August 2014

August 31, 2014

あの日の僕らにさよなら

キーワード:
 平山瑞穂、青春、人生、分岐点、歩み
大人の青春小説。以下のような目次となっている。
桜川衛と都築祥子。共に17歳。互いに好意を抱きつつも、一歩踏み出せずにいた。ある夜、家族不在の桜川家を訪ねた祥子は偶然、衛の日記を目にする。綴られる愛情の重さにたじろいだ祥子。何も告げず逃げ帰り、その後一方的に衛を避け続け二人の関係は自然消滅に……。あれから11年。再会を果たした二人が出した答えとは――。交錯する運命を描く恋愛小説。『冥王星パーティ』改題。
(カバーの裏から抜粋)
なんとなく書店でタイトルとあらすじが気になって買って読んでみたらすごくよかった。個人的には好きな作品。

今日でもう8月は終わるけど、夏になると昔を回顧するように青春小説が読みたくなる。ときどき高校生くらいの時期を思い出してみたり、あの頃の自分と今の自分はどう変わってしまったのだろうか?とか、結局何も変わっていない自分がいるのかなとか、高校生のころ体験することのできなかった青春的なことを疑似体験してみたくて、青春小説を読むのだと思う。

本作品は、そんな高校2年生の青春小説でもあるし、それから11年経った28歳くらいの大人の青春小説でもある。つまり、高校生のころ、いろいろあったけど、それから11年経って再会してみて、結局どうだった?っていうのが本作品の大筋。それは青春小説的には割とありふれたテーマ設定なのだけど、それでも本作品は僕に合っていたなと思った。

主人公は桜川衛と都築祥子で、二人は別の高校に通うのだけど、ある日祥子の友達経由で衛に『フラニーとゾーイ』を借りることになって知り合う。そこで、二人は衛の家で本とか音楽の話をよくしていき距離が縮まっていくのだけど、衛が書いていた祥子に対する想いを書き綴った日記を見てしまい、それから疎遠になっていく。祥子はそのまま大学生となり、クラッシクギター部に入り、いろいろと経験していく。

2章までが祥子視点で進み、3章で28歳になった衛視点で物語は進む。高校生のころは人目が気になりすぎて自意識過剰気味で、夢は総理大臣と言っていたが、優秀な証券マンとなっており、さらにはモテるようになって複数の女関係まで築くまでになる。ある日、たまたま都築祥子をネットで検索した時に、祥子と思われる女のあられもない自撮り写真を目にしたことから、再会へとつながっていく。

祥子が衛の日記を読んでしまい、自分自身への気持ちに怖気づいたというのもよく分かるし、そんな日記を書き残してしまう衛も痛いほど共感できた(実際にそんな日記は書いたことはないのだけど)。そして、28歳になった衛の心情もおまいは俺か!!と思ってしまうほどだった。特にそのように感じた部分を一部抜粋。
「俺も、たいして変わらない。どこかで道を間違えてしまったような気がしてならないんだ。でもすでに、あまりに遠くまで歩いてきちゃったから、今さらどうしていいのかもわからない。引き返すっていったって、どこまで?引き返したところで、やり直しがきくのかなって」
(pp.327)
ほぼこんなことを僕もついつい考えがちになってしまう。高校生くらいのころから、自分なりに最適だと思う決断をしてきたはずだったのに、振り返ってみると欲しいものは何も手に入っておらず、肉体的にも病んでいるし、空虚でどこか満たされない境地で時間だけが進んで行って、昔のことばかり思い返している。本当にこの方向性でよかったんだろうか?とか、そして、あのとき、違う決断をしていたら、もしかしたら結婚もしていて、今とは違う生き方でもっと幸せだったのではなかろうか!?と。

客観的には過去を回想しても何も変わらないし、そんなの時間の無駄なのだけど、どうしても現状に満足できず、過去に後悔の念が残っていると、ふと考えてしまう。日曜日の夜とか特にね。そんなときにこの作品を読みながら主人公たちの境遇を疑似体験していくことで、なんだかそういう悔恨の情が浄化されていくような気がした。つまり、もう過去ばかり思い返してないで、これからの未来に目を向けて前向きに生きなくては、と気づかされた。だから、この作品は読んで本当によかった。なんだか自分のために書かれていたような、そんな気さえする。

