September 2015

September 29, 2015

孤独のグルメ2

キーワード:
 久住昌之 / 谷口ジロー、孤独、ランチ、開拓、自由
久しぶりの漫画カテゴリの更新は、18年ぶりに新巻となる孤独のグルメ2巻目。今回は13話収録で、以下の料理が出てくる。
  1. 静岡県静岡市青葉横丁の汁おでん
  2. 東京都新宿区信濃町のペルー料理
  3. 東京都品川区東大井の冷やし中華とラーメン
  4. 東京都三鷹市下連雀のお茶漬けの味
  5. 東京都世田谷区下北沢路地裏のピザ
  6. 鳥取県鳥取市役所のスラーメン
  7. 東京都世田谷区駒沢公園の煮込み定食
  8. 東京都文京区東京大学の赤門とエコノミー
  9. 東京都千代田有楽町のガード下の韓国料理
  10. 東京都渋谷区松濤のブリ照り焼き定食
  11. 東京都千代田区大手町のとんこつラーメンライス
  12. 東京都荒川区日暮里繊維街ハンバーグステーキ
  13. フランス・パリのアルジェリア料理
前作は東京以外もあったけど、大体定食的な料理が多かった。今回はペルー料理、韓国料理、アルジェリア料理など異国料理も含まれている。

最近ではグルメ漫画はいろいろあるけど、グルメ漫画にはまるきっかけになったのは間違いなく前作の影響だ。読んだのは7年前だけど。なんというか、1人で好きなものを食べることの自由さに大分共感できた。今作もそれは変わらない。

主人公の井之頭五郎はいつも腹を空かせていて、その時の気分の思うままにお店を吟味し、いざよさそうなお店を見つけると入るのに若干躊躇するときもある。そして入ってみると外れかなと思ったりで、メニューを吟味して迷いながら注文し、食べてみたら案外行けるぞ!!ということでさらに追加注文する。冷やし中華を食べた後にラーメンを食べたり、スラーメンの後にカレー、ハンバーグステーキの後にハムエッグを食べて、いつも食いすぎている。

また、他のグルメ漫画のようにキラキラしたコマで(゚д゚)ウマーと言っているような過剰な演出ではないが、控えめだがとても満足そうにそして精神的にも満たされて食べているのがいい。そして各話の最後のコマはどこか余韻と哀愁がただようのも孤独のグルメってかんじでよい。

孤独のグルメを読む(もしくはドラマを見ても)と、知らないお店に入って冒険したくなる。10代のころは1人でご飯を食べるとなると、マックとかファーストフード店でしか食えなかった。怖くて1人で定食屋とか入れなかったから。20代ではいろいろなお店に入れるようにはなったが、それでも昭和な感じの大衆食堂みたいなところは入りづらかった。30代になった今ならそういうところも冒険して入れるようになってきたね。ただ、さすがに赤ちょうちん的な居酒屋に1人で行くのはまだやったことがないので、いつかできるようにはなりたいけど。

また、ドラマ版は全然見てなかったが、最近になってAmazonプライムの動画見放題サービスでシーズン1~4が見れるようになったので、今シーズン1を毎日夕食を食べながら見ている。ドラマ版はやはり料理が映像としてわかりやすいのがいいね。あと見ていると腹が減ってくるので、空腹時には見ないのがいいねw

孤独のグルメは、日常のありふれた何気ない料理を食べる楽しみを気付かせてくれるような漫画。特に僕のように食事制限しなくてはいけない身としてはね。朝と夜はあまり食べず、ランチに1日の食事のすべてを込めているような、そんな境地。なので、五郎のように好きなものを好きなだけ食べられるのがとてもうらやましくも思った。



おまけ

今日のランチは孤独のグルメっぽく開拓してみた。前から安いメニューが気になってたお店。肉野菜炒め定食。550円。

grume

肉量が思ったより少ないのが肉があまり食えない身としてはよかった。あと野菜炒めの下によく弁当に入っているパスタが入っている。孤独のグルメ2にもハンバーグステーキの回で五郎が『この付け合せの具無しスパゲティくんがどういうわけか俺 大好き』と言っている。改めて同じくと思った。あと味噌汁に細く切った大根が結構入っていてよい。さらに写真には見えないけど、のりたまふりかけが置いてあったのもよかった。

カウンター席だけで広くはないお店だけど、年配のおじさんが昼間から瓶ビールを飲んでいる自由さもいいなと。さらにおそらく定年退職した近所の常連のおじさん3人組がやって来て、店主と世間話しながら食べている感じもよかった。店主の客への気遣いもよかった。次回はハンバーグを食べたい。

行ったお店は以下。後で調べてみたら、テレビに取り上げられたりするような有名店だったようだ。

クロンボ - 高円寺/洋食 [食べログ]

一見怪しいお店も入ってみると案外よかったというのが、孤独のグルメっぽくて、次のお店の開拓につながるね。それが最近のふらふらした生活の地味な楽しみだったりする。



孤独のグルメ2
久住 昌之
扶桑社
2015-09-27

読むべき人:
  • 食べることが好きな人
  • ランチをいろいろ開拓したい人
  • 自由に食事を楽しみたい人
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September 27, 2015

バビロンに行きて歌え

キーワード:
 池澤夏樹、兵士、都会、ロック、歌
オムニバス的な小説。以下のようなあらすじとなっている。
一人の若き兵士が、夜の港からひっそりと東京にやって来た。名もなく、武器もなく、パスポートもなく…。突然、この海のような大都会に放り込まれ、さまよい歩く異邦人。その人生の一場面で彼とすれ違い、あるいはつかの間ふれあい、そして通り過ぎていく男や女たち。彼を中心に、この不可思議な大都会と、そこに生きる様々な人間像を鮮やかに、感動的に描いて新境地を拓いた長編小説。
(カバーの裏から抜粋)
図書館で借りた本。なんとなく著者のエッセイを借りようかと思っていたのだけど、文庫コーナーに行くとこの小説を発見した。あらすじを読んでみると面白そうだと思って借りて読んだら、当たりだった。さすが自分の直観だな!!と思った。

主人公はターリクというベイルートから東京に密入国した20歳くらいの兵士である。故郷での作戦行動によってまずい立場となり、亡命してきた形で船で東京にたどり着くが、頼れる先もパスポートもなく、日本語も分からない状態である。そのため、まずは寝床を探し、捨て犬を使って散歩しているように歩くことでアラブ系外国人が1人いることの不自然さを中和し、警察に捕まって強制送還されないように隠れるように生きていくしかない。そんな状態でいろんな人に助けられながら、次第に歌うことで大都会東京での自分自身の生き方を確定していく。

主人公は変わらないのだけど、12編の短編小説が連なって長編作品になっているような作品となっている。各章ごとに人物の視点は変わり、主人公ターリクそのものが登場しない章もあるが、必ず間接的にターリクとつながった話になっている。

