August 28, 2008

ソフトウェア技術者の仕事力


ソフトウェア技術者の仕事力 〜対話の重要性とその心得

キーワード:
 増田智明、エンジニア、対話、そもそも論、問答法
対話形式で、ソフトウェア技術者の仕事観が示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 1章 え?
    1. 1-1 お先真っ暗?
    2. 1-2 何が大事なの?
    3. 1-3 何が必要なの?
    4. 1-4 できる人って?
    5. 1-5 技術大国?
  2. 2章 技術って何?
    1. 2-1 その技術って何に使うの?
    2. 2-2 最新技術って誰が作るの?
    3. 2-3 何ができるの?
    4. 2-4 技術って何?
    5. 2-5 自分に向かって使ったことあるの?
    6. 2-6 もしかして薬漬け?
    7. 2-7 普段は何しているの?
    8. 2-8 好きなものを作れるの?
    9. 2-9 なんで解決策を拾ってくることばかり考えるの?
    10. 2-10 自分で編み出したりしないの?
    11. 2-11 でも駄目なんでしょ?
  3. 3章 どんな風にやっているの?
    1. 3-1 どんな人がいるの?
    2. 3-2 どんな風にやっているの?
    3. 3-3 後戻りって何なの?
    4. 3-4 お客が喜ぶようなものはできているの?
    5. 3-5 どうしてお客の話を聞かないの?
    6. 3-6 それでどう,難しいの?
    7. 3-7 できる人って結局何なの?
    8. 3-8 その環境ってどんなものなの?
    9. 3-9 甘ったれんじゃないわよ
    10. 3-10 結局のところ何が嫌なの?
  4. 4章 なんでやらないの?
    1. 4-1 普通にやるのって大変ですよ
    2. 4-2 間違いだらけ
    3. 4-3 井の中の蛙?
    4. 4-4 ソリューションって何?
    5. 4-5 議論する以前の問題
    6. 4-6 チームワークって何?
    7. 4-7 技術の進歩って…
    8. 4-8 鶏が先か卵が先か…
    9. 4-9 エンジニアってそもそも何?
    10. 4-10 何ができる人のことなの?
    11. 4-11 実のある技術って何?
    12. 4-12 好きなことすれば?
    13. 4-13 知識って何?
    14. 4-14 何も考えていないんですもの
    15. 4-15 最低限?
    16. 4-16 なんでやらないの?
  5. 5章 作ってみてよ
    1. 5-1 チラシの裏
    2. 5-2 何かやってみる?
    3. 5-3 あんたが持ってきたこれは何?
    4. 5-4 できる人だったらどうするの?
    5. 5-5 人の話を聞けって!
    6. 5-6 やればできるじゃん
    7. 5-7 目的は作ることなんでしょ
    8. 5-8 間違いだらけ
    9. 5-9 それ以外のときにいつ使うのさ
    10. 5-10 SE?プログラマ?
    11. 5-11 腹が立たなくなってきましたよ
    12. 5-12 結局やることやるだけ
    13. 5-13 優秀なエンジニアさんって
    14. 5-14 おわりに
(目次から抜粋)
ちょっと目次の分量が多いが、この本の場合は、全て示しておかないと何が書いてあるのかさっぱり分からない。だって、1章のタイトルが『え?』って(笑)。さすがに、今までいろんな本の目次を抜粋してきたけど、これはないwww

この本は、10数年IT業界で働いてきた著者である増田さんと、行きつけの飲食店の店員アキさんとのソフトウェアエンジニアの本質についての対話が示されている。そのためすべの文章が口頭語からなっている。

本の中の増田さんは、ITエンジニアとしてそれなりに働いてきたが、どうも最近自分の仕事に行き詰まりを感じていて、IT業界そのものにたいしてお先真っ暗と感じているようだ。そこで、何とか相談したくて、なぜか飲食店店員のアキさんに話をしに来たという設定になっている。

