November 03, 2007

ウェブ社会の思想


ウェブ社会の思想―〈遍在する私〉をどう生きるか

キーワード:
 鈴木謙介、社会学、サブカルチャー、ネット、宿命論
社会学者によって「情報化社会で社会はどのように変化するか」「情報化の中を人はどのように生きていけばいいか」の2つの論点が示されている本。以下のような章になっている。
  1. ユビキタス――個人情報管理の社会
  2. バーチャル――越境する電子マネー
  3. 記憶と記録――データ化される「わたし」
  4. 宿命と成長(1)――島宇宙の外を生きられるか
  5. 共同性とマスメディア――「偏向報道」批判の背景
  6. 民主主義――グーグルが描く未来像
  7. 宿命と成長(2)――関係へと開かれる生
読了するまでにかなり長い期間を要したので、この書評はかなり断片的で恣意的なものとなることを了承いただきたい。

ウェブ社会が発達した現代では、Amazonを筆頭とするネットショッピングサイトおいて顧客情報や売上げなどがDBに管理され、そこからレコメンドシステムが作られている。それらは次にするべきこと、選ぶべき未来の選択肢を多く提示してくる。それらは今までに気づかなかった選択肢を提示してくれる半面、それ以外の未来(選択肢)がありえていたものが抜け落ちていくことに等しい。そしてその状況で、あたかも自分が意識的に選択してきたことと、前もってあらかじめ決められていたものであると受け取れることという矛盾が同時に起こることにもなる。そのような社会において私たちは宿命を求めるようになったのではないかと本書は示している。

宿命とは何かが示されている部分を抜粋。
 序章でも述べたように本書の主題のひとつは、この「システムによって自分に与えられた可能性以外の未来を選択できなくなること」という問題だ。左のドアを通ることさえできれば拓けたかもしれない未来が、システムによって閉ざされているために、はじめからなかったことにされる。そのようなことが、情報化と、それを前提に作られた制度・システムの中で、今後広がっていくのではないか。
 「ある可能性が開かれると同時に、別の可能性が選び得ないものになる」という現象に対して、私たちが、「この選択肢でよかったんだ」と思えてしまうような根拠付けのことを、本書では「宿命」と呼ぶことにしたい。
(pp.53)
自分の人生においても、一見選んできたように思えて、何も選択してこなかったのではないか?という側面が露呈してくる。今までの人生で自分が本当に選択をしたといいえる出来事は、就職先だろうと思う。けれどそれは確かに自分が選択したという意識があるが、就職先に影響を受けるのは出身大学、学んだ内容であり、それら自体は高校時代の成績、入試、偏差値でシステム的に峻別されており、結局、今の就職先も自分で選んだように思えて、選択しておらず、宿命論的にこの選択肢でよかったんだと納得させている状況なのではないかと思った。この本を読む前も、これでよかったんだよと何度も思い込もうとしていた。なので、この本に示されている宿命論は大変興味深かった。

さらに言えば、高校時代も中学時代の成績によって自動的に峻別され、中学は小学校に影響され、極論すれば貧富の格差が成績に影響を受け、格差はさらに親から継承しているという状況なのではないか。格差論も結局この宿命論にたどりつくのではないかと思える。

また落ち着いた頃にさらっと読み返してみる価値はあると思う。

読むべき人:
  • ウェブ社会についての問題に興味がある人
  • 宿命論が好きな人
  • 思想が好きな人
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