May 2013

May 26, 2013

「やりがいのある仕事」という幻想

「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書)
「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書) [新書]

キーワード:
 森博嗣、エッセイ、仕事論、やりがい、幻想
小説家である著者による仕事論。以下のような目次となっている。
  1. まえがき
  2. 第1章―仕事への大いなる勘違い
  3. 第2章―自分に合った仕事はどこにある?
  4. 第3章―これからの仕事
  5. 第4章―仕事の悩みや不安に答える
  6. 第5章―人生と仕事の関係
  7. あとがき
(目次から抜粋)
著者は工学部の大学助教授であったが、小説家になり、小説がヒットして今では働かなくてもいいだけの資産を形成していて、大学もやめて1日1時間程度の仕事しかしていないらしい。そんな著者によって、「仕事にやりがいを見つける生き方は素晴らしい」という言葉を多くの人たちが、理想や精神だと勘違いしていて、そんなものは幻想に過ぎないと少し冷淡に示されているのが本書。

著者の作品は一つだけ過去に読んだことあった。そんで本屋で気になるタイトルだったので買って読んでみた。まぁ、客観的な視点がとても参考になるなと。

仕事に貴賤はないし、人と比べてもしょうがないし、好きな仕事をしようとすると、それが嫌いになった時にしんどいし、自分の適性のある仕事などやってみないと分からないし、けれど自分が向いている仕事を選択するほうが合理的だし、やりがいなど人から与えられるものではないし、なので必ずしも仕事にやりがいを求めなくてもよい、というような著者の一意見が示されている。

著者の考え方はどこか突き放したようにも取れるし、もう働かなくてもいいだけの身分で半引退生活をしているような視点からというのもあるので、一概にすべて受け入れられるものでもないかもしれない。それでも、就職活動で就職先を選ぶとき、または仕事を始めて転職をしようかと思うときに、世間とか他人の評価ばかりを気にして、他者に判断基準をゆだねるのではなく、自分なりに客観的にどうしたいか?ということを考えることが重要なんだなと思った。

また、仕事にやりがいとかそういうものを過剰に求めすぎずに、まずはお金を得られればそれでいいじゃないかというような気楽な気持ちにもなれる。そんなに気負って働かなくも出いいんじゃないかと。一ヶ所なるほどと思った部分を引用。「自分にとっての成功はどこにあるか」という節タイトルの最後から。
 質素な生活ができる人は、ときどき適当に働いて、のんびり生きれば良い。贅沢な生活がしたい人は、ばりばり頑張って働いて、どんどん稼げば良い。いずれが偉いわけでもなく、片方が勝者で、もう一方は敗者というわけではない。
 人それぞれに生き方が違う。自分の道というものがあるはずだ。道というからには、その先に目的地がある。目標のようなものだ。まずは、それをよく考えて、自分にとっての目標を持つことだ。
「成功したい」と考えるまえに、「自分にとってどうなることが成功なのか」を見極める方が重要である。
(pp.94)
実際に仕事を始める前はバリバリ働いて稼げたらなぁと思っていた。しかし、現実は持病の影響もあって、残業制限もあるような状況で働いていて、そして実際に働いてみると追われるように働きづめなのは向いてないなと実感しつつある。自分にとっての成功は、それなりにお金があってのんびり読書したり映画を見たりするような生活ができることなのかなぁと漠然と思った。これはまた地道に考えておきたい。

割と身もふたもない話が多いのだけど、一度客観的に仕事とはどういうものなのか?ということを考えるきっかけになるので、就職活動中の人にお勧めだね。さらに、実際に働いている人で、自己啓発本ばかり読んでいる意識が高い系の(そして掲げる理想と現実の絶望的なギャップに奮闘しているような)人にもお勧めだね。給料よりもやりがいとか社会貢献したいなど過剰に意識している人は特に。

さくっと読めるし、もっと気軽に働けばいいじゃないかという気になれる本だった。



「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書)
「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書) [新書]
著者:森博嗣
出版:朝日新聞出版
(2013-05-10)

読むべき人:
  • やりがいを過剰に求めている人
  • 就職活動中の人
  • 仕事を辞めようかなと思っている人
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May 11, 2013

ガダラの豚

ガダラの豚 1 (集英社文庫)ガダラの豚 2 (集英社文庫)ガダラの豚 3 (集英社文庫)
ガダラの豚 1 (集英社文庫) [文庫]
ガダラの豚 2 (集英社文庫) [文庫]
ガダラの豚 3 (集英社文庫) [文庫]

