September 06, 2006

本の読み方 スロー・リーディングの実践


本の読み方 スロー・リーディングの実践

キーワード:
 平野啓一郎、本の読み方、読解方法、鑑賞方法、スロー・リーディング、アンチ速読
芥川賞作家、平野啓一郎氏による本の読み方指南書。小説の鑑賞方法から、論理的な文章の読み方まで幅広い。単純に、自分の本の読み方は今のままでよいのかといったことを漠然と考えていたときに、このタイトルに惹かれて買ってみた。

スロー・リーディングとは、ゆっくり時間をかけて本を読むことで、小説ならそれをおこなうことでしか深く鑑賞できないもので、また、深く論理的な文章を読解するためにも役に立つという読み方である。これはアンチ速読的な読み方でもあると著者は主張する。曰く、速読ではどうしてもいかに書いてある内容を記憶するかといったことに主眼が置かれがちで、それにともなって深く鑑賞すべき部分を見落としかねない、といことからこのようなスロー・リーディングが提案されている。以下のような3部構成になっている。
  1. 量から質への転換を―スロー・リーディング基礎編
  2. 魅力的な「誤読」のすすめ―スロー・リーディンテクニック編
  3. 古今のテクストを読む―スロー・リーディング実践編
    • 夏目漱石 『こころ』
    • 森鴎外 『高瀬舟』
    • カフカ 『橋』
    • 三島由紀夫 『金閣寺』
    • 川端康成 『伊豆の踊子』
    • 金原ひとみ 『蛇にピアス』
    • 平野啓一郎 『葬送』
    • フーコー 『性の歴史機|里悗琉媚屐
第1部はスロー・リーディングの概要、2部はそのテクニックとして助詞に気をつける、辞書を引く、類似した本を比較して読むといった内容で、3部はそれらを実際に試してみるといった内容。

3部で挙げられているテクストで読んだことないのは、著者の『葬送』とカフカの『橋』、フーコーの『性の歴史機戮澄B召楼貭未衞椶鯆未靴討△襦L椶鯆未靴討△襪箸いΔ里蓮∧未紡読したわけでもない。ただ、著者の提案するスロー・リーディングができていなかったんだなと痛感した。へーそういう作者の意図が隠されていたんだといった発見が多かった。例えば、『こころ』は5W1Hに気をつけて読むと、全体の構造が把握できるといった具合。

小説家である視点から小説の鑑賞方法が示されているのがとても勉強になる。一見何気ない文章の奥にそんな意図があるのかと思い知らされる。また、フーコーのような哲学書を読み解くにも、接続詞や代名詞に気をつけて丁寧に読んでいけば、理解できるといった内容で、国語の読解にも役に立つ。

いろいろ線を引く部分が多かった。特になるほどと思った部分を抜粋。
だが、量の読書は、もう終わりにしたい。これからは、自分にとって大切な本を大切に読む読書をこそ心がけよう。そもそも、今の世の中に溢れかえっている膨大な本は、どうがんばっても、一生の間に、その極々一部しか読み切れないのである。
(pp.97)
この部分はもっともだと思う。しかし、積読状態になっている本たちを見ると、あぁ、もっと読まなければと強迫観念に駆られ、また本屋に行くとまだまだ読まなければいけない本がいっぱいあるなと途方に暮れる・・・・。そう思って、フォトリーディングをはじめとする速読本も多く読み、表面的に読むのは速くなったが・・・。多くを読む必要はないと割り切ってしまえば楽なんだけど。そのためにも、この部分を自分に刷り込んでおく必要がありそうだ。

あともう一ヶ所抜粋。
読書の感想をブログに書く、というのも、いいアイディアだ。いざ書こうとすると、必ず筆がよどむ場所がある。そこを埋めておけば、内容の全体像がしっかりと定着する。ブログを見る人は、誰か分からないが、その本を紹介するつもりで書こうとするなら、まず自分自身のしっかりとした理解が必要だということが実感されるだろう。
(pp.87)
これは実際にこのようにブログに書いている身から言わせてもらえば、その通りだと思う。特に、一言でこの本はどういった内容かということをまとめるときは、理解していないとあやふやなものになりがちだ。また、あまり理解していない本はどうしても書く内容が散漫で短いものになりがちだ。逆に言えば、長く書評されている本は、よい本か、または衝撃を受けた本ということになる。じゃ、この本はどうかというと、それは言うまでもない。

著者の本は『日蝕』しか読んだことなくて、難解な印象があったが、これはかなり分かりやすくまた論理的な内容だった。ところどころにイラストも入っている。

久しぶりに良書を読んだ気がする。また、いつももっと読まなければと思っていたが、こういう読み方もあるんだなと分かってよかった。どこまで自分がこのスロー・リーディングを実践するかは分からないけど・・・。少なくともエッセイや学術書、文学作品はスロー・リーディングをしようと思った。

読むべき人:
  • 本の読み方が分からない人
  • 速読に疲れた人
  • 強迫観念に駆られて本を読みすぎている人
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