May 20, 2006

小説の自由


小説の自由

キーワード:
 保坂和志、小説家による小説論、哲学的、小説とは何か?
小説家による小説論。

はじめに断っておくが、この本は結構難解だった。そのため、自分自身どこまで把握できたかは分からない。しかし、知的刺激はかなり受けた。かなり面白い本だということは確かである。

内容は、小説家による小説とは何なのかということを考えたものである。こればっかりはうまく要約できないので、まえがきの著者の言葉を引用しておく。
もっとも、読者自身に、小説について真摯に考えようという気持ちがまったくなければ、最初から通読してみても理解できない、ということはあらためて言うことではないが、小説とは何か?小説とはどうしてこういう形態なのか?なぜ人は小説を必要とするのか?ということを真剣に考えている人に向かっては、私は私に書けるかぎりの力を振り絞って、毎月真っ正面から応えるつもりで書いてきたし、今もそれをつづけている。
(pp.10)
毎月とあるのは、雑誌『新潮』誌上で『小説をめぐって』という連載をしていたものが書籍になったからである。

最初は音楽の話を例に二つの領域の隙間の第三の領域で何が起こっているのかということを考え始めている。そして三島由紀夫や小津安二郎の作品などを例に取り、風景描写からの作者の心情化などを考察している。他にもいろいろさまざまな引用を挙げて論じている。全て挙げることはできないが、終始、小説の根本的な価値などを小説家の視点から論じている。

著者自身、かなり試行錯誤しながら毎回書いているので、話がころころ迂回してしまう。そのため、その章の主題が分かりにくくなる。それはそれで扱うテーマがそうだからしょうがないと著者は述べているが。

この本はゆっくりと熟考しているようでは、メリーゴーランドに乗っているような堂々巡りに陥りかねない。そこで、ジェットコースターに乗った気分で、分からないようなところもとりあえずスピードに乗って読みこなすという作業が必要な気がする。ゆっくり読んでいても分からない部分は分からない。それよりも後で再読することが必要な書だと思う。

結局何が書いてあるのかというと、
私がこの連載で書きたいのは、小説家の思考様式や小説を小説たらしめている何かということだけだ。
(pp.213)
ということらしい。小説家が小説をどう考えているのかを知るにはよいかもしれない。しかし、最後に明確にその答えが出るわけではない。どちらかというと著者が述べているように、思考プロセスに価値があるということらしい。

あと個人的になるほどと思った部分は、読書は単位時間当たりの生産性を問われるような労働ではなく、効率を求めるようなものもないという主張だった。これは正直耳が痛かった・・・。もちろん、効率を求めるべき本もあるけど、小説は例外ということにしておこう。

難しい内容だったけど、小説に対する見方が変わるような本だった。読了後にあまりにも漠然としか内容が残っていない・・・。また読書レベルが上がったときに再読したら、発見があったり理解ができるのかもしれない。

読むべき人:
 小説家志望の人、カフカの『城』の城に意味があると思っている人、小説家がどう小説を書いているか知りたい人、自分の教養レベルを試したい人



トラックバックURL

コメント一覧

1. Posted by Boooooks   May 20, 2006 21:03

今まで小説家が「なぜ」小説を書いたのかを疑問に思っていましたが、
この本を読んで、少しは解決しました。
様々な小説家の気持ちも知りたいところです。

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星