January 2014

January 30, 2014

007 白紙委任状

キーワード:
 ジェフリー・ディーヴァー、007、テロ、ゴミ、使命感
ジェフリー・ディーヴァーによる新たなジェームズ・ボンドが活躍する小説。以下のようなあらすじとなっている。
20日金曜夜の計画を確認。当日の死傷者は数千に上る見込み。
イギリスの国益にも打撃が予想される。

 イギリス政府通信本部が傍受したEメール――それは大規模な攻撃計画が進行していることを告げていた。金曜まで6日。それまでに敵組織を特定し、計画を阻止しなくてはならない。
 緊急指令が発せられた。それを受けた男の名はジェームズ・ボンド、暗号名007。ミッション達成のためにはいかなる手段も容認する白紙委任状が彼に渡された。攻撃計画の鍵を握る謎の男アイリッシュマンを追ってボンドはセルビアに飛ぶが、精緻な計画と臨機応変の才を持つアイリッシュマンはボンドの手を逃れ続ける……
 セルビアからロンドン、ドバイ、南アフリカへ。決死の追撃の果てに明らかになる大胆不敵な陰謀の全貌とは?
(Amazonの商品の説明から抜粋)
007の大元の原作者はイアン・フレミングである。その作品をもとに一部映画化されており、現在まで007シリーズは全23作まで作られている。映画は初代ボンドのショーン・コネリーの『ドクター・ノオ』から23作目のダニエル・クレイグボンドの『スカイフォール』まで全部視聴済み。しかし、原作小説は一度も読んだことがなかった。

最近図書館に通うことにしたので、近所の徒歩15分ほどの図書館で本書を発見した。以前から本屋で見かけて気にはなっていたが、ハードカバーで高いなぁと思って特に買ったりしなかった。しかし、近所の小規模な図書館でこれを見つけた時に、これは!!と思って真っ先にこれを借りた。そしてなんとか貸し出し期限の2週間以内で読了できた。小説の中でも映画のようなジェームズ・ボンドが活躍していてかなりおもしろかった。ちなみに、この作品で文学作品カテゴリ100冊目となる。

著者のジェフェリー・ディーヴァーもあまり知らず、他の作品も読んだことはない。どうやら映画、『ボーン・コレクター』などの原作者らしい。イアン・フレミングのほうも読んだことがないので、単純に過去のジェームズ・ボンド像とどう違うのかはわからない。せいぜい映画から受ける印象とこの作品を読んだ印象の違いのみしか分からない。

この作品の舞台はアメリカの9.11テロが起こった後のiPhoneが存在する時代となる。この作品ではジェームズ・ボンドの所属はMI6ではなく、海外開発グループという組織の00セクションとなる。この組織は物語中に出てくるMI5やMI6など実在の英国の諜報機関とは違い、架空の組織となっている。ここに属するまでの逸話、Mとの出会い、なぜこの海外開発グループが存在するか?といった背景もしっかり描写されている。

そして、タイトルの『白紙委任状(carte blanche(仏語))』というのは、簡単に言えば、国外での捜査、調査権限を全面にジェームズ・ボンドに任せるというような内容。そのためには手段は問わず、というような感じだが、英国国内の諜報活動などはMI5などの管轄となって、行動が制限されるようだ。本書のジェームズ・ボンド像は、30代前半で体重78キロ、黒髪で右頬に8センチほどの傷痕がある。元海軍予備中佐階級で殺しのライセンス(00)を持つエージェントである。このボンド像はきっと映画の歴代ボンドの誰にも当てはまらない、新生ボンドとして脳内でイメージしながら読んだ。でもところどころダニエル・グレイグが近いかなと思ってイメージした。

愛車はベントレー・コンチネンタルGT、時計はロレックス、軍所属時は射撃の腕で表彰されるほどで、ロッククライミング、スキーが得意なスポーツで、語学の才能もあり、ロシア語は原文で読めて、毎日10キロのランニングを欠かさず、ワインにも詳しく、ドライビングテクニックは一流で、システマをベースとした格闘もでき、当然頭脳も優れており、さらには魅力的な女性とのウィットに富んだ会話で相手を惹きつける。

