May 20, 2008

生産管理・原価管理システムのためのデータモデリング


生産管理・原価管理システムのためのデータモデリング

キーワード:
 渡辺幸三、生産管理、原価管理、データモデリング、DB設計
生産管理の諸問題をデータベースの設計の問題として解説している本。以下のような目次になっている。
  1. データモデリング入門
    1. データベースとデータモデル
    2. エンティティ関連と正規化
    3. システム設計に関する知識
  2. 生産管理システムのデータモデル
    1. 部品表と肯定表
    2. 未来を見通す在庫システム
    3. 入出荷と製造
    4. 月次計画と原価計算
自分が実際に生産管理や原価管理システムを作ったことがあるわけではないので、細かいところのよしあしは判断できないが、勉強になった部分を示しておく。

2章の正規化のところでは、第五正規形まで6段階まで示されている。一応各正規形のポイントを示しておく。
第n正規形正規形ポイント
第一正規形エンティティ内にデータモデリングが明示的に扱う以外のデータ構造を存在させない
第二正規形識別子の一部から属性項目への関数従属性の排除
第三正規形属性項目同士の関数従属性の排除
ボイス・コッド正規形属性項目から識別子の一部への関数従属性の排除
第四正規形無意味なドメインを規定する無意味な識別子の除去
第五正規形あるべきドメインを規定するあるべき識別子を追加
ここまでやって正規形が完全なものになる。一般的なテーブルの正規形の解説では第三正規形までで十分とあるが、著者によればそれは根拠がなく、開発・保守しやすいデータ・ベースシステムにしたいのなら、少なくとも論理モデルの段階では「識別子全体から属性項目に対するもの以外の関数従属性」はすべて排除されなければならないとある。なるほどと思った。また、正規形を実際に行うには、以下の3つのルールを覚えておけばよいとある。
  • ルール1.入れ子構造の解消
     エンティティ内のデータ項目の繰り返し構造やデータ項目内の内部構造は解消されなければならない。
  • ルール2.不要な関数従属性の排除
     エンティティの識別子全体からそれぞれの属性項目に対するもの以外の関数従属性は排除されなければならない。
  • ルール3.有効な識別子の網羅
     すべての有効な識別子のみが一覧され、それぞれの識別子毎にエンティティが最低1個は用意されなければならない。
    (pp.55)
これら3つのルールに従えば、完全正規形になるようだ。

データモデリングの具体例だけでなく、生産管理や原価管理の業務についても詳しく解説が載っている。例えば、在庫管理で使われる「ロット」や生産管理で使われる「カンバン」、原価計算など。今までロットはただの製造単位のことだと思って詳しく理解していなかったけど、ロットを使用することによって、不良品が発生したときに影響範囲を限定できるというメリットがあるようだ。勉強になった。

あとがきのほうで新人技術者は「上流へ向かって常に匍匐(ほふく)前進することを忘れるな」とある。これは新技術ばかりを追従していては疲弊してしまい、35歳定年説を実現してしまうことになる。しかし、上流工程の技術は、世の中の流行の変化に影響を受けにくい核の技術であるからと示されている。以下、その部分を抜粋。
 とはいえ、上流工程向けの勉強をし続けることは「技術者の生き残りの戦略」としてはすぐれています。なぜならそれらの学びは「技術者の発展や流行の切り替わりにともなって消費されるもの」ではなく、「将来に向けて蓄積されるもの」だからです。また、匍匐前進のようなゆっくりとしたペースでもかまいません。とにかく上流へ進んでいると意識できるだけで、いざ上流工程を担当することになったときの抵抗や恐れが軽減されるでしょう。
(pp.302)
また、下流工程の技術も軽視してはいけないとあった。このような業務システムを作るエンジニアを続けるのであれば、だんだん上流を目指すべきなのだろうなと思った。けれど、自分は下流を重点的にやって、技術を極めるというのもありかなと思う。その技術が廃れていったらどうしようもないが・・・。

どちらかというとこれは入門書というよりも、生産管理、原価管理の業務知識を踏まえたモデリングの具体例が示された教科書だと思う。なので、一般的なデータベースのモデリングを初歩から学びたい場合には適さないと思う。本当に現場で生産管理や原価管理システムを作る必要性がある人にとっては、すぐに役立つだろうと思われる。Amazonでのレビューの評価はかなり高い。

同じ著者のより初心者向けの本で『業務別データベース設計のためのデータモデリング入門』があるので、先にこっちを読んでおくべきだったかなと思った。

読むべき人:
  • 生産管理システムの設計者
  • 原価管理システムの設計者
  • 生産管理、原価管理の業務知識を身につけたい人
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