June 03, 2008

働くひとのためのキャリア・デザイン


働くひとのためのキャリア・デザイン

キーワード:
 金井壽宏、キャリア論、仕事、節目、トランジション
経営学が専門の著者による、研究に基づいたキャリア論が示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 キャリアは働くみんなの問題
  2. 第2章 揺れ動くキャリア観―なぜ移行期、節目に注目するのか
  3. 第3章 キャリアをデザインするという発想―ただ流されるのとどう違うのか
  4. 第4章 最初の大きな節目―就職時と入社直後の適応
  5. 第5章 節目ごとの生涯キャリア発達課題
  6. 第6章 元気よくキャリアを歩むために
(目次から抜粋)
仕事をしていく上で、キャリアというものを意識していくことはとても重要なことで、特に、人生の節目においてはキャリアを強く意識すべきとある。著者によると、この本の目的は以下のようになる。
「せめて節目だと感じるときだけは、キャリアの問題を真剣に考えてデザインするようにしたい」というものだ。そのような思考を助けるツール(道具)を提供するのが、本書でのわたしの目的だ。節目さえしっかりデザインすれば、あとは流されるのも、可能性の幅をかえって広げてくれるので、OKだろう。
(pp.23)
普通の自己啓発本では、目標を明確にし、優先順位をつけてそれに向かって努力しろというものが多いが、これはどちらかといと、ゆるい感じで方向性さえ間違わなければよいという感じになっている。

本書の主張は、キャリア・トランジション論という研究が基になっているらしい。トランジションというのは、生涯発達の心理学としては「移行」、または「移行期」を指す言葉とある。そして、人生やキャリアは、安定期と移行期の繰り返しであるというのが、生涯発達論やキャリア論におけるライフサイクルの視点であると示されている。この岐路、節目という観点がこの本では特に重要なようだ。

キャリア・デザインの反対語としてキャリア・ドリフトというものが示されている。これは、キャリアを自分で決めてデザインしていくようなものではなく、身を任せて流されていくという態度らしい。そしてこのキャリア・ドリフトというものには、セレンディピティのような思わぬ偶然が人生に好転をもたらす可能性があるらしい。例えば、経理の仕事が嫌だと思っていた人が実際にやってみると、数字を扱うことが得意であるという自分の思わぬ才能にめぐり合えるかもしれない可能性がある。また、キャリア・ドリフトについて具体的なアドバイスが示されている部分があるので、抜粋。
 たとえば、二十歳前後のときの就職活動で、世界中の悩みを背負い込んだみたいに、自分のキャリアをデザインしきろうと躍起になっているひとは、入社後は、むしろ少し肩の力を抜いてドリフトの洗礼も受けたほうがいい。セカンド・キャリアを歩むかどうか、デザインという視点から悩んでいるひとも、流れやタイミングの力を信じるなら、壮大な人生計画を立てて、そのなかで今転職すべきかどうか、考え込み迷うよりも、まず行動を起こしてみて、その後の偶然を生かし、うまくいかなかったらまた軌道修正すればいい。なぜかというと、先に述べたとおり、「わたしがなにを言いたいかは、言ってみないとわからない」(ワイク)ものだし、偉大な心理学者で哲学者でもあったウィリアム・ジェームズでさえかつてさらっと言ってのけたように、「人生が生き抜くに値するかどうかは、生きてみないとわからない」のである。この言葉は、「キャリアの中でこの動きがいいかどうかは、実際に動いてみないとわからない」と言い換えてもいい。
(pp.115-116)
しかし、キャリアすべてをドリフトしっぱなしではだめなので、節目にはしっかりデザインする必要があるようだ。どういう人生、キャリアを歩みたいかを大まかでもいいので方向性だけは定めておく必要があるようだ。

このキャリア・ドリフトという考えは、とても参考になった。やってみないとわからないことが多いのは事実だし。自分自身に関しては、やりたい技術領域ではない仕事だとしても、セレンディピティで思わぬ発見があるかもしれないので、面白がってやってみようと思った。このようなドリフトを体感している人こそ、入社数年の期間というのは、仕事を選ぶべきではないと言うのかもしれない。自分も入社数ヶ月のころに上司に言われた記憶がある。

また、人生の節目においては、以下のエドガー・シャインの三つの問いを意識する必要があるようだ。
  • 自分は何が得意か。
  • 自分はいったいなにをやりたいのか。
  • どのようなことをやっている自分なら、意味を感じ、社会に役立っていると実感できるのか。
普段の生活ではこれを意識する必要はないが、節目にはぜひ考えるべきとあった。これは就職活動の自己分析をするときに、ある程度考えたなと思った。しかし、何が得意かを主に考え、何がやりたいのかはなんとなくしか考えず、社会貢献的な部分はそこまで考えられなかったなと思った。

最後のほうに、よいキャリアというものには正解がないと示されていた。複数示されている具体例から、自分なりに考えるのがよいとあったので、考えてみよう。

学術書なので、新書であるのに300ページ近くもあり、濃い内容となっている。キャリア論全般を知るにはかなりよいと思われる。途中と途中の専門的な理論は、細かく読まなくてもそれほど支障はないと思われる。

この本は、読者自身がキャリアを自分のこととして考えて欲しいとあるので、エクササイズが多く用意されている。それらをしっかりやれば、節目におけるキャリア・デザインがうまくできるのではないかと思う。主な対象読者は、ミドル世代であると示されているが、就職活動中の大学生にも自己分析に利用できると思う。

キャリアとは何かということから考えたい人には、かなりお薦めな本。

読むべき人:
  • 中間管理職の人
  • 就職活動中の大学生
  • 転職を視野にキャリアデザインを模索している人
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コメント一覧

1. Posted by chample   November 20, 2009 19:20

>これはどちらかといと、ゆるい感じで方向性さえ間違わなければよいという感じになっている。

自分はこちらのタイプですね。これしかない!というよりは、目の前に出てくる仕事は何でもしっかり頑張るというスタンス。でもときに、何でも出来るけど何やりたいん?と自問してしまうことも。ただ、環境適応能力は上がっているので、「どもでも生きていけるよ」と言われたりもします。笑

>このキャリア・ドリフトというものには、セレンディピティのような思わぬ偶然が人生に好転をもたらす可能性があるらしい。

他人からみれば、いろいろやってるね〜って感じですが、私自身はいく先々でメンターに恵まれている気がします。そのため、仕事内容が変わっても結構楽しく仕事をさせてもらっています。

>やってみないとわからないことが多い
「やってみたら、うまくいったかもしれないのに」
という言葉を思い出します。

良い本をご紹介頂きました。読ませて頂きます。感謝!

2. Posted by Master@ブログの中の人   November 20, 2009 20:28

>>champleさん

コメントありがとうございます!!

昔は、これじゃなくてはダメだ!!と思っていましたが、やはり目の前のものをとりあえずやっていこうかなと思うようになりました。

楽しく仕事をされているとのこと、うらやましいです(笑)まぁ、自分も最近楽しさを感じてきました

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