October 2013

October 20, 2013

幼年期の終り

キーワード:
 アーサー・C・クラーク、SF、人類、上帝、終末
アーサー・C・クラークのSF小説。以下のようなあらすじとなっている。
人類が宇宙に進出したその日、巨大宇宙船団が地球の空を覆った。やがて人々の頭の中に一つの言葉がこだまする――人類はもはや孤独ではない。それから50年、人類より遥かに高度の知能と技術を有するエイリアンは、その姿を現すことなく、平和裡に地球管理を行っていた。彼らの真の目的は?そして人類の未来は? 宇宙知性との遭遇によって新たな道を歩みだす人類の姿を、巨匠が詩情豊かに描きあげたSF史上屈指の名作
(カバーの裏から抜粋)
以前参加したスゴ本オフの『ハヤカワ』のテーマでこの作品を持ってこられる方が何人かいた。そして、その場ではSFオールタイムベストな名作と言われていたので、気になっていた。去年の5月開催だったのだね。もうそんなに時間が経つのか。ちなみに、僕が持っていたのは、以下の作品。アーサー・C・クラークの作品は読んだことがなかった。せいぜい大学生のころにキューブリックの『2001年宇宙の旅』を見たくらい。しかも映画DVDなどめったに買わないのに、なぜかマトリックスシリーズと一緒に買って置いてある。当時さっぱりよく分からないけど、きっとみんながスゴイと言っているからこの映画もスゴいのだろうという程度の感想しかなかったのだけど・・・。Amazonの書影はなぜか古いのしか選べなかったけど、新しいカバーで読んだ。

ネタバレするとよろしくないのであんまり詳しく書けない。というか何を書いても先入観を与えてしまって駄目な気がする。なので、何の予備知識なしで読むのがよいね。あと、いくら名作と言われていても、過剰に期待しすぎないほうがいいかもしれない。では、この作品が期待外れだったのかというと、決してそうではない。

400ページくらいの作品なのだけど、300ページを超えるまでは特に起伏もなく、ふーんという感じで読んでいた。しかし、300ページを超えたあたりから、物語は一気に壮大な話になっていって、結末を迎えて、達成感と悲壮感などが入り混じるような何とも言えない読後感となった。

画家ポール・ゴーギャンの作品に『われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか』という大きな絵がある。絵の内容は全然違うけど、このタイトルがこの小説のテーマにぴったりだなと思った。

人によってどこにどうスゴいと思うのかが微妙に変わってくるような気がする。今読んでもきっと色あせてない作品なので、SF作品が好きで未読なら読んでおいて損はない。



アーサー・C・クラーク
早川書房
1979-04

読むべき人:
  • SF作品が好きな人
  • 壮大な物語が読みたい人
  • 人類の未来について考えてみたい人
Amazon.co.jpで『アーサー・C・クラーク』の他の作品を見る

bana1 オーバーロードクリック☆  にほんブログ村 本ブログへ



October 13, 2013

サービスの天才たち

キーワード:
 野地秩嘉、サービス、接客、お客様、仕事
いろいろなサービス業に従事するプロフェッショナルを取材した本。以下のような目次となっている。
  1. 高倉健を魅了するバーバーショップ
  2. 「一杯のお茶」へのこだわり
  3. 日本一のキャディを育てるゴルフ場
  4. 人を安心させる温泉カメラマンの間合い
  5. 種牛「糸福」の一生
  6. ゴッドハンドは心まで揉みほぐす
  7. 有名人御用達タクシー、接客の極意
(目次から抜粋)
サービス業と言える職業は巷にあふれているが、それぞれの職業で一際優秀、プロフェッショナルであって、いろんなところから指名が来るようなサービスの達人たちがいる。その各サービス業に従事しているプロフェッショナルな人たちに、著者が密着取材してドキュメンタリー風にまとめられているのが本書となる。

この本は以下の前作からの続編となる。今回は理髪師、高齢者施設の料理人、ゴルフ場のキャディ、温泉カメラマン、マッサージ師、タクシー運転手という6人に焦点があてられている。

特に気になった天才たちを示しておこう。まずは温泉カメラマンの相沢さんという方。東京から鳥取に移り住んで、写真スタジオを経営しているらしい。結婚式などの記念写真なども撮っているが、それだけでは食えないので、温泉旅館に行って、旅館の宿泊客の宴会の様子などを写真に撮ってそれを翌日に1枚1000円で売るという仕事らしい。

