November 03, 2006

「準」ひきこ森―人はなぜ孤立してしまうのか?


「準」ひきこ森―人はなぜ孤立してしまうのか?

キーワード:
 樋口康彦、ひきこもり、孤立、大学生活、空虚、社会不適応
ひきこもり的な状態の人はどのような特性を持つのか、またそれによってどのようなよくないことがあるのかといったことが解説されている本。

本屋に行くと、タイトルを見た瞬間、直感的に読まなければならないと思う本がある。これはまさにそれだった。

まず、「準」ひきこもりとは何かを内容に沿って説明すると、主に大学生の大学生活において、とりあえず大学には行っているが、講義中や昼食時に孤立する傾向が多く、サークルやバイトもやらず、それによって社会に出る前に身につけるべき人間関係能力が欠如している状態を指すようだ。その「準」ひきこもり状態のままでいることが、就職や結婚も出来ないということになり、この世界を生きるうえでかなりのハンデになると警鐘を鳴らす内容となっている。また、以下に準ひきこもりの人の特徴を抜粋しておく。
  • 外見は、暗くて人を寄せつけない雰囲気を持っている。
  • キャンパスではいつもひとりでいる。講義はひとりで受け(たいてい前の席)、昼食もひとりでとる。
  • 携帯電話を持っていない。持っていたとしてもほとんど使っていない。
  • 冗談を言わない。おせじも言わない。自分から話しかけることはめったにない。また、おもしろいことがあってもクスリと笑う程度で、ゲラゲラ笑うことはない。
  • アルバイトをしていない。
  • 人付き合いの方法を知らないため、つい不適切な(常識はずれな)言動をとり、他者を不快にさせてしまう。そして、集団の中で浮いてしまう。
    (pp.4)
この特徴を読んだとき、まさしく大学時代の自分のことだと思った。

著者は大学の教員という立場から、このような特徴を持つ学生と多く接してきたようだ。最初のほうは、準ひきこもりの大学生の日常生活を細かく説明している。そのときに、これでもかというほど客観的にかつ厳しくその学生のダメな点を指摘している。自分も似たような傾向があるので、正直ページをめくるのが辛かった。いかに自分がダメな存在だったかを認識させられるから・・・。

準ひきこもりがなぜ大学生に多く現れるかというと、小中高はクラスや時間割や校則に縛られる面があり、孤立することはあまりないが、大学では行動の自由度が増し、受身のままでは適切な人間関係を築けず、孤立しがちになり、ひきこもり体質の側面が強く浮き彫りになるようだ。

準ひきこもりになると何が一番の問題かというと、社会で生きていくうえでのコミュニケーション能力や人間関係を築く能力が欠如していることによるハンデということになる。例えば、独りよがりな話をしたり、相手の話題に無関心であったり、常識不足であったり、人との距離が測れずに空気が読めない存在になったりする。それらを無自覚のままでいることが多く、また、社会適応能力の欠如から就職がまったくできず、かつ異性に気持ち悪がられ、結婚も出来ないという絶望的な状態になってしまう。そして孤独感や空虚感に覆われて、毎日どうしようもない自分自身に自己嫌悪し、自分との戦いを死ぬまで繰り返すことになる。

しかし、根本的な原因や改善方法がまだ確立されていないので、いったんこの状態に陥ると、人生を棒に振ることになりかねない。

結構大げさに書かれている面もあるが、かなり的確な指摘だと思う。人間関係を形成できないということは、社会的に生きられない存在であることと同義だと改めて認識した。それだけに、自分自身の大学生活を振り返ってみると、かなり紙一重だったのではないかと思う。もし、一歩間違っていたら、今頃就職も出来ず、どうなっていたものか分かったものではない。とはいえ、完全にひきこもり状態から脱却したわけではないが。少なくとも自覚があった分、そこまで完全な準ひきこもりではなかったようだ。

最後のほうに対策が簡単に述べられている。まず、ファッションに無頓着ではダメなので外見から変えることだとある。さらに、社交的になるように努力すること、就職したら多少辛くても絶対にやめないこと、自分の内面にある独房を打ち壊すことだとある。それらはもっともだと思う反面、もう少し詳しく提言されて欲しいとも思う。

各章のはじめに、著者自作の「準ひきこもりの詩」が載っている。とても痛々しい内容だ。あまりにも共感できすぎて・・・。

著者自体も大学時代や20代は準ひきこもりだったようだ。それだけにこのような研究が出来たのだろう。また、それだけにこのような生々しい内面をえぐるような分析が出来たのだろうと思う。

漠然と自覚していた自分のダメな部分を改めて指摘されることはとても辛い。それでも、現状ではダメだと思っていて、何とかしたいと思うから、しっかり受け止めて改善していこうと思った。それだけに、少しでも自分はひきこもりでやばいと思う人は、迷わずこの本を読むべきだと思う。これを読んで自覚するかどうかで、今後の人生の幸福度が変わるような気がするから。

読むべき人:
  • 孤独や空虚感にあえぐ大学生
  • 社会に出ることはとても恐ろしいことで、就職できないのではないかと思っている人
  • もてたい人
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1. 樋口康彦『「準」ひきこ森』(講談社)  [ 有沢翔治のlivedoorブログ ]   April 01, 2012 01:47

概要  「ひきこ森」という森の妖精さんについて描かれたフィクション。この著者によると大学にいっぱいいるらしい。  なお「ひきこ森」の特徴として、「他者からの目を意識でき ...

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