最初はターリクが東京に来る章(「夜の犬」)、次にターリクが拾った捨て犬が交通事故にあったことから世話になる獣医との関係の話(「老獣医」)、ターリクが受け取るはずだったパスポートの発行先の某国大使館員の話(「ブループレート」)、ターリクが出会った女性プログラマー兼経営者との恋愛模様(「恋の日々」)とどんどんつながっていく。

ターリクはもともと声質がよかったということもあり、居候している先のロックバンドをやっているメンバーからヴォーカルをやらないかと言われて歌い始める。その歌は、アラブ的で、戦争をしている故郷についての郷愁とか大都会での行き場のない自分自身の気持ちなどを乗せて、次第に人を惹きつけていく。そういうロック的な描写もよく、感情移入できた。

基本的には主人公ターリクの物語であるのだけど、その中心の外にターリクを取り巻く人々の物語も同時に描写されているのがよかった。それぞれが生き方の方向性を模索しているようで、ターリクに直接的にしろ間接的に出会ったことでよい方向に変わっていく。また、ターリク自身は故郷と違って狙撃されたりする心配はないが、大都会で生き延びていく必要があり、いろんな人に助けられて物語が進んでいくのが温かい感じがしてよかった。

なんというか、とても読みやすい小説だと思った。描写がすんなり頭に入ってきて、それぞれの章で視点や登場人物が変わってもターリクが主人公であるという横串のようなものは変わらず、自分の感覚と波長が合っていて、違和感もなく素直に受け入れられるような、そんな作品。大抵の小説はそうはならないのだけどね。

著者の作品、本は他に以下を読んだことがある。他にも小説とか旅行記があるらしいのでいろいろ読んでみたい。あとエッセイも。

本作品の読了後は、暖かい気持ちになれて、とても心地よいものだった。




読むべき人:
  • 心地よい作品を読みたい人
  • ロックバンドをやっている人
  • 大都会東京でサバイブしている人
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September 23, 2015

お菓子とビール

キーワード:
 サマセット・モーム、伝記、小説家、奔放、愉悦
サマセット・モームの小説。以下のようなあらすじとなっている。
亡くなった文豪の伝記執筆を託された友人から、文豪の無名時代の情報提供を依頼された語り手の頭に蘇る、文豪と、そしてその最初の妻と過ごした日々の楽しい思い出…。『人間の絆』『月と六ペンス』と並ぶモーム(一八七四‐一九六五)円熟期の代表作。一九三〇年刊。
(カバーのそでから抜粋)
丸善の文庫コーナーでビールが飲みたくなる本として置かれていて、気になったので買って読んだ。ちなみに原題は『CAKES AND ALE』。ALEは簡単に言えばイギリスの伝統的なビール醸造方法だね。あらすじを簡単に補足すると、主人公のアシェンデンは冒頭ではもう50歳を過ぎていて、小説家として一定の評価を得ているらしい。そこで友人で作家のアルロイ・キアから電話をもらい、ドリッフィールドという作家の伝記を書くことになったので、アシェンデンに情報提供に協力してくれという依頼だった。

というのも、主人公アシェンデンはイギリスの地方、ブラックスタブルで15歳のときにその文豪ドリッフィールドに出会っており、そのときからドリッフィールドの妻、ロウジーとも親しかったといういきさつがある。そして、ドリッフィールド夫妻との何気ない生活の回想が始まる。

一言で言うと、大人な作品だなと思った。別に官能的な情事が赤裸々に描写されているというものではなく、登場人物が最後にはみなよい歳になって、人間関係について、人生について改めて晩年に振り返っているような感じだった。

文豪の妻であるロウジーは、主人公が15歳くらいのときは何とも思わなかったのだけど、主人公が20歳を超えたあたりから美しく感じたらしい。そのときロウジーは40歳くらいだろうけど、そこから主人公との関係があったり、結局文豪と離婚して金持ちの別の男と結婚してアメリカに行ったりと奔放な感じがした。奔放だがどこか憎めない描写となっているが、それでも個人的にはそういうのは若干受け入れられないタイプだなと思った。

解説によれば、ロウジーはスー・ジョーンズという駆け出しの舞台女優がモデルらしく、モームが本気で結婚しようとしていた相手らしい。そのため、モーム自身本書が一番好きな作品と言っていたらしい。また、タイトルになっている『お菓子とビール』はシェイクスピアの『十二夜』などにある句で、「人生を楽しくするもの」、「人生の愉悦」を意味しているらしい。作品中には別にお菓子とビールそのものはあまり出てこなかったので、丸善のもくろみは若干外れたわけだ。

モームの作品は以下2つは読んだ。両方とも感情を揺さぶられて衝撃を受けるようなスゴ本であったのだけど、「お菓子とビール」はそういうものがあまりなく、ゆったりと田舎の田園風景を列車の車窓から眺めているような、そんな落ち着いた作品だった。ある程度もっと歳を重ねてみると本書のよさがわかるのかもしれないので、そのときにまた読み返したい。



おまけ

たまたま今日は以下の日本全国の地ビールが飲めるイベントに行ってきた。

けやきひろば ビール祭り さいたま新都心

原題に沿ってエールビールを選択した。ブルーマスターという福岡の地ビール。

THE BREWMASTER 公式サイト

brewmaster_re

ラガービールと一味違った、透き通るようなのど越しで上品な味でおいしかった。ちなみにこれは小カップ210mlで300円と安い。来春もイベントがあるらしいので、また行きたい。



お菓子とビール (岩波文庫)
モーム
岩波書店
2011-07-16

読むべき人:
  • 落ち着いた小説を読みたい人
  • エールビールが好きな人
  • 人間関係を振り返りたい人
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September 19, 2015

ぼくは本屋のおやじさん

キーワード:
 早川義夫、本屋、奮闘記、客、仕事論
元ロックミュージシャンが書店経営を22年間やった奮闘記エッセイ。単行本は1982年に出版され、この文庫版は2013年と出版となる。

著者は23歳のときにロックグループを辞めて、生活のことを考えた時に本屋を始めることになった。その動機も単純で、会社勤めが向いていないようなので、店は小さく、たばこ屋兼本屋みたいな、できれば、好きな本を集めて、あまり売れなくてもいいような、ネコでも抱いて1日座っていればいいようなのどかで楽なものを夢見ていたようだ。しかし、やってみると現実は全然違って大変だった、ということがいろいろなエピソードとともにエッセイ型式で示されている。まず、売りたい本が必ず回ってくるわけではないという仕組みがあるらしい。これはどういうことかというと、書店が売り上げスリップという本の間に挟まれている短冊の半券を1年間に何枚出版社に送ったかで、出版社はその書店をランク付けする。そして、新刊配本の部数を決められて、取次から送られてくるらしい。なので、本屋というのは、売れなければ欲しい本が回ってこない仕組みになっているらしい。今もそうなっているかは知らないけど。

また、本屋にはいろんな人がやってくるらしい。銀行やレジスター、床磨き、新聞などセールス関係の人がよく来て、自分が何者かを名乗ることなく、いきなり責任者の方いらっしゃいますかとくるらしい。しかも自分が主人でレジをやってても、ご主人に会わせてくださいとか言われるから大変だ。