小説を読むのは、娯楽的な側面もあるし、教養のためという側面もある。しかし、それだけが小説を読む意義ではなくて、この作品のように、自分の中にあるわだかまりを解消してくれたり、思いがけずに生きていくうえでの示唆を獲得できることがある。50冊に1冊くらい、そういう作品に出会うことがあって、読了後は言いようもない僥倖で満たされる。

400ページ近くあってなかなか長編なのだけど、とても読みやすく、主人公たちに共感して読めると思う。特に、高校生くらいのときにいろいろとあった人には。




読むべき人:
  • 30歳前後の人
  • 高校生くらいの青春小説が読みたい人
  • 前向きに生きていきたい人
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August 23, 2014

ハローサマー、グッドバイ

キーワード:
 マイクル・コーニイ、SF、青春、戦争、凍結
SF小説。以下のようなあらすじとなっている。
夏休暇をすごすため、政府高官の息子ドローヴは港町パラークシを訪れ、宿屋の少女ブラウンアイズと念願の再会をはたす。粘流が到来し、戦争の影がしだいに町を覆いゆくなか、愛を深める少年と少女。だが壮大な機密計画がふたりを分かつ…少年の忘れえぬひと夏を描いた、SF史上屈指の青春恋愛小説、待望の完全新訳版。
(カバーの裏から抜粋)
この作品については、何の予備知識も先入観も持たない状態で読み始めるのがおすすめ。よって、以下は読んでも読まなくてもよい。

舞台は地球ではないとある惑星で、地球の人間と同じような人たち、文化がある世界。そこで12歳くらいと思われる少年ドローヴは、毎年夏に港町で家族と過ごすことになっている。去年出会った美少女、ブラウンアイズに会うことを楽しみにしており、そこでさらにリボンという少女、さらにちょっと嫌な奴で同じく政府高官の息子のウルフたちと出会う。そんなひと夏の青春物語として始まる。

中盤までは微笑ましいというか、ほんわかした少年の青春小説っぽい雰囲気。そして次第に戦争の話が出てくるが、突然他国が攻め込んできて街を蹂躙するというほど戦争っぽくなく、なんだか抽象的な印象を受ける。SF的な要素としては、アイスゴブリンというような湖の水をすべて凍らせて人を捕食するようなやつや、ロリンという毛むくじゃらで人型だが、しゃべることはしないが、ある程度の知能があり人になつく生物、さらに馬のようなロックスという生物も出てきたりする。

単純な甘酸っぱい青春的なものなら別に地球が舞台でもよかったんじゃないかと思ったりして、終盤まで正直倦怠な感じだった。しかし、地球が舞台ではダメで、結末でΣ (゚Д゚;)ってなったwもうこれ以上は書けないし、ググるのもお勧めしない。読んでからのお楽しみだ。

本書は例によって西新宿のブックファーストのフェアで見つけて、なんとなく買って読んでみたらよかった。西新宿のブックファーストのフェアは当たりが多いなぁ。

本書の続編が去年あたりに出版されたようなので、そっちもチェックだな。夏はSF小説とか青春小説が読みたくなる。本書はそのいいとこどりで、そしてスゴ本だった。



ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)
マイクル・コーニイ
河出書房新社
2008-07-04

読むべき人:
  • 夏っぽい作品が読みたい人
  • 青春小説が読みたい人
  • どんでん返しものが好きな人
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August 17, 2014

ミッキーマウスの憂鬱

キーワード:
 松岡圭祐、ディズニー、青春、舞台裏、仕事
夢の国、ディズニーランドが舞台の青春小説。以下のようなあらすじとなっている。
東京ディズニーランドでアルバイトすることになった21歳の若者。友情、トラブル、恋愛……。様々な出来事を通じ、裏方の意義や誇りに目覚めていく。秘密のベールに包まれた巨大テーマパークの〈バックステージ〉を描いた、史上初のディズニーランド青春成長小説。登場人物たちと一緒に働いている気分を味わってみて下さい。そこには、楽しく、爽快な青春のドラマがあるはずです。
(カバーの裏から抜粋)
冒頭からどうでもいい話なのだけど、先月の3連休に家族と25年ぶりにディズニーランドに行った。ディズニー、ふーんって感じだったのだけど、行ってみて夢と魔法の国にしっかり影響されてしまっているような自分がいる気がした。そして、新潮社の夏の文庫フェアにこの作品があったので、読んでみたわけだ。

