July 06, 2006

黄色い目の魚


黄色い目の魚

キーワード:
 佐藤多佳子、青春小説、高校生、絵、イラスト、恋愛、成長
佐藤多佳子の小説。以前にこの作家の作品を読んだことはなかった。なんとなく本屋で目に留まったから買ってみた。新潮文庫。あらすじをカバーから抜粋。
海辺の高校で、同級生として二人は出会う。周囲と溶け合わずイラストレーターの叔父だけに心を許している村田みのり。絵を描くのが好きな木島悟は、美術の授業でデッサンして以来、気がつくとみのりの表情を追っている。友情でもなく恋愛でもない、名づけようのない強く真直ぐな想いが、二人の間に生まれて―。16歳というもどかしく切ない季節を、波音が浚ってゆく。青春小説の傑作。
(カバーより抜粋)
もう少しわかりやすい内容の部分が角田光代による解説にある。その部分を抜粋。
高校生になったみのりと悟の物語は、湘南を舞台に進んでいく。第三章以降には、この年代についてまわるものごとの、まるごとすべてが、緻密に、ていねいに、端折ることなく描かれている。家族の問題、将来のこと、現在の学校生活、友だちとの関係、垣間見える大人の世界、それから、だれかを大事だと思う気持ち、恋のようなものと、ほんものの恋。
(pp.451)
解説はかなりわかりやすい。

まるで短編小説の寄せ集めのように構成されていて、それでいて長編としてよくまとまっている。以下のような章立てになっている。
  1. りんごの顔
  2. 黄色い目の魚
  3. からっぽのバスタブ
  4. サブ・キーパー
  5. 彼のモチーフ
  6. ファザー・コンプレックス
  7. オセロ・ゲーム
  8. 七里ヶ浜
  9. 十年後〜あとがきにかえて〜
  10. 解説 角田光代
この作品で特徴的な部分は、主人公2人の一人称の視点で物語が進んでいくこと。章毎に視点が変わる。そのため、ストレートに感情が表現されていてわかりやすく、陶酔しやすい。

まるで高校生活全てが書かれているような気がした。部活をやっていたり、授業風景があったり、文化祭があったり、友達と語り合ったり、恋愛関係にいたるまでの人間関係や葛藤なども。

主人公の2人は、高校生活での身の回りの事象に、迷いながら悩みながらもそれらに精一杯向き合って、生き方を模索していく。

また、さまざまな登場人物が出てくるが、みなよく際立っているというか、しっかり肉付けされている。解説の角田光代が言うように、身の回りにいそうな人物としてしっかりリアリティを持っている。そういうところがすごいなと思った。

あと、女流作家なのになんで男の高校生の気持ちを的確に描写できるのかと思った。単純に感嘆した。

純粋に読んでよかったと思った。青春小説として描かれるべきものがまとまっている気がした。それだけに、角田光代も述べているように、高校生のときに読みたかったと思う。もし、その当時読んでいたら、自分の高校生活は何か変わっていたのではないかと思った。この作品は、今、22歳という年齢で感覚的に理解できる最後のチャンスだったんだと思った。あと数年年を取ると、きっとこの作品のみずみずしさというものはわからなくなっていくだろうなと思う。

なぜ、青春小説を読みたくなるのか?という疑問が内に沸いてくることがある。それはたぶん、自分が青春らしきものを送れなかったことによる代償行為なんじゃないかと思う。青春なんて無関係に生きていたから、絵に描いた青春を疑似体験したくなるのだろう。

読むべき人:
  • よくできた青春小説を読みたい人
  • 高校生活を追体験したい人
  • 青春なんてくそっ食らえと思っている人
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トラックバック一覧

1. 「黄色い目の魚」佐藤多佳子  [ コンパス・ローズ  ]   July 06, 2006 22:02

黄色い目の魚 佐藤 多佳子 線を引く。一本の線。真っ白い世界に何かが生まれようとしている。線を引く。連続して。輪郭を取り、線と線で埋められた空間に陰影ができる。確信を持って引いた線が、消えない傷のようであったり。意味あることとして大切な一本があったり。踊...

2. ★ 黄色い目の魚 佐藤多佳子  [ 本を読んだら・・・by ゆうき ]   July 07, 2006 20:17

黄色い目の魚佐藤 多佳子新潮社 2002-10by G-Tools この本は長いけど、たぶん対象年齢、中学生・高校生あたりなんじゃないかと思います。主役はみのりちゃんというまっすぐで、絶交とケンカばかりして、家庭でも学校でも問題児の女の子と、サッカーが大好きだけど補欠でキ...

3. 黄色い目の魚  [ miyukichin’mu*me*mo* ]   December 15, 2006 23:29

 佐藤多佳子:著 『黄色い目の魚』    『しゃべれども しゃべれども 』 で初めて佐藤さんを読んで、  この作家さん、イイ{/ee_3/} すごい好きな感じだぁ{/heartss_pink/}  って思ったのは、ついこの間のことでした。  その後、短編をいくつか読んで、  『しゃべれ...

4. 佐藤多佳子著『黄色い目の魚』を読み終わる  [ 栄枯盛衰・前途洋洋 ]   May 27, 2007 23:21

先日の『しゃべれどもしゃべれども』に続いて、新潮文庫の佐藤多佳子さんの『黄色い目の魚』を読んだ。 黄色い目の魚 幼い時に両親が離婚し母と妹と暮らす木島悟、両親と姉と暮らしながら家族となじめない村田みのり。悟は一度だけ父テッセイと会い、絵に埋もれて暮らす父を...

5. 黄色い目の魚 佐藤多佳子  [ "やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!! ]   July 10, 2007 01:22

3 黄色い目の魚 この本はCiel bleuの四季さんにオススメいただきました。ありがとうございました。 ■やぎっちょ書評 いやぁ。良かった。 好き。 うれしい。 そういえば雪芽さんが良かったと書いてたっけ。 短編連作ですね。あとがきを読むと10年前のお話からはじ...

6. ・「黄色い目の魚」佐藤多佳子  [ 肩の力を抜いて ]   August 04, 2007 10:47

<あらすじ> 第1章と第2章を読んでいると、絵をモチーフとした短編集かと思ったが、第3章で両者が結びつき、ひとつの話だとわかる。第2章のタイトルは「黄色い目の魚」になっている。1・2章ともかなり重い内容で、佐藤多佳子にしては肩に力が入っているなと感じされた...

コメント一覧

1. Posted by 雪芽   July 06, 2006 22:19

TBありがとうございます。
登場人物の感情にリアリティを感じる青春小説。
熱い気持ちにさせられた読後感でした。

エニアグラム、懐かしい言葉です。
G.I.グルジェフの本で知ったのでした。

2. Posted by やまけん(肩の力を抜いて)   August 04, 2007 10:50

★ちょっと前に書かれた記事ですが、私も最近読んだのでTBさせていただきます。

3. Posted by 師匠   August 04, 2007 22:01

コメント、トラックバックありがとうございます。

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