他にも変な客としては、いつも酔っぱらってお店に来て自慢げに偉そうなことを言ったりして、他の従業員を泣かせたりして嫌な客であるが、毎日やって来て、割と結構買っていく上客でもあったりする人や百科事典で調べるようなことを訪ねてきて、ただ見ちゃ悪いからといって袋詰めの飴を置いていき、一度も買ったことがない客もいるようだ。あとは立ち読みしに来たり、本が綺麗ではないとクレームをつけられたり、この本まだ入ってきてないの?と尋ねる書店として普通の客も当然来る。

僕もよく本屋さんやってみようかなとか妄想したりする。著者と同じように、小さいけれど好きな本、売りたい本だけ並べて、お店は他の従業員に任せて自分はどこかでひたすら読書しているという道楽的なものを。でもこの本を読んでみると、本屋さんは大変だなと思う。取次とか出版社との昔からの商習慣で売りたい本がなかったり、ダンボールで配本された本を整理するのは肉体労働だし、接客業だからいろんな人と対面しなくてはいけないのだし。そんな個人書店の苦労とか本屋の仕組みがとてもよく分かる。しかし、苦労だけが書店経営ではないということもちゃんと示されている。

著者がまた歌手に戻ろうと22年間経営していた書店を閉店するときについて、以下のように示されている。
閉店の日、僕は泣いてばかりいた。棚を見ているだけで、涙がこぼれて来た。これまでに、一度も喋ったことのないお客さんからも「寂しい」と言われたり、「残念です」とか「元気でね」と声をかけられた。花束や手紙をもらった。いつもよりずっと長くいて、棚をひとつひとつ丁寧に見て回る人もいた。何も語らず、たくさん本を買っていく人もいた。
 本屋での「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」の世界にも感動はあったのだ。小説や映画やステージの上だけに感動があるのではない。こうした何でもない日常の世界に、それは、目に見えないくらいの小さな感動なのだが、毎日積み重なっていたのだということを僕は閉店の日にお客さんから学んだ。
(pp.237)
なるほどと思った。

解説は大槻ケンヂ氏で、その解説もすばらしい。一部抜粋。
 どんな仕事も楽じゃありません、でもね、どんな仕事にも良さがあるんです、だから、がんばりましょうよ、と、早川さんの教える本書は、やはりシンプルでストレートなメッセージに満ちた素敵な一冊であると思う。
(pp.244)
そうだよねと同意したくなる。大槻ケンヂ氏も24歳の時にバンドを辞めて本屋さんになりたいと思ったそうだが、本書を読んで辞めたらしい。その理由もまぁそうだよねと納得したのであった。

本屋をなんとなくやってみたらどうなるのか?と脳内妄想(シミュレーション)したときの一つの参考事例がこの本に示されている。結局僕も本屋さんやっていくのは大変そうだし、今のところやることはないだろうなという結論になる(でも将来のことは分からないよ)。気楽にこのブログで好きな本について書いている方があっているし、何も面倒なことはあまりない。ただし、金にはならないからこれだけで食っていくのは現状無理だけどね。

自分で本屋をやりたい人は絶対読んだほうがいい。あとは本好きな人は小さな個人書店に対する意識も変わって、そこで本を買いたくなるかもしれない。本を書く人、編集する人、売る人、買って読む人など本に関わる人みんな読めばいいね。




読むべき人:
  • 本屋さんをやりたいと思っている人
  • 大型書店ばかり利用している人
  • 本が好きな人
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September 18, 2015

モナリザ・オーヴァドライヴ

キーワード:
 ウイリアム・ギブスン、スプロール、モナ、マトリックス、爆走
サイバーパンクSF小説、スプロール3部作の最終章。以下のようなあらすじとなっている。
13歳の久美子は単身、成田発ロンドン直行便に乗り込んだ。だが、《ヤクザ》の大物の娘である彼女は知るよしもなかった――やがて自分が、ミラーシェードを埋めこんだ女ボディガードや大スターのアンジイ、そして伝説的ハッカーのボビイらとともに、電脳空間の神秘をかいま見る冒険に旅立つことになろうとは!全世界注目の作者が、疾走感あふれるシャープな展開でマンを持して放つ、ファン待望の《電脳空間》三部作完結編
(カバーの裏から抜粋)
SF映画とかアニメが好きなので、ニューロマンサーをはじめとするこのスプロール3部作はぜひ読んでおきたかった。しかし、ニューロマンサーは新装版が出ているけど、2作目のカウント・ゼロと3作目の本書、モナリザ・オーヴァドライブは絶版になっている。Amazonのマーケットプレイスだと送料込で1500円近くもする。だが近所の図書館に幸運にも3作とも置いてあったので、借りた。借りたのは2回目で初回は読む余裕がなく返したけど。

ニューロマンサーを最初に読んだときは面食らった。まったく内容が頭に入ってこなくて。大抵の小説は一読すれば頭に映像が浮かぶ。たとえそれがSF小説で未知のものであったとしても。しかし、ニューロマンサーは例外だった。独特の世界観とそれを損ねることなく現した優れた翻訳にもかかわらず、ストーリーを体系的に追うことができなかった。次は続編のカウント・ゼロだ。こちらは4人の登場人物の視点から物語は進む。さすがにニューロマンサーに慣れていたこともあり、読みにくさはあるが、なんとなくはストーリー展開を追うことができ、面白いと感じることができた。そして、最終章の本書、モナリザ・オーヴァドライブ。一番タイトルが躍動感があってカッコいい。カウント・ゼロ同様に4人の視点から物語は進む。舞台はカウント・ゼロのおよそ7年後の世界で不忍池(シノバズ・ポンド)や秋葉原、新宿といった日本的なものも前作同様に出てくる。さすがに前2作で文体と世界観は慣れたはずだ、きっと楽しめるだろうと思っていたが、予想外にさっぱりよく分からなかったぜ!!w

前作の主人公、ボビイも出てくるし、ニューロマンサーのモリイも出てくる(最初はサリイと名乗っている)し、続編というワクワクする要素がちりばめられているが、やはり前作に比べてかなり難解に感じた。相変わらず余計な説明はなく、世界観やガジェットやサイバーパンク的な要素は既知なこととして進み、それぞれの人物がパズルのピースのように最後に収束してはまっていくような、そんな物語構造のはずだ。結局マトリックスは自律的なAIだったのか!?みたいなよく分からなさの余韻は残る・・・。

まぁ、いいんだ。SF、サイバーパンクものが好きな人でもこのスプロール3部作を全部読んでいる人は少数派だろうし、完全に理解している人はもっと少ないだろう。事実、ニューロマンサーのAmazonレビューは最近の日付まで更新されて、レビュー数も多いが、カウント・ゼロ、モナリザ・オーヴァドライブとなると、書店で手に入らないというのもあって、レビュー数も少ない。

また、モナリザ・オーヴァドライブに関してググってみても、作品について言及しているブログなどはやはり少なく、また内容の詳細に触れているところはあまりない。その気持ちはよく分かる。難解すぎて何も深く書きようがないのだから!!wとはいえ、会話のテンポと描写はなんだか詩的な印象を受けた。

本書は、SF小説が好きというある種の虚栄心を見たし、話のネタとしてギブスンのスプロール3部作を最後まで一応読み通したことがあるんだぜ!!っていう自慢ができる作品か。まぁ、残り「クローム襲撃 (ハヤカワ文庫SF)」の短編集が残っているが。こちらはニューロマンサーの前のお話で一応書店でも買えるはず。

もしスプロール3部作を読み通すなら、3部作をとりあえずすべて手に入れて、勢いで一気読みがいいかも。分からなくてもとりあえず進む。そしてまた読み返せばいいはずだ。

想像力の限界に挑戦して、マトリックスの世界に没入(ジャック・イン)だ!!



