November 07, 2007

上達の法則


上達の法則―効率のよい努力を科学する

キーワード:
 岡本浩一、心理学、上級者、初級者、スキーマ
スポーツや習いごとなどにおける上達のプロセスを各種心理学によって知的理解と方法論を提供する本。以下のような内容となっている。
  1. 能力主義と上達の法則
  2. 上達と記憶のしくみ
  3. 上達した人はどこが違うのか
  4. 上達の方法論――中級者から上級者になるステップ
  5. スランプの構造と対策
  6. 上級者になる特訓法
最近ボウリングを始めたこともあり、どうやったら上達できるのかということが知りたかったので読んでみた。

上級者は中級者、初級者と記憶の構造が違うようで、上達という現象が以下のように示されている。
  • 宣言型知識と手続き型知識の長期記憶を豊富に効率よく形成すること。
  • 長期記憶に貯蔵された知識が効率よく検索できる状態を形成すること。
    すなわち、(a)必要な知識を早く検索し、(b)関係ない知識を誤って検索しない状態に長期記憶が形成されること。そのためには、検索に用いられるインデックスが確実に形成され、そのインデックスがシステマティックにできている状態が維持されること。
  • 長期記憶から検索された知識が、ワーキングメモリに出力されても、ワーキングメモリに余裕がある状態を維持できること。そのためには、多くの知識が少ないチャンク数で表象される状態ができること。
    (pp.66-67)
これはなんというかコンピュータの内部構造に共通する部分がありそうだ。まず入力値やデータからなる情報をHDDに確実に記録すること。そしてそのHDDをDBと捉えるなら、DB内のテーブルが正規化され、DBのインデックスが張られており、さらにSQL文が最適化されていること。そしてDBからの情報をメインメモリに読み出すときに、ページフォルトを極力発生させないような容量を持つこと。これらを満たすPCは一般的にスペックが高く、速いと感じるものだろう。人間の脳内もこんな感じなのではないかなぁと思った。ただ一つ違う点は、パソコンは最初に作られたスペック以上のものはできないけど、人間は上達のプロセスを経て、スペックが上がっていくということ。

また、知覚、認知、思考が行われる枠組みをスキーマというらしく、上達者はこのスキーマが優れているようだ。そしてスキーマを支えている大きなものとしてコーディング能力が示されている。これは知識が貯蔵されるためには、知識が言語に準じた形式に、その人の思考のなかで表される必要があり、それをこの本ではコード化と呼んでいる。ここもスキーマ、コード化といかにもIT技術者が反応しそうなモデル化だなと思った。

そして上級者はどこが違うかというと、以下のように違うようだ。
  • 持続力、集中力が高まる
  • 特異な才能が光る
  • イメージやこだわりが鮮明になる
  • 他者を見る眼が変わる
  • 自分を性格に認識できる
上達するにはノートをとったり、入門書を読んだり、さらに入門書より深く説明されている論理書を読んだり、模倣したりといろいろ示されている。ボウリングをやっている今の自分にできそうなのは、ストライクボールが投げられたときのフォームや体の流れをノートに書き留めるといったことや、ボウリング入門書を読むことになる。これは実践しようと思った。

あとがきで特に印象的だった部分を抜粋。
上達の結果、「見え方」の変わる瞬間があると、何度も強調した。それを多くの方に経験していただきたい。見え方の変わるとき、偶然接した風景や、偶然耳にした言葉が機縁となることが多い。そういう時期は、内的な緊張がつのり、スキーマがわずかな刺激で大転換するところまで来ている。ほとんどなにを見ても大転換のきっかけになり得るところまで問題意識が熟しているのである。
 したがって冷静に見れば、そういう瞬簡に、ある刺激に接して「見え方」が一度に変わるのには必然性がある。偶然ではない。けれども、本人にとっては、それはあくまで奇縁であり、奇跡である。あのときに、あの風景、あの人、あの言葉に接したこそ、「見え方」が大転換したという記憶が、自分の生涯におけるささやかなひとつの奇跡として記憶されることになる。そういう奇跡の訪れは、生きるロマンの最高のものである。
(pp.233-234)
ロマンを感じられるようになるためにも、ボウリングを続けよう。

上達のプロセスがよくわかって面白かった。また、上級者の例として名人クラスの棋士が多く出てくる。将棋好きな人にはたまらないと思う。

また、この上達のプロセスは、スポーツや外国語習得、習い事だけでなく仕事にも共通するのではないかと思う。

読むべき人:
  • 何かに上達したい人
  • 上級者になりたい人
  • ロマンを感じたい人
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1. 上達の法則―効率のよい努力を科学する  [ ikumu's note ]   November 07, 2007 21:02

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2. 『上達の法則―効率のよい努力を科学する 』  [ プチ株とPDA・PCと。 ]   November 10, 2007 19:24

『上達の法則―効率のよい努力を科学する 』(岡本浩一著,PHP研究所,¥714) 本書は,普通の人がある一定の水準に達するのはどうすればよいかを述べている本です。これまで,一芸に秀でている人が知らず知らずに習得しているであろうものを認知心理学,学習心理学,記憶心...

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