August 18, 2007

永遠の放課後


永遠の放課後 (集英社文庫)

キーワード:
 三田誠広、青春小説、純愛、大学編、三角関係
芥川賞作家による青春小説。『いちご同盟 』で中学生の葛藤と生と死の物語に感銘を受け、そして高校編に当たる『春のソナタ―純愛 高校編』で父と子の関係描写に感嘆した。そしてこの作品は著者のホームページによると、純愛、大学編となる。前2作がとてもよかったのでこれは読まないわけにはいかない。

あらすじをカバーの裏から抜粋。
大学生の「ぼく」は、中学の頃から親友の恋人・紗英に想いを寄せていた。しかし、親友を傷つけたくなくて、気持ちを告げることができない。そんな中、プロの歌手だった父譲りの才能を買われ、活動休止中の人気バンドのボーカルにスカウトされる。そして、ライブに紗英を招待した夜、恋は思わぬ方向へと動き始めた―。友情と恋。「ぼく」が最後に選んだものは?文庫書き下ろし、胸を打つ青春小説。
(カバーより抜粋)
本当によい小説は多くを語りすぎてはいけない。

主人公である「ぼく」は両親と距離がある、繊細で心の中にバリア張っているような孤独壁な少年で、中学のときに転向してきて勉強もスポーツもギターもできる医者の息子、杉田とその幼馴染の紗英と出会う。中学時代から3人はいつも一緒にいて、ギターを弾いたりしていた。そして中学から高校、大学へとそれぞれの道を歩む中での葛藤や不安、将来の方向性などが主人公のぼくの音楽活動を通して描かれている。

この物語はかなり構造を意識されている。簡単に言えば登場人物の重層的な三角関係だろう。ぼくと杉田、紗英という関係、ぼくの父とその友人である音楽プロデューサーである綿貫と僕の母という関係、ぼくがスカウトされたバンドの元メンバーの関係。それぞれの関係で親友か想う人か、傷つけたり葛藤したり苦悩したりする。それらの描写が小説に厚みをもたらせている。

特に紗英をめぐってぼくと杉田の関係に葛藤するぼくの心情が痛いほど共感できた。三角関係を描写した文学作品は多くあるけど、これはこれで比類なきよい作品だと思う。

バンドの演奏や音楽の描写は、やはり前作と同じように素晴らしいと思う。本当にその音楽が聞こえてくるような感覚を覚える。

ぼくの親友である杉田の苦悩もよく分かった。親が医者で自分も医者になることを期待されていたが、自分は決められたレールを歩みたくないと思い、文学部に入るが、文学部では自分の理想はなく、アフリカの難民救済活動などに身を投じたりするが、結局何がやりたいことなのか分からず、自分の弱さをぼくに吐露するところとか。

主人公は迷いながら、そして音楽活動を通して成長し、最終的には音楽で生きていくことを決断する。そして親友である杉田、紗英もそれぞれの道を目指して生きていく。最後のほうは泣きそうになった。ただ、電車の中で読んでいたのでぐっと泣きたい感情をこらえた。

この作家は青春小説を書かせたら右に出る人はそうはいないのではないかと思う。主人公をとりまく人間関係の描写、葛藤、成長などがとても共感できる。中学編、高校編もよかった。そして大学編でも感銘を受けた。前2作と大きく違うのは、誰も不幸になったり死んだりせず、ハッピーエンドに近い終わり方をしたからだろう。読了後の余韻は言うまでもない。

なぜ青春小説を読むのか?それは代償行為なのかもしれない。

読むべき人:
  • 純愛小説が読みたい人
  • 音楽が好きな人
  • 三角関係に悩む人
Amazon.co.jpで『三田誠広』の他の本を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 ランキングクリックお願いします。



トラックバックURL

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星