと思ったりもした。別に揚げ足を取るようなことをここで書きたいのではないけどね。

バイオとITの融合がテーマで、『ねじまき少女』と『ニューロマンサー』のような世界観だった。こういうのは好きなので、それだけ期待が高くなり過ぎたというのもあった。もうちょっと長めになって描写がよくなればいいなぁと思う。あとせっかく電子書籍でやるなら専門用語の用語集とか巻末につければいいと思う。それだけ次回作に期待しているということで。



Gene Mapper (ジーン・マッパー)
Gene Mapper (ジーン・マッパー)
著者:Fujii Taiyo
販売元:Taiyo Lab
(2012-07-12)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • サイバーパンクが好きな人
  • 農業に関心がある人
  • プログラマーの人
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