September 2016

September 22, 2016

遺失物管理所

キーワード:
 ジークフリート・レンツ、遺失物、鉄道、暴走族、仕事
ドイツの小説。以下のようなあらすじとなっている。
婚約指輪を列車のなかに忘れた若い女性があれば、大道芸に使うナイフを忘れた旅芸人がいる。入れ歯が、僧服が、そして現金を縫い込まれた不審な人形が見つかる。舞台は北ドイツの大きな駅の遺失物管理所。巨匠レンツが、温かく繊細な筆致で数々の人間ドラマを描き出す、待望の新作長篇。
(カバーのそでから抜粋)
主人公は24歳の青年で、ドイツの鉄道会社の末端の部署、遺失物管理所に新たに配属になった。そこでは列車内で忘れられた遺失物が届けられ、管理されている。遺失物管理所の棚には無数の傘やスーツケース、人形、僧服、入歯まで様々なものが管理されている。主人公ヘンリーはどこか空気が読めない言動をしがちだったりで、同僚の既婚女性に好意を抱きつつも、訪れる遺失物管理所の人たちとのやり取りで少し普通とは違う対応をしてしまう。

例えば、大道芸人が小道具を忘れてそれを引き取りに来たときは、持ち主であることを証明してもらうために自分を的にして投げナイフをやらせてみたり、スーツケースの落とし主の荷物の中身をチェックし、そこにあった履歴書からその人物が若くして博士を取得していることに関心を持ち、持ち主のところに届けに行ったりする。その博士はロシアの地方の村からやってきたパシキュール人で、その人物との交流が始まったりする。

特に際立った物語の起伏があるわけでもなく、事件らしい事件もない。取得物から大きなドラマが始まるでもなく、どちらかというとあまり出世欲がなく、ここで定年を迎えられたらいいなと考えている主人公とその姉バーバラや交流のある博士、同僚とのやり取りがほとんどである。主人公があまり空気を読まないような感じで若干違和感があり、最初は変な奴だと思うけど、正義感や友情を大切にする人物として描写されていて後半は好人物のように思えた。

物を落としたりどこかに忘れてきたということはほとんどないので、実際の遺失物管理所がどういうところなのかはわからない。しかし、社会の末端のような職場のお話しなのだけど、そこに集められる遺失物が読む人にとっての何か暗喩のようなものを感じられるかもしれない。

割と時間的にも精神的にも余裕がないとあまり読めないかもしれない。読んでいて若干眠気を誘うし、お話としてはとりわけ面白いわけでもないし。それでも不思議と最後まで読めた。



遺失物管理所 (新潮クレスト・ブックス)
ジークフリート・レンツ
新潮社
2005-01-26

読むべき人:
  • 遺失物管理所に行ったことがある人
  • 出世欲がない若い人
  • 忘れ物がある人
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September 11, 2016

Amazon Web Servicesではじめる新米プログラマのためのクラウド超入門

キーワード:
 WINGSプロジェクト/阿佐 志保、AWS、クラウド、基本、入門
AWSの基本的なことが解説されている本。目次は長いので翔泳社のページを参照と。仕事で自社のデータンセンターで運用しているWebサービスをクラウドに移行しようということになって、クラウドってなんぞ?というところから始まって、まずは以下の本を読んだ。この本はどちらかというと移行前に考えることを詳細に示された本だった。AWSの全体像と概要を理解したので、次は実際の使い方とWebサービスの構築方法が知りたいと思って、書店のAWSコーナーを見ると、これが一番初心者向けで分かりやすいと思って買って読んだ。

『新米プログラマのための』とタイトルにあるが、別に新米プログラマが対象でなくても読むべき内容で、とても分かりやすくAWSの基本的なことが示されている。各サービスの概要、そもそものインターネットやネットワーク、IPアドレスの仕組みなども示されている。また、各サービスの構築手順がキャプチャつきで示されているので、この本を読みながら一通り試しながら学習できる。

WebサービスはEC2インスタンスがAmazon Linuxで、そこにApacth Tomcatを設定し、RDSにMySQLを組み合わせてJavaで作るものを想定されている。Javaを使う人にはそのまま参考になると思われる。また、仮想化環境でアプリを管理、実行するためのオープンソースのプラットフォームのDockerについて、インストール方法から示されている。

自社のWebサービスはWindows Serverを使っているので、MS系の技術は本書には書いてなく、そこはあまり参考になるところがなかった。例えば、RDSにSQL Serverはあるが、EC2のWindows ServerインスタンスにもSQL Serverが標準搭載になっているものがあるので、初心者にはどっちを使うべきなのかとか、そもそも両方の選択肢があることなどは分からなかったりする。

