May 06, 2006

この国のけじめ


この国のけじめ

キーワード:
 藤原正彦、国家の品格、教養論、日本、武士道、教育論、身辺随想
国家の品格』の著者によるエッセイ。

内容は国家の品格と重複する部分がけっこうある。この本は国家の品格以後の出版となっているが、初出は新聞、雑誌の記事で、それらがまとまったものとなっている。そのため、講演内容を文書化したものと違って少し固めの文体となっている。また、扱っている内容が本書の中で繰り返している部分もあるし、論述内容が多岐にわたっている。

主な内容は、最初は日本を憂う気持ちから、市場原理主義、ゆとり教育の失敗、大戦中の敵国がいかに卑怯極まりないことを行って日本を貶めたなどといった、少し硬い内容となっている。最初のほうは、祖国愛と題した章にあるように国家単位の事象から次第に個人的なことに話が変わっていく。

個人的なことを語るエッセイがとても面白い。著者の自意識過剰といえるまでの自分は女性にモテるはずだという思い込みが随所に現れていて、失笑してしまう。そこまで言い切れるものなら、その人ならではのキャラクターなのだということがわかって面白い。ユーモアも忘れない著者の個人的な話は、親との関係などもあって、著者がどう生きて考えてきたのかがわかる。

なるほど、なるほどと思って線を引いた部分が二箇所ある。1つは小学校から英語教育を始めることの批判、そして国際人になるには高い教養が必須であるという部分のくだり。
伝達手段の英語をマスターし、かつ自らの内容を豊かにすることは、並みの日本人には不可能という辛い現実を、素直に国民に伝えねばならない。内容を豊かにするためには、読書を中心とした膨大な知的活動が必要であり、これが膨大な英語習得時間と、並みの人間にとって両立しないのである。うまく両立させられる日本人は、千人に一人もいないと考えてよい。(pp.72)
ここまではっきり言われればなるほどと納得がいく。自分が大学時代にそれなりに英語の勉強をしてもTOEICの点数が頭打ちになってしまったのはこれで言い訳できる・・・・。だって読書冊数を維持しながら英語の勉強まで完璧にやることは不可能だった・・・・。研究とかもあったし・・・。まぁ、逆にもう何年か辛抱して努力し続ければ、千人に一人以上の逸材になれるんじゃないかと思う。

また、著者の主催する読書ゼミの教養についての部分。
教養がどうしても必要なのは、長期的視野や大局観を得たいと思うときである。長期的視野や大局観を持つとは、時流に流されず、一旦自分を高みに置き、事象や物事を俯瞰しつつ考察するということである。このためには若いうちから「現状」を離れ大きな枠の中で人間や社会の本質に迫る、ということに慣れねばならない。そこで、時空を超える唯一の方法、すなわち読書により、古今東西の偉人賢人の声に耳を傾け、庶民の哀歓に心を振るわせる、ということが必要になる。このような読書の蓄積が教養である。(pp.114-115)
このように今まで読んできたどの教養論よりも簡潔的かつ的を射ている。

もちろん、国家の品格同様納得できない部分もそれなりにあるけどね。

この本を読んだ後は『武士道』を読みたくなる。また、日本の歴史、文化をしっかり学ぼうという気にさせてくれる。

エッセイは著者の考えなどがよくわかるので面白い。

読むべき人:
 国家の品格だけでは物足りない人、藤原正彦のファン、教養論が好き、小学校からの英語教育の是非に関心がある人、最近日本はだめになってきていると思う人、歴史好き、武士道が愛読書



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