April 2015

April 26, 2015

読書で賢く生きる。

キーワード:
 中川 淳一郎/漆原 直行/山本 一郎、読書論、自己啓発、コンテクスト、人生論
賢く生きるための読書論。以下のような目次となっている。
  1. はじめに 
  2. 第1章 ネット時代こそ本を読むとトクをする。 中川淳一郎 
  3. 第2章 捨てるべきビジネス書、読むべきビジネス書 中川淳一郎/漆原直行/山本一郎
  4. 第3章 駄本を見極め、古典を読破する技術 漆原直行
  5. 第4章 ビジネス書業界の呆れた舞台裏 中川淳一郎/漆原直行/山本一郎
  6. 第5章 人生に役立てるコンテクスト読書法 山本一郎
  7. 第6章 そもそも人はなぜ本を読むのか? 中川淳一郎/漆原直行/山本一郎
(目次から抜粋)
自己啓発書のようなビジネス書は、原典となる本がかならずあり、その内容を著者が改めて焼き直しているような内容のものだったり、明らかに読者をカモのように搾取して儲けることだけしか考えられてない駄本が多いので、そういう本から距離を置いて、もっと賢い読書をしてより良く生きましょうという内容。3者それぞれの読書遍歴や読書論、読み方、お勧め本がとても勉強になる。

著者3人の主催する阿佐ヶ谷ロフトAでやっている『ビジネス書ぶった斬りナイト』に以前行ったことがある。こじんまりとしたイベントスペースで、3人が壇上でビールを飲みながらネットでの話題や最近のビジネス書の傾向について言いたい放題言ってたり、お勧めのビジネス書が示されたりしていた。観客はビールとかつまみを飲み食いしながら爆笑しながら楽しめるイベントだった。著者3人とも別に面識はないけど、ぶった斬りナイトで一方的に生の3人を見たことがあり、そのライブ感が本書にも反映されていると思う。ところどころ出てくる(笑)という部分に共感してニヤニヤしながら読んだりもできて面白かった。

自己啓発書を筆頭としたビジネス書を多く読んだり、それを取り巻くセミナーイベントなどに参加したりと、実際に僕もどっぷりつかっていたので、あるあるwwという感じで読んでいた。いかに自分がカモられていたのかと改めて反省するばかりで。このブログの右の『ビジネス書、自己啓発』カテゴリはある意味自分の黒歴史みたいなものでwこの部分に関しては、本書の著者の1人である漆原氏の以下の本についていろいろと書いてある。ゴミみたいな自己啓発書をどれだけ読んだとしても、自分の血肉にはならずに、著者と出版社を儲けさせるだけのカモにしかならず、都市鉱山じゃあるまいし、そこから金が生まれることもない。仕事だけに関して言えば、安易な本に頼るのではなくて、目の前の仕事に集中して自分の頭で考えて、創意工夫してこなしていくべきで。そして自分一人の力でどうにもならない場合は、同期や上司など身近な人から知恵を借りていくのが一番確実だね。特に20代前半くらいまでの人はね。

まぁ、どっぶり浸かってから、やはりなんか変だなと思いつつ、いろいろと考えたり、他の本を読んだりして、結果的にもっと良書を読んでいくべきだなと20代終盤までに気づいて、今に至る。

あと山本氏の以下のコメントになるほどなぁと思った。
山本 あらゆる知識と技術は、人間がどうより良く――賢く合理的に生きるかということのためにあるわけです。知識は「より良い生を享受し、いかにあなたは死ぬべきか」ということを教えてくれるもの。進学、就職、結婚、出産、親の介護、自分の老い、そして死に支度。すべてのライフイベントがそうじゃない?
(pp.291)
僕が読書をこのブログを書き続けているのも、モテたいからとかアフィリエイト料(゚д゚)ウマーとか(月1万円も儲からないぞ!!w)、そういう低俗な理由だけではなく、根本的にはより良く生きるために尽きる。読書ブログをネットに更新するということは、自己顕示欲を示すようなものだし、そしてそこには誤読もあったり醜態や恥をさらしているような側面もある。しかし、それ以上に良い本を読んで、考えて、書き続けるという行為に自分の人生がより良い方向に向かう、と信じているからに他ならない。なので、9年目に突入したこのブログも、そう簡単には辞めることはないのだなと、改めて本書を通して思った。

本書は3人のそれぞれのキャラが全面的に出されており、それぞれ異なる視点からビジネス書、自己啓発書、読書を論じている。ネタっぽい話題も多く、それがまた面白い。そして3人に共通するのは、みな真摯的に読書について考えられているのだなぁと思った。似たような自己啓発書を何冊も読んでカモられるよりも、本書を読んだ後、良書を読み続けていくほうがよいに決まっている。そしてよりよく生きましょう。



読書で賢く生きる。 (ベスト新書)
中川 淳一郎、漆原 直行、山本 一郎
ベストセラーズ
2015-04-09

読むべき人:
  • 自己啓発書ばかり読んでいる人
  • 次に読むべき本を探している人
  • より良く生きたい人
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April 15, 2015

