May 15, 2006

村上朝日堂はいほー!

村上朝日堂はいほー!

キーワード:
 村上春樹、エッセイ、愚痴、個人的なこと
村上春樹のエッセイ。3作目。1983年から1988年までに『ハイファッション』で連載されていたものなどが書籍になったもの。

基本的に前の2作とあまり変わらないが、少しだけ文体が変わっている。小説に出てくるほどまでの比喩ではないが、少し飾った文体が出てくる。どちらかというと愚痴っぽいものが多く、また、身近な人に焦点を当てたものが少なくなっている。

今回面白かったのは、著者は山羊座のA型で、占いは基本的に信じていないけど、雑誌とかにはよくないことが書いてあって割を食うということや、双子の女の子とパーティに出てみたいという欲求を持っていたりとか。

なかでも言われてみればなるほどと思ったのは、町中に溢れる標語つきの看板があって、それは全く意味のないものだという愚痴のような話。確かに、最もだと思って、笑いそうになった。「スピード出すな、死んでしまえばもうおしまい」とか。その話題の落ちも面白かった。

あと、自分もそう思うと共感できたところは、英語についての部分。著者は翻訳業をやっているからしゃべれると思われているがそうではないらしく、そこから英語について語っている。曰く、英会話教室に通っても無駄だと。また英語の早期教育についての疑問も挙げている。その部分を引用しておく。
普通の六歳の子供がどうしてバイリンガルにならなくちゃいけないのか僕には全然理解できない。日本語もちゃんとできない子供が表層的にちょこっとバイリンガルができてそこに何の意味があるのだろう?何度も言うようだけれど、才能かあるいは必要があれば、子供英会話教室に通わなくったって英会話は人生のどこかの段階でちゃんとできるようになる。大事なことはまず自分という人間がどういうものに興味があるのかを見定めることだろう。日本語の真の会話がそこから始まるのと同じように、英語の会話だってそこから始まる。(pp.138)
国家の品格の著者、藤原正彦氏と同じような主張である。昨今の教育改革に関する部分に通じるものがある。自分自身もこの意見に激しく同意する。

取り上げられている話題は瑣末なことなんだけど、それ分かる分かるという共感が得られるので楽しんで読めた。また、少し切ない内容もあった。『青春と呼ばれる心的状況の終わりについて』というものとか。こういう所感を広げて装飾していけば著者の小説の一場面になっていくのだなと思った。

読むべき人:
 エッセイが好き、山羊座A型の人、音楽の話が好き、瑣末な話題に共感できる、さまざまな地域の話が好き



トラックバックURL

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星