モナリザ・オーヴァドライヴ (ハヤカワ文庫SF)
ウィリアム・ギブスン
早川書房
1989-02

読むべき人:
  • サイバーパンクSF作品が好きな人
  • 自分の想像力と理解力を試してみたい人
  • 収束していく物語が好きな人
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September 16, 2015

牡蠣礼讃

キーワード:
 畠山重篤、牡蠣、宮城、紀行文、森
牡蠣のことが一通りわかる本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 Rのつかない月の牡蠣を食べよう!?
  2. 第2章 おいしい牡蠣ができるまで
  3. 第3章 世界の牡蠣を食べる
  4. 第4章 知られざる「カキ殻」パワー
(目次から抜粋)
のっけからどうでもいいことを示すと、僕はいつからかカキフライが好物になってしまった。初めてカキフライをタルタルソースで食べてからというもの、そのジューシーさが口の中に広がる旨さにすっかり虜になり、飲食店でカキフライが食えるときはとりあえず食べるというくらいになった。それくらいカキフライが好きで、9(SeptemberとRのつく)月に入ったということもあるので、牡蠣についてのこの本を取り上げる。

著者は宮城県気仙沼市唐桑で牡蠣養殖業を営んでおり、牡蠣の生体や旬、宮城県のカキ養殖の礎を作った人々の歴史、世界の牡蠣養殖についてなどなどがとても面白くエッセイ調に示されている。

まず、牡蠣の旬については、一般的に英語で『Oyster should not be eaten in any month whose name lacks an "r".』という”Rのつかない月の牡蠣は食べるな”という諺があるように、5月(May)から8月(August)は旬ではないとされている。その時期は、産卵期で食べてもまずいし、食中毒の影響があるからと言われている。著者曰く、これはヨーロッパヒラガキの産卵期の身の状態から生まれた諺らしい。曰く、5月から8月のヨーロッパヒラガキを開けてみると、ドロドロとした液状の卵が流れ、見た目も白、灰色、黒と変化して食欲も減退し、おいしくないようだ。

日本で食されている大部分はマガキ(カキ (貝) - Wikipedia)で牡蠣本来の味が出てくるのは、厳寒の2月、3月らしい。また、日本列島は南から北まで長いので抱卵する時期がかなりずれるらしい。よって産地によって食べられる時期が違うようだ。気仙沼も3月が旬で、水温の低いところに垂下しておけばマガキでも6月いっぱいまで楽しめるらしい。そして暑い季節に冷やしたワインと生ガキの取り合わせは最高だって。羨ましいかぎりで。

今ではオイスターバーなどに行けば、基本的に年中牡蠣が食べられるようになっている。養殖技術が発達しているというのもあるし、世界中の産地から輸入してくるというのもあるだろう。しかし、カキフライとなると、僕の観測だと定食屋がカキフライを提供しているのは大体9月から3月までとなっているね。一部海鮮系のお店は年中食べられるが、それは産地ごとの違いで取り寄せているか、もしくは冷凍保存で食べられるようになっているのだろうね。

あとイワガキは5月以降の夏が旬らしい。しかし、大きくなるには3,4年かかり、全国的に天然イワガキ資源が枯渇しているらしく、大きめのものなら東京だと1個千円はする高級品らしい。これはまだ食べたことがないので、いずれ試してみたい。あと逸話として松尾芭蕉はイワガキの産地を行程に選んでおり、イワガキを堪能していたのではないかという説は面白かった。

世界の牡蠣の話としては、50年以上前にフランスはヨーロッパヒラガキが多く獲れていたが、ウイルス性の病気によってほとんど全滅状態になってしまったらしい。そのときに世界的に知られた牡蠣博士、今井丈夫が宮城にいたことから、宮城産のマガキがフランスに輸出され、フランスの牡蠣生産者を救ったらしい。へーっと思った。今でもフランスでは宮城産が原種のマガキ獲れるようだ。

牡蠣が育つには豊富なプランクトンが必要で、そのプランクトンは海の水質がよくないとダメらしい。それには、河口に流れ出る水質が汚染されてはダメで森林の腐葉土を通った養分が海に流れてくるのも不可欠なようだ。そのため、著者は『森は海の恋人』と銘打って大川上流の山に広葉樹の植林運動も地道にされているようだ。食物連鎖だね。

本書は牡蠣全般が詳しく分かると同時に、著者の紀行文のようにも読める。世界の牡蠣の生産地で会いたい人がいると、とりあえず出たとこ勝負で行ってみると必ず会えるという引き寄せが何度もあったりで面白い。また、エッセイ調の文体がとてもよく、読ませる内容となっている。ところどころ著者の人柄が分かる小ネタがあって読んでいて飽きない。

牡蠣料理もレシピとともに随所に示されている。これはと思ったのは、オイスターショットというもの。アメリカのオイスターバーで提供されているもので、グラスにオリンピアガキを5個ほど入れて、トマト味のジュースを少しと5種類のスパイスを入れ、最後にウォッカのストレートを注いで一気飲みするらしい。これはいつか絶対試してみたい!!

本書は2006年出版となる。なので、2011年の東日本大震災のことは当然ながら示されていない。やはり東日本大震災で被害にあわれたようで、それからの復興については最近出版された以下の本に示されているようだ、こっちも読んでみたい。

本書は牡蠣好きなら間違いなく堪能できる1冊だし、何よりも著者の牡蠣への熱意というか愛情があふれる内容だった。



おまけ
都内の牡蠣がおいしいお店をちょっとだけ紹介。

カキフライに関しては、チェーン店が意外に健闘してて、個人的にはやよい軒がお勧め。ただし10月の中旬から3週ほどしか実施しない期間限定メニューなので注意。

また、カキフライ発祥のお店が銀座の煉瓦亭 (レンガテイ) - 銀座/洋食 [食べログ]にあって、一回行ったことがある。恐ろしいことに時価という値段設定だけど!?、実際にはカキフライ定食で2000円ほどするので高め。老舗価格。味は、思ったより驚きがなかったが、カキフライマスターになるためには行かなくてはだったw