主人公は準社員としてオリエンタルワールド(作中はこの企業名)が運営するディズニーランドに美装部としてなんとか採用される。そこでの仕事はキャストに着ぐるみを着付けしたり、壊れた部分を補正したりする。しかし、主人公はもっと華やかな仕事を想像していたらしく、仕事に不満を持っていたり、なんでも思ったことを口にしたり、他の部署の仕事に余計なことを言ったりし、空気の読めない若干痛い存在で、正社員からも疎まれたりする。キャストとして働く間にさまざまな事件が起きたりして、主人公がディズニーランドの舞台裏で3日奮闘するお話。

半分くらいまで主人公に共感するどころか、いらっとさせられるキャラ設定となっている。それはもちろん、作者による意図的なもので、キャラがしっかり立っていると言える。

そして、やはり世界観が実在のディズニーランドがモデルということもあって、一度でも行ったことがある人はその舞台を想像しやすいだろう。あと、舞台裏的な話としては、ウエスタンリバー鉄道の近くに見えにくいところにキャストが移動する道があり、鉄道の乗客から見えないように信号待ちする必要があるとか、クラブ33というVIPルームがあるとか。また、実際に存在しない部署、調査部といった設定も出てくる。そういう実在の設定と虚構の織り交ぜられた世界観などを読み解いていくのもディズニーファンなら楽しめると思う。

あとは、主人公を通して、夢と魔法の国を維持していく人たちの舞台裏についてのお仕事論的な小説としても読める。主人公はゲストとしてディズニーにあこがれを抱いたことがきっかけで働きたいと思い、そこからキャストの立場になるのだけど、そのキャストの苦労やキャスト同士の人間関係的な話など、いろいろと興味深く読めた。

さらには事件が発生したりして、それを主人公ともう一人準社員の少女と一緒に奮闘していくというのもよくて、思ったより没頭して楽しめた。ディズニーに行った後だからなおさらかな。

実際にディズニー行ったときに、キャストの人たちはいろいろと大変だろうなぁと思った。また、夢と魔法の国と言ってもいろいろとあるんだよねぇ。あと、ディズニー行ってから改めてこのCM見ると、ディズニーってまさにこんな感じだよなと思った。このCMが流れ始めたころは、なんだこのリア充的な世界観は!!と思っていたのだけどw



おっと、最後に一番大事なことを示しておこう。
この物語はフィクションです。
実在の団体名、個人名、事件とは全く関係ありません。
その為、実在しない名称、既に廃止された名称等が含まれています。
(pp.269)
作中にミッキーを演じる人が出てくるのだけど、もちろん、中の人などいない!!w

siro




読むべき人:
  • ディズニーランドが好きな人
  • キャストとして働いてみたい人
  • 自分の仕事について考えたい人
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August 09, 2014

天人五衰

キーワード:
 三島由紀夫、完結、人生、衰え、心々
豊饒の海シリーズ第四巻。以下のようなあらすじとなっている。
妻を亡くした老残の本多繁邦は清水港に赴き、そこで帝国信号通信社につとめる十六歳の少年安永透に出会った。彼の左の脇腹には三つの黒子が昴の星のようにはっきりと象嵌されていた。転生の神秘にとり憑かれた本多は、さっそく月光姫の転生を賭けて彼を養子に迎え、教育を始める……。存在の無残な虚構の前で逆転する<輪廻>の本質を劇的に描くライフワーク『豊饒の海』完結編。
(カバーの裏から抜粋)
第三巻があまりにも仏教思想的な話が多くて、物語中の本多の思考の渦に飲みこまれたような感覚であったけど、最終巻はそこまで観念的なことはあまり描かれていなかったように思える。結末を除いては。

第四巻で転生したとされる安永透は、中卒で両親を早くに亡くしており、静岡の清水港で船の行き来を港に連絡するという仕事をしていた。たまたま訪れた本多がその少年の本質を見抜き、養子に迎え入れる。安永透は美しく、またIQ150もある聡明な人物で、高校に遅れて入学するも、その後東大に進学している。

