June 09, 2006

村上春樹論 『海辺のカフカ』を精読する


村上春樹論 『海辺のカフカ』を精読する

キーワード:
 村上春樹、評論、批判、構造、タブー、オイディプス、政治的
海辺のカフカ』の批判本。どういう立場から批判しているのかといったことが分かる部分を抜粋。
しかし、この『海辺のカフカ』が外国でもベストセラーになっている状況を、「いよいよ日本文学が世界に認められた」「世界に通用する普遍的な日本の小説がようやくあらわれた」と手放しでよろこんでいいのでしょうか。私はそのような立場をとることはできません。むしろ、『海辺のカフカ』が受け入れられた国々は、二〇〇一年「九・一一」以後、ある共通した社会的な精神的病理が広がっており、それに対する<救い><救済><癒し>をもたらす商品として『海辺のカフカ』が消費されており、そのことを<善きこと>として受け入れるわけにはいかない、というのが本書を貫く立場です。
(pp.14)
つまり、この『海辺のカフカ』で暗に示されていることに警鐘を鳴らしている。

この本の構成は以下のようになっている。
  1. 『海辺のカフカ』とオイディプス神話
  2. 甲村図書館と書物の迷宮
  3. カフカ少年はなぜ夏目漱石を読むのか
  4. ナカタさんと戦争の記憶
具体的な内容は、多く説明しないようにしておく。なぜなら、激しく違和感を覚えたというか、あまり面白くないし、読む気が失せていく内容だったから。

基本的に、この書評ブログでは本のよいところを示していきたいが、これはちょっと・・・、という感じなので、今回は毒舌ぎみで。

まず、結局この本で著者は何を示したかったのかがいまいちよく分からない。『海辺のカフカ』には『親殺し』、『近親相姦』、『強姦』という3大タブーをしかたのないこととして受け入れてしまう雰囲気があることをオイディプス神話などを基に長々と解説している。それは分かるのだけど、この本の最後の部分で、現実世界の歴史、政治的な話までに絡めていく意図が分からない。なぜ、フィクションの世界だけで批評すればよいもをわざわざ現実世界に絡めて批評しなければならないのか?と思った。個人的には、ただのフィクションに著者が示すような歴史認識を変えるほどの効力はないだろうと思う。

そもそもこれは政治の本なんじゃないかと思えてくる。何も村上春樹の『海辺のカフカ』を題材としなくてもよかったんじゃないかと思う。

また、フィクションである文学作品をこのように解体するように解説していくことに何の価値があるのかということも疑問に思った。村上春樹自身、評論家と作者は領域が違うということ語っている。そのため、作品を受け手がどのように読むのも自由であるという姿勢である。

しかし、この本を読んでから『海辺のカフカ』を読んでしまうと、この本に主張されているように読まなければいけない気になってくる。読了後に<救い><救済><癒し>をもとめて何が悪いんだろうと思った。例え著者の主張するようにそれはよくない傾向だとしても、読者には誤読する権利はあると思う。自分自身は読了後そのように感じなかったけど。かといって『海辺のカフカ』はつまらない作品だとは思わなかったが。

そもそも、<救い><救済><癒し>が、政治、歴史認識に大きく影響を与えてしまう可能性があるという前提がおかしいような気もする。ここは文学作品の評論の難しいところだとも思う。ある方向性で解釈したとしても、それが真理なのかははいつまでたっても分からない。作品の著者に聞いたところで(特に村上春樹の場合)、絶対に真意を示すことはないだろうから。

まだ、いろいろあるけど、面倒だからここまで。あと、読むのが苦痛になってきてところどころすっ飛ばして読んだから、精読していないので誤読しているかもしれない。また、かなり主観的な感想ということで。

買うときに迷ったんだよな・・・。買って損した・・・。世の中には価値のない本もあるものだということが分かった。また、著者が村上春樹の作品を解体すればするほど、作品がつまらなくなっていくような気がするということが分かった。

村上春樹自身この本を読むことはないだろうけど、この本を読んだとしたらきっとこう言うだろう。

「やれやれ」

また、『村上春樹の隣には三島由紀夫がいつもいる。』という本は面白くてよかったんだけど。もう、このような解体本は読むのやめようかな・・・。

読むべきでない人:
  • 『海辺のカフカ』をまだ読んでいない人
  • フィクションはフィクションとして扱われるべきだと思う人
  • 作品を一つ一つの部品のように解体することに価値を見出せない人



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コメント一覧

1. Posted by 名無し   August 10, 2011 17:05

頭がお悪いんですな?要するに。

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