ここのカキフライが一番おいしい!!と思ったのは西新宿のOYSTERS, INC. - 新宿/オイスターバー [食べログ]というお店。個人的にはオイスターバーのカキフライはどこもおいしくないと思っていた。なぜなら揚げ物料理がメインではないので、とんかつ屋とか定食屋に比べて揚げ方がいまいちだから。しかし、ここは本当に(゚д゚)ウマーだった。1粒300円もするけど、大粒で食べて損はない。

あと、しゃれたオイスターバーで生ガキとシャブリでマリアージュを楽しんだりするならオストレア Ostrea|Oyster Bar & Restaurantがいいかな。値段高めだけどどれもおいしい。Ostreaというのはラテン語で牡蠣を意味するんだ、とか薀蓄を垂れるにはよいデート向け!?のお店w

意外にもカキの天ぷらがおいしいと思わせてくれたのは、牡蠣と魚 海宝 高田馬場店 - 高田馬場/魚介料理・海鮮料理 [食べログ]。和食系で、カキフライ以外はどれもおいしかった。

他にもいろいろと地味に開拓したい。あとは気仙沼や広島などの日本の各生産地、さらにフランスやアメリカなどの世界の各地の牡蠣を堪能したいなと思う。



牡蠣礼讃 (文春新書)
畠山 重篤
文藝春秋
2006-11

読むべき人:
  • 牡蠣が好きな人
  • 紀行文のようなエッセイを読みたい人
  • オイスターバーで薀蓄を垂れたい人
Amazon.co.jpで『畠山重篤』の他の本を見る

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September 13, 2015

賭博者

キーワード:
 ドストエフスキー、ルーレット、破綻、賭博狂、女狂い
ドストエフスキーの実体験が元になっている小説。以下のようなあらすじとなっている。
ドイツのある観光地に滞在する将軍家の家庭教師をしながら、ルーレットの魅力にとりつかれ身を滅ぼしてゆく青年を通して、ロシア人に特有な病的性格を浮彫りにする。ドストエフスキーは、本書に描かれたのとほぼ同一の体験をしており、己れ自身の体験に裏打ちされた叙述は、人間の深層心理を鋭く照射し、ドストエフスキーの全著作の中でも特異な位置を占める作品である。
(カバーの裏から抜粋)
この作品で777冊目の更新となる。なので、その数字にふさわしいのがなんかないかと積読本を探してみたら、半年前ほどに買って半分ほど読んで、時間的に余裕がなくて読むのが面倒になって放置していた本作品があったので、改めて読み返してみた。一気に読んでみるとなかなか面白かった。

解説を読むと、ドストエフスキーの実体験が元ネタになっているらしい。1860年代に最初の妻マリヤが結核で死にかけているところに、ドストエフスキーよりも20歳も若い学生のアポリナーリヤに出会って急速に仲が良くなる。二人はパリに旅行をするのを夢見ていたが、いろいろあってアポリナーリヤだけがパリに行っているときに、アポリナーリヤがスペイン人の医学生を好きになったが、棄てられて心に深い傷を負っていたらしい。ドストエフスキーはショックを受けて、結局アポリナーリヤを慰め「兄と妹」という関係でパリからイタリア旅行に行ったらしい。

その旅行中にアポリナーリヤの態度がよそよそしく冷やかになっていくので、ドストエフスキーにとって心苦しいものであったらしく、訪れる各地でルーレットの勝負をし続けたらしい。そしてたまたま会ったツルゲーネフから借金をしたり、時計やアポリナーリヤの指輪を質にいれたりしてまでルーレット狂いになっていたらしい。この体験が元になって本作品、「賭博者」が書かれたようだ。主人公アレクセイは25歳の家庭教師で、ある将軍につかえている。その将軍を義父とするポリーナに惚れているが、ポリーナから全然相手にされていない。あるところにポリーナからもらった金でカジノで儲けてきてと依頼され、そこからアレクセイはルーレット狂いになり、しまいには破綻していく…。

主人公アレクセイのルーレットによるギャンブル狂いの顛末がメインで示されていると思ったら案外そうでもなく、主人公を取り巻く人間と金の主従関係が濃密に描かれていた。将軍は借金を抱えており、伯母の遺産を目当てにしているが、伯母は将軍に相続する気はまったくなく、見せつけるように持っている金をルーレットで散在する。ポリーナはデ・グリューというフランス人侯爵に債権を握られており、金が要る。主人公アレクセイは金よりもポリーナが振り向いてくれることを切望している。それぞれの欲がカジノのルーレットのように回っているような、そんなイメージ。

カジノのルーレットで勝ちまくるシーンの描写は臨場感あふれ、なんだかこっちも勝っているような気にさせてくれるが、賭博狂いの行きつく先は負けと破滅なんだなと教訓が得られる。しかし、実態はルーレットによる金儲けのための賭博狂いになったというよりも、惚れた女のために狂っていったということだろう。勝ち続けて得た大金で更に勝負をするときにふと我に返って、自分の全生命がかかっている!!と気づくほどに。

そして決してその女は振り向いてはくれず、主人公に冷淡な態度をとったり、他の男に気があることをほのめかしたりして終始翻弄する。本作品は賭博狂いが表面上のテーマなのだけど、本質は主人公の一途な恋心を描いた恋愛小説だなと思った。

ドストエフスキーの作品は最初の50ページくらいまで読むのは面倒だけど、慣れれば会話ベースの物語なので、すらすらとページが進んでいく。勢いをつけて読むのがいいね。そのためには時間的にも精神的にも余裕がないと無理そうだけど。一応以前にこのブログで取り上げたドストエフスキーの作品は以下。他にも読んでない作品が多いので、地道に読んでいきたい。

777冊目として幸運の要素を含むようなギャンブル的な作品を意図的に選んで、今後の自分の人生を好転させるようにあやかりたいと思ったのだけど、内容は賭博狂いで破滅していく男の作品で、自分の人生のこの先が思いやられる気がしたw それでも惚れた女のために命さえも賭けられる男の気概を間接的に得たのだということにしておこう。あとは賭博、ギャンブルをやるなら余剰資金でやりましょうということだね。引き際も大事。

一応結末は希望のある終わり方だったし、面白かったのでよかった。



賭博者 (新潮文庫)
ドストエフスキー
新潮社
1969-02-22

読むべき人:
  • ギャンブルが好きな人
  • 借金がある人
  • かなわない恋をしている人
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September 11, 2015

はじめての文学講義

キーワード:
 中村邦生、文学、小説、読む、書く
中高生向けの文学講義がまとめられた本。以下のような概要となっている。
読むことを楽しむにはどんな方法がある?魅力的な文章を書くにはどうしたらいい?その両面から文学の面白さ、深さを構造的に探っていく。太宰治をはじめ多種多様な文学作品をテキストにしながら、読むコツ、書くコツ、味わうコツを具体的に指南する。「文学大好き!」な現役の中学・高校生を対象にした「文学講義」をまとめた一冊。
(カラーの裏から抜粋)
なんとなく書店の新刊コーナーで見かけたので買った。岩波ジュニア新書は分かりやすくて、読みやすいものが多いので。