そんなジェームズ・ボンドが映画でも見ているように脳内で映像化されてくる。お決まりのウォッカマティーニの注文のセリフ『ステアではなくシェイクで(「Vodka Martini, Shaken, not stirred.)』といった部分やQによるiPhone型の盗聴器やのどスプレー?型の小型カメラなどのガジェットも出てくるし、当然ボンドカーも出てくるし、ボンドガールのような女性キャラも出てきて、ジェームズ・ボンドはセルビア、英国、ドバイ、アフリカと黒幕を探し出すために世界を飛び回り、銃撃、格闘シーンなどもしっかり描写されている。

映画だけに関しては、ダニエル・クレイグ以前の007作品はどう見てもコメディ調なスパイアクション映画なのだけど、それ以降の作品はよりシリアスな展開となっている。特に物語の深さがスカイフォールで現れていたと思う。つまり、なぜジェームズ・ボンドは007の使命を果たすのか!?という意識的な部分がより描かれていた。それがこの小説でも2段組み400ページ超の長さの間に描かれており、単純なエンタメ作品に終始していないのがよかった。

ついつい映画などを見ていると、トムフォードのスーツに身をまとい、オメガの時計、アストンマーチンのボンドカー、ウィットに富んだセリフ、ボンドガールとの駆け引きなど表面的なところにあこがれを抱き、ロールモデルはジェーム・ボンドだ!!とか意識してしまいがちになる(どうでもいい話だけど、『慰めの報酬』公開時にコラボとしてauからガンバレットモデルのフルチェンケータイがかつて発売され、それを買ったくらい意識してたww)。

しかし、特に本書を読んで、ジェームズ・ボンドが007としての使命を果たす意識などを学べた気がする。目的のためには速攻で敵の企業と取引できるニセの人物に成りすますために必要な知識を頭に叩き込んだり、格闘術や射撃の訓練も常に必要で、外国語も数か国は軽くできなくてはいけないし、仲間の力をうまく借りたり、そして命を懸けなくてはいけない。僕も仕事でそこまでの意識で取り組むべきなのだなと思った。そこまでやるから優秀なプロフェッショナルなのだなと。もちろん死なない程度にねw

長いけどすごく読みやすくて面白かった。図書館に返すのがもったいないくらい。買って読めばよかったなと思う。そして本棚に堂々と飾っておきたいと思える作品だった。



007 白紙委任状
ジェフリー・ディーヴァー
文藝春秋
2011-10-13

読むべき人:
  • 007が好きな人
  • ロールモデルはジェームズ・ボンドな人
  • プロフェッショナルになりたい人
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January 27, 2014

【雑感】Age++、そして30歳へ

1月27日、今日は僕の誕生日である。30歳になった。

30歳。十の位が一つ上がった。年齢一桁から10代になるのは、よく覚えていないし、20歳になるときは、酒が飲めるのだという認識でしかなかった。しかし、30歳はやはり意識が異なってくる。

30歳という年齢に関して、かつて以下の本を取り上げた。作家の保坂和志のエッセイで、「三十歳までなんか生きるな」というのは、著者が大学進学をする前あたりに、年齢とともに自分の考えることが、十代の自分から軽蔑されるような人間になっていくことを恐れて、「三十歳までなんか生きるな」という言葉を紙に書いて壁に貼り付けようとしていたらしい。そして、最後には自分が30歳になるなんて思ってもなかったよと示している。

このブログが始まった22歳、社会人になったばかりのころは、いろいろとどん底状態だったので、自分が30歳まで生きられないのではないかと不安と絶望を感じて、未来がないのだと勝手に思い込んでいた。当時発覚した腎臓病の持病がどんどん悪化して30歳ころには人工透析になっていて、最悪死んでいるんじゃないかと思っていたときもあった。でもそれは幸い杞憂に終わった。今でも治るわけではない持病ではあり、当時よりちょっと血液検査の結果がよろしくないけど、それでも人工透析になるほどではなく、ましては死ぬような重症でもない。

