July 24, 2008

体の中の美術館


体の中の美術館―EYE、BRAIN、and BODY

キーワード:
 布施英利、美術館、解剖学、進化、芸術
芸術学者によって体と芸術の関係が示されている本。以下のような目次となっている。
  1. EYE 目
    1. 科学の目
    2. 芸術の目
    3. 目の誕生
    4. ワンダフル・アートの世界
    5. 光と色の歴史
    6. 中世フランスの光
  2. BRAIN 脳
    1. イメージが生まれる
    2. 脳が芸術を生む瞬間
    3. 脳と遠近法
    4. レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』
    5. 千利休「待庵」
    6. 重森三玲の庭
    7. 絵画と脳
    8. ピカソによる破壊
    9. 脳における視覚情報
    10. デュシャンによる破壊
    11. 芸術における「子ども」
    12. 絵画の死?
  3. and BODY



    1. 背骨
    2. 内臓
(目次から抜粋)
芸術はヒトの体で生まれる、というテーマで、人間の体の構造から様々な芸術を取り上げて解説している内容となっている。終わりのほうに、この本の概要がよくわかる部分があるので、その部分を抜粋。
 この本では、体を「解剖」し、そのとき見えてくる骨や筋肉、内臓や脳という切り口で体を扱った。いわば、いま存在する体から、美術について考えた。
 その体は、三十数億年にわたる生命の進化の果てにできあがったものだ。人体解剖学は、そういう「時間軸」からではなく、いわば「現在」という視点で体を眺める。
 骨や筋肉、内臓というふうに解剖した体を、進化の時間軸にそって並べ、その視点からあらためて人体をとらえ、それをベースにして、美術の見方に新しい視点を取り入れることを目指した。
 生命は三十数億年前に、海で誕生した。内臓、目、背骨が、海でつくられた。海からの「上陸」で肺ができ、平原に出たサルが足で立った。手と脳の進化は、道具をつくり、文明をつくり、都市をつくり、そして芸術をつくった。
 芸術は、どこで生まれたのか?芸術は、ヒトの体から生まれた。そのヒトの体には、三十数億年の「生命の記憶」がつまっている。
(pp.186)
単純に芸術のみを扱ってそれらの解説を示しているのではなく、生物学的な視点、解剖学的な視点から解説されているのがとても興味深いと思った。

まず、『目』に関しては、目が5億4300万年前に生物の進化に突然現れ、目が生物の多様性を生み、芸術の色々なスタイルを生み出したようだ。

そして『脳』では、アルタミラの洞窟に描かれた壁画は夜空の星であり、その当時のクロマニョン人はそこにイメージを見出したことによって、脳が芸術を生み出したとある。

さらに『手』がさまざまな美術を作り出してきており、『足』で重力に抗してきた記憶が芸術に反映されている。『肺』は呼吸と結びつき、それは心の状態とも関係している。『背骨』は建造物の柱のような存在でもある。『内臓』は無脊椎動物の進化の名残の姿であり、それらは海の中の生物とよく似ている。

ほとんど生物学や解剖学のような内容に近い。しかし、難しい表現が多いわけではない。エッセイ的な内容なので、すんなりと読める。

この本で取り上げられている芸術家、建築家などは、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ピカソ、イサム・ノグチ、ピカソ、千利休、重森三玲、マルセル・デュシャン、ゲルハルト・リヒター、千住博、ル・コルビュジエ、ヘンリー・ムーアなどなどと古今東西幅広い。

芸術はセンスや頭だけで作られると思っていたが、このような身体性がもたらすというのはとても新鮮な内容だと思った。

じっくり時間をかけて読むと良い本だと思われる。休日の午後に紅茶を飲みながらとかいいかもね。

読むべき人:
  • 芸術が好きな人
  • 解剖学や生物学が好きな人
  • 古代生物の話が好きな人
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1. 体の中の美術館―EYE、BRAIN、and BODY  [ 書評リンク ]   August 02, 2008 10:24

書評リンク - 体の中の美術館―EYE、BRAIN、and BODY

2. 体の中の美術館??EYE、BRAIN、and BODY/布施英利  [ 読書日記と着物あれこれ ]   October 06, 2008 13:00

布施氏の本を読むのは処女作の『脳の中の美術館』以来。どうやら20年ぶりらしい。カバーの頭蓋骨写真(ゲルハルト・リヒターの『髑髏』という作品)に惹かれて久しぶりに読んでみました。学生時代から仕事引退までいわゆる「美術系」だったので昔はこの手の本をよく読んで...

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