June 24, 2007

若きサムライのために


若きサムライのために

キーワード:
 三島由紀夫、思想、サムライ、自衛隊論、対談
三島由紀夫が若い読者向けにつづったエッセイと自衛隊論、国家、天皇論などの対談をまとめた本。以下のような構成となっている。
  1. 若きサムライのための精神講和
  2. お茶漬けナショナリズム
  3. 東大を動物園にしろ
  4. 安保問題をどう考えたらよいか<対談>猪木正道
  5. 負けるが勝ち<対談>福田赳夫
  6. 文武両道と死の哲学<対談>福田恒存
精神講和の部分はいくつかのテーマに分かれており、肉体、信義、快楽、羞恥心、礼法、服装、文弱の徒、努力についてなど多岐にわたっている。多くが優美で高尚な文体となっているが、そうではなく砕けた文体のものも多い。

特に印象だった部分を若干長いが引用しておく。文弱の徒についての部分。
しかしほんとうの文学とはこういうものではない。私が文弱の徒に最も警戒を与えたいと思うのは、ほんとうの文学の与える危険である。ほんとうの文学は、人間というものがいかにおそろしい宿命に満ちたものであるかを、何ら歯に衣着せずにズバズバと見せてくれる。しかしそれを遊園地のお化け屋敷のみ見せもののように、人をおどかすおそろしいトリックで教えるのではなしに、世にも美しい文章や、心をとろかすような魅惑に満ちた描写を通して、この人生には何もなく人間性の底には救いがたい悪がひそんでいることを教えてくれるのである。そして文学はよいものであればあるほど人間は救われないということを丹念にしつこく教えてくれるのである。そして、もしその中に人生の目標を求めようとすれば、もう一つ先には宗教があるにち違いないのに、その宗教の領域まで橋渡しをしてくれないで、一番おそろしい崖っぷちへ連れていってくれて、そこで置きざりにしてくれるのが「よい文学」である。
(pp.90-91)
文学の恐ろしさがよく分かる。例えば、自分が影響を受けたものとしては、『地下室の手記』とか『罪と罰』がある。これらなんかは特に三島由紀夫が警告を与えているものに該当するのではないかと思う。文学作品の本質は楽しめればよいというものではなく、このように自分自身の内面を大きく変革してしまうものではないかと思う。三島由紀夫自身、このような側面に陥っていたとあり、ニヒリスト的に世間を嘲笑するような何か特別な存在になってしまっていたようだ。このような文学の毒から脱却するために、剣道をやって竹刀を振るだけでよかったと自身で語っている。そして最終的に人の毒に染まるのではなく、自分の体に生まれつきそのようなおそろしい毒を持った者だけが文学者としていくつかの作品を書いてゆけばいいのだとあった。深いなぁと思った。ここまで考えているから文学者になれたのだと思う。

対談の部分はほとんど思想的な側面が強い。自決する前の年、今から大体40年ほど前のものであるが、昔も変わらず自衛隊をどう捉えるか、そしてそれに伴って改憲すべきかどうかが語られている。面白いのは三島自身自衛隊に入隊したり、隊員に対して自論を述べたりしている。そういう側面からの自衛隊への考えは参考になった。まず、自衛隊を二分割すべきで、革命勢力に対しての国土防衛軍と、もう一つは国連警察予備軍で安保条約に忠実で海外派遣なども視野に入れるべきだと。これなんかは今振り返ってみると、自衛隊は軍隊ではないとか言っておきながらイラクにまで派遣してしまっている。この矛盾を解消できそうな面白い考えだなと思った。今の現状を三島由紀夫が見たらどう思うのかなとか想像しながら読んだ。

ところどころ結構過激な主張がある。そしてなんで自決したのかが分かる気がした。詳しい背景を知っているわけではないけど。

三島作品は『金閣寺』などしか読んだことがないので、著名作品は読もうと思った。『豊饒の海』とか買ったまま積読状態だが・・・。

70年代の時代背景や三島由紀夫の考え方が分かって面白かった。今読んでもまったく古くない。

読むべき人:
  • 三島由紀夫が好きな人
  • 高尚なエッセイが好きな人
  • 国粋主義的な人
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1. 『若きサムライのために』 三島由紀夫  [ 本を読もう!!VIVA読書! ]   June 24, 2007 16:01

&nbsp; “192◎年生まれの若輩 ”とおっしゃる tani先輩は 『三島由紀夫全集、全35巻』を、保証人を付けてまでして購入されたそうです。好きなんですねとコメントしたら、違うそうです(笑)。ご覧下さい。→&nbsp; tani先輩のブログ 『狸便乱亭ノート』本...

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