August 18, 2006

十九歳の地図

十九歳の地図

キーワード:
 中上健次、短編、予備校生、テロ、鬱屈、地図
中上健次の短編作品が収められたもの。作品は以下のような内容となっている。
  • 一番はじめの出来事
  • 十九歳の地図
  • 蝸牛
  • 補陀落
十九歳の地図を目的に読んだので、この作品のみを書評対象とすることにする。

内容は、十九歳の新聞配達をしながら生計を立てている予備校生の鬱屈した生活の話。日々物理のノートに書いた近所の地図に×印をつけている。その印の場所は主人公にとって特徴的な家であり、その家に公衆電話からいたずら電話などをし、鬱屈した主人公の心情のはけ口になっている。例えば、普通の民家に出前の注文をしつこいほどにしたり、東京駅に爆破予告をしたりして相手を困らせている。そして地図に家の住人の家族構成や特徴を書き込んでいく。

かなり鬱屈した内容だと思った。主人公には圧倒的な何かになりたいという願望があるが、何にもなれないしがない予備校生でしかなく、また希望もない。そしてその鬱屈した感情を公衆電話を通して世間に吐き出しているような感じがする。そうすることでしか、たぶん満たされない心情を埋めることはできないだろうから。

とりわけ面白いわけではない。しかし、このような鬱屈した心情は自分にもよく分かってしまう。孤独感と鬱屈状況。何かに吐き出すことでしか、満たされず、また安定を図れないような状態。自分も20歳になる前後はこのような精神状態だったなと思う。今もそんなに変っていないが、主人公に投射できてしまう。特に、何かになりたいと望むが、何にもなれないのではないかという不安と閉塞感の描写など。

20歳になる前後に読んでいたら、もっと陶酔できたのかもしれない。陶酔できたとしても、あまりよい影響は受けなかっただろうと思う。

中上健次の作品は初めて読んだ。改行が少ないなと思った。他にも作品を読んでみようかな。

読むべき人:
  • 閉塞状況にある人
  • 不安な予備校生、大学生
  • 厭世主義的な人
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