June 27, 2006

春のソナタ―純愛 高校編


春のソナタ―純愛 高校編

キーワード:
 三田誠広、青春、純愛小説、高校生、父と子、クラシック音楽
三田誠広の小説。集英社文庫。カバーからあらすじを抜粋。
聡明で、魅力的な表情の女性だ―十七歳の直樹が年上の早苗に抱いた第一印象である。高校生のバイオリニストの直樹は、音楽を愛しながらも、ピアニストの父と同じ道を進むことをためらう。そんなある時、美貌の早苗に出会った。その時から彼の生活に明らかな変化が起きる。高校生の愛と自立、人生の試練を流麗に描く青春小説。
(カバーから抜粋)
何から書けばよいのか、少しためらってしまう。この作品を解体するのはやめて、率直な感想を綴っておこう。

はじめに結論を言ってしまえば、読んでよかったと心から思った。ネタばれするとあまり最後に陶酔できなくなるので、かなりぼかした内容しか語れない。

主人公は、普通の高校に通う少しさめた大人っぽい高校生で、父の生き方に反発しながらも、それでも父のことをどこかで尊敬しているというような関係で、そこが特によかった。

純愛がテーマなんだけど、普通の青春小説とは違い、そこまで恋愛が前面に描写されているわけではない。どちらかというと、主人公の取り巻く環境が変化していく中で、主人公がこれからどうやって生きていくのかということを主題に置いた成長物語であると思う。

クラシック音楽が媒体として物語が進んでいくので、曲名もたくさん出てくる。知っている曲はまったくなかった。そのため音楽の知識がないと分かりにくい印象があるが、実際の演奏シーンは、描写がしっかりしているので、クラシック音楽に疎い自分でもその演奏を聴いているような気になってくる。そこはすごい力量だと思う。

著者の文体は、かなりわかりやすい。気取った比喩がなく、素直に読めて物語に入り込める。

時折、無性に青春小説が読みたくなるときがある。そして、そういう小説を2chなどで何かないか探したりするのだけど、だいぶ前にそういう小説としてこの作品が当てはまると知った。最近になって、読んでみたくなったので書店に行ったら置いてなかった。3件ほど回ってもなかったので、いまさら青春小説を読む必要もないかなと思っていたので、あきらめようとしていた。たまたま立ち寄った小さめの書店にこの作品があったので、少し躊躇しながら買った。しかし、実際に読んでみると、この作品は、今の自分にぴったりだった。読了後は、泣いてしまった。小説を読んで泣くことはめったにないのに。それほどよかった。

今の自分にぴったりだったのは、やはり父と子の関係に感銘を受けたからだろうか。最近、父がなくなり、父にとっての人生とはなんだったのかということも考えさせてくれるよい小説だった。

また、この作品は青春小説で主人公が17歳ということもあり、10代で読むほうがよいと思われるが、自分が17歳ぐらいのときに読んでもこの作品のよさがわからなかったと思う。今、読めたことにとても意味があったのではないかと思う。

『純愛―高校編』とタイトルにあるが、中学編もある。それは、教科書にも載っている『いちご同盟』。こちらもお勧め。ちなみに、『いちご』は食べ物ではないよ。

また、三田誠広(みたまさひろ)のHOMEPAGEによれば現在『大学編』を執筆中らしい。期待しよう。

読むべき人:
  • 三田誠広のファンの人
  • 成長物語が好きな人
  • 父と子という関係を見直したい人
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