October 2014

October 25, 2014

投資家が「お金」よりも大切にしていること

キーワード:
 藤野英人、投資、企業、世の中、未来
ファンドマネージャーによるお金について考えている本、以下のような目次となっている。
  1. 第1章 日本人は、お金が大好きで、ハゲタカで、不真面目
  2. 第2章 日本をダメにする「清貧の思想」
  3. 第3章 人は、ただ生きているだけで価値がある
  4. 第4章 世の中に「虚業」なんてひとつもない
  5. 第5章 あなたは、自分の人生をかけて社会に投資している、ひとりの「投資家」だ
(目次から抜粋)
最近は小説ばかりだったので、少し違ったジャンルで軽めに読めるものをと思っていた。また、書店でずっと本書が気になっていたし、帯に『インベスターZ』のお勧め本として紹介されていたので買った。『インベスターZ』はドラゴン桜の著者による株式投資漫画で、チェックしている漫画だ。株式投資の概念などが学べるのでお勧め。

さて、本書の著者は野村證券、JPモルガン、ゴールドマン・サックス系の資産運用会社を経て、レオス・キャピタルワークスを創業して23年間で5700人の社長に取材を重ねて着た投資のプロである。そんな著者によって、一般的なお金の概念や経済、投資の本質、世の中の企業のあり方についてわかりやすく示されている。前半部分は日本人一般のお金に対する考え方が示されている。曰く、大半は金儲けは悪だと思っており、アメリカでは収入の多寡にかかわらず寄付する人が76%なのに対して日本人は36%(そのうち家計に占める寄付額は0.08%、2500円)ほどでしかなく、自分のお金や現金を守ることしか考えておらず、さらに他人を全く信用せず、新興国に対して短期でしか投資しないので日本人こそハゲタカであると。

結局日本人はお金しか信じておらず、何もお金について考えていないとバッサリ切り捨てている。

前半はふーんって感じで読んでいたけど、後半になるにつれてなるほど、勉強になるなと思うことが多かった。4章の『世の中に「虚業」なんてひとつもない』では、ITや金融、コンサルティング会社のビジネスは「虚業」であると言い切る人は「無知」をさらけ出していると言い切っている。つまり、提供する商品なりサービスがあり、それを受け入れてるお客さんがいる限りその仕事や会社に価値があるのだと。それに関わる血の通った人間のいることを想像できず、社会や経済のことも何も理解できていないのだと。

僕は(コンサルよりの)IT業界に身を置いているので、さすがに自分の仕事が虚業だなんて思っていないが、金融業界に対しては偏った先入観などがあったことは認めざるを得ない。特にリーマンショックのからくりを解説する映画『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実 [DVD]』を見た後は、某GSなどの投資銀行などはみん自分たちが儲けることしか考えておらず、世の中に不景気をもたらした諸悪の根源じゃないか!!と思っていたのだが。まぁ、いろんな側面があるんだなということが分かってよかった。

著者の考える投資の目的は「世の中を良くして、明るい未来をつくること」とある。そして、投資について以下のように言及されている。
 少し青臭く聞こえるかもしれませんが、明るい未来をつくること以外に、投資の目的はありません。
 会社やビジネスに投資(株式投資・不動産投資など)することは「直接的に、世の中を良くすること」であるし、自己投資も「間接的に、自分を通して世の中を良くすること」だと考えています。
 当然、消費をすることも投資であれば、選挙で一票を入れることも投資です。
(pp.202)
なるほどと思った。

他にも真面目な会社しか長期的に利益を上げられないなどの著者独自の視点があるので、とても勉強になる。その辺は実際に株式投資をやっていくうえでかなり参考になる視点だと思う。そこは読んで確認してほしい。

本書はこれからの日本を担う10代、20代の人に読んでほしいとあるので、かなり読みやすい。あとは本書執筆のきっかけになったのは、著者が講師をしている明治大学の「ベンチャーファイナンス論」によって、ある学生が新たな視点を得られたことによるらしい。へーっと思った。そのような講義が受けられる学生が羨ましいとも思った。

就職活動中の人や社会人になりたての人にはとても良い内容だと思う。特に学生時代なんかは、世の中にある企業などは完全にイメージ先行で判断を下しがちであるし、それぞれの企業のビジネスの本質的な部分に対する視座が確立されていないようなものだからね。読んでおいて損はない一冊かなと。あとは実際に株式投資する人なども読んだらいいと思う。