しかし、本多によるテーブルマナーやそこでの会話など上流階級のお作法を仕込まれていくうちに、安永透もまた本多の醜悪さを見抜き、しだいに本多に対して暴力的にも反発していく。

安永透は家のメイド3人を毎晩変えて過ごすという何ともやりたい放題なことをしており、本多は本多で安永透が転生の結果であれば20歳ごろに宿命的に死ぬことをかけていたのだが、実際は死ななかった。そして、本多は覗きの趣向から警察沙汰にもなり、老齢な醜態もさらしていく。

前三巻は転生した人物(一巻は大元となる松枝清顕)が主人公として焦点をあてられているのだけど、本作は安永透にあまり焦点があてられていない。全編を通して、物語の裏主人公は、転生を見守ることしかできない本多繁邦なのだなと思った。タイトルにもある天人五衰というのは、死の直前に現れる5つの兆しのことを示すらしい。やはり本多の視点を通して、三島由紀夫という男が最後に何を考えていたのかが垣間見えるような気がする。この作品は連載を1年早めて完結したようで、この原稿を書き終わってから自決に向かったようだ。だからある意味遺書的な内容でもある。

結末はあまり語れないのだけど、これまでの内容をすべて覆すようで、読んでいるときは三,四巻は蛇足的な感じがした。しかし、結末がこの転生の物語を収束させるためには必要な気もする。理屈ではいまいち腑に落ちない側面も残るが、そこは条理を超えたものを感じるしかないのだろう。

もう少し年老いた時に読めば納得できるのかもしれないなと思った。また、何とか全四巻、案外挫折することなく最後まで没頭して読めた。全四巻を通して一番面白いと思ったのは『奔馬』だな。これが一番三島由紀夫を体現しているような気がする。

18歳の夏休みに金閣寺を読んで挫折し、三島由紀夫の作品からずいぶんと遠ざかっていたが、挫折を克服できたような境地になった。




読むべき人:
  • 転生の物語が好きな人
  • 衰えを実感している人
  • 人生について考えたい人
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August 02, 2014

国道沿いのファミレス

キーワード:
 畑野智美、ファミレス、地方、人間関係、ダメ人間
2010年の小説すばる新人賞受賞作品、以下のようなあらすじとなっている。
佐藤善幸、外食チェーンの正社員。身に覚えのない女性問題が原因で左遷された先は、6年半一度も帰っていなかった故郷の町にある店舗だった。淡々と過ごそうとする善幸だが、癖のある同僚たち、女にだらしない父親、恋人の過去、親友の結婚問題など、面倒な人間関係とトラブルが次々に降りかかり…。ちょっとひねくれた25歳男子の日常と人生を書いた、第23回小説すばる新人賞受賞作。
(カバーの裏から抜粋)
夏だし、本屋で展開されている集英社のナツイチの中で、本書がなんとなく気になって買って読んでみた。地方郊外(おそらく山梨あたり)ファミレスで正社員として働く25歳の男が主人公で、そこのファミレスのバイト仲間、社員、自分の家族、友達たちの人間関係が描かれている。

なんだか登場人物にダメ人間が多く出てくる印象。どこか冷めた態度の主人公、主人公が交際している年上の貞操観念が欠落している女、そして愛人を作って常にその女のところに行っている主人公の父親。特にこの3人がダメ人間。それが何となく不快感を抱かせる。

また、なんだか読んでいて次第に苛々とさせらる作品であった。別に胸糞悪くなるような内容ではない。しかし、安易な展開というか登場人物の会話のやり取りに突っ込みたくなるような部分が若干ある。そういうのを意図的に狙っていたのであれば、なかなかスゴいと思うのだけど、どうもそうとも思えない。

300ページ近くあるのだけど、そこまでの尺にするほどの内容がありそうであんまりなかった印象。ファミレスという舞台もあんまり活きていないような。別にファミレスでなくてもよい気もした。そんな作品。

まぁ、もらった図書カードで買った本だから別にいいかな。暇で地方郊外でよくファミレスに行ったりする人は読んでみたらいいかも。あと実際にファミレスで働いているような人も。




読むべき人:
  • 地方で暮らしている人
  • 年上の女性に好かれる人
  • ダメ人間な人
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