しかし、それでも30歳までに死にかけるというか、死を意識することはよくあった。それは別に自殺衝動というものではなく、単に2008年の3月ごろに食中毒になり、吐き下しで意識が朦朧とし(しかも持病の薬の副作用で感染症で重症化するから特に気をつけろと医者に言われていたのもあり)、初めてリアルな自分の死を体感した。また、2011年3月11日の東日本大震災はやはり多くの人の死を間接的に目の当たりをするに当たり、人は何がきっかけで死ぬかは分からないのだと思った。つまり、平均寿命が80歳くらいの国に生きていても、平均など何の意味もない、30歳を迎える前に死ぬ可能性も少なからずあったということだ。

高校生とか大学生のころに昔思い描いていた自分の30歳のイメージ像とリアルな現状の30歳を比べてみると、なんだかパッとしないなという感じだな。もっと仕事がバリバリできているのだと思っていたし、20代後半で結婚している想定だった。言うまでもなく、そんな結婚などとてもハードルが高いイベントだと思いつつ今婚活中でw仕事も持病の影響もあったりで、思うようにアクセル全開で働けなかったりもして、もどかしい思いもした。

特に30歳になるまでの20代を振り返ってみると、ずっと病んでいたなと思う。大学3年生くらいのときから持病の兆候があったり、社会人になるときに発覚した時にはついでに肺も病んでいたと知らされた(肺は特に重病でもなく、すぐに完治した)。腎臓病を患うと腎臓での窒素化合物などの不純物を完全に消化しきれなくなり、それが老廃物として血液中に残って、尿毒症となってしまう。なので、その不純物がたくさん出ないようにたんぱく質が高い肉、魚、卵、また塩分を抑えるという食事療法が必要になる。

社会人になった22歳の時から食生活や生活リズムを強制的に変えられてしまった。食事というのは毎日のエネルギー摂取だけではなく、会食、旅行、飲み会などいろいろとお楽しみイベントにも付随するもので、持病発覚当初は、そういうものが今後全くできないのだと思い込んでいた。どこにも旅行に行けず、誰とも満足に食事も楽しめないのだと。

しかし、それもなんとかなった。できないというのは思い込みに過ぎなかった。なんとかリスクを越えて海外旅行にも行ったし、いろんな人と出会って飲み会なども参加できた(もちろんある程度は気を使ってその場でも食べすぎないようにはしているけど、完全には食事制限は難しく、若干体に負担を強いているのは間違いないが・・・)。

どうしても30歳という年齢を迎えると、不安と焦りのようなものが多いのは確か。自分の仕事で会社でもそこまで評価が高くないし、この仕事をずっと続けて良いものかとか、持病があったりして、いつまで健全に働けるのだろうかとか、結婚できないんじゃないか?とか、母親が実家で1人住んでいる状況で(兄は東京で1人暮らし、父は22歳後に死別)、自分は東京で生活していていいものか?などなど、不安や課題の種は尽きることはない。また、思い描いていた未来像と現実は全然違って、できなかったことばかりに目が行ってしまう。

それでも、まずは純粋に30歳まで生きられたことに喜びを感じて、感謝の意を表したいと思う。ここまで一人ではまず生きられなかった。いろんな人に支えられてきたと思う。リアルで自分を知っている人、そうでない人も含めて、改めて、ありがとうございます。

できなかったこともたくさんあるけど、自分が意識していないだけで、思った以上にできていることもあるはず。まずはこのブログがこんなに続くとは思ってもいなかったし。8年で700冊以上読んで書きながらどう生きるか?を考えたし、映画もたくさん見たし、英語の勉強もしたし、システム開発業のイロハもそれなりに習得したし、コーチングを通して徹底的に自問自答したし、またいろんな人と出会って、友達もたくさんできた。何もしてこなかったわけではない。30歳を迎える準備もちゃんと少なからずやっていた。

孔子曰く、『三十にして立ち』と示している。また、個人的には村上春樹がどこかで書いていたように、30歳成人説を支持したい。一部のプロスポーツ選手などは、20代でトップランクにいる人もいたりする。しかし、大多数の人は何がやりたいかもわからず、例え分かっていても、できているわけではないかもしれない。いろんなことにチャレンジしながら試行錯誤して自分を見出していく期間が20代なんじゃないかと。そして、本当にやりたいこと分かってきて、それを実行するための経験値や知識などが備わってくるのが30歳くらいからなんじゃないかと思っている。