なるほどなと思う対話部分をいくつか抜粋。『3-4 後戻りって何なの?』から。
アキ 「そもそも、そのお客と話をしているの?」
増田 「もちろん、してますよ。そりゃ」
アキ 「ところでさ、私あんたが使うカタカナ文字とか、要求だの設計だの全然意味が分からないのだけど、もちろん全部説明しているんだよね?」
増田 「・・・・・・。一応は・・・・・・」
アキ 「でも、実際は自分では不味くて食べられないご飯を押しつけていたんでしょ」
増田 「そうですね」
アキ 「それで、使えるか使えないか自分でもよく分かってないものを使っているのに、お客にきちんと説明できるの?」
増田 「・・・・・・」
アキ 「それってお客と話をしているって言えるの?」
増田 「でも、そういうもんですから」
アキ 「はあ?技術を自慢している人が、そんなことやっていいと思っているの?恥を知りなさいよ」
(pp.54-55)
という感じ、アキさんは完全にツンツンキャラで、増田さんは常にアキさんから突っ込まれている始末wwwアキさんにデレは終始ないwww

それはおいといて、本質的な部分でいうと、これはついつい忘れがちなことを的確に突っ込んでいるなぁと思った。どうしても技術者本位の言葉を語りがちで、本当にお客さんが分かる言葉で説明しているかというのは自分も反省するところだなと思った。お客さんがどの程度の知識があるかを把握しながら説明するのは結構難しい。

他にも『4−4 ソリューションって何?』から。
アキ 「ところで、このパンフレットに書いてあるソリューションってなに?」
増田 「ソリューションってなんなのですかね?」
アキ 「さあ、言うならばそんなの馬鹿な客を騙すための嘘よ、嘘」
増田 「そんなこと言われたら実も蓋もないですよ」
アキ 「だってそうなんだから仕方ないでしょ。じゃあない?このパンフレットに書いてあることは全部本当のことなの?」
増田 「いえ、そうならないときもあります」
アキ 「じゃ、嘘じゃない」
(pp.83-84)
これもあるあるwwwとか地味に自分も突っ込みながら読んだ。就活中にいろんな企業のパンフレットを見たけど、いろいろな美辞麗句が載っているが、本当のところどうなんだろうなぁと思ったもので。これも、アキさんがユーザーの視点から鋭く突っ込んでいる。

本当はもっと色々紹介したいが、これは読んでからのお楽しみで。そもそも、エンジニアとは何をする人なのか?とか、どういう風にシステム開発の仕事をしているのか?、なにを武器に仕事をしているのか?、顧客満足は何か?といったことに関して、アキさんが増田さんのグチっぽい相談に的確に突っ込みながら答えを引き出している。正確には、増田さんに考えさせるように仕向け、読者自身も一緒に考えられるようになっている。それはまるでソクラテス時代の問答法みたいな感じで、アキさんはそのような役割を担っている。

この本の評価は確実に二つに分かれるだろう。この書評時点では、Amazonでは評価はまだないけど、評価のばらつきが出ると予想される。この本をダメだしする人は、たぶんこの本に示されている本質が読みきれておらず、感覚的に分かっていないか、もしくは高い意識を持つプロフェッショナルで、エンジニアの仕事に充実感を持って意欲的に働いているようなかなりデキル人だと思う。後者ならいいと思うよ。しかし、これはどうかな・・・?と思ったとき、この本質が読み取れるほどSE業の仕事とは何か?を考えたことがあるかどうかを振り返る必要があると思う。つまり、この本は、示されている内容は一見単純だが、読み手のエンジニアとしての成熟度を試すような内容と言える。それだけに、書評が難しい本でもある。

あえて突っ込む部分があるとすると、増田さんのグダグダ感は結構読んでいて疲れる。こっちも突っ込みたくなる。いや、突っ込みたくなるように著者が意図的に書いているのだろうけどね。

他にも、これは誰のために書いたものか、どういう人に読んで欲しいのか?ということがまえがきにもあとがきにも載っていなかった。これは少し説明不足な感じがする。

この話の内容は、半分は実話で半分はフィクションらしい。実際に著者とアキさんが激論を飛ばしていたこともあったようだ。こんな人がいるバーとかあったら毎日でも通っちゃうなぁ。
(;´Д`)

ページ数も少なく、ところどころにデフォルメしたイラストもあり、1ページ30秒もかからないで読める。しかし、読みやすいが本質はかなり深い。この本を読んで、自分自身のエンジニアの成熟度を計ってみるというのも一興だと思う。

この本で、『技術本(コンピュータ関連)』の書評50冊目だ。節目にふさわしい本だと思った。

読むべき人:
  • エンジニアとして行き詰まりを感じている人
  • システム開発業とは何かを考えたい人
  • ドM体質のエンジニアの人
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