AWSでWindows系のシステム構成になっている本があまりないので、そういうのが個人的にほしいなと思った。まぁ、そもそもAWSじゃなくて、Azure使えばいいじゃないかという気もするのだけどね。

とはいっても、AWSの基礎的なことが分かって重宝した。他のAWS本はぶ厚すぎたりある程度基礎が分かっている人向けだったりするので。本書を読めば最低限のAWSのシステム構築方法が分かるはず。あとは、地道にAWSのWeb上のドキュメントを読んで、お試し環境で試行錯誤していくのが理解の早道と思われる。




読むべき人:
  • AWSの基礎が知りたい人
  • JavaでAWSを使う必要がある人
  • Dockerも考慮したい人
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September 03, 2016

逃亡のSAS特務員

キーワード:
 クリス・ライアン、SAS、特殊部隊、アルカイダ、停電
特殊部隊ものの冒険アクション小説。以下のようなあらすじとなっている。
SAS隊員ジョシュ・ハーディングは、アリゾナの砂漠で銃弾を受け、意識を失って倒れていた。そばには射殺された少年が横たわっていた。ジョシュは美しい女性ケイトに助けられる。が、彼の記憶はすべて失われていた。しかも追跡者が次々と迫ってくる。折りしも世界の大都市で大規模な停電が続発していた。追っ手と闘いながら徐々に記憶を取り戻していく彼は、やがて驚くべき真相を知る!謎に満ちた会心の冒険アクション。
(カバーの裏から抜粋)
主人公はイギリスのSAS所属の兵士で、アルカイダの重要指名手配犯暗殺の任務を負っていた。しかし、上司の命令によりアルカイダの指名手配犯の狙撃に失敗してしまう。そのあと舞台は変わり、アリゾナの砂漠で首と足を撃たれたて記憶が飛んでいる状態で目が覚めて、世界ではテロ犯によると思われる停電が起きていた!!という状況。

ハリウッドアクション的で割と疾走感のある内容。アリゾナ砂漠を激走するバイクとマスタングのカーチェイスあり、ヘリで追撃されるシーンもあり、荒野のカウボーイのように撃ち合うシーンもあり、手製の釘入り火炎瓶の爆発もありでページがすらすらと進む。

拷問シーンがあって、結構えぐいというか、残虐ではないけど、リアルだなと思った。殴る蹴るは序の口で電気攻め、毒蛇にかませる、ナイフで刺すなど痛々しい。主人公はSASの兵士ということもあり、拷問に耐えるための講義を事前に受けていて、その説明があった。一部抜粋。
五つの数えを、頭に叩き込んでおく。まず、”精神的な根城”を持たなければならない。絶望し、暗い気持ちになるのを避けることはできない。そういうときに逃げ込む心のなかの隠れ家だ。つぎに、”集中できる言葉”を持つ。お祈りでも詩でもいい。一日を切り抜けるためにすがりつくものが必要だ。痛みに耐えるには、見えないものを心のなかで映像化する”視覚化”を用いる。たとえば、痛みをどこかに蹴とばしてしまえるサッカーのボールに見立てる。ありとあらゆる妄想や想像力を駆使し、逃避できるような幻想の世界を創りあげる。また”魔法の箱”も作らないといけない。自分の心以外の場所に、恐怖、不安、苦痛をしまいこんでしまうのだ。
(pp.281)
まるで著者がこの講義を受けたような感じでもある。このリアルさは著者自身がSAS隊員だったことによる。冒険小説の主人公並みの経歴だなと思う。

あと、拷問講義の講師のよって最後に重要な言葉が示されている。それも引用。
「自分が生きる目的や理由を持たなければならない。それがなかったら、痛みに耐え抜くことはできない。」
(pp.282)
拷問ではなくとも、普通の生活でもしんどい状況に陥ることがある。その時はこの言葉を思い出そう。

特殊部隊ものが割と好きで映画とかもよく見ている。小説はあまり読んでなかったので、読んでみると楽しめた。また、特殊部隊ものを読むと、自分も強くなったような妄想とともにモチベーションが少しだけ上がる気がする。



逃亡のSAS特務員 (ハヤカワ文庫NV)
クリス ライアン
早川書房
2006-12

読むべき人:
  • 特殊部隊ものが好きな人
  • ハッキングものが好きな人
  • 拷問に耐え抜く知恵が必要な人
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