キーワード:
 中島らも、超能力、呪術、アフリカ、家族
中島らもの冒険!?オカルト小説。3部構成で、1部だけあらすじを以下に抜粋。
アフリカにおける呪術医の研究でみごとな業績を示す民族学学者・大生部多一郎はテレビの人気タレント教授。彼の著書「呪術パワー・念で殺す」は超能力ブームにのってベストセラーになった。8年前に調査地の東アフリカで長女の志織が気球から落ちて死んで以来、大生部はアル中に。妻の逸美は神経を病み、奇跡が売りの新興宗教にのめり込む。大生部は奇術師のミラクルと共に逸美の奪還を企てるが…。
(第1部のカバーの裏から抜粋)
なぜ1部だけ抜粋したかというと、2部、3部は若干ネタバレしているから。それを見ないほうがより楽しめるのは間違いない。

この作品は西新宿のブックファーストで、読者が選ぶ名著フェアというようなところに置いてあったので買った。以前からこれは徹夜小説と称されているのを聞いていたというのもあったので。読んでみたら、なんじゃこりゃー!!と衝撃を受けつつすごく面白く感じた。1部読むだけでなんか疲弊して徹夜はできなかったけど、1巻ごとに1日で一気読みできた。それほど物語の怪しい世界観に飲みこまれていった。

内容を詳細に語ってもしょうがないので、簡単に各3部構成をハイライト的に示しておこう。

第1部は、超能力vsトリック対決!!そして新興宗教の胡散臭いトリックを暴け!!という内容。これだけだとふーんって感じなのだけど、なんだか著者が新興宗教の洗脳状況を見てきたかのような描写がとても面白く、かつ勉強になる(もちろん怪しい宗教に引っかからないようにするという正しい意味で)。

第2部は、アフリカの呪術師の村へ取材に行く冒険の旅!!そこには邪悪な呪術師が潜んでいた!!という内容。ここはアフリカに対する世界観とか先入観を覆される。参考文献が3部の最後に示されているのだけど、かなりアフリカの呪術とか民族学、寄生虫、食べ物などが調べられて書かれている。自分も乾いたケニアの大地にいるような感覚になってくる。

第3部がなんかぶっ飛んでいて、最初は東京を舞台としたサスペンス調なのだけど、最後はテレビ局内での危険が潜む冒険活劇、そしてラストバトルへ!!と言った感じ。3部だけはちょっと1部、2部と毛色が違う。でもここまできたらこまけぇこたぁいいんだよ!! (AA略)と最後のクライマックスまで手に汗握りつつ一気読みするのがよろしい。

1部は割と現実的な話でなるほどねぇと読めるのだけど、2部の後半から物語の異様さがじわじわと読者の心理に侵食していくように広がっていく。どこまでが説明がつくことで、どこまでが超常現象的なものなのか?と。その過程も含めて先が全く読めなくて、この先どうなるんだろうと物語に引き込まれっぱなしの状態になる。

個人的にはこれは漫画化したらいいんじゃないかと思っていたら、すでに微妙に漫画化されていたらしい。しかし、これは未完であまり質がよろしくないようだ。最近ジョジョの奇妙な冒険の第1部と第2部のカラー版をKindleで読んでいたということもあり、荒木飛呂彦氏のあの濃い画力で物語を描写されると迫力あるだろうなぁと思った。随所にゴゴゴゴという効果音とともに、異様な光景が繰り広げられるのがぴったりだなぁと。

文章は短く読みやすい。余計な比喩や情景描写も極力少な目で、会話がテンポよく進む。あとはいろんなキャラが出てきてそのキャラがとてもいい味を出しているんだよね。大生部はアル中だし。余談だけど、アル中の状況を知りたい人は同じく中島らも氏の以下の作品もあわせてどうぞ。 いろんな意味で畏怖の念を抱かざるを得ない作品だった。読んでおいて損はないよ。久しぶりに手に汗握ってページが止まらなくなる作品だったから。ということで、買う場合はかならず3巻セットでどうぞ。



中島らも『ガダラの豚』全3巻セット (集英社文庫)
中島らも『ガダラの豚』全3巻セット (集英社文庫) [文庫]
著者:中島 らも
出版:集英社
(2012-02-01)

読むべき人:
  • 呪術的なものが好きな人
  • アフリカに惹かれるものがある人
  • 問答無用で面白い作品を読みたい人
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