自分の人生で言えば、10代は自分がよく分からず、気づいたら何となく終わっていた。20代はいろいろと翻弄されてしまったけど、30歳以降をよりよく生きるための土台作りだった。今まではなんとなく生きてきて、序章のようなもので、これからが本編の始まりなんじゃないかと思っている。もちろん、30歳からの人生のためにこれまでを犠牲にしてきたというわけではない。結果的にそうなってしまった部分もあるけど、これから本当に自分の人生を生きられるような、そんな境地。年齢を重ねる不安もあるけど、どこかで30歳になることを待ち望んでいたという側面もある。

そして30代でやりたいこともたくさんやって、一番楽しめて充実した10年、つまり、人生の黄金期としたい。


January 24, 2014

実践ソフトウェアエンジニアリング

キーワード:
 ロジャーS.プレスマン、ソフトウェア工学、教科書、SE、必読書
ソフトウェアエンジニアリングの世界的権威による、ソフトウェアエンジニアリングについて網羅的に示されている教科書。

目次は内容が多くて、ググっても出版社のページにも詳細なものが全然出てこない・・・。技術書の目次は特に重要な部分なので、仕方なく部、章、節のレベルまでをすべて自分で2時間近くもかかって打ち込んだ・・・(Amazonなどネット書店はともかく、せめて出版社は詳細な目次をすべて示すべきだ。それで買うかどうかの大きな判断基準になるのに、目次が示されていないのは大きな機会損失になっているはず)。目次をみると分かるように全5部構成の32章となる。かなりソフトソフトウェアエンジニアリングの内容について網羅的にカバーされているのが分かると思う。ページ数は649ページと分厚く、値段も税込で7,980円と技術本でもかなり高額の部類。それでも、すべてのソフトウェアエンジニアリングに関わる人は絶対買って読むべき!!な1冊。

著者はソフトウェアエンジニアリング分野のコンサルティングと教育の企業の社長もやっているが、本業は大学教授である。初版が30年ほど前に出版され、時代の技術トレンドなどを反映して改定を重ね、本書の第6版が2005年に出版されている。

本書はソフトウェアエンジニアリングを学ぶ学部3〜4年生、もしくは大学院1年生のための総合的な入門書であることを意図している。また、学生だけではなく、実際にソフトウェア開発に関わる現役の技術者にも使えるような内容となっている。

僕は一応大学ではソフトウェア工学を学部4年だけだけど、割としっかり学んだほうで、そのままSEになった。大学で学んだことがすごく役に立っているなと実感する一方、実際に仕事でシステムの品質、プロジェクトベースでの仕事の進め方、設計、テスト方法などは大学で学んだことだけではどうしても足りないなと思った。要は大学で学ぶことは座学がどうしてもメインになりがちで、最低限知っているけど、自分がそれを使いこなすまでの知識の深さと網羅性が足りないと思った。

そのギャップを埋める助けになるのが本書。確かに一見教科書的な内容と体裁なのだけど、かなり仕事などでソフトウェアの作成、システム開発のプロジェクトで必要、意識しなくてはいけない、気を付けるべきことなどが実践的に示されている。例えば『プラクティス―一般的な考え方』の「5.3プラクティス」で以下のように示されている。
  • 原則1:プロジェクトのスコープを理解する.
  • 原則2:計画活動に顧客を参加させる.
  • 原則3:計画は反復的であることを認識する.
  • 原則4:わかっていることから見積もる.
  • 原則5:計画するにあたってリスクを考慮する.
  • 原則6:現実的であれ.
  • 原則7:計画するにあたって粒度を調整する.
  • 原則8:どのように品質を保証するかを決める.
  • 原則9:どのように変更に対応するかを決める.
  • 原則10:頻繁に計画を追跡し、必要に応じて調整する.
    (pp.80-81)
こんなのはまず大学の講義では学ばないし、たとえ産学連携のプロジェクトをやっていたとしても、こういうのはまず教えてはくれないだろう。実際に仕事をするうえでも、ヒントになる部分、勉強になる部分がかなりある。

本書は32章、650ページもあり、大型本でもあるので読み進めるのが割と大変。僕は2011年にこれを技術力の根本からの強化を目指して、アマぞったのだけど、実際に読み始めたのは2012年で、仕事が忙しかったり他の本を読んでいたりして結局その年には読み終われず、2013年は全く読まず、最近有給で時間ができたので残りのページを読了した。

