December 05, 2006

新平等社会―「希望格差」を超えて


新平等社会―「希望格差」を超えて

キーワード:
 山田昌弘、希望格差、格差社会、不平等、社会学、構造的閉塞感
希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』の著書がある、社会学者の本。『希望格差社会』が格差の現状を分析した本なのに対して、この本は、その現状を踏まえて具体的にどのように対処すればよいかということが主に書かれている。

希望格差がこの本のキーワードになるが、希望とはどのようなものかが分かる部分を以下に引用。
「希望とは努力が報われると思うと時に生じる、絶望は努力してもしなくても同じだと思う時に生じる」という社会心理学者、ランドルフ・ネッセの言葉をよく引用してる。自分の努力が、周りの人から評価される、将来評価されると期待されるとき、人々は希望をもって人生を生きていくことができるだろう。しかし、自分の日常生活で努力しても、しなくても同じだと思ったり、努力が無駄だったと思う機会が増えれば、絶望感が人生を支配するだろう。
(pp.123-124)
希望格差社会というのは、努力をしても報われる人と報われない人に分裂する社会のことで、社会システムの変化が原因のようだ。そして、その希望格差が根本的原因になり、フリーターと正社員の格差、高等教育を受けても必ずしも報われない格差、収入が多くないと結婚できない格差、また、結婚したとしても安定した生活を気づけるとは限らない格差などが出現してくる。この本は、それらの格差の根本的原因を分析しつつ、ではそこからどうすればよいのかといったことが示されている。

例えば、フリーターや派遣社員などの昇進や能力開発の機会がない「非正規雇用」の人々の支援では以下のようなことが提言されている。
  1. 生産性の低い職に就く期間を短くする
  2. 生産性の低い職の中で徐々に昇進できる道をつくる
  3. 生産性の高い職に就くための教育訓練の機会と「報い」を保証する
  4. 生産性の低い職を少なくし、生産性の高い職を増やす
これらの提言がどこまで効果が出るのかは正直分からない。そもそも、この格差構造は一面的ではなく、重層的な構造になっているので、これらを改革するのはかなり難しいのではないかと思う。また、日本はそこまでおかしな社会構造になっているんだとも思う。

最終的には、単純な格差が問題にならないような、希望格差が起こらない社会構造を作ることが重要だとある。

学術書らしく、統計結果を示しすために表やグラフが多く出てくる。ところどころで著者の私見が入るが、かなり客観的な分析なのではないかと思う。

確かに努力が報われる社会のほうが健全だとは思う。しかし、この本の本質は希望格差について論じられているが、何を持って努力というのかという部分についてはあまり書かれていない。時代や社会システムが変遷すると、過去に認められていた努力が現在では通用しないものとなる。例えば、いくら日本史などの暗記力が高くテストで高得点を取れるとしても、Googleなどの検索技術の出現により、いかに情報を引き出すことができるかということに価値が見出される世界では、記憶力などそこまで重宝されない。重要なのは、世の中の社会情勢を把握しつつ、ニーズに合った適切な努力をすることなのではないかと思った。つまり、無駄な努力をしないことが重要なのだと思う。

格差問題は、いろいろ考えされられることが多い。日本の複雑な社会構造を知るにはよい本だと思った。

読むべき人:
  • 格差問題に関心がある人
  • 最近努力が報われないと思っている人
  • 下流的な生活を送りたくない人
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