ブログ9周年

今日でこのブログの開始から9年が経過して、9周年となりましたよと。
あと1年で10周年だ

読書が嫌いになるとか、livedoorブログのサービスが終了するとか、突然自分が死ぬとかしない限りはとりあえず続くはずです。

最近は忙しかったり疲弊したりでなかなか読めておらずですが、地道に更新していきたいと思います。
(1年くらい働かずにひたすら引きこもって積読本とか消化したいw)

(・∀・)

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April 09, 2015

甘美なる作戦

キーワード:
 イアン・マキューアン、スパイ、冷戦、小説家、ラブレター
英国スパイ小説。以下のようなあらすじとなっている。
英国国教会主教の娘として生まれたセリーナは、ケンブリッジ大学の数学科に進むが、成績はいまひとつ。大好きな小説を読みふける学生時代を過ごし、やがて恋仲になった教授に導かれるように、諜報機関に入所する。当初は地味な事務仕事を担当していた彼女に、ある日意外な指令が下る。スウィート・トゥース作戦―文化工作のために作家を支援するというのが彼女の任務だった。素姓を偽って作家に接近した彼女は、いつしか彼と愛し合うようになる。だが、ついに彼女の正体が露見する日が訪れた―。諜報機関をめぐる実在の出来事や、著者自身の過去の作品をも織り込みながら展開する、ユニークで野心的な恋愛小説。
(本書のそでから抜粋)
007を筆頭としたスパイもの映画が好きで、小説もいろいろと開拓していこうと思っていた。この前読んだ『BRUTUSの読書入門』で角田光代が本書を読んでいるとあって、気になるので買ってみた。買う前はイアン・マキューアンの作品は未読だったわけで、たまたま図書館に同著者のスパイ小説を発見し、そちらを先に読んでいた。こちらはエログロな感じだったが、本書は幸いにもグロい描写はまったくなかった。

本書の主人公のセリーナは金髪の美しい女性でMI5所属であるが、オフィスで書類整理や調べものをする給料も少ない下級事務職員であり、特にスパイとしての才能や経験があるわけでもない。たまたま文学好きであったことから、反共産党的な作品を書いている作家の文化工作のためのSweet Tooth作戦に抜擢され、創作資金の援助対象の同世代の作家、トムと出会い、恋におちるが、自身がMI5所属のスパイである身分は隠さなくてはいけないという状況になるというお話。

スパイ小説というと、ジェームズ・ボンドのようにMI6所属で海外を飛び回り、格闘、銃撃戦、カーチェイスなどのアクションや敵との相手を皮肉った駆け引きの会話、裏切り、黒幕の正体がわかるまでのサスペンス要素などが盛り込まれたエンタメ作品のようなものをイメージしがちである。しかし、本作の主人公はMI5所属(MI6は外務省管轄で主に海外で作戦を実行する組織だが、MI5は英国国内の治安維持を目的とした情報機関)であるが、大企業の一般職のような仕事についており、Sweet Toothの作戦も地味な文化支援なので、一般的にイメージしがちなスパイ活動とは程遠い。

イアン・マキューアンの文体は、一文一文は気取った比喩表現もないが、同じシーンの描写が若干冗長に感じられる。そしてスパイものにありがちなサスペンスやアクションもほぼ皆無で、美しいセリーナとトムの情事も繰り返し描写されて、少し辟易しているところに、トムの習作ともいえる短編がメタフィクションとしていくつか提示され、それに対して品評を行うセリーナがあり、一向に物語の山場が見えてこない。二人に対しての感情移入もあまりできず、そのため1日1章以上夢中に読み進めることもできなかったので、後半に入るにつれて気の抜けた炭酸飲料のような退屈なスパイ小説ではずれ作品だと思っていた。最終章を読むまでは。

22章構成からなる本書であるが、最終章、その最後の数ページを読み終えたとき、Sweet Tooth(直訳すると「甘党」で原題にもなっている)作戦の意味が分かり、そしてこの作品の書き出しをもう一度読み返してみた後、上質なスイーツを食べたときのように口元が緩み、心地よい余韻がしばらく残った。また、Sweet Toothを『甘美なる作戦』(「甘美」の意味はここを参照)と訳されているのも秀逸だと思った。

また、本書に出てくるメタフィクションとしての短編作品はイアン・マキューアン自身の未発表作品や既刊作品が取り込まれているらしい。そしてセリーナと恋仲になる作家であるトムの視点での小説の作成過程、思考状態、小説論などもとても興味深く読めるし、70年代の東西冷戦下の世界情勢、イギリスの置かれた状況などもスパイ作品らしく読めてよい。

最後の最後がとても印象的で、読んでよかったと思った。男性作家による主人公、セリーナとトムの関係(スパイと小説家という立場を除いたとしても)の描写はなんだか現実味がない気もする。女性がこの作品を読んで、僕と同じように心地よい読後感が得られるのだろうか?と思ったので、誰かためしに読んでみてほしい。

