May 21, 2006

ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル


ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル

キーワード:
 野口悠紀雄、アメリカ、開拓史、スタンフォード、ビジネスモデル、IT企業、シリコンバレー、Google
『超』シリーズの専売特許で経済学者の野口悠紀雄氏が著者。雑誌『週刊新潮』に2004年4月から05年6月まで『21世紀のゴールドラッシュ』として連載されていたものが書籍になったもの。以下のような3部構成になっている。
  1. 地表に金がころがっていた ―19世紀のゴールドラッシュ
  2. 鉄道王、大学を作る
  3. ゴールドラッシュの再来 ―シリコンバレーの起業家たち
第1部は、アメリカのゴールドラッシュ時で、金によって直接儲けた人々のほかに、金採掘者を相手に儲けた人たちがいることなどを紹介している。第2部では、大陸英断鉄道を作った一人、リーランド・スタンフォードが莫大な資金をも基に、スタンフォード大学をカリフォルニアに作ったことが書いてある。そして、第3部では、そのスタンフォード大学を土壌としたシリコンバレーのIT企業が次々生まれ、その莫大な企業価値を生み出すビジネスモデルなどについて述べられてる。

タイトルのゴールドラッシュというものは、19世紀時の開拓史上の金をめぐったビジネスと、現代のGoogle、Yahoo!を筆頭とするIT企業のビジネスの構造や風土的なものが一貫して受け継がれているというようなものである。
本書のタイトルには、そうした意味も含ませている。つまり、IT自体がゴールドラッシュなのだが、それだけでなく、「19世紀のゴールドラッシュにおける最高の成功者がその理念を結実させた大学を作り、それによって、ITの世界が開けた」という意味だ。
(pp.153)
このようなことが経済学的な視点を含めつつ一貫して説明されている。

特に3部は昨今のGoogle、Yahoo!、サンマクロシステムズ、シスコシステムズ、ネットスケープなどの企業の発祥過程、その後のビジネス形態などが述べられている。そこで起こることは、スタンフォード大学の院生が趣味で始めていたことがいつの間にがネット上でのビジネスになり、それが株式公開に伴って莫大な価値を生み出すというようなことだった。しかし、ネットスケープとIEのブラウザ戦争などの盛者必衰的な側面もあるというような、新世紀のソフトウェアによるビジネスモデルがいろいろ書いてあって、面白かった。

昨今はGoogle脅威論や1つの権力であるという見方をする風潮があるが、これはどちらかというと経済学的に見ている。そのため、IPOとかファンドとかストックオプション、ベンチャーキャピタルなどいろいろ専門用語が出てくる。しかし、割と用語なども丁寧に説明されている印象を受ける。また、ネット企業の技術的な仕組みは、簡単に説明されている程度なので、そこまで難しくはない。

結局一連のゴールドラッシュという現象はどういうものであったのかということを以下のように述べている。
彼らは、個人の創意と努力で大きな成功が可能となることを示した。個人は企業組織に頼らず、企業は政府には頼らない。政府は個人の創意を邪魔しなければよい。「自由な活動の場さえ確保されていれば、個人が自らの未来を切り開くことができる」、このことこそが、ゴールドラッシュの最大の教訓なのである。
(pp.296)
これに対して日本はこのような風土、空気が全くなく、全然だめだとある。そしていずれハード依存の産業構造からソフト主体に転換せずにはいられず、そのときの社会で必要になるのは、組織ではなく個人で自立、異質型の態度であり、また失敗を恐れないことだというようなこととして締めくくられている。

総じて満足できた本だった。歴史から一貫して説明されているのでとても説得力があるし、純粋に面白かった。またビジネス的な視点から見ても、考え方を変えることで儲けの仕組みを探るということも勉強になった。

野口悠紀雄氏の本ははずれが少ない。他の『超』シリーズも分かりやすくためになる。

読むべき人:
 フロンティアスピリットについて知りたい、スタンフォード大学に興味がある、ゴールドラッシュ時の人々の生活を知りたい、鉄道王はいかにして生まれたか知りたい、Googleなどのビジネスモデルのどこがすごいのか知りたい、将来億万長者になりたい



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