July 2013

July 21, 2013

わたしのはたらき

わたしのはたらき
わたしのはたらき [単行本(ソフトカバー)]

キーワード:
 西村佳哲、仕事、働く、生き方、使命
2011年に奈良県立図書情報館で開催された「自分の仕事を考える3日間」という名前のフォーラムの内容が書籍になったもの。以下のような目次となっている。
  1. 森のイキアス主宰 佐藤発初女さんを冬の弘前に訪ねる
  2. ホールアース自然学校 創設者 広瀬敏通さんの行動原理はなにか?
  3. 作家、建築家 坂口恭平さんと”生きてゆく技術”をめぐって
  4. NPO法人さくら会 理事、アドボカシー 川口有美子さんは家族介護という仕事を経て
  5. サウンド・アーティスト 鈴木昭男さんの生き様を丹後に訪ねる
  6. 主婦、随筆家 山本ふみこさんは”主婦”の仕事を?
  7. 建築家 中村好文さんが大事にしてきたこと
  8. ミナ ベルホネン代表、デザイナー 皆川 明さんが持続させようとしているのは
  9. 編集者、ディレクター 伊藤ガビンさんの話を秋葉原と奈良できいて
(目次から抜粋)
これが第3回目の開催で、シリーズ最終作。開催概要は以下。過去2作の本は以下。コアな!?このブログの読者ならすでに気づいているかもしれないけど、今年の僕の個人的なテーマは『仕事』だったりする。それは自分の現状の働き方や職業を考えたり、今後何を仕事に求めていけばいいんだろう?と思索することだったりする。そういうときに、他の人はどういう職業を仕事としていて、何を考えているのだろうと?ということが気になったりもしていた。よって、今年はもっぱら『仕事』や『働く』をテーマとした本を読むことにしている。

仕事について考えようと思ったきっかけはいろいろあるけど、まずは年齢的な節目になるからかな。今の会社に第一志望として就職し、辞めずにもう8年目で、来年の1月に30歳になる。30歳以降の自分の働き、仕事は今のままでいいのだろうか?というのもある。SE業の仕事に未来はあるのかという部分とか、体力的にずっとは無理だろうなと言うのも分かっているし。

もう一つは今までSEをやってきたけど、この仕事のやりがいとか面白みは何なのだろう?という部分。これは8年近くの経験を経て、本当に自分にこの仕事は合っているのだろうか?という部分や好きでやっているのかな?という疑問のような違和をずっと就職後に感じていたから。他に自分に合った仕事、できること、やるべきことはあるんじゃないのか?と思ったり。

あとは単に、世の中にたくさん仕事があるのだけど、普通に就職活動をしてSEという職業に就いたけど、他にどんな仕事があって、他の人はなぜそれをやっているのだろう?ということが気になったから。

これらの自分の疑問、思索のテーマにわりと合うものが著者の開催していた「自分の仕事を考える3日間」のフォーラムの本3作だった。そして、この3作目がとても面白く、そしてなるほどと思って読めた。もちろん前2作もそれなりによかったけどね。

一番自分の仕事観の枠を大きく広げられたのは、家族介護を仕事にされている川口有美子さんの話かな。これは川口さんのお母さんが59歳でALS(筋萎縮性側索硬化症)という筋肉が委縮していく神経系の病気になり、亡くなられるまで12年寝たきりの介護をされていたというもの。そしてその経験からペルパーの派遣事業やペルパーの育成を行うNPOの運営をしつつ、ALS患者の在宅療養を可能にする活動をされているらしい。

普通、仕事と言うと自分がやりたいことをやろうとか、自己実現しようという話になるけど、川口さんの場合は興味のなく辛いことでも、やらざるを得ず、そしてそれが結果的に仕事になっていった。この経緯が自分の考えている仕事観と全然違ったし、すごいなぁと思った。以下一部川口さんの仕事観が表れている部分を引用。
―「仕事から喜びを得るべきだし、さらにその仕事で稼がなければならない。夢も実現しなきゃ」と思っている人が多いと思います。

川口 わたしの仕事は違う。与えられていることに引きずり回されていて。達成感のような喜びはあります。でもそれは他者の幸せを見て感じているわけで、自分のためだけのものではない。
 でもそうなのかもしれない。わたしのモチベーションは内発的なものではなくて。
 人との関係性に基づいた仕事をしているんですよね。だからなんていうのかな。関係性の中で生きている限り、人には必ずなにか与えられる使命がある。ささいなことでも。それに気づくのが大事だし、かつ自分にできることを一所懸命やることでしょうか。みんな与えられている。それは絶対に。
(pp.100-101)
仕事は自分で選んでいくというのが一般的かもしれないけど、結果的に仕事に選ばれるという側面もあるのかもしれない。それこそがもしかしたら使命なんじゃないか?とも思った。しかし、それが自分にとって何であるのかは、まだぜんぜんわからない。少なくとも、それが今のSEという職業であるという実感はほとんどない。

他の人の職業や生い立ち、考え方もそれぞれ多様でかつ独特で面白いし、興味深く読める。みんな普通に就職活動をして会社員になっている人ではない。独立されていたり、成り行きでその仕事をやっていたりする。そういう人たちばかり出てくる本なので、なんで僕は就職活動をして会社員、SEをやっているのだろう?と自問自答せざるを得なかった。もちろん、単純に最低限路頭に迷わずに食っていくための手段であったから、というのが答えなのだけど。

仕事について考えてみたい人はゆっくり読んでみたらいいと思う。自己啓発本などと全くジャンルの違う本なので、アドバイスみたいなものは書いてない。ただ、参考にしつつ考えるしかない。