読むべき人:
  • 就職活動中の学生の人
  • 株式投資をやっている人
  • 世の中を良くしていきたいと思っている人
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October 19, 2014

何かが道をやってくる

キーワード:
 レイ・ブラッドベリ、ファンタジー、ハロウィン、悪夢、時間
ファンタジー作品。以下のようなあらすじとなっている。
ある年の万聖節前夜、ジムとウィルの二人は13歳だった。そして彼らが一夜のうちに大人になり、もはや永久に子供でなくなってしまったのは、その10月のある週のことだった……。夜の町に訪れるカーニバル、その回転木馬の進行につれて、時間は現在から過去へ、過去から未来へと変わり、それと同時に魔女や恐竜が徘徊する悪夢のような世界が現れる。抒情詩人が贈る一大ファンタジー。
(カバーの裏から抜粋)
物語はある年の10月24日の真夜中の3時を過ぎたころから始まる。あらすじにある万聖節前夜というのは、ハロウィンのこと。家が近所同士のジムとウィルは、ある日やってきた見慣れないカーニバルの一団の一味が真夜中に回転木馬に乗っているのを目撃する。乗っていた人間は回転木馬が1周するごとに若返っていき、大人から12歳くらいの少年の姿に!!また鏡やガラスの見世物小屋に入ると、年老いた自分に出会ったりし、その世界に捉えられてしまう人が出てくる。カーニバルを率いるダーク、その仲間の盲目の魔女、一寸法師、骸骨男、その他奇妙な奴らはみな闇の住人だった!!少年二人とウィルの父親で54歳、図書館の管理人をしているチャールズがそいつら闇の住人に恐れつつも対峙する!!というお話。

読む前は何も予備知識がない状態だったから、ファンタジー、というのだからもっとほんわかした感じだと思っていた。ハロウィンがテーマだからもっと楽しい感じかと思っていたら、思ったよりもダークな内容だった。読んでいる途中はなんだか夢に出てきてうなされそうだなと思った。残虐なシーンとかはないけど、それでもチャールズが痛めつけられたり、ダークの蛇などの入れ墨がうごめいていたり、盲目の魔女が魂のに臭いを頼りに気球に乗ってきたりと不気味だが、図書館でチャールズとダーク、魔女などが対峙するシーンなどはハラハラしつつ読んだ。

主人公たちが13歳だから、その年齢くらいに読めば冒険譚のような感じで読めると思う。もちろん僕もそっちのほうを意識して読んでいたのだけど、注目すべきはウィルの父親のチャールズではないかとも思う。ある意味裏主人公的なポジション。妻と子供がいて、図書館の管理人をしているが、特にそれ以外にとりえもなく、なんとなく過去や若さに対する郷愁を抱いている。そして、回転木馬によって若返る闇の敵たちと対峙することで、もう一度その郷愁の根本を追体験しているような、そんな印象がした。だから、もうちょっと歳をとってから再読するとまた違った印象を受けるのだろうなと思った。

没頭できるシーンがあれば、そうでない部分もある。ブラッドベリ独特の描写もあって読ませるのだけど、続けて読み進めるのがしんどかった。そもそもフォントが小さいし、あとAmazonのレビューを見ているとどうも翻訳がよろしくないようだ。いまいち全編没頭しきれなかったのは、きっとそのせいだ!!ということにしておこう。

あとレイ・ブラッドベリの他の作品で読んだのは以下。日頃くたばれハロウィン!!、日本では流行らないんだよ!!(特に深い意味も体験もないけど)と思っている身としても、なかなか楽しめる作品だったw



何かが道をやってくる (創元SF文庫)
レイ・ブラッドベリ
東京創元社
1964-09-30

読むべき人:
  • ハロウィンが好きな人
  • 10代の少年の人
  • 60歳くらいの過去ばかり回想している人
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October 05, 2014

