May 06, 2008

天使の梯子 Angel's Ladder


天使の梯子 Angel's Ladder (集英社文庫)

キーワード:
 村山由佳、恋愛関係、後悔、赦し、浄化
直木賞作家の純愛小説。『天子の卵』から10年後の続編ということになる。あらすじをカバーの裏から抜粋。
バイト先のカフェで耳にした懐かしい声。それはフルチンこと古幡慎一が高校時代に思いを寄せた先生、斎藤夏姫のものだった。8歳年上、29歳の夏姫に、どうしようもなく惹かれていくフルチン。だが彼女は、体はひらいても心を見せてはくれない。10年前の「あの時」から夏姫の心には特別な男が棲んでいるのだから―。傷ついた心は再生するのか。愛は蘇るのか。それぞれの思いが交錯する物語。
(カバーの裏より抜粋)
天使の卵―エンジェルス・エッグ』のときよりも純愛が前面に押し出されてはいなかったような気がする。どちらかというと、慎一と夏姫との馴れ初めというよりも、最後のほうの夏姫、歩太が抱えている傷や思いを浄化する描写のほうが前面に出ているなと思った。そして慎一は、一応この物語の主人公であり、慎一視点の一人称で物語が進んでいく。

女流作家なんだけど、青年期である男の一人称の心理描写がうまいなと思った。なんでそんなに主人公の葛藤とか嫉妬心などをそこまで描写できるのだろうか?と思った。慎一の夏姫への思いとか、歩太に対する嫉妬心など。他の作品、例えば『海を抱く―BAD KIDS』なんかも男の主人公の一人称で、同じく内面描写がうまいと思った。

夏姫が年上で、慎一が年下という恋愛関係を描くとき、最初のほうでは夏姫はあまり真一に内面を見せずに、慎一視点から夏姫が語られていく。それによって夏姫の神秘性というか年上の女性の魅力などが綺麗に描写されており、想像を描き立てられた。夏姫のイメージ像がすっと頭の中に再生されるような感覚だった。

物語の舞台は、西武池袋線近辺なので、石神井公園とか石神井城、池袋駅などが出てくる。石神井公園には行ったことはないけど、西武池袋線を一時期使っていたこともあって、なんだかなじみが沸いた。

『天子の卵』をだいぶ前に読んでいたが、『天子の梯子』は卵の続編という感覚はあんまりなかった。前作の内容をさっぱり忘れていたからだろう。しかし、読み進めていくうちに、今作の歩太が前作の主人公であったことを思い出して、なんだか納得できた。どちらかといえば、前作を読んでいたほうがよいと思われる。

印象に残った会話文がある。夏姫が慎一に語った言葉。
「誰に何を言われても消えない後悔なら、自分で一生抱えていくしかないのよ」
(pp.154)
この物語では、夏姫の後悔は浄化されたんだろうなと思う。

著者の小説は読みやすくてすっと物語に入り込むことができる。気取った描写も無く、その場にいるような感覚になれる。たまに読むと、なんだか自分の気持ちが感化された気になる。そんな作品が多い気がする。といってもそこまで多く読んだことがあるわけではないけど。

読むべき人:
  • 『天子の卵』を読んだ人
  • 西武池袋線を利用している人
  • 後悔している想いがくすぶっている人
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トラックバック一覧

1. 「天使の梯子」村上由佳  [ ナナメモ ]   May 06, 2008 16:30

天使の梯子 村山 由佳 カフェでバイトをしている古幡慎は注文する声だけでその人が高校1年生の時の担任斉藤夏姫だってわかった。男の人と待ち合わせをしている先生はそれから時々やってくる。声をかけずに見守っていたある日、先生はその男の人と喧嘩をしてコーヒーを...

2. 村山由佳 「天使の梯子」   [ ゼロから ]   August 18, 2008 06:13

「天使の卵−エンジェル・エッグ」を読んだのは、大分前なのでストーリーは、すっかり忘れていましたね。でも、前作が分らなくても楽しめましたよ。

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