May 07, 2008

業務システムのための上流工程入門


業務システムのための上流工程入門―要件定義から分析・設計まで

キーワード:
 渡辺幸三、業務システム、上流工程、基本設計、モデリング
上流工程の重要性から基本設計時の業務モデリングの方法が示されている本。以下のような内容となっている。
  1. 上流工程の困難
    1. ボトルネックは「分析・設計・検収」
    2. システム開発フェーズ分け
    3. 上流と下流の分業体制
  2. 上流工程の進め方
    1. 要件定義と「トリアージ」
    2. 拡散型思考過程としての基本設計
    3. 基本設計のための図法
    4. ビジネスシステムの特性
    5. 現状分析の意義と限界
  3. 基本設計入門
    1. 基本設計の進め方
    2. 概略設計で大枠をとらえる
    3. データモデリング
    4. 業務モデリング
    5. 機能モデリング
    6. とりまとめとレビュー
  4. モデリングパターンと用例
    1. 業務フローのパターン
    2. データモデルのパターン
    3. 機能モデルのパターン
    4. サブシステム分割のパターン
以下、勉強になった部分を紹介していく。

システム開発における、上流工程とは何かいうと、著者によれば以下のようになる。
  • 分析:ユーザーの抱えている問題を明らかにする
  • 設計:適切な業務プロセスやコンピュータシステムの仕様を考案
  • 検収:妥当性をユーザーに納得してもらうこと
そして、この上流工程がシステム開発のボトルネックになるようだ。なぜならば、システム開発者とユーザーにはシステムに対する認識のギャップがあり、システム開発者がそのままユーザーになる場合は使いやすいシステムを作りやすいが、ユーザーはプログラムなどのシステムの内部動作にはあまり関心がないことが一般的であるので、実際には作りながら使ってもらい、その都度修正が必要になる。さらにシステムの対象ユーザーは数人という規模ではなく、会社組織全体といったように、組織間の相互関係まで考慮に入れて分析、設計、検収をしてもらう必要があるので、さらに困難さが増してしまうようだ。そしてこのボトルネックは、上流と下流を両方経験した技術者以外には見えないのが普通らしい。よって、上流工程について学ぶには、この困難さを理解することが第一のステップになるようだ。

また、上流工程の成果物は以下の2つを同時に満たす必要があるらしい。
  • コンピュータシステムに関して素人であるユーザーにとってわかりやすい
  • プログラマが仕事を引き継げるほどに具体的かつ厳密
これは、上司にもよく言われたことだなと思った。上流工程の成果物には基本設計書があるが、これはユーザーにも納品するので、不明確な部分やあいまいな表現はなくす、また文言は統一しろとよく言われた。さらに、基本設計書を作った人がそのまま詳細設計書を作成し、プログラムするとは限らないので、基本設計書を見ただけで他の人が詳細設計書を書ける内容のものでないといけないと言われたので、これはそのとおりだなと思った。

上流工程の初期段階で、設計書を書くときにははじめからツールを使ってきれいに書こうとすると、何かを作ってしまった気になってしまうので、紙に手書きで試行錯誤するのがよいと示されていて、なるほどなと思った。

基本設計の進め方は以下の4つので順になるようだ。
  1. 概略設計――業務フローを作成
  2. モデリングセッション――ビジネスシステムの3要素(データ、仕事、道具)が視覚化するモデリング作業
  3. とりまとめ――大量の手書き図面を整理しながら設計情報の管理ツールに登録するための作業
  4. レビュー――とりまとめの結果を関係者に検証してもらうための手順
勉強になった。

特に実践的に使えそうなのは、4章のモデリングパターンと用例だと思った。ビジネスシステムでよくモデリングされる4つのパターンが示されている。また、データモデルのパターンも示されており、データベース設計にそのまま活かせる部分だと思った。ただ、ここで示されているデータモデリング記法はIE方式というもので、これを使用すると、モデルに具体的なレコードの例を併記できるので、この表記を採用しているようだ。この表記自体は見たことがなかったので、少し戸惑ったが、慣れればキーの親子関係などもすぐに分かると思われる。

上流工程から基本設計のモデリング方法まで具体例を示しながら解説されているので、わかりやすいほうだと思う。ただ、業務モデルの図がいまいちごちゃごちゃしているかなと思った。

他にもコラムが載っており、上流工程で役立つ資格や上流工程へのキャリアパスについてなどが著者の経験から示されていて、なるほどなと思った。ちなみに上流工程で役立つ資格は簿記らしい。

上流工程に関わったことのない人で、これから関わることがある人はぜひ読んでおくべき内容かなと思った。とても勉強になったので、何度も読み返そうと思った。

ちなみに、この本はAmazonでは評価が高い。

読むべき人:
  • 上流工程に携わりたいシステム開発者
  • システム開発者に仕様を伝えるユーザー
  • 過度の長時間労働を武勇伝として語ってしまっている人
Amazon.co.jpで『渡辺幸三』の他の本を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 ランキングへ



トラックバックURL

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星