パラークシの記憶

キーワード:
 マイクル・コーニイ、SF、ミステリ、凍結、真相
SF小説。以下のようなあらすじとなっている。
冬の再訪も近い不穏な時代、村長の甥ハーディは、伝説の女性ブラウンアイズと同じ瞳の色の少女チャームと出会う。記憶遺伝子を持つこの星の人間は、罪の記憶が遺伝することを恐れ、犯罪はまず起きない。だが少年と少女は、背中を刺された男の死体を発見する…名作『ハローサマー、グッドバイ』の待望の続編。真相が今語られる
(カバーの裏から抜粋)
前作は『ハロー、サマーグッバイ』で、こちらは1975年に書かれたもので、それから時間がたって、1990年代に本書、続編が書かれたようだ。時代設定は前作から数百年は経っていると思われる惑星で、人型の異星人、スティルク人が住んでいて、地球人より少し小柄で、狩猟や漁業を営んで男性と女性が別の集落で暮らしている。一応モーター車などの機械文明も一部あるが、前作よりも少し衰退したような文明設定になっている。

そして人々はオブジェクト指向の親クラスを継承するクラスは親クラスのメンバを自由に参照できるように、先祖の記憶を生まれながら継承している。その記憶を見るために星夢といって意識的に先祖の記憶をさかのぼるように眠りについて、過去の経験値を受け継ぐ。そのため、本に頼ることもない。その記憶を一番さかのぼれるものが村長になるという風習が残っており、22世代前くらいが一番古い記憶になる、という設定になっている。

主人公は17歳の少年で、だんだん寒さが厳しくなり、食糧難になりかけている村にいるという状況で、殺人死体を発見してしまう。星夢により殺人など起きることのない文化なのに、それが発生してしまい、自分に嫌疑をかけられ追われつつ謎を解いていかなくてはいけない。そこで数世代前からやってきて居ついている地球人の力を借りつつ、真犯人も追いながら、迫りくる厳しい凍期にも対処しなくてはいけないというお話。

前作も読んだ場合は、前作とどちらが面白いかと比べたくはなる。しかし、個人的にはこれは、2作品で1セットの内容で比べる意味もないかなと。遅れて出版された上下巻のような位置づけ。なぜなら前作だけでは面白さが半減してしまうかもしれないから。つまり、前作だけを読むと、なんという悲劇!!と読み間違えてしまう可能性があった。僕は完全に読み間違えていた。インターネッツが発達していない時代、まして本作が出版されていない状況だったら、前作の真相はわからないままだったろう。

つまり、前作の結末の真相が描かれている。本作は去年(2013年)に河出文庫で出版されたようで、本当に出版されてよかったと思う。

本作では主人公と舞台設定が若干変わっている。前作の主人公たち、少年ドローヴと少女ブラウンアイズは神格化されて伝説の人物となっており、直接的には出てこない。でもそういう前作の登場人物がところどころ物語のキーとなるのがRPGの続編っぽい面白さの要素になっていて好きな展開。あと前作の二人は12歳くらいの少年少女なので、ほんわかとしているけど、こっちはソレナンテ・エ・ロゲ!?裏山けしからん!!ww(ソレナンテ・エ・ロゲ - アンサイクロペディア)な展開が多くて恋愛要素としては若干何とも言えない部分もある。

しかし、本作の全体像としては、訳者解説に以下のように示されている。
 前作巻頭の作者の言葉をアレンジして説明するなら、
これは恋愛小説であり、ミステリ小説であり、SF小説であり、さらにもっとほか多くのものでもある
(pp.521-522)
いろんな要素が描かれていて、楽しめた。個人的にはSF要素が一番よかったかな。

前作を読まなくても楽しめるような内容にはなっているけれど、絶対に読んだほうがいい。特に前作を読み終わった後、どういうことだってばよ!!Σ (゚Д゚;)ってなった後すぐにググらず本作を読み始めるのが吉。そしたらセットでそういうことだったのか!!と楽しめる内容になっている。

520ページ近くと前作よりもだいぶ長い物語になっており、途中若干中だるみしたりするが、300ページを超えたあたりから面白くなってくる。SF小説にありがちなよく分からない描写なども少なく、読みやすい。ロリンという人型の毛むくじゃらの生物がいたり、村の風習、星夢などの設定も面白く、その独特の世界観に没頭できるし、最後の結末、真相もひっくるめて楽しめた。



パラークシの記憶 (河出文庫)
マイクル・コーニイ
河出書房新社
2013-10-08

読むべき人:
  • ミステリ小説が好きな人
  • 続編RPGが好きな人
  • 独特の世界観に没頭したい人
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