わたしのはたらき
わたしのはたらき [単行本(ソフトカバー)]
著者:西村 佳哲
出版:弘文堂
(2011-11-30)

読むべき人:
  • 自分の仕事について考えたい人
  • 自己実現しなくてはと思っている人
  • 生き方そのものも考えたい人
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July 06, 2013

サービスの達人たち

サービスの達人たち (新潮文庫)
サービスの達人たち (新潮文庫) [文庫]

キーワード:
 野地秩嘉、サービス、プロフェッショナル、人、都市
さまざまな職業のサービスのプロフェッショナルが紹介されている本。以下のような目次となっている。
  1. ロールスロイスを売り続ける男
  2. 東京っ子が通う「並天丼」の魅力
  3. ナタリー・ウッドの背中を流したかった
  4. チーフブレンダーの技と素顔
  5. 伝説のゲイバー、接客の真髄
  6. 命懸けで届けた被災地への電報
  7. 銀座より新宿を愛したナンバーワン・ホステス
  8. 「怪物」と呼ばれた興行師
  9. ヘップバーンも虜にした靴磨き
(目次から抜粋)
なんとなく本屋でバーテンダーの表紙とタイトルに惹かれて買って読んでみた。サービスのプロフェッショナルとしてバーテンダーは出てこないのだけど。

本書は平成11年に出版されたものが文庫本になっているもので、著者がそれぞれのサービスのプロフェッショナル達に会って話を聞き、それぞれの人物の生い立ちからその職業につくまで、そしてその仕事ならではのエピソードなどが著者の視点から示されている。

この本はなかなか面白かったね。世の中にはいろんな職業があって、それぞれが仕事にこだわりや哲学を持っておられるのだなぁと。しかし、今ではもう廃れてしまった職業もある。例えば、『ナタリー・ウッドの背中を流したかった』で紹介されているのは、まだ1家に風呂が完全に普及していない昭和の時代の銭湯で客の背中を流す『流し』と言われる職業だ。全盛期には1日100人をこなし、歩合制のため同じ年のサラリーマンの年収の5倍から10倍までになったらしい。へーと思った。

また、他にも廃れてきたものとしては『電報』もある。今では電報は母の日や父の日などプレゼントのような役割になっているが、昭和の時代では通信のかなめとして活躍していたらしい。電報は急いで配達しなくてはいけないという特性上、自転車をゆっくり走らせていたらダメらしい。そんなときに電報配達員に対して、すし屋、ラーメン屋、八百屋や酒屋などの足に覚えのある自転車配達員が街でロードレースの勝負をかけてくるらしいwwこれはなんか想像したら面白かった。漫画みたいだなぁと。

他にもゲイバーやホステス、興行師の話は自分の知らない世界であり、とても興味深く思えた。これらもどちらかというと廃れていった職業となる。

逆に今でもある職業としては、ロールスロイスの営業とウイスキーのチーフブレンダ―がある。特にこの二人の話が興味深く読めた。例えば、安くても1台2,200万円ほどするロールスロイスを売る飯島氏はセールスマンとして以下の点が優れているらしい。
  1. 商品の情報に強いこと
  2. 客との距離をうまく取っていること
  3. 長い目で仕事をしていること
1は説明はいらないが、2はどういうことかというと、ロールスロイスなどの高級車を買いに来る客を相手にして付き合うようになると、自分も羽振りが良くなったように錯覚し、個人で仕事を請け負っていくうちに、負債を背負ったりトラブルを起こしてしまって消えていくらしい。だから、そうならないためにも節度を保ちながら客と付き合わなくてはいけないようだ。

またウイスキーのチーフブレンダ―、稲富氏はサントリー山崎の蒸留所に所属している。そこで筆者とワインのソムリエとチーフブレンダ―はどちらが利き酒の能力が高いかという話になる。曰く、稲富氏はワインのソムリエで大切なのは利き酒能力ではなく、お客さんを見る目なんじゃないかと。そして筆者がブレンダーは人間を見る能力はいらないのか?という問い、それに対する稲富氏の以下の回答がとても参考になった。
「そうだ、そうだね。一人ひとりの顔を見ることじゃないけれど、ウイスキーを飲む人の顔を思い浮かべるというのがイメージの造形に役立つかもしれない。新しい酒を造ろう、造ろうと製品の方にばかり目がいっても駄目だ。ああ、そうだ、人間を見て、人間を面白がることがイメージをつくるのに一番いい、かもしれないなぁ。」
(pp.78)
これはシステム開発業でも同じだねと思った。技術偏重になり過ぎると、結局サービス享受者であるお客様の本来望んでいるものを実現できなくなるからね。

あと、最後に一つ面白い表現で興行師の定義が示されていた部分があったので、そこを引用しておきたい。
 では最後に、興行師というものの定義をしてみようか。両手に食パンを持って立っている男を思い浮かべてごらん。そいつが興行師の正体だよ。なかにはさむものでサンドイッチの値段は違ってくる。はさむものは何でもいいんだ。アイデアや夢をはさむんだ。はさんでいるものを見ればそいつの頭の中身がわかる。興行師の仕事とは何をはさむのかを考えることなんだ」
(pp.187)
ここはいいね!と思った。

サービス提供者としてのマインドを持てというようなことを上司などから言われたりする。そういうときに、他の職業のプロフェッショナルな働き方を知るのはとても参考になった。内容もとても面白かったし。



サービスの達人たち (新潮文庫)
サービスの達人たち (新潮文庫) [文庫]
著者:野地 秩嘉
出版:新潮社
(2008-10-28)

読むべき人:
  • サービス業の人
  • プロフェッショナルになりたい人
  • 自分の職業について考えたい人
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