「文学作品」と示すといかにも明治、大正の文豪が書くような、教科書的なものをイメージしがちだけど、もっと単純に小説ととらえるとよいだろう。しかし、文学作品、小説を好んで読む人は勝手に読むが、読まない人は実用書だけでまったく読まないという人も多い。そういう人が大抵考えることは「文学は実生活では役に立たない」である。

著者曰く、単純な役に立つ/立たないという二項対立そのものの有効性を疑い、問題の前提そのものを突き崩し、文学は虚構の言語によって新たな現実を突きつけるとある。そして、世の中に流通している価値観への疑念を提示する役割があると。例えば善と悪に関してならば、本当に分かりやすい勧善懲悪なのかと問いただし、その単純な対立の構図を超えた向こう側を示すものとある(文学作品ではないけど、分かりやすい作品例で言えば、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の自ら救世主と名乗っていたイモータン・ジョーは本当に悪か?とかね)。文学はそういうものが丸ごと面白いのだと示されていた。

個人的な考えていえば、役に立つ/立たないという面では、表面上役に立たせることはできる。初対面の人との話のネタ(合コンとかでw)になったりして、意外な側面を演出することもできるし、他にも会社とかで上司がやたら文学好きだったら飲みの席でその話に合わせれば気に入られて仕事がしやすくなるかもしれないし。あとは、齋藤孝氏が小説を読むことによってあらゆる人物への接し方のシュミレーションになるとかなんかの本で示しており、その通りだなと思った。

あとは、やり直しがきかず一回性の人生を生きる上で、自分以外の生き方はできないが、小説を読むことで他人の人生を間接的になぞったりすることができ、不要な失敗や選択ミス、こう生きたくない、この方向性で生きたいと教訓を得ることができ、結果的に即効性はないがより良く生きるために役にたつだろう。まぁ、これは実際に読んで実感してみないことにはなかなかわからない感覚かもしれないけどね。

単純に読んでも面白いものが多いし(もちろん途中で投げるのもあるけど)、あぁ、読んでよかったと心の底から思える文学作品に出会うと、望外の喜びを得ることもごくまれにある。そういう経験を一度でもすると、文学作品を読まないで生きるという選択はもうできないだろう。上記の作品は本当に読んでよかった。また今が転換期だから読み返してみるか。

あとは、物語の構図に関してや比喩の楽しみ方などが各作品を引用しながらわかりやすく示されている。また、読むだけではなく、実際に小説を書いてみることも読むことの一方法であるなどなど示されており、参考になる部分が多い。

書評を利用し、ファイルを作る』という節では、新聞の書評欄を読む習慣をつけ、印象に残ったものに実際にメモを書いてみるとよいと示されている。また、好きな書店を持ち、その書店を定点観測するのがよいと示されている。これは僕もやっている。そして以下のように示されている。
 私は若い人たちにもよく言うのですが、新刊本というのは生鮮食品なんですよ。だから、書店に足を運ぶか運ばないかで、思考力と感性への栄養に違いが生まれます。そういう習慣さえもてば、自分が読むべき本、いずれ役に立つ本、人に薦めたい本が自然とわかってくるようになります。読むべき本を自分がすぐれたソムリエになって選択していく能力をつけていくと、日々の生活に深度が増してくることは間違いありません。
 本というものは、最高の対話の相手であり、頼りがいのある味方です。問いかければ、いつも何かを語りかけてくれます。
(pp.102-103)
生活の深度がどれだけ増したかは自分ではわからないけど、自分が読むべき本、いずれ役に立つ本、人に薦めたい本はさすがにわかってきたかな。

中高生向けに講義している内容なので、とてもわかりやすくさくっと読めて、小説や文学作品に対する向き合い方が変わると思う。お勧めのブックリストもそれなりに示されているので、そこからまた文学の世界にダイブすることもできる。

中高生でこれを読める人は羨ましく思う。もちろん、大人になってあまり文学作品を読まない人が読んでも、文学作品を読みたいと思う気にはなれるだろう。そしてよりよい人生を。




読むべき人:
  • 中高生の人
  • 実用書しか読まない人
  • よりよく生きるヒントを得たい人
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September 08, 2015

掏摸

キーワード:
 中村文則、スリ、支配、塔、運命
スリをテーマにした小説。以下のようなあらすじとなっている。
東京を仕事場にする天才スリ師。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎―かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」運命とはなにか、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。そして、社会から外れた人々の切なる祈りとは…。大江健三郎賞を受賞し、各国で翻訳されたベストセラーが文庫化。
(カバーの裏から抜粋)
最近は時間的に余裕があるというか、暇なので図書館に行った。借りたい本はあらかじめ決めていたが、文庫コーナーの本棚の中に少し隙間があるところに本書が置いてあって、なんとなく惹かれるように手に取って裏のあらすじを読むと、なかなか面白そうなテーマなので借りて読んでみた。

タイトルの読みは「スリ」で、主人公は東京で金持ちばかりをカモに狙う天才スリ師である。電車の中やデパートで身なりの良いカモに目をつけ、財布のありかを把握し、そっとカモに近づき、時には相手に軽く接触したり自分の身にまとっているコートで周囲の視界を遮り、親指は使わずに人差し指と中指でカモの財布を気付かれないように素早く抜き取る。財布から現金だけを抜き取り、財布をポストに入れておけば持ち主のところに自動的に届けられる。主人公は、スリは生計を立てるためというよりも、その瞬間にスリルと生きがいをどこかに感じているようでもある。

ある日、主人公はかつてのスリ仲間に会い、その男から別の仕事、強盗をやるように依頼される。正確にはスリ仲間を使っている別の男、木崎という男がある政治家の家から現金と重要な書類を手に入れる計画を立てており、主人公は木崎に魅入られ断ることもできずにその仕事を引き受けてしまう。そして主人公の生殺与奪、今後の人生が木崎に握られてしまう・・・。

スリの描写がとても生々しく感じて、本当に著者が経験してきたかのようだった。主人公曰く、スリは本当は1人でやるものではなく、3人が基本で、ぶつかる役、周囲からその瞬間を隠す役、取る役と分担するのがいいらしい。そういうテクニックとか他にもスーパーでの万引きのやり方などもなんだか説得力があるので参考になった(もちろん実際にやるわけないし、やってもそんな簡単にうまくいくはずないし、ばれてタイーホされるでしょw)。一応最後に参考文献が載ってた。『スリのテクノロジー』とか。しっかり研究されているようだ。

あとはスリよりも重罪で凶悪な、強盗、殺人などを裏社会で仕切っている木崎という主人公よりも絶対的な悪、支配者が出てくるのが不気味だが、物語に重要な人物として出てきてよかった。この男が主人公に3つの仕事を強制させるが、主人公は断ることができない。断れば主人公が死ぬからだ。木崎は他人の人生を意のままに操ることをほかのどんなものよりも快感としている。そして木崎は主人公にこう言う。『お前は、運命を信じるか?お前の運命は、俺が握っていたのか、それとも、俺に握られることが、お前の運命だったのか。

