July 25, 2007

格差社会の世渡り 努力が報われる人、報われない人


格差社会の世渡り 努力が報われる人、報われない人

キーワード:
 中野雅至、格差社会、高学歴ノーリターン、努力、ぼやき評論
元官僚による大学助教授による格差社会をぼやきのごとく分析している本。以下のような内容となっている。
  1. 「明日が楽しみ」と言えますか?
  2. 長期不況は庶民の責任か
  3. 報われない高学歴者
  4. ワーキングプア
  5. 「勝ち組」の根拠
  6. イバリーマンの勝利の理由
  7. 格差社会のゆくえ
  8. 見た目が10割社会を生き抜く処世術
  9. 努力が報われる社会へ
この本の内容がよくまとまった部分が、Amazonの著者からのコメント部分にあるので、一部抜粋。
 格差をもたらす要因から説明しますと、バブル経済が崩壊してから、日本では「格差社会は是か非か」を巡って随分と議論がなされてきました。その中で、格差を肯定する人の意見として、私が違和感を覚えるものが一つありました。
 それは、「努力する者が報われるのは当たり前だ。今、日本はようやく「当たり前の国」になったのだ」というものです。私にはどう見ても、努力に基づいて格差が発生しているとは思えなかったからです。フリーターも富裕層も、みんなそれぞれの立場で努力したのであって、がんばりが勝敗にそのまま反映されているとは思えなかったからです。
 私には、富裕層や出世しているビジネスマンをみていると、格差社会を勝ち抜いている人は「アピールするのが非常に上手い」ということの方が、強い印象として残っていました。「私はこんなに優秀です」「私はこんなに仕事ができます」とアピールするのが上手い人が、どんどんと上り詰めていったのが、ポストバブルの特徴だったと思うのです。
 この事実を踏まえた上で、格差社会を生き抜くための知恵をつける必要があるというのが、私なりの結論です。「努力しました」だけでは不十分で、報われる努力と報われない努力があることをきちんと認めた上で、どういう努力をすればいいのか。そんなことを、この本では言いたかったのです。
ちょっと長すぎるか・・・・。この部分がこの本の内容を全て語っているので。書評での引用は、引用部分が自分の主張と主従関係が逆転してはいけないので、自分の意見をたくさん書かなければ。

まず、リンク先の著者からのコメント部分を読んでもらえば分かるが、学術的な分析よりも著者独特のぼやきのごとく世の中の格差社会を分析している。それはどちらかといえば、著者の官僚時代の東大卒エリートをたくさんみてきた経験則的な主張が多い。そのため、分析が甘いし、著者の主観が多く入り込んでいるところが多い。そこは要注意点であるが、他の格差論の本よりも読みやすいし、一つのケーススタディ的な側面としてはとても参考になる。

では、以下に本の内容を基に自分の意見を。

『報われない高学歴者』の部分では、中央省庁では学歴の価値が大暴落しているようだ。何よりも世間が成功者として認める価値として、昔は学歴(出身大学)、職業権威(官僚、エリートサラリーマン等)、所得(いくら稼いだか)の順番で認められていたものが、昨今のIT長者やプロスポーツ選手を筆頭とした所得がどれだけ多いかといことのほうが重要視されているからだとある。そして東大ブランドは大企業入社の近道という利点はいまだ少なからずあるが、昨今のグローバル市場において、会社の倒産やリストラというリスクが高く、以前のような年収1000万円は保証しないと示されている。そして、小学生から受験勉強を一生懸命やって東大卒になってもこのようなリスクがあり、また学歴は所得の増加に必ずしも結びつかないとある。特に起業家などに注目すれば、学歴は関係ないとある。なので偏差値的な受験による大学の序列化は無意味で、報われないだけだとある。

受験勉強によって身につく能力は精神科医の和田秀樹氏がよく論じている(受験エリートがビジネスエリートになる)ので、かならずしもリターンが少ないとはいえないと思う。また、昨今の正社員、非正社員の論点として、新卒時に非正社員になってしまうと正社員になれる可能性が極端に低くなる現状としては、高学歴であるというのは入社時に格段に有利であるということは否定できない。一流企業に入社するというのは、一生安泰ではなくなったが、それでもフリーターや非正社員として日々を過ごすよりもよほどましだと思う。

『イバリーマンの勝利の理由』の章では、成果主義とは名ばかりの典型的な年功序列の日本企業において、人事評価はあいまいで、上司からの資料作成などの下請け的な仕事しかできず、仕事の範囲が不明確で残業も多いような組織では、できる人ほど辞めやすく、出世している勝ち組は、「何が何でも会社にしがみつく、出世するという執念に勝っている人」、「仕事に疲れない人」、「声のでかい人」らしい。要はアピール上手な人がよいらしい。そしてそんな会社は辞めにくく首になる可能性が高いという世界の起業と比較すると最悪な組織なようだ。このようにいろいろ会社組織の本を読んでいると、年功序列的な日本企業にいるということがいかにリスクの高いことかと思い知らされる。自分は外資に行ってよかったなと思う。その反面、新卒で外資に入社するということは、もうこのような年功序列的な組織に転職してもやっていけないだろうなという側面もある。カルチャーになじめなさそうだし・・・。

この本の8割がたが著者のぼやきであるが、最後のほうは結構参考になる提言がある。『見た目が10割社会を生き抜く処世術』の章で、以下のようなことが示されている。
  • 会社のために働くという考えは捨て、会社を利用しつくし、自分の市場を高め、会社は能力を生かすための場と考えるべき
  • 若いうちから、就職する会社は自分にとってプラスかマイナスかどうかを考えながらキャリアパスを明確にすること
  • 東大入学という一時的な努力をするのではなく、一生続けらる努力は何かを考えて継続すべき
  • 学歴の価値が暴落しているのだから、必死に受験勉強して東大に行くよりもよく遊んだり、スポーツしたりして健全な時間を過ごし、名前の知られた程度のレベルの大学にいければよいと考えるべき
どれもなるほどなと思った。

勝ち組か負け組みかは著者も言うように、努力で何とかなるレベルではないのかなと思う。どう考えても運という要素が大きいと思う。運が半分くらいあるのではないかと思う。それでも、まだ自分で努力していける部分があるので、自分は必死になって努力して成功を掴み取りたいとは思う。無駄な努力にならないように、努力のベクトルを間違えなければ成功者になれると自分は信じている。

この本はけっこうつっこみどころも多いが、それでもいろいろ考えるためのヒントが多かったので参考になった。自分はAmazonでの評価はそこまで高くないと思っていたが、かなり高かった。

読むべき人:
  • 格差論に関心がある人
  • 学歴論に興味がある人
  • 気軽に世間のぼやきを読みたい人
Amazon.co.jpで『中野雅至』の他の本を見る

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1. 格差社会の世渡り  [ フクロウ探検隊 ]   July 26, 2007 06:47

格差社会の世渡り 努力が報われる人、報われない人価格:¥ 735(税込)発売日

コメント一覧

1. Posted by フクロウ   July 26, 2007 07:06

5 はじめまして、フクロウ探検隊のフクロウです。

今回は、TBいただきありがとうございました。
type5w4の書評を、拝見し、詳細かつ分かり易い内容で、今後とも参考にさせていただきます。

ランキングの方もクリックいたしました。

また、再訪させていただきます。  jiang

2. Posted by 師匠   July 26, 2007 07:32

コメントありがとうございます。

分かりやすいということで、励みになります。

今後ともよろしくお願いいたします。

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