December 17, 2006

アフターダーク


アフターダーク

キーワード:
 村上春樹、夜、闇、睡眠、コンプレックス、三人称
村上春樹の小説。カバーよりあらすじを抜粋。
時計の針が深夜零時を指すほんの少し前、都会にあるファミレスで熱心に本を読んでいる女性がいた。フード付きパーカにブルージーンズという姿の彼女のもとに、ひとりの男性が近づいて声をかける。そして、同じ時刻、ある視線が、もう一人の若い女性をとらえる―。新しい小説世界に向かう、村上春樹の長編。
(カバーより抜粋)
講談社文庫の方で読了。確か、ハードカバーで出版された当時は、村上春樹が三人称に挑戦したものだというような書評が新聞に載っていたような気がする。まぁ、それは置いておいて、書評というよりは個人的な感想を述べる。

舞台は、深夜の繁華街での7時間の出来事である。主人公は19歳の少女で、モデルを持つ綺麗な姉を持つ。その主人公は姉のような華やかな世界とは違う生活を送ることにコンプレックを持っている。そこで、深夜のファミレスで読書をしながら時間をつぶしていると、姉の知人と出会い、そこから夜が明けるまでの間にいろいろなことが起こる。

内容はあまり詳しく示さないようにしよう。示しようにも、かなり不思議な感じの作品なので、詳細には示せない。

この作品は何よりも、従来作品と比べて文体がかなり変化しており、三人称というところに特徴がある。著者の代表作は大抵『僕』を視点とした一人称であり、『僕』の内面が分かったような分からないようなメタファーで綴られることが多い。しかし、この作品は神の視点としての『私たち』という存在が描かれている。『私たち』は登場人物に干渉することなくただ客観的に観察するだけの存在である。それが何なのかということは明確には示されてはいない。そして、文章が短めで常に現在形となっていることでより三人称を際立たせているようだ。しかし、会話の展開の仕方は、従来どおりの感じがした。

客観的な分析はさておき、主観的な感想では、村上春樹は幻想的な作品が得意だなと思った。まるで覚めない夢のような、それでいて現実とは大きく隔絶しているわけではなく、それとなく非現実的な出来事が現実的に起きているような世界を描写することに関しては。いつも村上春樹の作品を読むたびにそう思う。

今回は夜の闇をモチーフに描かれているけど、共感できる描写が多かったような気がした。特に、現実から隔絶してずっと眠りについていたいとうような部分など。その部分を読んでいたときに、あぁ、まさしく自分もそうだと思った。あとは、自信がなさそうな少女のコンプレックスのような部分にも共感できた。

村上春樹の一味違った作品を楽しむことができてよかった。とはいえ、これを面白いと断言できる人はそう多くはいないだろう。

読むべき人:
  • 村上春樹の小説が好きな人
  • 幻想的な小説が読みたい人
  • 夜が好きな人
Amazon.co.jpで『村上春樹』の他の作品を見る



トラックバックURL

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星