September 01, 2008

われわれはどこへ行くのか?


われわれはどこへ行くのか?

キーワード:
 松井孝典、地球学的人間論、宇宙、システム、わかる
地球、宇宙という視点からわれわれとは何かが示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 われわれはどこから来たのか
  2. 第2章 われわれはどこへ行くのか
  3. 第3章 地球生命とアストロバイオロジー
  4. 第4章 地球環境の歴史
  5. 第5章 われわれの宇宙はどうやって生まれたか
  6. あとがきにかえて―「わかる」とはどういうことか
(目次から抜粋)
著者は、惑星物理学・アストロバイオロジーが専門で、この世界を生きるわれわれ人間を考えるときに、地球を含めて考えるべきだということを主張している。この本の問題提起部分を以下に抜粋。
 これら「生物学的人間論」と「哲学的人間論」に加えて、地球という星を通して見たときの、われわれのあり方を考えることを「地球学的人間論」と呼ぶことができます。じつはいまわれわれが議論すべきは、地球学的人間論なのではないかと思うのです。
 生物学的人間論や哲学的人間論では、じつは「文明」は語れないし、「地球環境問題」を語れないからです。ということは、「われわれとは何ぞや」ということの本質も、語れないはずなのです。
 その辺の考え方を根本的にあらためなければ、未来もありません。なぜなら、「われわれとは何か」という現状認識を誤っていたのでは、その先に正しい未来認識もないわけですから。そういうわけで私はいま、「地球学的人間論」の重要性を一生懸命訴えているのです。
(pp.20-21)
地球学的人間論という視点は自分にはなかったなぁと思った。さらに、環境問題や文明を考えるということはどういうことか?が以下のように示されている。
 なぜ環境や文明の問題が出てくるかといえば、いまのわれわれというのは、人間圏を急激に拡大させた結果、地球を汚染する存在になってしまったからです。そこで「われわれとは何ぞや」を問うと同時に、「そういう汚染を引き起こすような存在とは何ぞや」ということをカップルで考えなくてはなりません。あるいは「文明とは何か」を問うことは、人間圏とは何ぞやを問うことであり、そのような生き方を選択した「われわれとは何か」を問うことであるわけです。
(pp.22)
結局、「人間圏をつくって生きているわれわれとは何なのか」と問うことが、「われわれとは何なのか」の本質に迫る問いなのだと示されている。また、部分的なところを見るのではなく、地球システムという全体を見ないと意味がないと示されている。なるほどなぁとと思った。

他にも環境問題について以下のように示されている。
 私は、「地球を知らなければ、地球環境問題なんて議論できません」ということを講演のたびに主張し、本にも書いています。
 「地球とは何か」「現生人類とは何か」「歴史とは何か」を理解するのがまず前提で、それがわからなければ文明の問題も環境の問題も、その本質がわかるはずがありません。「地球にやさしく」などという情緒的で空疎な標語が出てくるのは、まさに地球のことを知らないからです。そういう、うわべは美しいけれども安易な言葉でくくってしまうと、地球環境問題をかえってわかりにくくしてしまうのです。
(pp.108)
これはよくテレビで環境問題が取り上げられている現状を鑑みると、本質的なことが伝えられないまま、今地球が破壊されているので一人一人エコになりましょうという風潮に違和感を覚えるのに通じるのではないかと思った。昨今のエコブームとか、マスコミと広告屋の宣伝、戦略だろと思ってしまう。エコバッグ(笑)、エコカー(笑)、エコライフ(笑)、エコドライブ(笑)・・・・、スイーツ(笑)と同レベルかなと邪推してしまう。マスコミの報道する環境問題を真に受ける前に、一度この本を読んで地球システム全体から考えてみるべきなんだなと思う。もちろん、エコブームに乗っかって、エコで地球に優しい(笑)人間であることを体現したい人には関係ないと思うが。

地球や宇宙論がたくさん出てきて、普段の生活では考えないようなことが多く示されていて勉強になった。特に面白い内容の節タイトルを以下に列挙。
  • 勝ち組・負け組みという空疎な発想
  • 人間圏は今世紀半ばに破綻する
  • 火星移住計画は実現可能か
  • 生物学では宇宙人を議論できない
  • 太陽系はどうやって生まれたか
  • 宇宙はどうやって生まれたか
割と専門用語が多く出てくる。CO2、CaCO3、SiO2、CaSiO3なんて化学式も少し出てくる。久しぶりに化学式なんて見たなぁ。

また、普段の生活で「納得する」というのと、自然科学的な意味で「わかる」というのはぜんぜん違うことだという部分がとても興味深いなと思った。簡単に言えば、自然科学的な意味での「わかる」というのは、二元論と要素還元主義的に問題が設定されて、それが解けたときに「わかる」ということになるようだ。

宇宙論とか地味に好きなほうなので、興味深く読めた。ちくまプリマー新書は高校生から読める内容となっているので、そこまで難しい内容ではない。ところどころにイラストも載っているので、感覚的にわかる、いや、「納得」できる内容となっている。

大局観を養うにはとても良い本だなと思った。特に、普段の生活に追われて地球のことを考えられなくなっている人にはいいかもしれない。

それにしても、毎回思うんだが、ちくまプリマー新書はいい本がそろっている。

読むべき人:
  • 地球、宇宙論が好きな人
  • エコブームや環境問題に違和感を覚える人
  • 大局的な視点を養いたい人
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