August 02, 2007

未来形の読書術


未来形の読書術

キーワード:
 石原千秋、読書、未来、テクスト論、読者の仕事
日本近代文学が専攻の著者による、読書論。以下のような内容となっている。
  1. 本を読む前にわかること
  2. 小説とはどういうものか
  3. 読者はどういう仕事をするのか
  4. 「正しさ」はかわることがる
  5. 「読者の仕事」を探るための読書案内
未来形というのは過去形に対立するものである。人が本を買うときにその本が自分の既知のものであるか、もしくは面白くないと判断するとき、書いてあることが分かっているので過去形となる。そして本は自分を映す鏡であると考えると、自分が知らなければならないこと、分かっておかなければならないことが書いてあると思って読むとき、それは未来においてそのようにありたいと願う自分がいるということである。それこそが未来系の読書であると示されている。そしてその読み方こそが自分を発見させ成長を促すようだ。

2章は『電車男』は文学かという問いから始まる。結論を書けば、著者によると、『電車男』は文学ではないという背理法的に論証を進めていくと、『電車男』もまた文学になるようだ。そして物語の構造、小説の言葉についての作用、なぜ、小説は人を癒すのかという問いにまで発展する。

3章では、「自由」に小説を読むことの困難さが示されている。曰く、『羅生門』のような物語において、「下人が盗人になる物語」と「下人が追い剥ぎをする物語」という「悪」と「善」をテーマにした対立した読み方ができてしまい、どうしても自分の自我に触れ、自分の読みとは何か?そしてさらに自分とは何か、自分は一人ではないというところまで考えざるを得ない。こうしたことが小説を「自由」に読むことの困難さを生じさせるようだ。

4章では、東大の国語の入試問題などを基に、評論文などで昔は正しいことであると考えられていたことが、現代ではパラダイムシフトが起こり、それが正しいことではなくなっていることがあると示されている。そしてわれわれの思考方法には時代ごとの流行があり、その時代に必要な思考法を身につけることが現代においての教養であり、その教養を身につけるために評論を読むべきであると示されてる。なるほどなと思った。

ちくまプリマー新書は若い読者向けの新書で、ページ数がそこまで多くないが、ちくま新書にも言えることだが、内容がかなり濃い。学術的なテーマを多く扱っているからだろう。岩波新書とちくま新書を読むときだけは気合を入れなければ文をなぞるだけに終始してしまう。この本は電車の中で読んだので、テクスト論や二項対立、バルトの引用などの部分などの部分はあやふやになりそうだった。

構造主義やテクスト論、ソシュールの言語学的な部分も出てくるので、そこらへんの知識があればより理解がしやすいと思う。この本は読書のテクニック的なことは何も書いておらず、どちらかというと読書をする主体としての自分のほうをテーマに掘り下げられている内容である。最後の読書案内も、構造主義や二項対立など学術的なラインナップとなっている。

何気なく小説を読んでいると気付かないようなことを知ることができて満足した。

読むべき人:
  • 構造主義的な話が好きな人
  • 教養を身につけたい人
  • 小説を味わいたい人
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1. 「未来形の読書術」石原千秋 を読んで  [ そういうのがいいな、わたしは。 ]   September 24, 2007 00:52

未来形の読書術 (ちくまプリマー新書)石原 千秋 私たちは、なぜ本を読むのだろう。 「読めばわかる」というレベルを超えて世界の果てまで「自分」を追いかけていくめまいがしそうな試みこそ、読書の楽しみだ。 本を読みながら、私は何を考えているのだろう? 本を読むとき、....

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