April 23, 2008

幸せって、なんだっけ


幸せって、なんだっけ 「豊かさ」という幻想を超えて

キーワード:
 辻信一、経済学、豊かさ、幸せ、スローライフ
文化人類学者による、豊かさと幸せを問い直すための経済学の本。以下のような内容となっている。
  1. はじめに 人間を幸せにしない経済
  2. 幸せって、なんだっけ
  3. 幸せですか、日本人?
  4. 「豊かさ」の発明
  5. 「豊かさ」を問い直す
  6. 幸せの経済学
  7. 幸せを創るカルチャー・クリエイティブ
  8. おわりに 幸せを想像する力
世界中が経済発展を目指して豊かさを追従すればするほど、生活は物質で満たされ、そして人びとも豊かに、幸せになれるというのは幻想に過ぎず、むしろ経済発展そのものが人びとを不幸にしているのではないかと主張されている。以下、簡単に要点を箇条書きにしてみる。
  • アメリカや日本など、豊かな国の人のほうが幸せでない人が多い
  • 裕福な人が苦しみを抱えているのは、誰もが「豊かさ」を目指して、競争しながらどこまでも階段を昇っていかなければならないというストーリーそのものが問題
  • 経済のグローバル化により、石油争奪戦、二酸化炭素排出による温暖化など自然環境を破壊したり、戦争、貧困を引き起こしている
  • カルチャー・クリエイティブというロハス的な生き方をする人がアメリカで増えている
  • 物質的、金銭的な豊かさよりも、時間的豊かさを持つスローライフこそが本当に豊かな生活
結構乱暴なまとめ方だなぁ・・・・。

この本では、幸せとは何か?という根源的な部分までは考察されていない。そこは著者も自分では分からないと示している。この本は幸せを考える本ではなく、あくまで経済学だと示されている。そこは経済学者ではない、文化人類学者からの視点、例えば発展途上国での経験や文化的な豊かさの視点などから考察されていて、なるほどなと思う部分が多かった。特にブータンの国王が提唱している、GNP, GDPに変わるGNH(国民総幸福)という概念は経済発展だけが豊かさの指標ではないということをよくあらわしているなと思った。

特に印象に残った部分を長めに抜粋。時間の問題についての部分。
 すでに見てきたように、人々は「豊かさ」幻想を追いかけて、効率性や生産性や経済成長や消費増大などを最優先にしてきた。その結果がファストな社会だ。なぜファストかといえば、それは速く、より多くつくり、売るものが勝つという競争原理に基づいているので、社会が全体として加速するからだ。自然にも社会にも人間の暮らしにも、それにふさわしい遅さ、ペースというものがある。そこに加速する一方の経済のペースを押しつけたらどうなるだろう。生態系が壊れ、さまざまな争いが起き、こころやからだが疲れ、病んでいく。だが、どんな問題も、「豊かさ」のためだから仕方がない、で片づけられた。
 なんでこんなに忙しいかって?それは、要するに、時間をお金に換えてしまったから。時間が減り、忙しくなれば、サティシュの言う、生きるために必要なつながり――自然との、人との、モノとの、自分自身とのよい関係――が壊れていく。だって、どんなつながりも手間ひまもかがかかるものだから。でもぼくたちにはもう、その時間がない。つながっている暇がない。ぼくたちが感じる幸せの大部分は、たぶん、よいつながりから生まれるのだと思う。でも、そのよいつながりが、忙しすぎてもう保てない。
 つながりを表すもうひとつの言葉、それが愛だ。ぼくたちの幸せは、そこにかかっていると言ってもいい。しかし、ぼくたちはもう愛する暇さえなくなっているのではないか。でも、それって、幸せでいる暇さえなくなってしまった、ということ!?
(pp.232-233)
かなり長めに引用したが、とても考えさせられる部分。自分もよく仕事が忙しく、残業で終電帰りが続く日があると考え込んでしまう。こんな生活が幸せなはずが無いと。そうはいっても利潤を追求する会社組織に属してしまった以上、それは仕方のないことだと思った。それはプロジェクトの成功のため、その本質的な理由は会社の成長のため。さらには自分自身の成長のため。けれど、やはり忙しすぎると、心身ともに健全ではなくなっていくのが分かる。そしたら何のための成長なのか?と疑問に思い始める。仕事中は、徹底的に効率化、スピードが求められ、それが善とされる。けれど自分自身はそのペースについていけず、効率化を図る本を読んでキャッチアップしている始末・・・・。やはり著者が言うように、適切なペースというものが必要になるんだなと思った。それがスローライフにつながることになる。

しかし、スローライフを目指した瞬間に、下流やワーキングプアに陥ってしまうのではないかという危険性があるのが今の日本の現状なんだと思う。簡単にスローライフを目指してしまうと、まともに生活ができないかもしれない。そのため、経済成長を目指す会社組織で激しく働かざるを得ない。いや、物資的に満たされていないと生活できないという思いこみそのものが、すでに幻想に囚われているんだろうなぁ。難しいところで。

この本はいろんなことを考えさせてくれる。個人レベルの生活の豊かさから国単位の豊かさ、幸せについて。そして少なからず自分の生活の方向性にも影響を与えたのだと思う。たぶん、自分も経済成長の歯車になるか、それともスローライフをするのかを選択しなければならない日が来るんじゃないかなと思った。

金持ち思考、上昇志向にある人は1度読んでみたらいいと思う。考え方が変わると思うから。

ついでに同じ著者の『「ゆっくり」でいいんだよ』もお勧め。

読むべき人:
  • 幸せについて考えたい人
  • 金持ちになりたいと激しく働いている人
  • スローライフがしたい人
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