October 09, 2006

「ゆっくり」でいいんだよ


「ゆっくり」でいいんだよ

キーワード:
 辻信一、スローライフ、時間泥棒、環境、ナマケモノ
文化人類学者である著者によるスローライフ提言本。ちくまプリマー新書。若い読者向けの新書らしい。

2部構成になっていて、最初のほうは時間について。現代日本に限らず、世界ではビジネスや生活において早く効率的なことがよいこととされているが、結果的にそんなに忙しくてみな幸せになれるのか、という問いかけが環境や経済に関連して語られる。2部には、そこからスローライフの魅力をアマゾンのナマケモノやそこでの人の生活などから語られる。

著者は文化人類学者でもあり、環境運動家でもある。そういった側面からいろいろと語られている。例えば、車一つ取ってみると、車が毎年世界で何百万台も生産されるが、それによって、交通事故が増え、さらに車を走らせるために道路を作らなければならず、そのために環境が破壊され、さらに排気ガスにより大気汚染が起きる。その便利な車によって、移動時間などがどんどん少なくなっていき、時間を節約できるが、それによってさらに忙しい生活になってしまうというような感じ。このような生活に警鐘を鳴らすような内容となっている。

特になるほどと思ったのが、一見無駄だと思えるようなことに時間を費やすことで生きている価値があるんだというような主張。例えば、友人との語らい、家族との団欒、好きな人と過ごす時間など。そういったものがない生活は、いらいらして人間らしい生活ができなくなっていくようだ。また遊びが重要だということも主張されている。

そしてスローライフの提言のところでは、人が欲しがるものをどんどん手に入れていこうという足し算思考ではなく、本当に必要なもの以外はどんどん置いていくような引き算思考が重要だとある。それはつまり量より質を重視することで、それによって健康や自然環境にとってもよい結果をもたらすというような内容。

ところどころ結構考えさせられる。経済の発展のためには、忙しく働いて儲けることが重要である。しかし、それによって石油の争奪戦が起こり、戦争も仕方ないというようではおかしいのではないかと思えてくる。自分たちが生きている世界は、結構矛盾しているのではないかと思った。ミクロ的な側面からみればよいことかもしれないことが、マクロ的に俯瞰してみるとよくないことであったり。それが日々の生活の忙しさによって見えなくなってしまうんじゃないかと。

個人的には、あまりにも激しく忙しいのは嫌だなと思う。のんびり暮らしたいなというようなこともあって、このような本を読んでみた。

中学生くらいでも読める内容となっている。難しい学術的なことはあまり書いていない。ところどころイラストも入っている。環境や日々の暮らしを考えるのにはよい本かもしれない。ただ、この本を読んで環境のために車を排除しようというような安直な思考に傾倒しないでほしいとも思う。

個人的には時間に対する考え方が変ったような気がした。かならずしも『時は金なり』ではないんだと分かってよかった。

読むべき人:
  • 忙しい生活から脱却したい人
  • 環境に関心がある人
  • 時間や幸福について考えたい人
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コメント一覧

1. Posted by かなき虫   October 09, 2006 13:45

はじめまして♪
無駄な事に費やす時間に、生きている価値がある・・かぁ。
スピッツの歌にも同じような言葉があったなぁ。
なんかいいな
おもしろそう☆
本屋さんでさがしてみよっと

2. Posted by 師匠   October 09, 2006 14:01

コメントどうもです。

自分も無駄なことをやっていこうと思います。

3. Posted by 読者男   October 31, 2006 11:32

5 この本を他の人にどのように紹介しようと思っていましたが、ブログに書かれている内容が、読む視点として大変参考になりました。

4. Posted by 師匠   October 31, 2006 20:14

コメントありがとうございます。結構まとめきれなかったと自分では思うのですが、そのようにおっしゃっていただけると大変嬉しいです。

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