June 03, 2008

アポロの歌


アポロの歌(1)  アポロの歌(2)

キーワード:
 手塚治虫、愛、苦しみ、SF、月桂樹
手塚治虫の漫画。2巻で完結。2巻の最初にちょうどよいあらすじがあるので、その部分を抜粋。
子供の頃、
両親の愛を受けずに育った近石昭吾は、
心に病を持ち、
動物に対して異常な増悪を持つようになった。
そして、警察から病院へ送られた昭吾は、
そこで治療を受けることになる。
しかし、神は彼に、
永遠に解き放たれない運命を与えた。
それは―
死んで再び生まれ変わろうとも、
ひとりの女を愛し、
結ばれぬ恋をするであろう・・・と―。
そして昭吾は
試練の人生を繰り返すことになる―。
(2巻の前巻のストーリーから抜粋)
本編は以下のような5章編成になっている。
  1. 第1章 デイ・ブルーメン・ウント・ダス・ライヘ(花と死体)
  2. 第2章 人間番外地
  3. 第3章 コーチ
  4. 第4章 女王シグマ
  5. 第5章 ふたりだけの丘
舞台は幅広い。1章では大戦中のドイツ、2章は無人島、3章は箱根の山、4章は合成人が支配する未来の日本、5章は物語の起点となった世界の箱根の山。

昭吾は常に同じ人間に惹かれることになるが、結ばれる直前や結ばれた直後に、必ずどちらかが死ぬ運命にあり、その運命に翻弄されて苦しみ続ける。愛することはすばらしいが、苦しみを伴うというメッセージがこめられている。

女王シグマという話が一番面白かった。未来の世界では、光化学スモッグにより人間は死滅しそうになっていて、そこから人間をベースとした合成人間を作り出した。合成人間は、人間よりも能力的に優れているが、やがて人間を支配するようになる。合成人間は都会人の合理性を追求した結果なので、性器を持たず、愛情を表現することができない。そこで合成人の女王シグマは、人間の奴隷である昭吾に愛の証明を迫る。

しかし、昭吾は女王暗殺の指令を受けている。合成人の女王の愛の真似事に反発し続け、女王を何度も殺すが、合成人である女王は何度でもクローンでよみがえり、昭吾に迫る。結局は、お互いに心が通じ合うが、そのときは運命どおりに二人とも死んでしまうという話。

どの話も決して報われず、永遠の苦しみが待っている。とてもやりきれない内容だと思った。

あとがきは手塚自身によるもの。曰く、主人公は手塚作品の中でもかげの多い人物で、はっきり劇画タッチに変えているようだ。その当時は虫プロのゴタゴタに巻き込まれて、余計に暗くてやりきれない内容となっているらしい。

火の鳥の未来編のような感じで、何度も生と死を繰り返している。

愛とは何か?

愛のために苦悩するのか?

ということがよく現れている作品だと思う。久しぶりに手塚作品の中であたりだった。心情を投射しすぎると、読むのに少し辛い作品でもある。

読むべき人:
  • SF作品が好きな人
  • 愛することができない人
  • 愛とは何か?を考えたい人
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1. 「アポロの歌」手塚治虫  [ りゅうちゃんミストラル ]   October 26, 2010 11:32

手塚治虫「アポロの歌」全2巻(文庫版)を読んだ。アポロの歌(1)価格:590円(税込、送料別)この作品は、性がテーマのため神奈川県で有害図書に指定された。今ではどうってこと...

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