July 15, 2008

友だち地獄


友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル

キーワード:
 土井隆義、友だち、優しい関係、社会学、生きづらさ
社会学者によって、若者たちの人間関係の生きづらさを紐解いている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 いじめを生み出す「優しい関係」
  2. 第2章 リストカット少女の「痛み」の系譜
  3. 第3章 ひきこもりとケータイ小説のあいだ
  4. 第4章 ケータイによる自己ナビゲーション
  5. 第5章 ネット自殺のねじれたリアリティ
(目次から抜粋)
正直自分が求めていた内容とは違ったので、かなり恣意的な書評になる。細かくポイントを絞ったりするのが難しいので、引用ベースで。

本書の基本的な概念である、『優しい関係』の説明の部分を抜粋。
 『野ブタ。をプロデュース』に描かれているような対立の回避を最優先にする若者たちの人間関係を、本書では「優しい関係」と呼んでおきたい。それは、精神科医の大平健が指摘するように、他人と積極的に関わることで相手を傷つけてしまうかもしれないことを危惧する今風の「優しさ」の表れだからである(『やさしさの精神病理』岩波新書、一九九五年)。それはまた、他人と積極的に関わることで自分が傷つけられてしまうかもしれないことを危惧する「優しさ」の表れでもある。いずれにせよ、かつての若者たちとっては、他人と積極的に関わることこそが「難しさ」の表現だったとすれば、今日の「優しさ」の意味は、その向きが反転している。
(pp.8)
この『優しい関係』を基に若者の生きづらさが示されている。細かい内容は省略。

おわりにの『生きづらさと正面から向きあう』からこの本の姿勢を抜粋。
 ここで、現代の若者たちが生きづらさから解放されるべき手段をさらに探り、もし可能なら、その具体的な道程のプランを提示すべきなのかもしれない。しかし、本書の冒頭でも述べたように、私は、生きづらさそのものから彼らが解放されるべきだとは、実は思っていない。生きづらさからの解放が、真のユートピアへの道になるとはとうてい思えないからである。生きづらさのない人生など、まさに現実らしからぬ現実だからである。
(pp.226)
ここを読んだとき、あぁ、この本は自分にとって価値がない本だったのだなということが分かった。生きづらさからの解放を切に望む読者にとって、その具体的方法が何かが最重要なのである。それが全編を通してすっぽり抜け落ちている。客観的に若者の現状を傍観しているに過ぎず、ではそこからどうすべきか?という提言がまったくない。それが社会学だというのなら、自分はもう、このような社会学には何も期待できないと思った。

続いて以下のように示されている。
 生きづらさを抱えながら生きることは、世界をただ漠然と生きるだけでなく、その世界に何らかの意味を求めざるをえない人間の本質である。したがって、生きづらさの放棄は、人間であることの放棄でもある。むしろ、いま何かを問うべきだとしたら、それは、『華氏四五一度』のような世界へと逃避してしまうことではなく、いかにこの生きづらさと正面から向きあい、むしろ人生の魅力の一部としての困難をじっくりと味わっていけるのか、その人間らしい知恵のありかたについてだろう。
 そして、じつはそれを問い続けることこそが、ひるがえってみれば「自分らしさの檻」から解き放たれ、「優しい関係」から抜け出すことにもつながっていくのではないだろうか。私たちが下等動物のように反射作用だけで生きることなく、意味の豊かな世界で人間らしく生きていくための道はそこにしかないだろう。しかし、その課題は、明らかに本書の射程を大きく超えている。むしろ、本書がその問いを考えるきっかけになれば、著者としては過分の幸いである。
(pp.227-228)
生きづらさの放棄が、人間であることの放棄とはとてもじゃないが言えたものではない。少なくとも生きづらさの当事者にはそんな考えは絶対に出てこないだろうなと思う。仮にそうだとしても、生きづらさの軽減について示されていないのはやはりどうかと思う。そもそも、この本は誰にどういう目的で書いたのか?ということが不明確でもある。

この本に過剰に期待しすぎたのが間違いだったのかもしれない。社会学的には面白い内容かもしれないけど、生きづらさの当事者にとっては、傍観的な分析は意味がない。それが社会学の限界なのかなと思ったりもする。その反面、心理学者、精神科医、カウンセラーの示す本は、かならずではそこからどうするべきか?ということが具体的に示されている。自分が求めているのは、後者のようだ。

現代の若者の人間関係の生きづらさを傍観するには良い本かもしれない。当事者にはあまり価値がないが。ただ、自分自身は人間関係に苦しむ当事者というわけでもなく。

友だち本なら、以下の2つが断然お薦め。読むべき人:
  • 若者の人間関係に関心がある人
  • ケータイ小説という現象に関心がある人
  • ゴスロリファッションに関心がある人
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コメント一覧

1. Posted by 托生   November 05, 2013 08:28

もっと当事者意識にたった本でなければ生き地獄の真っ只中にいる者にとっては読む価値がない。具体的な解決策を示せという苛立たしい気持ち。
私も以前はそう思って、本当の(真実の)具体的な解決策を書いた本を探し求めて読んで読んで。
でも思ったんです。「それはあなた(著者)の話ですねって」
私がきづいたのは「これさえ読めば、これさえ実行すれば生き地獄から脱出できるなんてことが書かれた本などない」ということでした。
私の生き地獄は私のやり方でカタをつけるしか解決策はない。そのための応援団としていろいろな本があるんだと本への視点を変えました。この本には自分に使える武器はあるか?この本には何が書けていて何が書けてないか!という視点で無駄買いした本を見直してみると評価の変わる本が多くありました。「だからあんたの本は初版でおわりなんだよ」なんて悪口を言いながらいまは本を読んでいます。。
で、生き地獄から脱出できたか?
少なくとも私はタフになりました。

2. Posted by Master@ブログの中の人   November 05, 2013 09:04

>>托生さん

コメントありがとうございます。

視点の変化、とても素晴らしいと思います。そういうのはある程度時間が経ってみないと分からないことですよね。

生き地獄から脱出されることをお祈りしております

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