裏社会の様相やそこに出てくる人物たち、そして自分のテリトリーではないやばい世界に足を突っ込んでしまった主人公の緊張感が何ともハラハラさせられ、ページも一気に進んだ。こういうのは『闇金ウシジマくん』みたいな感じで、怖い世界だなと思った。

この作品の兄妹編として『王国』というものがあるらしい。気になるのでこっちもチェックしてみよう。

著者の作品は他に読んだこともなかったので、本書はあまり期待してなかったけど、最近読んだ中で一番熱中して読めた作品かな。187ページと多くないのでさくっと読めるし、後半戦からスリルが増していって、なかなか面白かった。



掏摸(スリ) (河出文庫)
中村 文則
河出書房新社
2013-04-06

読むべき人:
  • スリ師の手口を知りたい人
  • 闇金ウシジマくんが好きな人
  • 運命に翻弄されている人
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September 07, 2015

人生ドラクエ化マニュアル

キーワード:
 JUNZO、ドラクエ、ゲーム、人生、楽しむ
人生のゲーム化指南本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 人生はドラクエ化できる!
  2. 第2章 人生のゲーム目的
  3. 第3章 人生の敵
  4. 第4章 人生のゲームルール
  5. 第5章 仕事のゲーム化
  6. 第6章 ゲームスタート
  7. 第7章 ゲーム世界の創造主、宇宙との対話
(目次から抜粋)
説明するまでもないRPGのドラクエのように人生もゲーム化することによって、楽しみながら仕事ができるようになったり、日々感じている「不安」が「ワクワクドキドキ」に変わり、自分の人生を生きられるようになり、やりたいこと、人生の目標が見つかって、人生が変わるぞ!!という本。

ゲームに限らずスポーツなどもゲームの3大要素、目的、敵、ルールで構成されており、人生にもこれらを投入すれば、ゲーム化できるという理論から、そのためにやるべきことの具体例が過去の偉人だったり著者の実体験から示されており、各章を読むたびにアイテム「賢者の石」を手に入れたり、「賢さ」がアップしていくという構成になっている。

ドラクエはファミコン版の3、スーファミドラクエ5、6、スーファミ版ドラクエ3、ドラクエ7、PS版ドラクエ4、PS版ドラクエ5、ドラクエ8とプレイしてきた。最後にクリアしたPRGは大学時代にやったドラクエ8で、社会人になってからはゲームをほとんどやらなくなった(パズドラを少しやってたけど、最近スマフォ機種変時に辞めた)。なぜなら自分の人生のゲームをプレイするのに必死だったから。しかし、今振り返ってみると、本当にこれは自分の人生のゲームであったのか?そして楽しめているのか!?とふと疑問と不安がよぎっていたので、本書を紐解いたわけだ。

自分の人生に限って言えば、本書で示されているゲームの3大要素の一つである「敵」は予期せぬ障害と姿を変えて勝手にあらわれてきた感じだった。そしてその敵を倒せたり、倒せなかったりだった。自分の人生には、「目的」と「ルール」の要素をあまり意識できていなかった気もする。「目的」がなくても生きていけるし、それに縛られても仕方ないじゃないかと思う反面、TOEICなどの資格試験を通して目的(目標)を設定した方がいきいきできることは実感している。でも人生の目的はまだ未設定で。

そしてルール。ルールを知らなければ勝てないし、攻略法も思いつかない。特に仕事なんかはこの勝つためにルールを先に習得した方がいいのだけど、あんまりできてなかったかなと思った。

本書で一番重要だと思ったのは以下だね。
敵との闘いに勝った時だけではなく、負けても、さらには途中で逃げても経験値が増える。
(pp.130)
特に仕事面で負けっぱなしの僕にとってこれほど勇気づけられる言葉はない!!ドラクエだったら全滅するとゴールドが半分になって経験値も得られず、教会から再スタートになるけど、リアル人生ゲームでは、死なない限り!?は負けた経験値が次に活かせるということ。そして最大のリスクは敵と闘わないでじっとしていることとある。なるほどなと思った。しっかり負け要因を分析しなければだけど。

あと以下も個人的には重要なので列挙しておく。
  • コマンド作ってOKルール:いくらでもコマンドを増やせるので、選択肢は無数にある。
  • 自分の土俵で闘えば勝てるルール:土俵は自分で選べる。しかも得意な土俵を。得意な土俵で闘えば勝てる。
今まで負けたのは、とりあえず仕事(敵)は選ばずきたもの(エンカウントしたもの)はやってみる(闘ってみる)で、勝ったり負けたりした。負けた方はどう考えても、自分の得意分野ではなかったかなと。

そんで、今はちょっと持病の状態が悪化しているので、作戦名がリアルで「いのちをだいじに」な状態になっている(と言っても入院したりするようなものでもないけど)。常に「ガンガンいこうぜ」で行くと再起不能になってゲームを楽しむどころではなくなってしまうし、宿屋に1泊したらHP, MPが全回復するわけでもないからね。なので、しばらく仕事は休職になるかもしれない。普通は使わないコマンドを自分で生成して発動した感じか。戦略的撤退って感じでもある。今後の体制を立て直すためにね。そのあとおそらくダーマ神殿経由で転職かなw

一昔前はこういう状態に陥った時は不安で仕方なかったけど、まぁ、今まで何とかなったし、本書を読みながら今後どうするかを考えてもいるので、不安半分、ワクワク半分といったところか。仕事はほとんどしてないので積読本を消化したり、映画をたくさん見たりできるという状況は楽しめている。なので、このブログの更新頻度はなるべく高くしていきたいところで。

自分の人生を生きること、が直近のテーマであった。本当に今までは自分で選択してゲームのように楽しめていたのだろうか?と。自分の人生を選んでいるようで、結局誰かに選ばされていたり、他人が見た夢を自分も同じだと錯覚してそれに追従してたり、そもそも選択肢がなかったりという状況もあった。しかし、ある程度ゲームのルールも分かってきたし、経験値も積めたのだし、一度しかない人生なのだから、常に不安と恐怖感に苛まれて憂鬱な顔をして電車通勤して日々を浪費している状況から抜け出して楽しみたいと思った。

あと、人生を楽しむ参考になる冒険の書みたいなものがあればいいね。以下がおすすめ。ついでにドラクエ気分を盛り上げるためにBGMもあったらいいね!


