December 15, 2007

「三十歳までなんか生きるな」と思っていた


「三十歳までなんか生きるな」と思っていた

キーワード:
 保坂和志、愚直、考える、自問自答、メメント・モリ
芥川賞作家によるただひたすら自問自答して結論のない話題を考えているエッセイ。内容は以下のようになっている。
  1. 「三十歳までなんか生きるな」と思っていた
  2. プー太郎が好きだ!
  3. 冷淡さの連鎖
  4. 自分がいなくなった後の世界
この本はやはり書評が難しいので、少しの引用と、それに対する感想程度の書評とする。

「三十歳までなんか生きるな」というのは、著者が大学進学をする前あたりに、年齢とともに自分の考えることが、十代の自分から軽蔑されるような人間になっていくことを恐れて、「三十歳までなんか生きるな」という言葉を紙に書いて壁に貼り付けようとしていたらしい。しかし、結局貼り付けることはせずに、貼らなかったためにいくらかの「やりそこなった」という気持ちとともにその言葉を持ち続けて、大学時代を通じて三十歳を単に「くだらない」と切り捨てていた十代の自分と対話を続けていたということらしい。

『「考えつづける」という意志』という節で、この本の核になると思われる部分がある。その部分を引用。
「それができるのは哲学者とか文学者のような特別な職業の人だけだ」なんてことを言って、考えることから逃げる人のことは私は知らない。世界と自分のことを考えずに仕事だけして何になるのか。そして最期になって、自分の死を前にしたときに、わかりやすく噛みくだかれた仏教の講話とかそれ以下の出来合いの言葉にすがっていたら、自分の人生にならないじゃないかと言いたい。
 世界と自分のことに答えなんかない。物事に答えがあると思うのは、未来を固定したものとして考える以上の単純化だ。大事なことには答えがなく、ただ考えるという行為や意志しかない。
(pp.32-33)
仕事だけに日々の生活を埋没させたくない。だから著者のように、考えるための時間やヒントとしてさまざまな本を読む必要がある。自分が書評ブログを続ける理由の本質的なものは、たぶんこれに近い。

他にも小説とはどういうことか、プー太郎の友達を持つことに誇りと持っていることや、フロイト、アニミズム、将棋の話と幅広く考えが示されている。どれも刺激的な内容で面白い。著者の小説はひとつも読んだことはないけど、このような良質のエッセイに惹かれるものがある。『途方に暮れて、人生論 』もお勧め。

考え続けることに意義がある。それがわかってよかった。

読むべき人:
  • 良質なエッセイを読みたい人
  • 日々の生活に追われている人
  • 考え続けていることがある人
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