理想は1日1章のペースで読み進めるのがよいのだけど、さすがに日々の仕事などでそれも難しいかもしれない。なので現実的には3ヵ月から半年の期間で読了することを推奨。逆にそれ以上時間をかけすぎると、内容がすっかり忘れてしまって学習効率が落ちる。しかし、別に全部通読しなくては理解できない構成とはなっていない。全部読むことを推奨するが、日々の業務で特に必要そうな部分を重点的に読んでいくというのもよい。

また、一つプロジェクトが終わって、自分が関わったフェースの反省として該当箇所を読み込むのもよいし、次に始まるプロジェクトで必要そうな技術を予習しておく使い方もよい。

対象読者は学部3年生からとなっているけど、これを学部生で読んでも実践経験が少ないのでちょっとピンとこない部分があるかもしれない。それでも余裕があれ読んでおこう。また、新人SE、特に文系卒だったり理系だけどソフトウェア工学全般を学んできていない人は、遅くとも3年目以内にこれを読了することを推奨する。他にもソフトウェア開発の流れに沿った入門書などが出ており、それをきっかけにソフトウェアエンジニアリングを学び始めるのもよいが、それらだけではどう考えても足りない。いろいろその分野の本をそれなりに読んできたが、網羅性と内容に関してはこれが断然よい。

また、システムエンジニア、プログラマーのどの職位の人でも必ず役に立つ内容と思われる。新人のテスターの場合は、何を意識してテストをすればよいか分かるし、プログラマーであれば、コーディング時に気をつけなくてはいけないことが役に立つし、基本設計から詳細設計をする人も、より上流のプロマネ的な立場にある人も必ず役に立つ内容が示されている。

さらに、SIer的な立場にある人だけではなく、Web系の人にも役立つ内容が示されている。特に第3部がまるまるWebエンジニアリングの内容となっており、アジャイル的な内容も示されているので、そこだけでも読む価値あり。

網羅的な内容となっている反面、それぞれのトピックに対する深さはどうしても足りない。そんなときは各章ごとに論文、有益な本などが示されているので、より詳細に学びたい場合はそちらをあたるのがよい。

ソフトウェア工学、ソフトウェアエンジニアリングを理解せずにシステム開発、ソフトウェア開発を実践することほど不毛なことはない。一見それらを体系的に学ばなくてもうまくいっているようには見える。しかし、顧客の要求がよく分からず、スケジュールは遅れ気味になり、それをカバーするためにデスマ的な働き方をせざるを得ず、実際に出来上がったと思われるシステムはバグだらけで品質に問題があり、しかも顧客の求めていた内容とは違っていた!!なんてことは割とよくある話である。

ソフトウェア、システム開発プロジェクトで生産性が常に高く、スケジュールも遅れなく、バグが全くないような特効薬、つまり『銀の弾丸』は存在しないとしても、それらの仕事に関わる一人ひとりがソフトウェアエンジニアリングをしっかり身につけ、少しでもよりよいものを作れるようになるべきだと強く思う。

最後に第1章に示されているソフトウェアエンジニアリングを学ぶ意義が示されているところを引用しておこう。
 ソフトウェアが重要になるにつれて,素早く,安く,高品質なプログラムを簡単に作成・保守できるような技術も次から次へと生み出されている.Webアプリケーション開発やオブジェクト指向開発,アスペクト指向プログラミング(aspect-oriented programming)のような特定の領域の技術もあれば,Linuxのように多くの領域で活用される技術までさまざまである.われわれソフトウェア開発者は,実現までの時間がかかるかもしれないが,最高の技術を生み出すべく努力を続けなくてはならない.人々は今のところ,仕事を,最適さを,安全を,息抜きを,意思決定を,いやまさに生活そのものをソフトウェアに委ねるという賭けを行っているにすぎないのだ.分の悪い賭けではないことを祈ろう.
 本書は,ソフトウェアを開発する際に駆使すべき技術―ソフトウェアエンジニアリング―の概要について解説している.技術論だけでなく,仕事の進め方(プロセス)も扱う.人々が賭けに勝つために,われわれソフトウェア開発者はソフトウェアエンジニアリングをきちんと修得しなければならないのだ.
(pp.1)
すべてのソフトウェア開発に関わる人はぜひこれを買って読もう。投資した分だけ、必ず勉強になるし、将来的に大きなリターンとなるはず。

少なくともプログラマー、SEとして第一線で活躍していきたいなら、これは絶対買って読め!!!!




