October 13, 2007

「愚直」論 私はこうして社長になった


「愚直」論 私はこうして社長になった

キーワード:
 樋口泰行、仕事論、社長論、精神論、自伝
阪大工学部卒、松下電器、ハーバードMBA、BCG、Apple、コンパック、日本HP、そしてダイエー社長という経歴を持つ著者の仕事論。現在はマイクロソフト日本法人代表執行役最高執行責任者という立場にあるようだ。

愚直というのは、仕事などで苦しいときや何でこんな仕事をしているのだろうという感じるときも、安易に逃げたりせず、責任を取り、地道にかつ努力を続け目の前の仕事に打ち込むという姿勢であることと全編にわたって示されている。内容は以下のようになっている。
  1. 試練を糧にせよ
  2. 仕事の閉塞感
  3. 人格改造講座
  4. 実力主義の世界
  5. 外資系の文化
  6. 社長という職業
  7. 激動時代の働き方
自伝的な内容なので、著者のビジネス人生がよくわかって面白いし、何よりも大変勉強になった。以下それらの部分を恣意的に選出。

著者の最初の会社は松下電器産業であった。ここは別に自分から望んでいった場所ではなかったようで、製造ラインで半田ごて片手に3Kのような仕事をしているとき、逃げ出したくてたまらなかったとある。それでも、悩みぬいた結果、留まることを決意したようだ。以下その部分について抜粋。
 何かに見切りをつけるとき、前向きのやめ方と後ろ向きのやめ方がある。いまの場所でできることはやり尽くした、成長できる余地がない、と心の底から思えるならば「卒業」である。しかし、そうでなければ「逃げ」にすぎない。いまの仕事から逃げ出しても、決してその先に明るい道は見えてこないのではないか。
(pp.29)
これは肝に銘じておこうと思った。本当に苦しいときは逃げ出したくなる。入社最初のプロジェクトで特にそう思った。少し逃げ出した感もあるので、反省している。

人格改造講座の章では、ハーバードでMBAを取得するまでの話。これも単純に自伝として面白いと思った。英語もあまり聞き取れず挫折感を味わいながら猛烈に勉強する毎日で、講義の後12時間近く勉強し続けて2年間を過ごされたようだ。さすが世界のエリートが集結する場だけはあるのだなぁと想像してみた。人格改造講座となっているのは、そこで積極的に自分をアピールし続けないと生き残れないということを学んだからとある。また、過酷な環境でMBAを取得できた理由を分析されている。曰く、米国流のマネジメントを学ぶことで自分の「スコープ」を広げたいと具体的に思っていたからだとある。続けて以下のように示されている。
 易きに流れそうになるとき、なぜ自分がここで踏ん張らなければならないか。その理由を明確に持っているかどうかがキャリアの分かれ道になる。踏ん張る理由は人それぞれで異なるはずだ。しかし、おそらくそれは、本で読んだり、人から聞いた理由ではなく、日々の仕事における努力の中から生まれた必然性の高い理由であるはずだ。
(pp.87-88)
なるほどなぁと思った。ということは、それだけ本気で仕事に取り組まなければ、踏ん張る理由などわいてこないのではないかと思う。

3章は戦略系コンサルティング会社での働き方などについて。単価が高いのでクライアントから相当高いアウトプットを求められる環境で、プレッシャーは相当なものだったようだ。倒れて救急車で運ばれるほどだったようだ・・・。また、コンサルティングは虚業であるという言説に対して、コンサルティング会社の4つの価値というものが示されている。簡単にまとめると、クライアント企業に対して気象予報士のような存在で、社内のクライアント先の潤滑油役、人材派遣として、また情報機関として価値があるようだ。ここは興味がある人は読めばいいと思う。また、コンサルタントはクライアントの事業戦略を立てることはできるが、それを実際に最後まで実行することはできないということから著者はコンサル会社からアップルに移ったようだ。

4,5章でアップル時代での営業をやっていたことや、コンパックに移り取締役になり、そしてHPに買収され、その後日本HPの社長になるまでの話が載っている。そこら辺は、より高い視点、著者の言葉を使えば広いスコープで組織論などが示されている。これも勉強になった。

これら5章まで読んだあとの極めつけが6章。6章を読むだけでこの本の価値は十分にあるが、5章まで読んだあとならさらに説得力が増す。ここは線を引きまくった。あまりにも多いので、一箇所だけ抜粋。成果は後からついてくるという部分。
 どんなに厳しい環境でも、必死に努力して自分の存在価値を示せば、次のステップが見えてくる。この信念が私のキャリアを何度も救ってくれたと思う。
 ビジネスは甘いものではない。実績もない人間の希望を聞き入れて環境を改善してくれるなどと期待してはいけない。
 (中略)
 逆に、どのような環境であっても頑張り抜いて、実績を出すことができれば、環境は自ずと良いほうに変わるものである。実績があり、存在感を持った人間の発言は重く受け止められる。
 (中略)
世の中に勉強にならない仕事などない。マイナスに思える仕事でも、後で振り返ればかならずプラスになっている。あせらずにコツコツと努力を続ければ、成果は後からついてくる。「ここで踏ん張らないで、いつ踏ん張るんだ」という気概を持って仕事に取り組むことが肝要だと考える。
(pp.202-203)
この仕事に対する姿勢を自分に刷り込んでおこう。

成功者の自伝は単純に面白く読める。困難や逆境に陥ったときにどのように乗り越えてきたのか、また何を信条としてビジネスなり日々を送っているのか、それらがとても勉強になる。この本は自分の中で殿堂入り確定。

この本で、書評200冊目となる。200冊目にふさわしい内容であった。そしてこれからも、愚直に成長を目指して書評を続ける。

読むべき人:
  • 仕事で行き詰っている人
  • 転職しようかと思っている人
  • 社長になりたい人
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