June 17, 2006

魔の山



魔の山〈上〉
魔の山〈下〉

キーワード:
 トーマス・マン、ドイツ教養小説、古典作品、死、病気、分解、思想、自由
記念すべき50冊目は、トーマス・マンのドイツ教養小説と評される大作。

岩波文庫のほうで読了。あらすじを本のカバーから抜粋。
平凡無垢な青年ハンス・カストルプははからずもスイス高原のサナトリウムで療養生活を送ることとなった。日常世界から隔離され病気と死が支配するこの「魔の山」で、カストルプはそれぞれの時代精神や思想を体現する数々の特異な人物に出会い、精神的成長を遂げていく。『ファウスト』と並んでドイツが世界に贈った人生の書。(全2冊)
(上巻カバーより抜粋)
また、下巻も抜粋しておく。
理性を尊び自由と進歩を唱導するセテムブリーニ。テロと独裁によって神の国を実現させようとする非合理主義者ナフタ。2人に代表される思想の流れはカストルプの魂を奪おうと相争うが、ある日雪山で死に直面したカストルプは、生と死の対立を超えた愛とヒューマニズムの道を認識する。人間存在のあり方を追求した一大教養小説。
(下巻カバーより抜粋)
このような内容となっている。

このような古典作品を自分なりに解釈することもできるが、それは他の評論家や文学研究者に任せるとして、自分なりの主観的な感想を述べておこうと思う。

自分がこの作品を読んだ状況がとても特殊だった。特殊というよりは、主人公、ハンス・カストルプと似たような境遇という状況で読んだ。というのも、自分は1ヶ月ほど病院で入院していた。そのときに上巻を読んだ。今は自宅療養中で、下巻をやっと読みきった。

平凡無垢な青年、ハンス・カストルプと似たような境遇といわれれば、首を傾げるかもしれない。しかし、ある部分に関しては、やはり共通部分があるといってよいだろう。

まず、性別と年齢がほぼ同等である。性別がほぼ同等というのは変な表現であるが、要は同じである。また年齢がハンス・カストルプが23歳、自分が22歳である。

次に、職業的な観点である。ハンス・カストルプは造船技師であり、人文主義者セテムブリーニからはエンジニアと称されていた。自分自身は、プログラマーということであり、構築対象は異なるがエンジニアという職種で包括して問題ないだろう。

さらに、療養生活の境遇である。ハンス・カストルプは大学を卒業後、造船会社に入社する前に、気晴らし、またはいとこを尋ねるための療養生活としてのサナトリウム暮らしを始めた。対して自分は、会社入社直後に入院生活となった。また、ハンス・カストルプは貧血気味で、肺結核が講じて3週間の療養が7年になってしまう。自分の場合も、貧血が原因で検査を行い、そこから腎臓が悪いことが判明し、同時に肺の炎症反応が見られた。入院も最初は1ヶ月だったのが少し伸びて、1ヵ月半となり、現在では自宅療養中という様態。

ハンス・カストルプがサナトリウムのバルコニーで横臥療法を行っているとき、自分は病院のベットの上で同じように水平になっていた。ここまで共通点が多いと、何か運命めいたものを感じる。入院中のベットの上で読む『魔の山』はなんと格別なことか!!きっとこのような状態で『魔の山』を味わった者など、世界中にそうはいないだろうと想像し、優越感を感じる。

『魔の山』自体は、入院するだいぶ前に買っていたのだが、なかなか読み進める機会がなかった。そしてこのようなハンス・カストルプと同じような境遇で読むことになり、なんだかこの作品を読むために入院したのではないかとも思った。

作品の内容の感想を一言で言えば、長いに尽きる・・・。上巻598ページ、下巻690ページの長編。しかも、ページには改行がなく、抽象的な漢字で埋め尽くされている。1日30ページが限界だった。特に、ナフタ、セテムブリーニ、ハンス・カストルプが論争しているシーンはとても疲れた。何よりもその時代の世界史的な知識が乏しいので、理解するのは無理だった。読んでいるうちに文字の森に迷い込んでしまう。結果的に、5月のはじめに読み始めて今日読了したので、およそ1カ月半はかかった。

この作品は、自分にとってかなり特別な存在となった。読了後は単純に長い教養大作を読みきった満足感と充実感を得た。さらに、ハンス・カストルプと似たような状況で読了できたことに僥倖を感じた。

10年後くらいに、また読み返したい作品だと思った。全て理解していないし、なによりも今の特殊な状況を振り返るという役割を果たすだろう。この作品を座右の書にでもしておこう。

読むべき人:
  • ドイツ教養小説が好きな人
  • 長期入院中の人
  • 1500円ほどで2ヶ月は暇つぶしをしたい人
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1. 魔の山 踏み込むと深い雪の世界です  [ ハムりんの読書 感想日記 おすすめの本 ]   June 18, 2006 21:13

魔の山  感想☆☆☆☆☆ トーマス・マン 高橋義孝 新潮社  「魔の山」つまり、スイスの山奥ダヴォスにある  結核療養所、つまりサナトリウムで展開される  ドイツ教養小説の大作です。  岩波文庫でもありますが、  読み慣れた高橋義孝さんの訳にしました。 ...

コメント一覧

1. Posted by カンタ   September 22, 2010 12:06

私も大学生の頃に読み、40になった今再度読んでいます。売上という呪縛に周りが見えなくなっている私にとって、人生について考えさせてくれます。しかし、ナフタとセテブリーニの会話がよくわからないのは相変わらずです。

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