相沢さんは特別カメラ技術に優れているわけではないが、全盛期は一晩で30万円くらい稼いでいたらしい。今ではもうケータイのカメラ機能やデジカメがあるのでそこまで稼げないが、それでも温泉カメラマンとして成功したのは、カメラ以外の技量があるからとなる。それは『田舎では安心できる人だと示すことが重要』らしい。そのため目立たない服装をし、写真を撮るときは自分を消し去るようにし、自然とお客さんの笑顔を引き出してそれをスナップに収めているようだ。日本の田舎でのコミュニケーションの要諦を理解していたことが成功につながったようだ。

また、『有名人御用達タクシー、接客の極意』では北海道のタクシー運転手、下川原さんという方がいる。この方はユーミンの札幌コンサートでは常に指名されるし、運輸大臣からも指名があったり、帝国ホテルの筆頭株主であった小佐野賢治などからも指名があったらしい。下川原さんのタクシーは、著者曰くとても乗り心地がよいらしい。それは良い車であるということではなく、著者によれば以下の点のようだ。
  • 観光地の知識以外の勉強
  • トイレ確保
  • 猥談なし
下川原さんはお客さんが車窓から見える花を見て「あの花きれいだな」とつぶやく声から、あれは西洋たんぽぽですと答えられるようにしている。仕事が終わった夜に植物の図鑑を開いて翌日のルートを頭に描いて予習に励むらしい。予習大事だね。

そして北海道ならではというのが、ジンギスカンとビールを楽しむお客さんが多いので、水洗で綺麗なトイレの場所を把握していることも重要らしい。また、猥談なしというのは、札幌の風俗産業目当ての客もいるが、「ソープへ連れてけ」と言われないような雰囲気で運転しているらしい。そういう話は一切しないらしい。

この3点を著者が下川原さんに指摘すると、特に自覚がなかったらしい。唯一気を付けていることは、以下のことらしい。
「私はお客さんの仕事を尋ねたことがないんです。一度もありません。それだけは私しかできないことだと思っています。タクシーを始めた頃の話ですが、運転手の溜まりに行ったら、仲間たちがお客さんについての噂話をしていました。あの客は社長のくせに、連れの女の子には一万円もチップをやったが、オレには1000円だった……。そんな話でした。私はこれはいかんと思った。自分がお客だったら、たまらんです。
 私たちタクシーはいろいろな方をお乗せするのが役目です。なかには仕事を聞かれたくない人だっています。そして、私は人間ができていないからお客の職業を聞いたら反応してしまう。えらいひとだったら卑屈になるし、水商売の人にはおおきな態度をとるかもしれない。私はそれがこわい。お客さんの職業によって自分の態度が変わるのがこわいのです。だから、職業を聞いてはいけないと今でも自分に言い聞かせています。それだけは今でもこれからも守ります。
 私は誰にも教わらずにタクシー運転手になったから、何かひとつだけでも、他の運転手と違う技術を身につけなければやっていけなかった。そうでなければ金がもらえないと思った。家族が暮らしていけなかった。それでお客さんの職業だけはずっと聞かないことにしたのです」
(pp.183-184)
タクシーにはあんまり乗らないけど、これは納得した。このような心がけがあるので植物の知識を勉強したり、あまりぺらぺらとしゃべり過ぎないようにしていった結果、いろんなところから指名が来るようになったようだ。

いろいろなサービス業、そしてそのプロフェッショナルが気を付けていることを読んで、さて、自分のサービス業はどうだろう?と考えたりする。システム開発業、運用が僕の職業であり、そしてそれはサービス業であり、この本に出てくる人たちのようにちゃんとお客様のことを考えられているか?と思った。

こちらの都合で『仕様です』とか言って面倒を忌避してはないだろうか?とか、テスト品質はどうだろうか?とかそもそもお客様が納得されるサービス品質はなんだろうか?SLA(情報システム用語事典:SLA(えすえるえい))を満たすことだけが品質を担保していると言えるのだろうか?もう一歩踏み込んだ、自分自身ができることもきっとあるはずだろうなといろいろと考えた。まだそれが何かははっきりとはしていないけど。

変な自己啓発本みたいにこうすればいいみたいなことが書いて無くて、淡々と著者視点の分析が載っているのがよかった。世の中にはいろんな職業があって、それらの職業で何に気をつけてお客様に評価されているのかが分かってとてもよかった。

多くの職業に就けるわけではないので、このようなお仕事紹介本はとても勉強になる。職業選択の際に参考になる部分もきっと多いだろう。

さて、今日はこれから本番リリース対応のために休日出勤ですぞと。




読むべき人:
  • サービス業に従事している人
  • 就職活動中の人
  • プロフェッショナルになりたい人
Amazon.co.jpで『野地秩嘉』の他の本を見る

bana1 サービス業クリック☆  にほんブログ村 本ブログへ