September 04, 2008

日本のソフトウェア産業がいつまでもダメな理由


日本のソフトウェア産業がいつまでもダメな理由

キーワード:
 久手堅憲之、ソフトウェア産業、ダメだし、課題、プロ
IT業界のダメな点、課題などが鋭く指摘されている本。以下のような目次となっている。
  1. ソフトウェア産業に起きていることを今語ろう―プロローグ この業界の酸いも甘いも知っている男たち
  2. 第1章 技術がよりどころのソフトウェア会社がエンジニアの足を引っ張る―会社のここがダメ
  3. 第2章 仕事から生み出す価値が自分のところで止まっていないか?―エンジニアのここがダメ
  4. 第3章 「優良産業」を名乗れる日ははるかに遠い―業界のここがダメ
  5. 第4章 発注企業はこのパターンにはまって「ゴミシステム」をつかむ―ユーザーのここがダメ
  6. 神の手という名のプロフェッショナリズム―エピローグ
(目次から抜粋)
この本は、日本のソフトウェア産業が衰退に向かっていて、現状ではいろいろな問題点や課題が多くあると示されている。そして、その課題や問題点から、エンジニアに提言を、ユーザーには警鐘としてメッセージが示されている。

これはとても勉強になった、というよりも、なるほどなぁ、と改めて自分の所属しているIT業界の本質を知ることができてよかった。とても考えさせられることが多かった。それにしても、表紙の英語の副題が『18+ Reasons Japanese Software Industry Always Said Hopeless』って、いつも絶望的だってwwwまぁ、これを読めば確かにその通りなのかなと思ってしまったが・・・。

1,2章は主にこの業界で働くエンジニアに向けてのメッセージが示されている。例えば、プロジェクトでは一番有能な人間が失敗の責任を負わせられたり、仕事が一方的に押し付けられたりして潰れてしまう。さらにはそんな失敗プロジェクトの火消しに生きがいを感じたりする人もいるようだ。そこで著者は以下のように、エンジニアに提言している。
火事場と呼ばれる問題プロジェクトで生きがいを探す前に、組織の再発防止策をチェックしよう。でなければ、一生火事場暮らしになりかねない。
(pp.29)
なるほど、と思った。ソフトウェア産業だけが、常に失敗プロジェクトから反省もなく、同じような失敗を繰り返していると随所に示されている。

2章では日本のエンジニアに対するダメだしが示されている。例えば、日本製のソフトウェアが海外で売られていないわけとしては、日本のSEは勉強不足で、国内市場だけでなんとか利益を出せている現状があり、ぬるい状況に甘んじていてプロフェッショナル意識が低いからだと。そして、日本のエンジニアには以下のような弱点があるようだ。
  • プロとして働くこと、自分を伸ばすことの意欲が低い
  • 外国製のソフトウェア製品を使う立場に甘んじている
  • 自社製品、自国製品を海外に売り込む意識が低い
確かに日本製のエンタープライズ向けのパッケージ製品はあまり聞いたことがない。大抵はOralce、SAPなどを筆頭とする外国製の癖のある製品だなぁと思った。そして、このような現状では、オフショア開発がさらに進み、外国人エンジニアとの国際競争力では負けてしまうとある。

さらに、エンジニアたちを取り巻く問題は以下のようなものがあるようだ。
  • 大学時代から多くを学んでこなかった
  • 大学教育も企業ニーズとどこかズレている
  • 経験がなくてもSEで通用した
  • サラリーマンだから評価は横並び
  • どうせ評価されないから自分の殻にこもる
  • 顧客視点・ビジネス視点で価値を考えることは苦手
  • 組織の均質な兵力にはなりたくない
以上のような問題点から、著者は以下のように提言している。
エンジニアの道を追求するのなら、自分の足で立つべきだ。今にあっては腕だけで食えるのはよほどの場合だけだから、もう一度、誰にとっての自分の仕事の価値とかいう視点に立ち返ってみよう。
(pp.89)
なるほどと思った。

3,4章は、システム構築などをエンジニアに依頼する立場のユーザーに対してのダメだしが示されている。3章では、システム開発費を払っても、バグッたものや使いにくいものだったり、企業利益をもたらさないような、欲しいと思っていたものが手に入るかどうかわからないアヤシサを野放しにしているこの業界について鋭く解体している。

例えば、お金の話として必ず根拠として使われ、この業界のスタンダードになっている『人月』という単位などは、どこまでいっても売り手目線でしかないとある。結局、人月計算による価格の計算は、
「お客さんが何をやりたいのか検討もつきませんけど、とりあえずウチからは4人のプログラマを3ヶ月お貸しします。好きなように使って何でも適当に作っちゃってください」
(pp.122)
ということに等しい。結局それは、人材斡旋業でしかないと、ばっさり切り捨てている。そこで、著者はユーザーに以下のように警鐘を示している。
要求開発や設計の前にコストをきちんと算定することは不可能に近い。人月単位の開発計画は、信憑性を疑ってかからなければならない。
(pp.124)
なので、ユーザーもベンダーにまかせっきりにするのではなく、経営層からこのようなシステムをいくらで作ってくれと要求をしっかりまとめることが重要であるというようなことが示されていた。

4章では、そもそもIT企業とはどのようなものがあるかということが示されていた。それによると、本質的にIT企業と呼べるものは、ソフトウェア会社などやネットサービス企業ではなく、金融、エネルギー、運輸など、IT基盤なくして業種が成り立たなくなっているインフラ企業のみだとある。ソフトウェア会社は何重にもよる下請け構造により、ただの人材斡旋会社でしかなく、ネット企業は技術が強みではなく、ビジネスモデル屋や金融業でしかないとある。これはなるほどなぁと思った。

他にもいろいろと紹介したいが、この辺まで。

自分もIT業界に身を投じているけど、ここまでとは思わなかったなぁ。IT系雑誌を見たり、2chのSE、プログラマ、IT業界のスレをよく覗いたりするけど、似たようなことが多く示されているなと思っていたが。それがこの本でよくまとまっていて、IT業界とはどういう状況か?、エンジニアの働く組織とはどういう状況か?そしてIT業界全体に未来はあるのか?ということが示されている。自分自身も個人レベルでエンジニアとして意識なければいけないことが多く示されていると思った。

このままIT業界にいてはダメな気もするが、自分の所属する組織から日本のIT業界を改革していくというのも野望の一つとして挙げるのもアリかなと思った。

この本は、SEやプログラマ、システム開発を発注するユーザーなど、IT業界に関わる人誰が読んでも得るものがあると思う。特にSE、プログラマなどIT業界で働く人は絶対必読!!な一冊だと思った。

みんなでこれを読んでIT業界をよいものに変えていこうぜ!!っていうような本だと思った。

読むべき人:
  • IT業界で働いている人
  • システムを発注するユーザー企業の人
  • IT業界のダメさ加減を知りたい人
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