これはiPodに入れてて、「冒険の旅」とか海外旅行中に聞くといいし、ゾーマ戦の戦闘曲「勇者の挑戦」がテンション上がるのでいいよ。

あと余談だけど、2016年発売予定の『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』が激しく気になってて、またドラクエやりたいと思った(そもそもPS4とテレビも買わなくちゃいけないけど)。もちろん、自分の人生のゲームも楽しみつつ。




読むべき人:
  • ドラクエが好きな人
  • 仕事を楽しみたい人
  • 自分の人生を生きたい人
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September 05, 2015

カンガルー・ノート

キーワード:
 安倍公房、かいわれ大根、夢、死、黄泉
安倍公房の遺作。以下のようなあらすじとなっている。
ある朝突然、“かいわれ大根”が脛に自生していた男。訪れた医院で、麻酔を打たれ意識を失くした彼は、目覚めるとベッドに活り付けられていた。硫黄温泉行きを医者から宣告された彼を載せ、生命維持装置付きのベッドは、滑らかに動き出した…。坑道から運河へ、賽の河原から共同病室へ―果てなき冥府巡りの末に彼が辿り着いた先とは?急逝が惜しまれる国際的作家の最後の長編!
(カバーの裏から抜粋)
そもそもの始まりは文具会社に勤める男が朝起きて、朝食を食べているときに脛にかいわれ大根が生えてくるところから始まる。そして病院に行くが、看護婦にぞんざいに扱われ、診断結果がよく分からないので硫黄の温泉療法がいいんじゃないかと医者に見放されるようにベッドに乗せられ病院を放りだされる。

そして、そのベッドが主人公の意識とシンクロして走りだし、三途の川のようなところにたどり着き、小鬼のような人物と出会ったり、死んだはずの母親と再開したり、交通事故を記録しているアメリカ人整体師、キラーと出会ったり、ミス採血娘に3年連続で選ばれたこともあるドラキュラ娘に遭遇したり、変なキャラや舞台がよく出てくる。

腹が減って他に食べるものがない時には、自分の脛から生えているかいわれ大根をむしって食べたりもするが、次第にかいわれ大根の精気も失われていき・・・。

この作品を前衛的と言ってしまえばその通りなのだけど、これは特にぶっ飛んでいる感じがする。三途の川のような幻想的なところにいたと思ったら、突然普通の街の道路であったり、踏切であったりするところにシーンが変わる。安倍公房の長編作品は他のものは一応すべて読了しているが、この作品は、その中で一番よく分からないというか、気持ち悪いカオスな夢をみているような感覚に陥る。よく酒を飲んだ後に追われたり不安を掻き立てられるような、不快な夢を見るのだけど、自分の夢が作品化されているような気がして変な感じがした。

三途の川であったり、病院のシーンが出てきたり、安楽死や尊厳死といったものも作中で語られていることから、確実に『死』が根底にあるテーマであるのは間違いない。この作品を面白いと感じるかどうかは別として、ブラックユーモアと幻想的な世界で不条理にも翻弄される主人公を通して『死』について考えさせられる。

安倍公房作品で一番衝撃を受けたのは、何度か示しているように『砂の女 (新潮文庫) [文庫]』だね。また、断然面白いと思うのはSF的な『第四間氷期』、あとはエロく気味の悪さが混在している『密会』とか、自身を都市で見失っていく『燃えつきた地図 (新潮文庫) [文庫]』なんかが好きだったな。あと、このブログで取り上げた安倍公房作品は以下。安倍公房の作品に初めて触れたのは高校の国語の教科書に載っていた『赤い繭』だった。そこから『砂の女』をどういう経緯で選んだのか忘れたけど、読んではまった。

一人の作家の長編をすべて読むということはあまりないのだけど、安倍公房の前衛的なよく分からなさと不安を掻き立てられる不条理さにどこか惹かれるのだと思う。




読むべき人:
  • 前衛的な作品が好きな人
  • よくカオスな夢を見る人
  • 死について考えてみたい人
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September 02, 2015

鍵のかかった部屋

キーワード:
 ポール・オースター、ニューヨーク、失踪、作家、自己喪失
ニューヨーク3部作3作目。以下のようなあらすじとなっている。
美しい妻と傑作小説の原稿を残して失踪した友を追う「僕」の中で何かが壊れていく……。
緊張感あふれるストーリー展開と深い人間洞察が開く新しい小説世界。高橋源一郎氏が激賞する、現代アメリカで最もエキサイティングな作家オースターの<ニューヨーク三部作>をしめくくる傑作。
(カバーの裏から抜粋)
3連続でニューヨーク3部作を読んだ。

あらすじを補足すると、主人公の「僕」と友人のファンショーは子供のころから家が隣同士で友人関係であった。ファンショーはハーバード大学に進学するも中退し、その後タンカー船員などになって各地を放浪しながら作家になり、「僕」とも次第に疎遠になっていた。「僕」は新進気鋭の批評家になっていたところ、ファンショーの妻、ソフィーからファンショーが失踪したという手紙が届く。

表面上はやはり他のニューヨーク3部作の1作目『ガラスの街』,2作目『幽霊たち』のように探偵小説風になっている。ファンショーの生い立ちを振り返りながら、ファンショーの行方を追っていく過程が。しかし、主人公はファンショーの捨てたもの、妻子、作家としての名声などを引き継ぐように得ていくが、ファンショーについて追えば追うほどファンショーとは自分が考え出した幻影にすぎないのではないかと疑念さえ抱き始める。そして、自分自身が揺らいでいく。

そしてこの物語も主人公の視点は誰なんだ?と引っかかるところが出てくる。例えば以下の部分を読むと。
 しかし、その結末だけは僕にとってもはっきりしている。それは忘れていない。これは幸いなことだと思っている。なぜなら、この物語全体が、結末において起こったことに収斂しているからだ。その結末がもしも僕の内側に残っていなかったら、僕はこの本を書きはじめることもできなかっただろう。この本の前に出た二冊の本についても同じことが言える。『ガラスの街』、『幽霊たち』、そしてこの本、三つの物語は究極的にはみな同じ物語なのだ。
(pp.182)
ここはあとがきでもなく、作中の内面描写部分で、文脈上ここでの「僕」は主人公になる。しかし、どう考えてもここは神の視点でのポール・オースターのように突如口出ししているようにも思える。表面上通りに受け取れば、この作品の主人公が前作の『ガラスの街』、『幽霊たち』を書いたことになる。

また、ファンショーの妻が失踪した夫を捜索するために雇った私立探偵のクインという男が出てくるが、これは『ガラスの街』の主人公と同じ名前である。そして、『ガラスの街』でクインが依頼を受けた男、ピーター・スティルマンも出てきて、本作の主人公の「僕」がフランスで出会う。そんな何気ない演出もあって、ニューヨーク3部作のそれぞれの関係性にいろいろな想像の余地が与えられる。それぞれの作品の世界観が入れ子構造になっているのか?などなど。

3部作に一貫しているのは、表面の探偵小説風であることと、主人公が翻弄されて自身のアイデンティティーが揺らいでいくところだ。そして、時折著者の独白のように作家として物語を書くということはどういうことか?という描写もところどころにちりばめられている。さらに、結末直前まではどうなるんだ!?と盛り上がるのだけど、結末が分かったような分からないような、微妙な感じで置いていかれる側面も・・・。

ポール・オースターの作品を継続して読んでみたが、好きな作家というか、自分に合う作家であることを認識できた。ポール・オースターの作品は暇を見つけて全部読みたいと思った。また、アメリカ文学は多様性に満ちて奥が深いとも思った。




読むべき人:
  • 探偵小説が好きな人
  • アイデンティティーについて考えたい人
  • 物語を書くとはどういうことか考えたい人
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