読むべき人:
  • ソフトウェア工学を学んでいる学生
  • ソフトウェアエンジニアリングを学んだことがない人
  • ソフトウェア開発に関わるすべての人
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January 19, 2014

[実践]小説教室

キーワード:
 根本昌夫、小説、小説家、読み方、世界
編集者による小説の書き方、読み方本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 小説とは何ですか?
  2. 第2章 書いてみよう
  3. 第3章 読んで深く味わおう
  4. 人はなぜ小説を書くのか―あとがきにかえて
  5. 巻末対談 角田光代×根本昌夫―ゆっくりと、信じたいものを書く
(目次から抜粋)
著者は『海燕』、『野生時代』の編集長を歴任し、小説教室の講座を開催し、新人賞を受賞する作家を読み出したり、島田雅彦、よしもとばなな、小川洋子、角田光代のデビューに立ち会ったらしい。そんな著者によって、小説の本質、小説の書き方、作家デビューの方法、そして小説の読み方、小説を書く意義などが示されている。

こういう小説の書き方指南本は、小説家デビューを目指す人だけが読むような感じではあるが、そうではない、一読者としても楽しめてかつ勉強になる部分が多い。とはいえ、やはり最初は小説家になるにはどうすればいいのか?というところが興味深く読めた。小説家になるには特異な体験よりも、何よりも「やる気」と「情熱」が必要で、どんなに仕事が忙しくても1日1時間は小説について考えられないとダメらしい。

また、小説家は破天荒なイメージがあるけど、一般的には常識人が多く、仕事ができて社会生活をちゃんとやっていける柔軟性がある人は、小説を書かせても一定水準のものを書けるらしい。そして、小説家を目指すなら、小説は当然たくさん読むべきで、特定のジャンルに偏ることなく、幅広く読むのがよいらしい。純文学志向の人はエンタメ系を、エンタメ志向の人は純文学を努めて読むとよいらしい。

一読者としてとても勉強になるのは、やはり小説の読み方の部分。著者曰く、いい小説には「構造」と「重要性」があるようだ。作品解説として村上春樹の『海辺のカフカ』が取り上げられており、村上春樹の小説が国境を越えて支持されているのは構造がしっかりしているかららしい。『海辺のカフカ』はもちろん読んだことはあるので、この著者の読み方はかなり勉強になった。漠然と物語の表面的な部分だけを追っていたのでは気づかないような内容だった。

あと、小説などの物語構造をしっかり把握できるようになると、もしかしたらシステム開発時に対象業務の構造を抑えてシステムに落とし込むとか、大規模で複雑な既存システムの構造を理解するのにも役に立つんではないかなと思った。

最後に小説を書くことの意義が箇条書きでまとめられているので、そこを引用しておこう。
  • 小説を自分で書いてみることで、小説を書くこと、そして読むことの面白さが各段に増してくる。
  • 小説を書いてみることで、過去のある一点から、自分の人生を生き直すことができる。
  • 小説を書くことで、新しい世界が開け、自分が世界そのものなんだ、世界と一体なんだという感覚に目覚めていく。
    (pp.239-240)
別にプロ作家を目指さなくても気軽に小説を書いてみればいいんじゃないかという感じがした。

小説の書き方を知っていること、実際に書いてみることで世の中に出版されている作品がどうスゴいのかがより感覚的に分かるのだろうね。それは、例えば映画のメイキング映像を見て、どうやって撮られているかを知ることで、より映画を注意深く見れるし、他にも絵画でもどういう技法で描かれているかが分かると、他の作品、作家、時代を比較してより深く鑑賞できるのと同じだなと思った。

小説家になりたい人、小説をより深く楽しみたい人にはおススメ。




読むべき人:
  • 小説家になりたい人
  • もっと深く小説を読みたい人
  • 自分の人生を生き直したい人
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January 05, 2014