一気に読み進められるような作品ではないのだけど、がんばって最後まで読み切ってほしい。読み切った暁には、甘美で心地よい余韻を得られるはずだから。そして、また今度暇なときに読み返してみようと思う作品だった。



甘美なる作戦 (新潮クレスト・ブックス)
イアン マキューアン
新潮社
2014-09-30

読むべき人:
  • 恋愛小説が好きな人
  • 小説家志望の人
  • 心地よい余韻に浸りたい人
Amazon.co.jpで『イアン・マキューアン』の他の作品を見る。

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April 05, 2015

計画と無計画のあいだ

キーワード:
 三島邦弘、ミシマ社、出版、一冊入魂、仕事
自由が丘にある出版社ができるまでの奮闘記的なエッセイ。以下のような目次となっている。
  1. 1それでも会社は回っている
  2. 2 始まりは突然に
  3. 3 自由が丘のほがらかな出版社、誕生
  4. 4 凸凹メンバー集まる
  5. 5 手売りですが、なにか。
  6. 6 世界初!?仕掛け屋チーム
  7. 7 この無法者たち!
  8. 8 野生の感覚を磨くのだ
  9. 9 原点回帰ってなんだろう?
  10. 10 一冊入魂!
  11. 11 計画と無計画のあいだ
(目次から抜粋)
西新宿のブックファーストのフェアで「新入社員に読んでほしい本」というのがあって、そこで置いてあったのが目に止まり、買って読んだ。ミシマ社の創業者である三島氏のことは、以下の本で読んだことがあった。本書は著者の三島氏が、2003年の28歳のとき天啓のように出版社を作ろうと思い立ち、勤めていた出版社をボーナス支給直前で辞めて、何の事業計画もない状態で出版事業をスタートして、Excelの使い方もよくわからない、決算って何?という状況でなんとか本を出版しつつ今に至るまでの奮闘記が面白く示されている。本があまり売れなくなって、昨今の出版事業は斜陽産業なので、出版社の中の人も出版だけはやめておけと言ったりするような状況で、新たに出版社を作るというのは、チャレンジングなことだと思う。しかも、ほぼ無計画。しかし、無計画ながらも事業の核になる理念は明確に本書で示されている。「血の通った本をつくり、しっかりと読者に届けたい」+「ひとつひとつの活動が、未来の出版を築く一歩でありたい」=「未来に開かれた出版社を自分で作る」という理念があり、100年後の出版の未来まで考えられているようだ。

そのため、「直取引営業」で取次を介さずに直接書店に卸したり、手書きのミシマ社通信を書店に置いてもらったり、読者はがきを手書きにしたりして、普通の大手出版社と異なる独自性がある。実際にミシマ社の本を買ったことがあり、ミシマ社通信は手作り感があって本を作っている人が見えるようでよかった。ちなみに、ミシマ社の本は以下のものを読んだことがある。特に『街場の文体論』が面白かった。

また、この本はすごく熱量がこもっている本だと思った。著者が出版の思いを熱く語っている感じで、それが著者の熱量をこもったままの本を提供するというのに通じている。変な話だけど、そういう本は書店で表紙を見ただけで直感的にわかるようになる気がする。何冊も買って読んでいると経験則的に。

あとなんだか無計画でも理念や強い想いがあれば、何とかやっていけるのだなと思った。もちろん、読んでいるとベンチャービジネスの大変な過程を見ているようで、自分がそんなことできるかというと、無理だろうと思うけど。でも特に以下の部分になるほどと思った。28歳でボーナス直前で勤めている会社を辞めることについての部分。
 だが、そんなこともみな、百も承知の上での行動だった。きっと、ほんの少しでも計画的な人間であればそうはしなかったろうと思う。
 けれどぼくは一切後悔していない。むしろ逆だ。
 あのとき、自分に嘘をついていたら、と思うとぞっとする。ずっと自分のなかで湧きあがる感情に対して感覚を鈍らせたまま生きる人間になっていたかもしれない。
 いま、この瞬間、どうしても動かなければいけない。そういうときが人生のうちに必ずある。
 その瞬間、理屈や理性、計画的判断といったものを超えて動くことができるかどうか。
(pp.242-243)
まさに今僕もそんな境地のような気がして、かなり参考になったし、感化された。まぁ、自分の方向性がどうなるかはわからないけど、それでも日々考え中で。

出版にかかわる人、出版社に就職したいと思う人はみんな読んだほうがいいし、本好きな人も読んだほうがいい。またベンチャービジネスの試行錯誤の状況も読んでいて面白いし、出版事業を通して仕事、自分の働き方も考えるきっかけになってよい。あと、人生、自分の方向性に迷っている人も読めば何か得られるかもしれない。




読むべき人:
  • 出版事業にかかわる人
  • 本好きな人
  • 自分の仕事について考えたい人
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