April 2017

April 16, 2017

レッドビーシュリンプの憂鬱

キーワード:
 リーベルG、IT小説、エンジニア、評価、改革
IT小説。以下のようなあらすじとなっている。
業績不振のWebシステム開発部に突然コンサルの男――ソフトウェア・エンジニア労働環境向上推進協会、通称「イニシアティブ」の代表を名乗る五十嵐――が現れる。五十嵐が実行する思い切った改革に、若手エンジニアは賛同し成果を出す一方、ベテランエンジニアたちは反発し、五十嵐と対立していく。チームリーダーに抜擢された女性エンジニア箕輪レイコは、板挟みの立場になりながらも問題を解決しようと奮闘するが……。

エンジニアを通してビジネスパーソンとしての働き方や組織の在り方について問題提起する、異色のIT小説。
(Amazonの内容紹介から抜粋)
この本はいろいろと現状のIT業界、エンジニアの処遇に対する問題を提起しているのが主なテーマとなる。それは、エンジニアの技術力がないのに年功序列で評価され、実装技術よりも要件定義や仕様調整、プロマネ的なものばかりが評価されるプログラマーの上位職としてSEが存在することを是正し、年齢に関係なくプログラミング、実装技術を持つものが正当に評価されてそれに見合った報酬を得るべきだ、というものである。

中堅SI企業を舞台に、イニシアティブという外部コンサルタントがやってきてからいろいろと変化が起き始める。良い点は若手エンジニアが新技術、新プロジェクト、Web系サービスに対して意欲をもって働き始めたこと。よくない点は、これまで技術に対する研鑽を怠っていた古株メンバーがリストラ候補に挙がってしまって軋轢を生んだこと。一見エンジニアが正当に評価される制度を取り入れていけば、何もかもがうまくいくようには思えるが、古株メンバーは家庭もあり、新技術のキャッチアップする体力も意欲もなくなっていくので、まぁ、そうかもしれないなと思うのだけどね。

小説としてはそこまで面白いものではないけど、IT業界、特にSI業界ではあるある!!という部分がいろいろとちりばめられていて、線を引きつつ共感しながら読んでいた。たしかにイニシアティブのコンサル、五十嵐のIT業界を変えたいという理念は納得だな、と思う。その反面、自分自身がそのような技術力だけで評価されるところで、生き残れるだろうか?と自問自答せざるを得ない。僕はどっちのエンジニアだろうか?と。もちろん、技術力を高めてそれで評価されたいと思う。それを少なからず望んでSI的なところから転職したのだし。

一点だけITエンジニアを正当に評価すべきという主張に対して本書で抜けている視点、あまり言及されていないものがあって、それは『人月』に対する考え。現状のIT業界の工数見積もり、エンジニアの単価は役職ベースの人月稼働時間で算出されており、それが結局システムの値段、エンジニアの評価となっている。その人月ビジネスを根本から変えないと正当な技術力評価はできないのではないかと思う。

しかし、人月は発注側にも受注側にも便利な尺度であり、人月意外に代替でき納得のいく評価尺度がいまだにないのだから、どうにもならないのかもしれない。ソフトウェアそのものが不可視であり、バグがなく完全なものを作ることはほぼ不可能だし、エンジニアの技術力によって生産性が10倍くらい違ったりするから。

本書はITエンジニアが読めば共感するところはたくさんあるので読んだほうが良い。やはりSI的な評価尺度、正しく自分の技術力で評価されていないのは納得がいかないと思う人は、本書を読んで思い切って転職をするのもいい。また本当はこれはエンジニアを評価する上長的な立場の人もぜひ読んでおくべきだ。正当な評価ができないと、本当にできるエンジニアはその組織で長く働き続けることはないだろうし。

IT小説といっても難しい技術的な話はそこまで出てこない。もちろんIT用語、技術用語がところどこに出てくるが、注釈が載っている。重要なのは些末な技術用語よりも、本書で提起されている問題の本質を把握することだ。

読めばいろいろと考えさせられるIT小説だった。読了後の後味は若干苦いけど、良書の部類。




読むべき人:
  • ITエンジニアの人
  • ITエンジニアを評価する立場の人
  • 正当な技術力で評価されたい人
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