人生の短さについて

キーワード:
 セネカ、人生、幸福、平静、時間
セネカによる人生論哲学。以下のような目次となっている。
  1. 人生の短さについて
  2. 心の平静について
  3. 幸福な人生について
  4. 訳注
  5. 解説
(目次から抜粋)
もうすぐ30歳を迎えるので、積読状態であった本書を読んだ。正確には5年前くらいに少し読んでいたのだけど、結局最後まで読まずに放置していたので、良い機会だから再読した。本記事では主に、なるほどねと思った部分を引用しておく。読んだのは、茂手木元蔵訳のほう。

人生の短さについて』から以下の部分。
諸君は永久に生きられるかのように生きている。諸君の弱さが諸君の念頭に浮かぶことは決してない。すでにどれほどの時間が過ぎ去っているかに諸君は注意しない。充ち溢れる湯水でも使うように諸君は時間を浪費している。
(中略)
では、おたずねしたいが、君は長生きするという保証でも得ているのか。君の計画どおりに事が運ぶのを一体誰が許してくれるのか。人生の残り物を自分自身に残しておき、何ごとにも振り向けられない時間だけを良き魂のために当てることを、恥ずかしいとは思わないか。生きることを止める土壇場になって、生きることを始めるのでは、時すでに遅し、ではないか。有益な計画を五十・六十歳までも延ばしておいて、僅かな者しか行けなかった年齢から始めて人生に取りかかろうとするのは、何と人間の可死性を忘れた愚劣なことではないか。
(pp.15-16)
いつ死ぬか分からないからね。やりたいことがあるならやっておかないとね、と思った。無駄な時間を過ごさない、とまでは言えないけど、それでもやりたいことを少しずつ実現していってもよい時期なんじゃないのかなと思った次第。

次は、『心の平静について』から仕事に関する部分。
 次には、今から始めようとする仕事そのものの内容を正しく検討するべきである。そしてわれわれの力量と、今企てようとしている仕事とを比較検討するべきである。行為者の力量のほうが、仕事内容を常に上回らねばならぬからである。運搬人の力に余る重荷が当人を圧しつぶすことは必定である。そのうえ、或る仕事は重大なものというよりは、むしろ多産ともいうべきもので、それからそれへと沢山の仕事を生み出す。このような、新しい雑多な用務を生ずる仕事は避けねばならない。また、自由には引き下がれないような仕事にも近づいてはならない。着手してよい仕事は、完成できる見込みがあるか、あるいは少なくとも完成を期待することができる仕事であって、本来の活動以上に広範囲に進む仕事や、留めようと思ったところで、留まらない仕事も放棄しなければならない。
(pp.83-84)
この時代の仕事は、運搬人というように肉体労働のことであるけれど、これは現代のデスクワーク的な仕事にも当てはまることではないかと思った。つまり、無謀なデスマーチは全力で避けろ!!と僕には解釈できたww

いわゆるストレッチジョブと言って、求められる能力が自分の能力以上のプロジェクトで修行してレベル上げするという考えもありだけど、それは程度問題であって、潰れてしまってはダメだしね。まぁ、もともと持病もあるので、今年から特に健康第一で行こうと思った。会社員だとどうしても、仕事は選べないことのほうが多いけど、それでも『ガンガンいこうぜ』ではなく、『いのちをだいじに』で。

岩波文庫はフォントが小さくて読みずらいという部分があるけど、この訳は割と読みやすかった。どこぞの皇帝や哲学者がこう言っているとかいろいろと例を挙げているけど、そこは適当に飛ばして、気になる部分だけを重点的に読めばいいかもしれない。

今年の1冊目はこの本からスタートとなる。年末の記事で示したように、なるべく技術書メインで読み込んでいく予定。そのため、更新頻度が落ちるかもだけど、なんとか2週間に1回のペースで更新はしていきたいなと。想定冊数は、技術書が10〜15冊、小説が10冊前後、その他が10冊前後という配分になるかな。

また、一記事当たりの分量を少し減らすかも。気合が入っていたり、スゴ本の場合は大体3,000字程度の記事になるけど、今年はあまり記事更新に時間をかけすぎないようにしようかと。

ということで、2014年もよろしくお願いします。




読むべき人:
  • 自分の人生について考えたい人
  • 幸福について考えたい人
  • 何かやりたいことがあるけど保留にしている人
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