August 19, 2008

斜陽


斜陽 (新潮文庫)

キーワード:
 太宰治、絶望、革命、恋、ロマン
太宰治の小説。カバーの裏からあらすじを抜粋。
最後の貴婦人である母、破滅への衝動を持ちながら”恋と革命のため”生きようとするかず子、麻薬中毒で破滅してゆく直治、戦後に生きる己れ自身を戯画化した流行作家上原。没落貴族の家庭を舞台に、真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要なのだという悲愴な心情を、四人四様の滅びの姿のうちに描く。昭和22年に発表され、”斜陽族”という言葉を生んだ太宰文学の代表作。
(カバーの裏から抜粋)
太宰治の絶望系作品『人間失格』と並ぶ作品なので、どんなものかと思って読んでみた。夏休みには、このような普段読まないような文学作品を読むべきかなと思って。以下、作品解説というよりも、感想を著述しておく。

この作品の登場人物は、太宰治自身のそれぞれの側面を描写していると解説にあった。その通りなのかなと思った。また、これは自分自身をかなり客観視しているのかなと思った。最後の遺書のような作品『人間失格』はどう考えても、主観的な独白記みたいな内容だが、これは四人に自己を分散させていることで、客観性を示しているような気がした。かず子は恋と革命を糧に生きようとする姿勢があり、かず子の母は純真さを体現し、直治は『人間失格』のごとく自分自身の存在に絶望した存在であり、流行作家上原は自分自身の世間の文学的評価を語らせているような気がした。まぁ、そこまで深い分析ではないが、何となくそんな感じがした。

それだけに、読了後に『人間失格』ほど強烈な毒性を感じるような絶望感はなかった。それとも、単に自分自身の精神状態がとても安定しているからかもしれない。どちらにせよ、これを不安定な精神状態で読むと、かなり影響が出てしまうのかなと思う。少なくとも、自分自身に関して言えば、太宰の絶望系作品を読むことは『毒書』するという感覚に近い。絶望することが分かっていて読むという、麻薬みたいな感じ。読んでいるときは自己陶酔できるが、読了後に自分を客観視したときの空虚感といったら言いようがない。だから、太宰作品は自分にとっては結構危険な作品なので、連続して多く読むべきではないと思った。

直治の遺書に平等主義に対する批判が綴られている部分があり、そこに妙に共感した。
 人間は、みな、同じものだ。
 これは、いったい、思想でしょうか。僕はこの不思議な言葉を発明したひとは、宗教家でも哲学者でも芸術家でも無いように思います。民衆の酒場からわいて出た言葉です。蛆がわくように、いつのまにやら、誰が言い出したともなく、もくもく湧いて出て、全世界を覆い、世界を気まずいものにしました。
 この不思議な言葉は、民主々義とも、またマルキシズムとも、全然無関係のものなのです。それは、かならず、酒場に於いて醜男が美男子に向かって投げつけた言葉です。ただの、イライラです。嫉妬です。思想でも何でも、ありゃしないんです。
(中略)
 なぜ、同じだと言うのか。優れている、と言えないのか。奴隷根性の復讐。
 けれども、この言葉は、実に猥せつで、不気味で、ひとは互いにおびえ、あらゆる思想が姦せられ、努力は嘲笑せられ、幸福は否定され、美貌はけがされ、光栄は引きずりおろされ、所謂「世紀の不安」は、この不思議な一語からはっしていると僕は思っているんです。
(pp.184-185)
昨今の格差是正論に辟易とする身としては、ここに共感を得た。人と違っていることが本来普通であり、そうでなければ、揚げ足を取ったり、没個性化を強制する世界は自分も願い下げだ。太宰自身もそういう平等性に違和感を覚えていたのかなと思った。

半分まで読むのが結構大変だった。難しい表現があるわけではないが、独特の言い回しや文体のリズムに慣れるまでスラスラ読めない。しかし、後半はスラスラ読めた。

物語としては、面白いと思えるものではないが、色々と考えさせられると思う。自分は登場人物のどれに近いかとか考えたら面白いかもしれない。

あと、リアル書店に行ったら、『ケータイ名作文学・人間失格 (ケータイ名作文学)』なんてものがあった。横書きでところどころに写真が入っている。中身を見る前は、ケータイ語に翻訳されているのかと思ったが、文章は普通だった。フォント色は緑色だったが・・・。正直、さすがにこれが売れ出したら日本オワタ\(^o^)/だと思う・・・。普段このような作品を読まない人が読むようになる良い機会になるとポジティブに考えられなくもないが、横書きはダメだろ・・・。カタカナ語とか英単語が頻出するわけではないのに・・・。しかも、値段が普通の文庫の2倍近い・・・。表紙も含めて文学作品だと思う派なので、はっきり言って、これはない。

参考サイト:ブログちゃんねる:名作文学をケータイ小説(笑)にしようぜ

まぁ、太宰作品で軽く絶望したい人はこの作品がいいと思う。もっと自己陶酔したければ、『人間失格』とか『地下室の手記 (新潮文庫)』とか読めばいいと思う。

そんな夏休みの読書。全然小説が読めてない・・・。

読むべき人:
  • 太宰治が好きな人
  • 軽く絶望を感じて自己陶酔したい人
  • 世の中の平等主義に違和感を覚える人
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