June 15, 2008

乳と卵


乳と卵

キーワード:
 川上未映子、親子、豊胸手術、大阪弁、卵
文筆歌手で、今年の芥川賞を受賞した川上未映子の作品。『乳と卵』のほかに、『あなたたちの恋愛は瀕死』という短編が収録されている。このエントリでは、主に芥川賞受賞作の『乳と卵』を主に取り扱うことにする。

物語は、わたし(夏ちゃん)のもとに38歳くらいの姉の巻子がその子供、緑子を連れて大阪から東京にやってくる。巻子は、豊胸手術を目的として上京しようとして、緑子は、母との関係からしゃべることを拒否しており、伝えたいことは全てノートに書いているという状況。わたし、巻子、緑子の3日間の生活が物語られている。

タイトルの、『乳』は巻子の胸のことで、『卵』は、卵子、生卵のことだろうと思う。この作品の最後に生卵が重要な役割を果たしている。

この作品で特筆すべきは、やはり大阪弁を主体とした口語文だろう。一文が読点を多用して長く続き、独特のリズムがある。しかし、最初の5ページを読むのがとても大変。文体に慣れないうちは、読み進めるのが苦労する。例えば、大阪から巻子がやってくるシーンは以下のように描写されている。
 巻子らは大阪からやってくるから、到着の時間さえわかっていれば出会えぬわけはないし、ホームはこの場合ならひとつやし、わたしは前もってきいておいた到着時間を携帯電話に入力して、通話ボタンを一回押して記憶させていたのでその点は安心、歩きながら無数にある円柱にぴったりと巻かれたつるつるの広告を何個も何個も横切って、しかし広告に使われている老女優の着物の柄が、鏡餅なのかうさぎなのかがこれではわからないな、電光掲示板を確認してから階段を、気がついたら教えてて、登っていって、新幹線が色々を吐く大きな音によろけるくらいに圧されながらも、すぐに巻子らを見つけることが出来た。
(pp.8)
このように、一文がものすごく長い。この文体を受け入れられるかどうかによって、この作品の印象は、やはり変わってしまう。しかし、わたしを視点とした細かい周りの風景などの描写は、上手だなと思った。

巻子と緑子の親子関係がよく示されていた。スナックで働く母親と自分自身の存在が母親にとって重荷になっているのではないかと思う緑子の関係の遷移が3日間で描写されている。

エンターテイメント的な面白さはないが、読了後のカタルシスを緑子を通して感じることができたので、割とよい作品だと思った。

文体で読む人を選ぶと思うが、しかし、読まず嫌いはよくないと思うので、大阪弁の口語体で綴られる作品はどんなものなのか、ということに関心がある人は読んでみるとよいと思われる。

ところで、川上未映子さんはとても30越えの既婚者には見えない。芥川賞授賞式にプラダが衣装提供を申し出たほどらしい。まったく作品の評価とは関係ないことだが。

読むべき人:
  • 母と子の関係の物語を読みたい人
  • 自分は存在価値がないと思っている思春期の人
  • 大阪弁の口語体に関心がある人
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1. 2カップアップ!メスを使わない超Natural豊胸術  [ 愛されモテ子育成 ]   June 17, 2008 10:34

自宅で一日15分、カップアップまでに平均3ヶ月!!モニター203人の胸が平均2カップアップ

2. 『乳と卵』 川上未映子  [ あるばむ だのん ]   June 28, 2008 10:39

1ページ目を開いて思う。 「うわっ改行少なっ!」 1段落あたりの文章量がケータイ小説の何10倍。 しかもひとつの文が長い。息継ぎのタイミングが…(・・;) 「~であるんやけど、~であって、~であるので、~…」 中学校の作文やったっらあんまりほめられへんのちゃうかな?とい....

3. 乳と卵 感想  [ たあさんの部屋別館??本の部屋?? ]   June 30, 2008 23:26

そして、川上の「乳と卵」、感想です。 芥川賞受賞作品ですよ??。 第138回の。

コメント一覧

1. Posted by だのん   June 28, 2008 10:36

はじめまして。遅くなりましたがTBありがとうございます。
前評判どおり、なかなかくせのある文体で、けど大阪弁の口語体なのでボクには割りとしっくりなじんできて、いい感じでした。
文体のリズムだけでなく、「乳」と「卵」という女性を女性たらしめてる部分をしっかり深く掘り下げていて、勉強になることも多かったです。

TBさせていただきますね。

2. Posted by Master@ブログの中の人   June 28, 2008 14:50

だのんさん

コメントありがとうございます。

確かに女性特有の観点は、男の自分からしてみるととても勉強になります。

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